巣立った雛が親の縄張りに度々戻って来る事はそう珍しくない事を最近実感するようになった。以前の記事「成長5」の子煩悩ボソの雛が戻って来たのである。前回記事を書いて間もなく、この雛の姿が公園から消え、親2羽だけの生活になっていた。
しかし10月下旬、いつものように朝の出席を取っているとこの番の縄張り内にもう一羽ボソがいるではないか!!確かに秋になると縄張り防衛本能も薄れているので、他の個体がいても至って不思議はない。しかしこの3羽の行動を見ているとどうやら”他人”ではなさそうである。
ご覧のように3羽で仲良く地面採食をしている。途中で隣に縄張りを構える犬猿の仲のブトが雛を襲撃して来た。ここで問題になるのはこの時に親がブトを追い払い、その後枝の上に移動して羽繕いをしてあげていたという事である。「これは独り立ちした雛に違いあるまい」と確信してしまったのである。
この画像の左が戻って来た雛で、右隣のいるのが♀である。しかし私はこの雛の様子がおかしい事に気が付いた。この画像では確認し難いのだが以前の記事「飛べるという事6」に登場した「指に瘤のあるブト」と同じだったのである。一体この瘤は何だろうか?
しかし指の瘤があっても支障はないと見えて、ナナカマドを美味しそうに啄ばんでいた。口の中の赤みが判るだろうか?
それからは今までと変わらずに3羽で過ごしていた。私は「もしかしたらこのまま春まで一緒かもしれない」と思っていた。それからは縄張りを出たり入ったりしていた。親と一緒に公園を出て行く事もあった。一先ずは元気そうなので安心だった。
しかしある日の事である。散歩している人に「4~5日前からカラスの死骸がある」と聞いて確認しに行ってみた。人目があったのでブトがボソかという確認もしないまま、死骸を素早く袋に入れて保管しておいた。その後計測をしようと思いじっくり見てみると、足に瘤があるではないか?そう、この死骸はボソだったのである。
指の瘤の出来方といい、死骸があった場所といい、戻って来た雛に間違いはないだろう。その証拠にボソは2羽で行動しており雛の姿はなかった。
一体このボソに何があったのだろう?体重は特に問題なかったし、見た目にも痩せているとか、羽が傷んでいるといった事も見られなかった。この瘤が原因なのかは分からない。しかし毎年独り立ちの頃になると指の瘤のある個体を多く見掛けるようになる。
鳥の雛が翌春まで生き延びられる確立は非常に低いとされている。無論これはカラスにもいえる事である。カラスだって生き延びる事がどんなに厳しい事なのかを実感して欲しいと思う。そして戻って来た雛はある意味幸せだったのだと思う。何故なら、最後の最後まで親の縄張りで親に守られていたからである。
上の画像は巣立って間もない頃の子煩悩ボソの雛である。この雛が旅立ってしまった雛だったのかは分からない。雛は2羽巣立ったので、もう一羽の兄弟は元気に暮らしているに違いないだろう。そう思う事にしている。この番は最後まで本当に「子煩悩」だったのである。