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CYCLINGFAN!!

自転車をこよなく愛し、自分の脚と熱いハートで幾つになっても、可能な限り、どこまでも走り続けます~♪

失意のジロ・デ・イタリア

2025-06-02 14:54:01 | ジロ・デ・イタリア
 今年のジロ・デ・イタリアがローマで幕を閉じました。優勝候補のログリッジとアユソのリタイヤもあり、21歳のデルトロとベテラン32歳のカラパスにサイモン・イエーツの三つ巴で第20ステージに入ったのですが、どうにも後味が悪い結末が待っていました。

 7年前の忘れ物を取り戻したサイモン・イエーツを称賛する声が多いことも承知しています。ただ、ステージ勝利が無いサイモンが最後の山岳でライバルに5分近い大差を付けて大逆転のマリアローザを獲得したことに納得出来ない自分がいるのです。前日のクイーンステージでもデルトロとカラパスに遅れをとっていたサイモンがマリアローザをたった1ステージで手にしたのですから。

 コッレ・デッレ・フィネストレ(登坂距離18.5km/平均勾配9.2%)の麓でカラパスがアタックしそれに反応したのはデルトロだけという状況で、サイモンとの差を広げて行くのかと思いきや、この二人が牽制状態でペースが上がらず、サイモンに交わされ逆にタイム差を広げられても、二人の牽制が続きました。

 確かに1時間もの長い登坂を考えれば無理は出来ないのは分かりますが、総合2位から3位へ落ちるカラパスはともかく、マリアローザを失うデルトロが動かないのには失望しました。チームとしてはここで無理をしてヤングライダーまで失うことは出来ないと考えたのかもしれませんが、デルトロはおそらくポガチャルに叱られるのではないでしょうか?第17ステージで勝利した後に「失うものは何もない」と答えていた選手なのです。ならば、全力でマリアローザを守りに行く走りをするべきだったのではないでしょうか。

 何よりチームがおかしかった。総合TOP15に4名の選手がいて、チーム総合でも断トツのUAEがフィネストレのカラパスのアタックにデルトロだけが付いていく状況というのが不思議でならないからです。マイカでもアダムでもマクナルティでも良いからカラパスのマークに付けることは出来なかったのでしょうか?あるいは、カラパスを行かせてチームでカラパスを追うという選択肢もあったはずなのです。さらに遅れてアタックしたサイモンにも誰もマークに入っていません。

 この段階でEFはカラパス一人だったのです。一方、サイモンには逃げていたワウトが前にいて、フィネストレの下りでサイモンに合流した時点でゲームオーバーでした。UAEは逃げにもアシストを送り込めない展開で、カラパスのアタック一発で崩壊。それも誰も付いて行けないポガチャルのアタックではないのです。マリアローザのアシストなら何十分遅れようとライバルはマークするのはロードレースの鉄則でしょう。

 ポガチャルというスーパー・エースがいるチームで、個々の能力は高いのにチームとしての纏まりに欠けるというのが最近のUAEチーム・エミュレーツの印象です。ポガチャルがいればアシストが最後まで仕事をしなくても勝手に勝ってくれることに慣れてしまっているのかもしれません。チームとしてはここまで40勝を挙げながら、マリアローザはヴィスマ・リアースバイクというのは、一昨年までのUAEのようです。ワールドランクは1位なのに3大グランツールは全てユンボ・ヴィスマに持っていかれた年でした。

 ログリッジがチームを離れ、昨年こそ3大グランツールは未勝利に終わっていますが、今年はサイモン・イエーツをジェイコから獲得し、エースナンバーはワウトに背負わせて、チームとしてマリアローザを獲得して見せたのは流石です。万が一ポガチャルがツールでヴィンゲゴーに敗れるようなことがあれば、再びヴィスマが3大グランツール全制覇ということもあり得ます。
 結果からみれば、サイモンのステージ優勝こそありませんでしたが、ワウトの1勝にコーイが2勝と勝利数でもUAEを上回ったヴィスマ。選手層では劣るチームが戦術で勝利するというのがヴィスマというチームなのです。とにかくグランツールには強さを発揮するのです。ポガチャルでしかグランツールを勝てないUAEとは大きな違いでしょう。

