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CYCLINGFAN!!

自転車をこよなく愛し、自分の脚と熱いハートで幾つになっても、可能な限り、どこまでも走り続けます~♪

エースの存在感(1)

2025-05-11 09:07:04 | スポーツ
 「エース」は、もともとトランプのカードであるA(1)に由来する言葉で、現在では「最高の」「最も優秀な」という意味で広く使われています。野球ではチームの中心となる投手、ゴルフではホールインワンを意味し、また様々な分野で優れた人物や物を指す言葉としても用いられます。

 サイクルロードレースでは末尾が「1」のゼッケンを付けることが多く、チーム内で最有力の選手がエースと呼ばれることになります。ただ、この「1」のつくゼッケンは時に選手の重荷になることもあるのです。

 マンガの「ダイヤのエース」では高校野球における背番号「1」の重さが絶妙に表現されていました。「弱虫ペダル」でも2年生になった小野田坂道君がインターハイで初めて背番号「1」を付けたシーンも印象的でした。

 2020年のツール・ド・フランスでUAEチーム・エミュレーツの末尾「1」を背負っていたのが若干21歳のタディ・ポガチャルでした。ステージ2勝を挙げ、最後の個人TTでユンボ・ヴィスマの絶対的エースだったプリモシュ・ログリッジを破り、初出場でマイヨジョーヌを獲得るという大偉業を達成しているのです。

 ログリッジにとっては最もマイヨジョーヌに近づいた年で、それ以降はリタイヤが続き、ブエルタ4勝、ジロ1勝という実績を持ちながら、唯一手の届かないものになりつつあるのです。この絶対的エースのリタイヤを見事に活かして見せたのが、2022年のヨナス・ヴィンゲゴーでした。その時のヴィンゲゴーのゼッケンは「18」だったのですから。その年のゼッケン「1」はツールを連覇中のポガチャルだったのですが、怪物ポガチャルを負かしたヴィンゲゴーには驚かされました。強いチームには隠れた才能を秘めた選手がいるものだなあと感心した記憶があります。

 サイクルロードレースではチームのエースに様々な種類の選手がいます。チームの支柱としてチームを纏める存在もいれば、積極的にチームを牽引する存在、さらにはチームに守られる存在等です。サイクルロードレースではアシストはエースを勝たせために様々な役割が与えられるという特殊性があります。簡単に言えばエースの犠牲になるということです。

 野球ではエースはチームを勝たせるための重要な支柱ですが、打者が得点を取らなければチームは勝てないスポーツですが、サイクルロードレースの勝者は一人なので、他のアシストはエースを勝たせるためだけに力を使い切るのが仕事な訳です。リスクのある場面では、エースを安全に走らせるために位置取りをし、エースが力を温存するために前に出て風を受ける等々です。
 



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アイルトン・セナの死を悼む

2025-05-02 12:32:53 | スポーツ
 あの悲しい出来事から今年で31年もの歳月が流れ、私は古希を迎える年齢になりました。ただ、セナの肖像は30代のまま。齢を重ねると色々と大変なことも増えますが、齢を重ねられないことに比べれば幸せなことだとつくづく思います。

 セナの命を奪ったあの事故は1994年5月1日でしたが、TV観戦では1日の深夜で、彼の死が報じられたのはレース中だったので、私の中の命日は1日ではなく2日になっているようです。セナのクラッシュは、フジテレビでF1グランプリ中継の前番組である「スポーツWAVE」で報じられ、続いてF1グランプリ中継がイモラサーキットからの生中継で開始されていました。

 つまり、あの事故をTV画面を通して生で見てしまったのですから、ショックは本当に大きなものでした。1994年5月2日は月曜日でしたがゴールデンウィークで休みでした。ショックで眠れぬ夜を過ごしたまま、ふらふらと街へ出ていました。昼間からススキノであおるように酒を飲んだ記憶が苦々しい想いとともに残っています。

