著者は金沢大学皮膚科の教授で、「アトピービジネス」という流行語の作者でもあります。
1990年代まではアトピー性皮膚炎の治療は混乱していました。「脱ステロイド軟膏」「温泉療法」など怪しい民間療法が幅をきかせ、そこにはまって悪化した患者が大学病院皮膚科に泣きつく構図。
そこに登場したのが若手のホープ竹原教授、民間療法を一つ一つ検証して間違いを論破し、患者相手に金儲けする悪徳業者を「アトピービジネス」と位置づけ、「アトピー治療の王道はステロイド軟膏である」と立て直した功労者です。
その頃何度となく講演を聞く機会がありましたが、若さと熱意に「闘士」という印象を受けました。
あれから15年以上が経ちました・・・今や大御所の竹原先生が書いた肩の力の抜けた題名のアトピー本。アレルギー学会会場で手に取り面白そうなので購入しました。
内容は、ちょっとくだけ過ぎかなあ。よく云えば「口訣」ですが、テキストからはみ出る診察室での内緒話という感じ。自ら作成に参加している「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン(2009年版)」(日本皮膚科学会)の内容に疑問符を投げかけるし、患者を非難するし、他科医師を非難するし・・・ここまで書いていいのかな、と心配になるほど。
例1)「口なめ皮膚炎はほとんどアトピー性皮膚炎にみられる」という文章がありますが、小児科医の私からすると「?」です。
患者さんは口なめ皮膚炎だけでは病院に来ません。風邪のついでに「実は唇を舐めるクセがあっていつも荒れて困っている」と相談するレベルです。別にアトピー性皮膚炎に限ったことではなく、ふつうに見られる皮膚炎です。
ましてや大学病院に口の周りが荒れているだけで受診するはずはないでしょう。
例2)「そもそも『子どもが薬を塗らせてくれない』などという親はやる気がないのである。つまり『子どもが塗らせてくれない』という口実に基づいて楽をしてサボっているのである。こういう親はアトピー性皮膚炎のコントロールよりも、子どもに対する人間としての躾ができるのだろうかと本気で心配してしまう。」という文章は、私には医師の言葉とは思えません。
子どもが親の思い通りに行動してくれないことは日常茶飯事。薬を飲んでくれなくてあの手この手でいろいろ工夫するのが小児科医の日常ですので、「塗らせてくれない」くらいで子どもの・親の人格を疑うのはちょっと・・・。
皮膚科に見捨てられた上記のような患者さんはどうするか?
小児科に来ます。
小児科開業医は「患者の不安を受け止めて減らして帰す仕事」と私は考えています。治療の王道を横目で見つつ、塗り薬がダメなら飲み薬で何とかならないか・・・しかし抗アレルギー薬はかゆみ止めくらいの効果しか期待できない・・・そしてたどり着いたのが漢方薬です。
漢方と友達になってスキンケアに手抜きができるようになった子ども達の経験談をどうぞ。
というわけで、「自分が見たものだけがすべて正しい」という大学教授のナルシスト的要素が垣間見えるのが玉に瑕でしょうか。
少々辛口批評となりましたが、役に立つ内容も以下の如く盛りだくさん。
・使用期限切れの外用薬は塗っても大丈夫か?
・同じ名前の軟膏とクリーム、どちらが強い?
・プロトピック軟膏と発がん問題その後
・抗ヒスタミン薬と妊娠・授乳
・セラミド入り保湿剤(高価!)は必要?
・ステロイド外用薬と色素沈着
・ダーティネック(首の色素沈着)は治る?
・目の周りの湿疹・びらんの治療は?
・アトピー患者は甘いものを食べてはいけない?
・塗る順番はステロイド外用剤が先か保湿剤が先か?
・学童の感じの日焼け止めは?
・温泉はアトピーによい?
これを読んでいる皆さんも知りたいことばかりでしょう。
それから、「ほほう」とうなづいた箇所。
それはステロイド軟膏の減量方法です。
ステロイド軟膏を十分に塗ると湿疹は改善しますが、実は減らし方が難しい。
いろんな人がいろんな方法を提唱しています。
① 弱いステロイドに変えていき、保湿剤までゆっくり落としていく方法
② 毎日→隔日→・・・と間隔を開けていく方法
③ いきなりやめる方法
私は③の方法で指導していますが、意外にも竹原先生もこの方法でした。湿疹をしっかり治し痒みから解放することができれば③が可能ですが、中途半端にやめてしまうと①②の方法が必要になります。
全体的には ”皮膚科医の本音” を興味深く読ませていただきました。
1990年代まではアトピー性皮膚炎の治療は混乱していました。「脱ステロイド軟膏」「温泉療法」など怪しい民間療法が幅をきかせ、そこにはまって悪化した患者が大学病院皮膚科に泣きつく構図。
そこに登場したのが若手のホープ竹原教授、民間療法を一つ一つ検証して間違いを論破し、患者相手に金儲けする悪徳業者を「アトピービジネス」と位置づけ、「アトピー治療の王道はステロイド軟膏である」と立て直した功労者です。
その頃何度となく講演を聞く機会がありましたが、若さと熱意に「闘士」という印象を受けました。
あれから15年以上が経ちました・・・今や大御所の竹原先生が書いた肩の力の抜けた題名のアトピー本。アレルギー学会会場で手に取り面白そうなので購入しました。
内容は、ちょっとくだけ過ぎかなあ。よく云えば「口訣」ですが、テキストからはみ出る診察室での内緒話という感じ。自ら作成に参加している「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン(2009年版)」(日本皮膚科学会)の内容に疑問符を投げかけるし、患者を非難するし、他科医師を非難するし・・・ここまで書いていいのかな、と心配になるほど。
例1)「口なめ皮膚炎はほとんどアトピー性皮膚炎にみられる」という文章がありますが、小児科医の私からすると「?」です。
患者さんは口なめ皮膚炎だけでは病院に来ません。風邪のついでに「実は唇を舐めるクセがあっていつも荒れて困っている」と相談するレベルです。別にアトピー性皮膚炎に限ったことではなく、ふつうに見られる皮膚炎です。
ましてや大学病院に口の周りが荒れているだけで受診するはずはないでしょう。
例2)「そもそも『子どもが薬を塗らせてくれない』などという親はやる気がないのである。つまり『子どもが塗らせてくれない』という口実に基づいて楽をしてサボっているのである。こういう親はアトピー性皮膚炎のコントロールよりも、子どもに対する人間としての躾ができるのだろうかと本気で心配してしまう。」という文章は、私には医師の言葉とは思えません。
子どもが親の思い通りに行動してくれないことは日常茶飯事。薬を飲んでくれなくてあの手この手でいろいろ工夫するのが小児科医の日常ですので、「塗らせてくれない」くらいで子どもの・親の人格を疑うのはちょっと・・・。
皮膚科に見捨てられた上記のような患者さんはどうするか?