 そんなことを考え鬱々としていたのですが、良い面に目を向けると、イサーク・デルトロという新星の実力が証明されたことは大きな喜びです。昨年のツアー・ダウンアンダーでいきなりステージ優勝をしていた選手でしたが、まだ線が細くひ弱な印象の残る選手でした。ところが、今季は同年代のモルガドやヤン・クリステンともに勝利を重ね、フアン・アユソというエースを押しのけてグランツールの総合2位という素晴らしい結果を残したことは事実なのです。

 これでチーム内ランクもアユソを越える2位に上がり、育成面からツールはスキップすると思いますが、ブエルタではエースナンバーを背負っているかもしれないのです。そして、いよいよ今週末にはスーパーエースのポガチャルが久々に登場します。
 


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マリアローザの行方(4)

2025-05-31 13:03:52 | ジロ・デ・イタリア
 今年のマリアローザ争いは第20ステージに持ち越されました。昨日のクイーンステージは流石UAEチーム・エミュレーツといった完璧なアシストに守られたアイザック・デルトロがステージ2位でゴールし、総合2位のリチャル・カラパスに43秒差で最後の山岳ステージへ向かうことになりました。

 最後の休養日明けの第16ステージではカラパス等のアタックに付いていけず、タイムを失っていたデルトロでしたが、第17ステージではそのカラパスと共に抜け出すと、コーナーの立ち上がりで加速する見事な走りでカラパスを振り切り、マリアローザのまま初のステージ優勝を挙げて見せたのです。28秒まで縮まったタイム差も41秒と広がりましたが、残り2つの山岳ステージを考えると、マリアローザのキープは相当に難しいと見ていたのです。

 ただ、昨日の第19ステージを見る限り、UAEのアシストは盤石で、逃げは容認してものの、ラファウ・マイカの絶妙な牽引で最後の1級山岳コル・ド・ジュー(距離15.1km/平均6.9%)を越えたところで勝負ありでした。3名の逃げを容認しながら、UAEはマイカにアダムにマクナルティという3枚のアシストを残していたのです。

 最後にアダムが遅れて行きましたが、それでもライバル達が丸裸なのですから、UAEのチーム力は恐るべしです。既にジェイ・ヴァインとアユソを失い6名になっていて尚この強さなのですから。

 第16ステージはEFのアタックでUAEがアシストを削られていたのですが、このステージは全く逆の展開になっていたのです。第16ステージは遅れてはいたもののアユソが残っていて、チームの意識が分散していたのかもしれません。ただ、既にアユソがリタイヤしたことで、再びチームが纏まったのでしょう。

 昨日の走りを見る限りデルトロはまだまだ元気で、チームがしっかりと機能すれば、カラパスとの43秒差を守ることはさほど難しいことではないかもしれません。21歳のデルトロは経験値では圧倒的に不利なのですが、昨日のステージではアシストを減らして行ったのはEFの方だったのです。登坂での能力や経験値ではカラパスが上でも、EFとUAEのチーム力の差は明確で、今日のステージでもアシストがしっかり機能すれば、マリアローザは守り切れると見ています。
 一番怖いのはヴィスマの攻撃でしょう。ここまではワウト・ファンアールトが逃げに乗る動きを見せていましたが、この日は前待ちも出来ていませんでしたから、今日は逃げには乗らず、最後までサイモンのアシストに徹すれば、チーム力の高いヴィスマは波状攻撃も可能でしょう。ただ、エンリク・マスやマッテオ・ヨルゲンソンといったサブエース級がいる訳ではないので、最後はUAEが力で押し切る可能性が高いかもしれません。今回はサイモンの表彰台狙いで来ていると見るのが妥当でしょう。

 最後の山岳は205㎞と距離も長く、最後の50㎞からはコッレ・デッレ・フィネストレ(登坂距離18.5km/平均勾配9.2%)を上った先は、何と標高2178mのチーマ・コッピ(最高標高地点)なのです。上り始めに最大勾配14%区間があり、その後も10%前後の傾斜をひたすら進んで行き、最後の8kmは未舗装路というとんでもないコースなので、パンクひとつが明暗を分けることも十分に考えられるのです。

 最後はセストリエーレの頂上ゴールですが、標高こそ2033mと高いものの、登坂開始地点が1400mなので、カテゴリーとしては3級扱いなのです。つまり、フィネストレでマリアローザの行方がほぼ決まるといっても良いでしょう。デルトロがアシストに守られてフィネストレを無事に越えられればマリアローザが確定するだろうと思っています。

