没落屋

吉田太郎です。没落にこだわっています。世界各地の持続可能な社会への転換の情報を提供しています。

キューバ防災補完計画

2011年04月29日 10時29分33秒 | キューバ
 拙著「没落先進国~」のキューバの防災については、出版元の築地書館の好意により、PDFファイルで無料公開しているところですが、実際にキューバの人たちはハリケーンが近づいてきた時にどのように避難しているのでしょうか。なぜ、自動車やガソリン、道路といったインフラが乏しい中でも、安全な避難ができるのでしょうか。

 「防災力」=「レジリエンス」とされているとの話もしましたが、キューバはレジリエンスに富んだ社会、ことハリケーン等の災害に関しては、「しなやかな安眠できる社会」と意訳できるかもしれません。

 一方、今の日本は物資もインフラも、キューバとは比べ物にならないほど豊かにあるのに、こと原発・地震等の災害に関しては、「ガチガチで安眠できない社会」なのかもしれません。

 福島では県土の70%が放射能汚染されており、国際的には1ミリシーベルト/年というのが成人の限界で、子どもはその10分の1にしないと癌にかかって危険とされています。現在、「放射線管理区域」に相当する学校が75%以上存在し、「個別被ばく管理区域」に相当する学校が約20%も存在することがわかっています。ところが、政府はいきなり20ミリシーベルトが日本の基準だとし、子どもたちを避難させないというのです。

 キューバであれば、子どもたちを汚染から守るためにきっと避難させるのではないでしょうか。

 また、話が飛びますが、2010年のベネズエラ豪雨では、被災者は10万人以上にのぼりましたが、チャベスすぐに一般ホテルや使用されていない建物を被災民のために一時的に提供するように命令を下し、軍の施設も避難民に提供しました。さらには大統領府も避難所に開放し、家を失った数十世帯を大統領官邸に受け入れたといいます。チャベスの行動は日本のメディアではほとんど報道されませんでした。ですが、チャベスの行動からは、私はこうも言える気がします。

 チャベスであれば、子どもたちを汚染から守るためにきっと避難させるだろう。

 ということで、今日から連休中、9日まで、私の尊敬する防災の専門家とともに、キューバに調査にいってまいります。従来の著作執筆のための取材は、事前に十分に文献調査を行い、取材や調査先も国内で調べられあげるだけ調べたうえでの調査でしたから、かなり効率的なアウトカムが得られました。しかし、今回は、国際基準をうわまわる放射線を浴びていながらも、避難することすらできない福島の子どもたちのために、とにかく「私ができるささやかな行動」をという、ある意味では「義憤」にかられた思い付きです。どこまで成果が還元できのかわかりませんが、これから成田へ出発します。

 さて、話はまた飛びますが、これまでの発表では、一時間あたり1テラベクレル、即ち1兆べクレル。一日では24兆べクレルとされてきました。しかし、4月22日に、鳩山前総理の勉強会で、「一日あたり、100兆べクレル」と、ぽろり原子力安全委員会がもらしてしまいました。大手マスコミはこの情報を無視しましたが、Uストリームで市民ジャーナリスト、岩上安身氏だけが発信しました。この結果、読売新聞も次の日に次のような記事を書くことになります。

 とんでもない記事です。こうした動きを受け、政府と東京電力の事故対策統合本部は23日、東電本社と経済産業省原子力安全・保安院、原子力安全委員会が別々に行っている記者会見を25日から一本化すると正式に発表しました。

 記者は事前登録制となり、フリージャーナリストも参加可能ですが、参加の可否は保安院が審査することとなります。保安院の西山英彦審議官は参加記者に条件を付ける理由について 「メディアにふさわしい方に聞いていただきたいと考えている」と説明しました。

 これでデマ情報は排除されることでありましょう。さすが僕らの保安院です。ところが、この保安院の記者会見に対する外国メディアの反応はこのとおり。これまでは記者1:説明側10だったのが、ついに、記者0で、比率は無限大になったのです。

