弱い文明

「弱い文明」HPと連動するブログです。 by レイランダー

さらなる衝撃 対政府交渉2回目

2011年05月04日 | 原発 3.11 フクシマ
(上写真)文科省が「年間20mSv以下なので許容範囲」とした小学校の校庭の砂を、福島震災復興会議のメンバーが文科省代表に手渡す。交渉の間中、上に置かれた線量計の数値は最大40μSv/h前後を示していた。


 5月2日、2回目の 「子どもの被曝限度年間20ミリシーベルト」撤回のための対政府交渉に参加してきた。
 本当はもっと早く記事にするつもりだったが、ぐったりして書きまとめる元気をなくしていた。文科省の毒気にあてられたというか、・・・かつ自宅に戻ってから知った別のニュース(これについては後日書く)で、情緒をかき乱されたこともあり・・・。

 4月21日の第一回交渉時には、本当に若いペーペーの職員しか寄越さず、何一つ質問に答えられなかったので、交渉以前という内容で終わらざるを得なかった。今度はさすがにその若い子たちの上司クラスの人が参加し、主な議論の相手となった。それでも違いといえば、若い下っ端が答えられなかった糾問に、詭弁と言葉遊び──巧みでもなんでもない、子供騙しの──で応じる能力の有無、面の皮の厚さの違い、というくらいしかなかったようにも思えた。

 ごく簡単に、交渉の結果わかったことは以下のようなこと。
 まず前半の厚生労働省の代表との話し合いでは、
・放射線管理区域で子どもが遊ぶことは許されない。
・しかし、放射線管理区域と同レベルのところで遊ぶことについては・・・無回答。
 優秀な日本の官僚のお得意のロジックとはこういうものなのである。昔カート・ヴォネガットJr.の小説の中に、「バカだとは言わない。──ただ、バカも同然だ」というギャグがあった。そういうものだ(so it goes・・・これもヴォネガットの言い回し)。
 ともあれ、前半は福島みずほ氏の質問と議論のサポートがいつになく冴えていたので、無駄な時間稼ぎに付き合わされる場面が(比較的)少なかったような気もする。

 後半の文科省および原子力安全委員会においても、基本的な政府側の論点回避のテクニックは同じ。文科省の場合を端的にまとめれば、
 年間20mSvを撤回してほしい→20mSvが安全とは別に言っていない 
 現実に20mSv許容を前提にした措置しか取られていない→20mSvを下回るように「努力」している
 それなら郡山市の独自の除染作業を、なぜ文科大臣が「必要ない」と批判したのか→郡山市は除染が必要なレベルではないから
 除染が必要なレベルはどれだけか→年間20mSvである
 年間20mSvは危険すぎる、撤回してほしい→20mSvが安全と言ってるわけではない
 ・・・∞
 というような。
 少なくとも学校の自主的な除染について、文科省が「必要ない」ということ自体がブレーキになるのだから、「必要ない」は言わないでほしい、と主催者側は懇願した。が、文科省側は「ブレーキはかけないが必要ないという立場」を崩さず、平行線に終わった。記録をじっくり聞いていただければ共感してもらえる人もいると思うのだが、僕自身は、日本の国語教育を根幹から乱し・破壊しようとしているのは文科省ではないのか、という思いを新たにした。