 おそらくカラパスは必ず動くと思いますが、それがフィネストレになるのか、最後のセストリエーレになるのか、EFはそこまでアシストを何枚残せているのかがポイントになるでしょう。ヴィスマのサイモンはどうするのか?2018年にマリアローザを着用しながら19ステージでクリス・フルームに逆転を許し以来の忘れ物を取り戻せるのか?ただ、ここまでの走りを見る限り未知数のデルトロはともかく、カラパスとの力の違いは明白です。
 最後はUAE対カラパスという構図になると見ています。カラパスがUAEの厚い壁を打ち砕くことが出来るのかに注目しています。個人的には自分も乗っているSupersix EVOがマリアローザカラーに染まるのを見てみたいと願っているのですが、UAEの壁は高くて厚いのは間違いないでしょう。3週間にわたる長い戦いもようやく決着し、明日はローマの休日へ選手たちは向かいます。
 




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ゼッケン1のプレッシャー(1)

2025-05-30 13:05:07 | ジロ・デ・イタリア
 今年のジロ・デ・イタリアは第18ステージを終えていますが、総合TOP10内には末尾が「1」のエースは半分以下の4名だけとなっています。第17ステージではゼッケン「1」のレッドブルのエース・プリモシュ・ログリッジが、第18ステージではUAEのエース「201」のフアン・アユソが相次いでリタイヤとなっているからです。

 レース前は2強とまでいわれた二人のエースが次々と脱落して行ったのはただの偶然なのでしょうか?ログリッジに関しては昨年のツール・ド・フランスでも落車で途中リタイヤしていますし、アユソも新型コロナの感染でリタイヤしているのです。勿論、ツールではUAEのエースはポガチャルでしたから、UAEにとっての影響は最低限に抑えられていましたが、レッドブルは事情が違いました。

 その後、ブエルタで意地を見せたログリッジでしたが、今年のジロも落車の影響でリタイヤ。往年の名プレイヤーもピークが過ぎると落車が増え、グランツールの優勝から遠ざかって行く傾向が顕著なのです。ログリッジはおそらくその域に入っているのかもしれません。

 一方のアユソは今季ティレノ・アドレアティコまでは絶好調で、個人的にもマイリアローザの期待が高かったのですが、蓋を開けると1度もマリアローザを着ることも無く、レースを去ることになったのです。アユソに関しては3週間のグランツールを戦える安定感に欠けるように思えます。1週間程度のステージレースには滅法強いのに、それが3週間のグランツールではなかなか結果が残せないのには、何か根本的な問題があるのではないでしょうか?ポスト・ポガチャルの最有力選手として期待が高い選手だけに、このままだとUAEに留まるのは難しくなるかもしれません。

 今年のジロはアユソより若いデルトロがここまで10日間マリアローザを着続けているので、アユソの存在感自体が薄くなっているのも事実です。デルトロのゼッケンは「204」で、明らかにアシストの位置づけだったはず。実際にティレノ・アドレアティコではアユソの総合優勝をサポート、イリッア・バスクカントリーでもアルメイダの総合優勝にアシストとして貢献していたのですから。

 クラシックレースでもミラノ・トリノを勝ち、ミラノ~サンレモでも13位と健闘を見せていたのですが、まさかジロでマリアローザを獲得し10日間も着続けるとは予想外の活躍です。これまではアユソというエースがいて、気持ち的にも楽だったのでしょうが、第16ステージでエースのアユソが大きくタイムを失い、自らも遅れ28秒差にまで迫られ、マリアローザもここまでかと思われた第17ステージでは自ら仕掛けてステージ優勝を挙げるあたりにポスト・ポガチャルはこちらというアピールには十分でした。

 末尾に「1」を持つエース達は勿論ですが、リーダージャージを着るのもプレッシャーなはずなのです。TOP10に今残る末尾「1」のエースは、総合2位のカラパス、4位のデレク・ジー、6位のエガン・ベルナル、10位のマイケル・ストーラーの4名のみで、逆に末尾「1」のエースを失っているチームが5つもあるのです。
 




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マリアローザの意地

2025-05-29 15:28:09 | ジロ・デ・イタリア
 今年のジロ・デ・イタリアも残り5日、マリアローザ争いは後4ステージで確定することになります。昨日の第17ステージは丘陵にカテゴライズされているものの、獲得標高は4000m弱と過酷なステージに代わりありません。

