没落屋

吉田太郎です。没落にこだわっています。世界各地の持続可能な社会への転換の情報を提供しています。

線虫2

2007年06月15日 01時14分02秒 | キューバ
前回のべたとおり、線虫の病虫害防除は、化学合成農薬、とりわけ、臭化メチルによる土壌殺菌に頼りきりだった。だが、エベル・ネム(HeberNem)は、これに匹敵する効果を持つ。灌漑用の水に混ぜ、施設内の作物に局所的に散布したり、露地の土壌に直接ふりかけてやればよいのだから簡単だ。しかも、対応する線虫は幅広く、IPMを含めた環境にやさしい農業に活用できる。ハバナの遺伝子工学バイオテクノロジーセンターのホームページを開けば、その効能が載っている。例えば、以下の写真を見ていただきたい。未処理区でネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)の被害のすさまじさがわかる。



だが、エベル・ネムで処理したものは、こんなにきれいなのだ。



胚珠選抜法によるトマト栽培種(Licopersicon esculentum Mill)の試験結果でも、線虫発生率は、97.3%から23%に下がり、トマトの全重量がダゾメット剤(Basamid,Dazomet)処理区では3 687kgであったのに比べ、エベル・ネムの処理区では4 929kgと1.34倍も多かった。

以下のグラフは食用バナナ圃場と、バナナ圃場でのバナナネモグリセンチュウ(Radopholus similis)への防除結果だが、エベル・ネムがいかに威力を発揮しているかが良くわかる。






では、エベル・ネムはなぜ、これほどのパワーを発揮するのだろうか。その秘密は、キューバの研究者たちが選びだした細菌、Corynebacterium paurometabolum C924株(特許出願中PCT/NL95/00271)にある。この細菌は、キチン分解酵素(キチナーゼ)と硫化水素を作り出す。センチュウの卵の外壁は70%がキチン層でできているため、それがボロボロにされ、内部に胞(vacuoles)ができ、それが胚形成に影響する。幼虫の場合も表面の皮膚と同じく、内部にとくに大きなガスの気胞ができてしまう。結果として、センチュウの幼虫や卵を減らしてしまうのだ。同じ原理で、他の病原微生物にも効果がある。

 このように、キューバのバイテク資材は○○農法といった怪しげなものではなく、キチンというキチンとした根拠に基づいている。


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