 スポーツとは縁遠かった私がF1にのめり込んで行ったのは、HONDAのF1参戦とセナの走りに魅せられたからでした。当時のF1はフジテレビで生中継されていて、テーマ曲がT-SQUAREのTRUTHで、これは今でもローラートレーニング中に良く聴いています。流石にセナのロータスデビュー時のレースは見ていませんでしたが、1987年にセナの要望を受けたピーター・ウォーがホンダエンジンの獲得に成功し、チームメイトにホンダと縁の深いF1ルーキーの中嶋悟が加入した頃からTV中継を観るようになったのです。

 自動車レースの最高峰F1に日本のエンジンと日本人ドライバーが参戦するというのですから、エポックメイキングな時代の幕開けを感じていたのです。当時のライバルはアクティブサスペンションで有名なウィリアムズ・ホンダで、HONDAのエンジンがTOP4を独占することも珍しくなかった時代でした。ただ、ウイリアムズは最強でセナといえどもなかなか勝てない時代だったのです。

 翌1988年シーズンからHONDAがマクラーレンと提携しエンジン供給パートナーとなる事と、セナがマクラーレンに移籍しアラン・プロストとコンビを組む事が発表されます。コンストラクターズチャンピオンを獲得していたウイリアムズからマクラーレンにエンジン供給先を変えたHONDA。そのHONDAの技術に魅せられていたセナの移籍で幕を開けたシーズンは、セナが悲願としたドライバーズチャンピオンを当時すでに2度のワールド・チャンピオンを獲得していたアラン・プロストと同じチーム内で争うことになったのです。

 マルボロカラーにペイントされ、「ホンダ・RA168E」を搭載したマクラーレンのMP4/4は最強で、この年の16戦中チームは15勝を上げ、10度の1-2フィニッシュをというとてつもない記録を残しています。その結果コンストラクターズのタイトルは早々と決まったものの、ドライバーのタイトルはもつれにもつれ、決着を見たのは日本GPでした。この年のセナは16戦中8勝し13PPという成績で、いずれも当時のF1史上最多記録を更新するものでした。

 この時のセナの姿を観て魅了されない人はいなかったでしょう。特にドライバーズタイトルを決めた日本GPではスタートの失敗により14番手に順位を落としたあと挽回しての優勝でしたから、凄いものを観たという印象でした。特にコーナーでアクセルを小刻みに煽るドライビング「セナ足」は今でも耳の奥に残っているのです。

 音速の貴公子アイルトン・セナはプロストとの確執や当時FIAの会長だったバレストルとの確執等など様々な問題とも戦いながらも魅せる走りを続けるも、1994年5月1日に帰らぬ人になってしまいました。享年34歳。ドライバーズタイトルこそ3度でしたが、彼の走りは魅力的で、特に計65度のPP獲得数は、2006年にミハエル・シューマッハに更新されるまで歴代1位の記録なのです。

 F1がエンジンのパワーだけで勝てる時代は終わり、シャーシやサスペンション、電気系統といった総合的な技術が求められる時代に入り、来年からは新たなPU(パワーユニット)のレギュレーションが施行され、HONDAが2021年以来5年振りにF1に復帰します。セナの死後F1とは距離を置いて来ました。レース結果等はWEB等で確認していますが、レースの観戦はしていません。否、出来ないといった方が正確でしょう。あの事故が蘇って来るような気がするからです。先日、香港でリバティアイランドが安楽死処分を受けました。サラブレッドの死でさえ衝撃があるのですから、人の死なら尚更でしょう。
 



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攀じ登る(4)

2024-08-29 14:58:34 | スポーツ
 森選手が乳酸にかなり拘っているようだったので、少し調べてみました。「乳酸は疲労物質ではない」というのが現在の定説になっているからです。且つてはサイクルロードレース中継では毎日のように耳にしていた言葉のひとつが「乳酸」でした。もう10年以上も前のことです。それが、最近全く耳にすることが無くなっているのです。サイクルロードレース界で「乳酸」は最早疲労物質では無くなっているのです。