 途中に現れるモルティローロはあのコンタドールがごぼう抜きをみせたジロでは有名な山です。今年は勾配の緩い南側から登り、勾配の急な北側を下る勝負所。アユソが早々に遅れてしまったUAEは、マクナルティーを逃げに乗せ、モルティローロではアダムとマイカがデルトロを守る。前半には逃げに乗ろうと飛び出していたデルトロの調子は悪く無さそうに見えましたが、前日はタイムを失っているのです。

 逃げ集団からログリッジを失い中になったダニエル・マルティネスのアタックから活性化しますが、逃げに乗っていたマクナルティは無理をせず見送ります。これは明らかにUAEの作戦でした。追走する集団はマリアローザのデルトロに負荷をかけ過ぎないような牽引を見せます。

 アタック合戦の末に出来上がった20名以上の逃げ集団も距離12.6kmで平均7.6%のモルティローロの厳しさに徐々にその数を減らして行きます。それを追うマリアローザグループも同じでした。ただ、前日と異なりUAEチーム・エミュレーツもデルトロにも全く慌てる様子はありません。モルティローロの頂上付近でEFのカラパスのアタックに無理に反応せず、デルトロは補給を取る余裕も見せていたのです。

 UAEチーム・エミュレーツはモルティローロは登りより下りを重視した戦術だったのでしょう。登りで離された差も下り区間で徐々に詰め、下り切る手前でマクナルティがデルトロに合流。平坦に入るとアダムとマイカも合流します。
 逃げるカラパスには逃げ集団から引き戻されたシュタインハウザーが付き懸命にデルトロとサイモン・イエーツを引き端にかかりますが、そこは数の利で残り27.8㎞地点で総合上位勢が追いつきます。ただ、この時点では逃げグループには2分近いタイム差があり、この日も逃げ切り濃厚かと見ていたら、モルティローロの下りで一機に追いついてきたピドコックのためにQ36.5の選手が強力な追走をかけ、タイム差は徐々に縮まって行きます。

 これが最後のグランツールとなるロマン・バルデを含む8名も懸命に逃げます。レッドブルKM通過時点で1分40秒で、本来なら逃げ切りのパターンでした。ところが最終3級山岳ル・モット(距離3km/平均8.2%)へ突入する時には28秒差に縮まっていました。そこで、アダムが牽引を始めると一機にタイム差が縮まって行きます。ここで、アダムが牽くということは最後はデルトロで勝負…
 昨日、明らかに遅れ、弱点を見せたデルトロでしたが、長い登りではまだ厳しいものがありますが、こうした短い距離の登りでは強さを見せました。逃げ集団から渾身のアタックで飛び出したバルデを目掛け、残り9㎞地点でデルトロがアタック。カラパスが懸命に食らい付き、サイモンが取り残されます。

 総合2位のためにサイモンを引き離したいカラパスとマリアローザを守りたいデルトロの利害が一致し、二人で逃げるバルデを追います。ここも数の利とモチベーションの高さで5.6㎞地点でバルデをキャッチし、逃げは3名になります。最後は街中のコーナーでカラパスとバルデを引き離したデルトロが初のグランツール勝利をマリアローザを着て飾りました。

 ゴール後のインタビューで「自分には失うものは何もない」と答えていたデルトロですが、UAEという世界一のチームでエースを担って勝つことは容易ではないはずです。今年、ティレノ・アドレアティコを征しているアユソでさえ、今回のジロではその役割を果たせていないのです。

 ただ、前日の山頂ゴールでタイムを失っているデルトロにとって、第19と第20ステージは鬼門になるはずで、カラパスに41秒という差は少ないと見るべきでしょう。最終的にマリアローザを失うことになっても、ヤングライダーが獲得出来れば、次の自信に繋がるはずです。
 デルトロの第17ステージの遅れは単に長い登りがまだ苦手なのか、寒暖差の変化に身体が適応出来なかっただけなのかは不明です。あのポガチャルでさえ数年前までは高高度の登坂が苦手と言われていたのです。ここで課題が明らかになれば、次のステップに向けて対策が取れるはずです。スキルと能力は間違いなくポガチャルに次ぐレベルでしょう。若干21歳でマリアローザを10日間も着続けているのがその証左でしょう。表彰式にレース後のインタビューが10日も続く中で、この結果ですから凄い選手なのは間違いありません。
 