小児科に来ます。
小児科開業医は「患者の不安を受け止めて減らして帰す仕事」と私は考えています。治療の王道を横目で見つつ、塗り薬がダメなら飲み薬で何とかならないか・・・しかし抗アレルギー薬はかゆみ止めくらいの効果しか期待できない・・・そしてたどり着いたのが漢方薬です。
漢方と友達になってスキンケアに手抜きができるようになった子ども達の経験談をどうぞ。
というわけで、「自分が見たものだけがすべて正しい」という大学教授のナルシスト的要素が垣間見えるのが玉に瑕でしょうか。
少々辛口批評となりましたが、役に立つ内容も以下の如く盛りだくさん。
・使用期限切れの外用薬は塗っても大丈夫か?
・同じ名前の軟膏とクリーム、どちらが強い?
・プロトピック軟膏と発がん問題その後
・抗ヒスタミン薬と妊娠・授乳
・セラミド入り保湿剤(高価!)は必要?
・ステロイド外用薬と色素沈着
・ダーティネック(首の色素沈着)は治る?
・目の周りの湿疹・びらんの治療は?
・アトピー患者は甘いものを食べてはいけない?
・塗る順番はステロイド外用剤が先か保湿剤が先か?
・学童の感じの日焼け止めは?
・温泉はアトピーによい?
これを読んでいる皆さんも知りたいことばかりでしょう。
それから、「ほほう」とうなづいた箇所。
それはステロイド軟膏の減量方法です。
ステロイド軟膏を十分に塗ると湿疹は改善しますが、実は減らし方が難しい。
いろんな人がいろんな方法を提唱しています。
① 弱いステロイドに変えていき、保湿剤までゆっくり落としていく方法
② 毎日→隔日→・・・と間隔を開けていく方法
③ いきなりやめる方法
私は③の方法で指導していますが、意外にも竹原先生もこの方法でした。湿疹をしっかり治し痒みから解放することができれば③が可能ですが、中途半端にやめてしまうと①②の方法が必要になります。
全体的には ”皮膚科医の本音” を興味深く読ませていただきました。
話が違って大変恐縮ですが、私もアトピーを直したい一身で、IGGとIGAの検査をしようかと思っているのですが、何分素人な為IGAまで検査した方が良いのかわかりません。
もし、先生にアドバイス頂ければ幸いです。
おいしい中大変恐縮ですがよろしくお願いいたします。
下記で行おうかと思っています。
http://www.ambrosia-kk.com/product/product_list.php?category=2
IGGはもちろんIGAもやはりアレルギーと関係が有る可能性が科学的に十分有りうるのでしょうか。
それともIGGのみで十分で、IGAはあまり聞かないので、たいして価値は無く業者のビジネスなのでしょうか?
お忙しい中大変恐縮ですが教えて頂ければ幸いです。
アレルギー疾患に関するIgG、IgA検査はともに現時点では評価が定まらず、学会レベルで推奨されていません。
■ 徹底されない推奨治療法~アレルギー、調査で判明 学会が研修強化へ(2015.02.03:共同通信)
http://www.47news.jp/feature/medical/2015/02/post-1236.html
・・・記事の中の表に「IgG抗体検査は食物アレルギーの原因食物診断に使わない」と明記されています。
■ アレルゲン特異的IgA抗体:下条直樹先生(雑誌「アレルギー・免疫」2013年1月号)
https://www.iyaku-j.com/iyakuj/system/M2-1/summary_viewer.php?trgid=25936
(引用)現在までのアレルゲン特異的IgAの意義についての研究をまとめると,
〈1〉 アレルギーの抑制には分泌型IgAの役割が大きい,
〈2〉 血中IgAの絶対量は必ずしもアレルギー発症抑制とは関連せずIgEなどとの比率が重要である,と考えられる。
今後,分泌型アレルゲン特異的IgA産生を促進する手法の開発が,アレルギー疾患の治療および発症予防の鍵となると考えられる。