だが、2009年に驚くべき「事故」が発生した。モンサント社の3種類の遺伝子組換えトウモロコシを栽培していた1,000人の農民のうち、280人が、トウモロコシに「異常」を報告したのだ(1)。いずれのトウモロコシも外から見れば、威勢が良く健康そうには見える。ところが、房の皮を剥いてみると、実がほとんどないか、まったくついていないのだ(2)。
被害は北西州、フリースティト(Free)州、ムプマランガ(Mpumalanga)州の3州8万2000haに及ぶ。農民たちは何百万ドルもの利益を失い、モンサント社は、直ちに農民たちに補償を行った。
「損害のあった農民にすぐさま補償すると申し出たことは、とても良いジェスチャーです」
トウモロコシの実に種がないことを気づいたフリースティト州の農民、コブス・ヴァン・コラー(Kobus van Coller)氏は言う。
「外からは実があるのかないか見分けられません。実際に皮を剥いでみなければ、問題があることを証明できないのです」
実がないトウモロコシには、健康そのもので、病原菌に侵された気配もまったく示さない。だが、ごくわずかの種子しか付いていないか、たいがいは全く種がないのだ。
結実しなかった3種類のトウモロコシの品種は、除草剤への耐性を持ち、面積あたりの収量を増やすよう遺伝子操作されていた。モンサント社は実験室では、受精が不十分であったのは3種類のトウモロコシの25%未満だったと主張している。
モンサントの地元のスポークス・ウーマン、マグダ・ドゥ・トイト(Magda du Toit)さんは言う。
「本社は、農場の被害の正確な度合いを固めることに従事しております」
彼女は、被害額の範囲を推定はしたがらない。だが、アフリカ・モンサントのコブス・リンデケ(Kobus Lindeque)社長は、技術上で問題が生じたことを否定し、種子が熟する過程で受精が不十分であったとする。しかも、「モンサントの種子の損失は農場の25%未満だ」とし、現在調整中とも述べている。
被害補償は、地元の農民協同組合、Grain-SAが実施しているが、同組合のニコ・ホーキンズ(Nico Hawkins)氏は、遺伝子組換え技術へのサポートがあると述べている。
「私どもは生産を改良するどんな技術サポート行うつもりです」
同氏は、モンサント社の対応に満足しているし、Grain-SAは農民とモンサント間で密接な調整を行っていると言う。そして、農民たちも、モンサント社が課題解決に懸命に努めていた」と言う。
だが、環境活動家でヨハネスブルグにあるアフリカ・バイオ・セキュリティ・センター(Africa-centre for biosecurity)のマリアン・マイエット(Marian Mayet)所長は、この失敗はモンサント社の遺伝子組換え技術によるものだとし、政府に対して緊急調査を行い、すべての遺伝子組換え食品を直ちに禁止するよう要請している。 所長からすれば、モンサント社の問題認識ははなはだしく低い。彼女自身の情報筋によれば、最大で80%も被害を受けた農場もあるのだ。
「モンサント社は、実験室でミスを犯しただけだと言っています。ですが、私たちは、バイオテクノロジーそのものが失敗だったと申し上げたいのです。なにしろ、3種類の別々のトウモロコシ品種すべてが同時に失敗しているのですから。「私たちは、長年遺伝子組換え技術について警鐘してきました。私たちはモンサントに問題があると警告しています」とマイエットさんは言う。センターは、遺伝子組み換え食品や遺伝子組換え技術そのものに強力に反対している(1)。
【引用文献】
(1)Adriana Stuijt, Monsanto GM-corn harvest fails massively in South Africa, digitaljournal.com,Mar 29, 2009.
(2)Barbara L. Minton, South African GMO Crop Failure Highlights Dangers of Food Supply Domination, NaturalNews, April 03, 2009.