 せっかく、福島の子どもたちが国際基準の20倍もの放射線を浴びていても大丈夫とか、素晴らしい情報を発信してくれている僕らの保安院に対して、なんというふざけた対応ぶりでしょう。

 我れらが、保安院を中心に一億玉砕火の玉で団結しなければならない我が國に対して、許しがたき暴挙です。こうした輩は、こうののしってやらなければなりません。

 「この非国民どもめが」

 あれ、もともと外国メディアでしたから、非国民でした。
 ということで、おあとがよろしいようで。

 9日まで、このブログは、しばらく、お休みします。


レジリアンスのある社会を作ろう

2011年04月24日 08時21分22秒 | 脱原発

3.11以降に求められる新たな思想

 今日は、少し自分のことを書きます。昨年の10月10日に、綾部里山交流大学で「キューバと伝統農業」と題した話をさせていただいたのですが、この春に出た「文明は農業で動く」の本のコンテンツは、その時に整理中であったネタが活字としてまとまったとも言えます。そこで、私に声をかけてくださった塩見直紀さんに拙著を送ったところ、4月16日付のブログで早速紹介していただきました。塩見さんありがとうございます。

 さて、塩見さんは、「3・11以前の本と以後の本。3・11は今後、出版される本にも大きな影響を与えそうです」と整理されたうえ、「3・11以前の思想がまだまだ勢力をもつ中で、新たな思想を伝えていくには、青写真をいっぱい用意することではないか」と分析されています。

 そこで、今日は、まず、3.11以降に出た大切な本として、中村敦夫さんから送っていただいた「簡素なる国」を紹介したいと思います。

ピーク・オイルからキューバの有機農業に着目した中村前参議院議員

 さて、話が飛ぶようですが、意外なことに、いま、私の本でわりと売れているのは、ちょうど10年前に書いた「200万都市が有機野菜で自給できるわけ」です。

 現実のキューバは、このたび、共産党大会が開かれ、経済の自由化政策が導入される等、かつてとはまったく違うのですが、連帯の精神と希望を胸に、経済危機の中を苦闘するキューバ人たちの姿が、一向に解決しない原発と被災に苦しむ今の私たちの国に重なって読まれているのかもしれません。

 ここであえて「200万都市」という拙著をあげたのは、「200万都市」を書いた直後、2002年 9月27日に最も早く私の話を聞きたいと声をかけてくださったのが、当時現職の参議院議員であった中村敦夫さんだったからです。その後も中村さんは、2002年12月10日に参議院農林水産委員会にてキューバの有機農業を例に取り、農林水産大臣にこんな質問をしています。


「今回、有機農業について質問させていただきますけれども、そのお話の材料として、現在のキューバの農業について御説明したいと思います。今キューバは、環境保全型農業、有機農業の先進国として世界じゅうの注目を浴びている国なんですね。資料をお配りしましたが、概要がお分かりになると思いますので、お正月でもお暇なときに目を通していただければと思います(略)。ソ連が崩壊していく中で、石油の供給が止まってしまうということが起こりました。そこで、流通もあるいは大型機械農業も全然できなくなっていって、90年代というのはキューバは大変な食料危機に見舞われたわけですよ。それで、餓死者は出ないにしても、特に1000万ぐらいの都市の中で220万人ハバナ、首都に住んでいて、ここで食料危機がひどくて、栄養失調で失明者が数万人出たというような大混乱が起きるんですね。しかも、遠くから農産物を運ぶというその石油が止まったわけですからそれもできなくなって、それで政策転換をした。そこから都市農業とかあるいは有機農業とかということで、石油に頼らないそういう農業の振興を始めて、今あらゆる自然農法というものの実験国家として注目を浴びているというのが現状でございます。