 これは、科学的にも実証されていて、マラソンなどの持久系の競技ではレース後の乳酸値は高くないことが明らかになっているのです。筋グリコーゲン(糖)の分解時には乳酸も同時につくられます。乳酸は酸素の供給される活動や運動(日常生活動作やジョギングなど)よりも無酸素性の激しい運動(短距離走など)でより多くつくられますが、身体には乳酸を一旦中和させてから、ミトコンドリアで酸化してエネルギー源として再利用する働きがあるのです。

 乳酸はエネルギー源として再利用されるのですが、クライマーにとって「パンプ」と呼ばれる状況があるようで、この「パンプ」の原因が「乳酸」だというのです。疲労して乳酸が発生すると、血管の外で体液が生成されて筋膜内の圧力が増加し、前腕がパンパンに張ってくる状況をクライミング界では「パンプ」と呼んでいるようです。

 「パンプ」は「パンプアップ」のことで。もともとトレーニング用語のひとつだそうです。筋肉がパンパンに張って来ることを思い浮かべると良いのかもしれません。ある意味、体内に乳酸が極限まで溜まった状態といえるのかもしれません。やがて、ミトコンドリアで酸化してエネルギー源として再利用される前の状態なのでしょう。例えば50mダッシュを2回・3回と繰り返したり、自転車で激坂を登っていると脚がパンパンになり動かくなる状況を思い浮かべて下さい。

 クライミングは自転車と同じ持久系スポーツだと思っていたのですが、大きな思い違いをしていたようです。クライミングは瞬発系の高負荷の要素があるスポーツでした。自転車競技ならヒルクライムレースに近いのかもしれません。常に重力に抗い続けるのは大変です。ヒルクライムでも「脚が売り切れる」という言葉がありますが、限界を超えると脚が動かなくなることを指します。クライミングでは腕がそうなのでしょう。
 とはいえ、辛いからといって大好きなスポーツを辞めてしまう人はいないはずです。そこで、自分の乳酸発生閾値(LT値)を知ることをお勧めします。この乳酸が発生する運動量を知っておくことで、長くそのスポーツを楽しむことができるようになるはずです。
 自転車の場合は心拍数で管理するのが一番手軽です。正確にはパワーメーターを使って脚への負荷を確認する必要もあるのですが、そもそもパワーが限れているホビーライダーには高値の花です。どのギアでどのくらいのケイデンスなら心拍数はこの位という目安を知っていれば、脚が売り切れることはないのですから。
 クライミングにもLT値を上げない技術的要素があるようですが、それは森選手が言っていたように、体幹や足の踵を上手く使い、腕に係る負荷を軽減させることのようです。ボルダリングを苦手とする森選手はアスリートとしてのLT値があまり高くないのかもしれません。それが「乳酸との戦い」という言葉に現れていたのかもしれません。スポーツクライミングではボルダリングが瞬発系、リードは持久系のように見えますが、実はリードも立派な瞬発系の競技なのです。森選手の持つ攀じる力とスタミナはリードでより活かされるということなのでしょう。
 



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攀じ登る(4)

2024-08-28 15:12:19 | スポーツ
 バラエティ番組はあまり観ないのですが、昨夜はスポーツクライミングの森選手が出演すると知り、「踊る!さんま御殿」を観ました。注目はパリオリンピックでのボルダー第1課題の高さに対する森選手の感想でしたが、「高いなと思ったんですけど…スタート。でも自分の脚力とかあれば(行けると思った)自分の実力不足です」と真剣な表情で振り返っていました。明石家さんまも流石で「かわいそう」ではなく「それが世界のルールやもんな!」と返し、森選手も「はい!」と元気よく返事をしていました。

 私が最も興味深かったのが、彼女の登り方に関する発言でした。明石家さんまから握力について尋ねられた森選手は「45(kg)ぐらいですかね…」と答えた後に、周囲の驚きをよそに「クライマーの中では低い方だと…」と本人は首をかしげていたのです。確かに成人男性の平均と比べれば高い数値なのですが、アスリートとしては本人が言うように決して高い方ではありません。
 この握力でどうしてあんなに登れるのかという疑問には「私は引っかけて上るタイプで。第1関節から上を使って引っかけるような登り方。腕に乳酸を溜めないようにしている。腕だけで登るんじゃなくて体幹とか足のかかとか使っている」と答えていたことでした。「攀じる」とは「物に登るのに取りすがるように動く」ことと先に書きましたが、森選手は指先と体幹と足のかかとを使って壁面やホールドに取りすがる登り方、まさに「攀じる」という言葉を体現しているように感じました。