 そして今回の最大のサプライズは、その「20mSv」について、文科省にGOを出したはずの原子力安全委員会が、「20mSvが安全だと言った委員は一人もいない」と言い出したことだ。あらあらあらあら。おやおやおやおや。
 ということは、「年間20mSv」を許容した学者先生は、日本には実は一人もいなかったことになる。オイオイオイオイオイオイ。
 いや、いないというなら実にありがたい話だ。でも、ならばどうして前回交渉の際、それをはっきり言わなかったのか?どうしてすべてのメディアはそれを報じなかったのか?どうして文科省は現実に20mSvを基準にした措置しか講じようとしていないのか?どうして小佐古氏は「自分の子どもをそんな目に会わせたくない」と官房参与を辞任したのか?さらにどうして、「年間100でも大丈夫ですよ」と言ってのける、神谷研二教授(広島大学!)・山下俊一教授(長崎大学!)のような連中が今、福島の県教育アドバイザーを務めているのか?
 またぞろ新たな責任逃れの方策か何か知らないが、少なくとも安全委員会が文科省への助言を決めた会議は、正式な会議ではなく、議事録も残っていないことが今回も詳しく確認された。ならば「20mSv」を基準に考えることに、もはや何の根拠もない。元の「1mSv」に立ち返って、様々な対策を早急に練り直すべきだ。そうだそうだ、文科省の皆さん、一緒に頑張ろうじゃありませんか──という市民の呼びかけに対して、文科省の答えはそれでも「ブツブツブツブツ……20が安全だと言ってるんじゃないもん……ブツブツブツブツ」。正式の回答は5月6日に出されることになった。

 国の途方もない無責任ぶり、あるいは責任自動転嫁システムのゆるぎない作動ぶりにさらなる衝撃を受けつつ、それでも、それゆえに彼らが一枚岩ではないこと、「安全」デマを先導してきた側の守りに亀裂が入り始めた、ことは確認できた。その点は、前進だったようにも感じる。
 けれど、精神的には本当に疲れた。政府側代表者の一人一人が悪人だなんて、決して思わない。厚生労働省のある担当者なんて、最後に主催者に手を握られ、「頼りにしてますよ/頑張りましょうよ」と言われて、涙ぐんでいた。見ていたこっちももらい泣きしそうになったくらいだ。しかしそんな彼らが組織の中で動くとなると、・・・言葉遊びで人を煙に巻くことで「偽装国家」に従事する、非人間的なエリート以上のものでなくなってしまう。それが悲しい。
 交渉後には、残った参加者の間で子供達の自主避難に関する意見がやり取りされるなど、「20ミリシーベルト撤回」後をにらんだ動きも活発になっているようだった。それはどうしても、必要なことだと思わざるを得ない、今すぐにでも。交渉の中身がそれを示していた。


☆動画は以下よりどうぞ。
岩上チャンネル
『「20ミリシーベルト」撤回要求対政府交渉「厚生労働省との交渉」』
 http://www.ustream.tv/recorded/14425019
『「20ミリシーベルト」撤回要求対政府交渉「文科省・原子力安全委員会との交渉」』
 http://www.ustream.tv/recorded/14425805
OurPlanet-TV
(後半だけ)
 http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1032

☆リポート、考察については当ブログのものでは不十分極まりないので、以下の記事も参照してください。
 フクロウの会 同ページpdfファイルに交渉事項のまとめ
 http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/05/post-4f30.html
 原発ダイアリー
 http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20110503/1304357324
 レイバーネット(動画も)
 http://www.labornetjp.org/news/2011/0502

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2 コメント

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Unknown (漂瓶)
2011-05-05 17:15:23
この日記を再びコピペないしリンクさせていただきます。

それと最近の国会での足立区で3ベクレル検出された件についての文字起こしされてるURLを貼らせていただきます。国会ていう時点で「だから?」っていいたくもなりますが一応情報として有用な気がしたので。

http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65728073.html


レイランダーさんの自己紹介の言葉、これ完全に少なくとも戦後日本が捨てていったことではなかろうかと。
つくづく日本は遊びのない国になってしまってるものだ。。。
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>漂瓶さん (レイランダー)
2011-05-06 13:15:07
面白い(って言ったら不謹慎か)情報ありがとうございました。
首都圏でも、自前でガイガーカウンター持ってる人が地面とか測ってますから、それの数値とテレビや新聞で流してる「空間線量」(測定位置はかなり高い)との違いが大きいことは、既に知ってる人は知ってますね。

しかしこの村上って議員、言ってることは正しいと思うけど、言い方がやさぐれてるっていうか、古い自民党の政治家っていうか(笑)。市民団体の人達の方がずっと綺麗で理路整然と追求してますよね。
「西ドイツ」発言には笑ってしまいました。あんたねえ、きょうび西ドイツって…
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