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マリアローザ候補が相次いで脱落

2025-05-28 14:05:19 | ジロ・デ・イタリア
 今年のジロ・デ・イタリアは3週目に入りましたが、獲得標高が5000mに迫る厳しいステージでマリアローザ候補が次々と脱落して行きました。この日も落車したログリッジが早々にリタイヤしたと思ったら、最後から2つ目の1級山岳でアユソまで遅れてしまったのです。
 落車もあったようですが、UAEチーム・エミュレーツにとっては大きな誤算でしょう。エースをマリアローザのデルトロに切り替えたものの、デルトロのアシストもアダムとマイカの2枚だけとなり、最後の1級の登りではカラパスのアタックに付いて行けず、サイモン・イエーツにも差を付けられてしまう結果になってしまいました。

 このステージが始まる前はTOP3に2人の選手がいてUAEが圧倒的に有利と見ていたのですが、アユソが脱落し、アシストも十分に機能しないとなれば、デルトロのマリアローザの維持は難しいと見ています。この日は2つ目の1級山岳サンタ・バルバラ(距離12.7km/平均8.3%)でEFエデュケーション・イージーポストが組織的にペースを上げ、UAEのアシストの脚を削りに出たのが印象的でした。

 ポガチャルが居る時はこんなことにはならないUAEですが、このペースアップでカラパスは全てのアシストを失いますが、UAEはマイカとアダムの2枚のアシストを残しながら、最後の1級では全く働けませんでした。肉を切らせて骨を断つというEFの戦術が見事に嵌ったようです。また、ワウト・ファンアールトを逃げに乗せていたヴィスマは前待ち作戦も嵌り、UAEは一機に窮地に立たされることになってしまったようです。

 今回のジロではUAEのアシストが目立った働きを見せられていません。ここまでも総合上位勢のアタックにはデルトロがマークに入っていて、マリアローザにアシストの仕事をさせてざるを得ないチーム状況だったのかもしれません。アユソの脱落でチーム一丸となってデルトロを守る必要があるのですが、そこまでのチーム力がUAEに果たしてあるのかどうかは疑問な状況のようでう。

 厳しい山岳ステージがまだ2つ残っていますので、サイモンとの26秒差やカラパスとの31秒差は1ステージであっという間に逆転してしまうでしょう。UAEとしてはマリアローザより、デルトロのヤングライダーを守りに来るかもしれません。ここまで堅実な走りを見せているサイモン・イエーツとグランツールの最終週に強さを見せるリチャル・カラパスの二人がマリアローザ候補にグッと近づいたステージになりました。

 昨年はポガチャルのWツール制覇であまり目立ってはいませんが、ブエルタではエースのアルメイダが早々に脱落し、最後はステージ勝利と山岳賞獲得に切り替えたというケースがあったのです。今季は好調そうに見えたアユソの脱落は大きな誤算でした。アユソの存在のおかげで自由にのびのびと走れていたデルトロも単独エースはまだ流石に荷が重い。同じ21歳でもポガチャルのマイヨジョーヌ獲得はエースとしてのものでした。

 UAEほどのチームになるとエースの重責はひときわで、特にグランツールとなれば想像を絶するものがあるのでしょう。もし、UAEがマリアローザを獲得出来なければ、世界ランク1位の座を守るためにポガチャルがブエルタも走ることになるかもしれません。

 というのもポガチャルが出場していた4月まではポイントランクで圧倒していたUAEですが、5月に入るとジロでステージ6勝を挙げているリドル・トレックに4000P差にまで詰められて来ているのです。春先は昨年の81勝を上回りそうな勢いでしたが、今年のジロではデルトロがマリアローザを着ているものの、勝利はアユソの1勝だけなのです。

 デルトロのマリアローザ・キープは厳しそうなので、状況によってはステージ勝利に切り替えてくるかもしれません。このままでは他チームの後手ばかり踏まされることになってしまいそうな気配なのです。そこは世界一のチームとしての意地を見せて欲しいと願っています。その一方で、EFのカラパスにマリアローザの可能性が出て来たことにワクワクしている自分もいるのです。何せ、cannondaleのバイクがグランツールの総合優勝は本当に久しぶりのことなのですから。
 




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