 その結果、腕に疲労物質の乳酸を貯めずに登ることが、森選手のスタミナの秘訣だったのです。瀬戸選手も言っていましたが、乳酸は最終的には筋肉内でエネルギーに替わるのですが、クライミングでは爆発的なパワーではなく持久力が必要で、乳酸がエネルギーに替わる域には入らないようです。
 これはロードバイクでも同じで、坂で高い出力を必要とするようなシーンでは、乳酸がエネルギーに替わることも起きるのですが、低出力の長時間走行だと乳酸が徐々に蓄積されて疲れが蓄積されて行くのです。
 今は乳酸は単なる疲労物質ではないという説が有力なのですが、リード種目で世界一の森選手が「競技中は乳酸との戦い」と力説していたので、スポーツクライミングでは乳酸は未だ疲労物質なのかもしれません。

 たかがバラエティ番組と侮るなかれで、水泳のメダリスト瀬戸と世界一のスポーツクライマーの森のアスリートとしての意見は大変参考になりました。運動後のクールダウンの必要性やこの乳酸問題など、大いに参考になる発言が多く、楽しく観させていただきました。
 
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攀じ登る(3)

2024-08-27 15:01:13 | スポーツ
 とはいえ、これはあくまでもスポーツクライミングを知っている人間の感想です。確かに今回のオリンピックで初めてスポーツクライミングという競技を目にした人にとっては小柄な森選手がかわいそうという感情が生まれたことも確かです。

 単にジャンプしても手が届かなかったことは事実なので、不公平と見た人が感じても仕方が無いのかもしれません。ただ、バスケットボールのリングの高さやバレーボールのネットの高さを不公平という人はいないでしょう。それはバスケットやバレーは世界に認知されたスポーツだからです。
 スポーツクライミングは歴史も新しい競技で、オリンピック種目となったのも前回の東京大会からなので、パリで初めて目にした人も多かったのではないでしょうか?国際スポーツクライミング連盟(IFSC)はここまで意識してはいなかったと思っています。元々、単にジャンプしてホールドを掴むという前提でセッティングされていないのですから。

 ただ、こうした意見がSNS上で噴出したことを受けてIFSCは今後の普及活動をどうしていくのでしょう。やはり誰にでも分かる説明が必要だったと思っています。登山と異なり、街中でも気軽に楽しめるスポーツクライミングの人気は年々高まり、競技人口は60万人を越えているのです。世界ランクを見ても女子リードでは森選手が1位ですし、男子はボルダリングとリードで安楽選手が1位なので、もう少しスポーツクライミングのルールを知ってもらう努力は不可欠だと思っています。
 サイクルロードレースもそうなのですが、なかなかTVで観る機会の無いスポーツはマニアックな感じになってしまいます。地上波での放送こそありおませんが、今はJスポーツでオンデマンド配信もあります。スポーツクライミングも同様です。有料にはなってしまいますが、観たい人は競技を観ることはできる時代に生きているのです。
 競技ではありませんが、今夜放送の「さんま御殿」に森選手が出演するそうです。こうしてメダルを逃した選手でも地上波TVに出演することで、スポーツクライミングという競技に注目が集まることは嬉しいことだと思っています。どうやら第1課題の印象に関する質問があるようで、森選手がどんな表情で何と答えるのか、今から楽しみです。

 ボルダリングが苦手で複合ではメダルに手が届かなかった森選手ですが、攀じ登る力が発揮できるリードでは圧倒的な世界1位と本当に凄いアスリートなので、これからも彼女の登坂力からは目が離せません。来月にはワールドカップのスロベニアとチェコ大会があります。
 
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