 考えてみれば、これは何もキューバだけに限ったことじゃなくて、世界じゅうの農業の問題、農業というのは百年の計で考えるべきだと私は考えますが、今世紀中に採掘可能な石油というのはなくなるんですね。あと、平均的に言えば四十年しかないというような状況の中で、すべてのことが変わっていくと思いますが、もう農業もそういう意味で大きな変化がやってくるのはこれは間違いないということで、そういう意味ではこのキューバの実験というのは我々の将来の姿でもあるというふうに私は感じるんです。ちょうどキューバも、カロリーベースの食料自給率というのは43%ぐらいで日本と似ているところですね。

 ところが、有機農業への転換をすると余り資金も要らない、いろんな何というんですかね、そうした複雑なものが要らず、人手でもって生産量も実はそんなに変わらないんだという証明が今できてきているということが大変参考になるんではないかと思います。

 それで、質問は、我が国もやっぱりこういうことを、将来をにらんで、つまりもう石油という問題をにらんで、いつまでも外から買っていればいいというわけにいきませんし、石油を使う農業といっても石油はだんだん私は高くなっていくと思うんですね。少なくなっていくに従って高くなってきて経済的にも成り立たないということもあるし、これからの循環型社会を世界が目指す中で、それに代わる農業ということももう準備しなきゃいけない、そういう今我々は段階にいると思います。

 そこで、食の安全とか安心の確保ということもありますけれども、そういう経済効率の問題とかそれから石油の問題を考えるときに、有機性資源の有効活用に向けたそうした循環型農業の推進というのを一方で計画していかなきゃいけないというふうに思いますが、その有機農業の振興にもっと私は日本は力を入れるべきだという点で大臣の考え方をお伺いしたいと思います」

 中村さんが、わざわざ食の安全ではなく、資源利用だと聞いているのに、農林大臣は、安全・安心の面から環境保全型農業が大切だと答えてしまいます。そこで、この不十分な答弁に対して、中村敦夫さんはさらに、こう食い下がっています。

「有機農業の重要さというのは、消費者の安全だけじゃなくて生産の問題ですね、それにかかわるんだということが私の主張なんですよ(略)。有機農業は決して生産率が低いわけじゃないんです、そのことをもう少し重視して、今のままで急に変えられないということもあるかもしれないけれども、一方では危機に用意するということを進めていくのが私は農政の本筋じゃないかと思いますので、是非とも積極的に取り組んでいただきたいとお願いして、質問を終わります」

 さて、その4年後の2006年 2月22日に、有機農業推進法の動きの中で、同議員連盟第13回勉強会でキューバの話をさせてもらいますが、それは、ピークオイルの中での食料確保のための有機農業ではありませんでした。この一点だけから見ても、中村さんの炯眼がどれだけ鋭いものであったかがわかります。

 とはいえ、日本国民はこのような人物を国会議員として選ぶことを拒否しました。2004年の選挙で中村さんは90万評を得るも落選し、環境政党が日本に誕生する機会を逸したのです。

文明の危機を超えるには形而上学が必要

 さて、中村さんは、前述した著作の中で、グローバル問題から、環境の危機、日本の政治権力、食料、自然エネルギーと多岐にわたって鋭い分析と提言をされていますが、私からすると、中村さんが最も力を入れて書かれたのが、こうした文明の危機をもたらした思想、そして、それに変わる「形而上学」であるように思えました。中村さんはシュマッハーや仏教思想、そして、南方熊楠や種田山頭火に着目することで、そのヒントを求めようとされています。では、この文明の転換期の基盤となる思想は果たしてあるのでしょうか。私は、それは「レジリアンス」ではないか、と今考えています。

レジリアンスに着目する枝廣さん

 2011年 4月10号のアエラ「東日本大震災100人の証言」は早速買いましたが、その中で、ただ一人、レジリアンスについて言及されている人物がいます。枝廣淳子さんです。その内容は、枝廣さんのイーズのHPでお読みになることができます。

 レジリアンスとは、日本語にはなじみがないため、直感的にはわかりにくいのですが、2008年7月29日に行われた竹村真一さんとの対談「第8回地球大学アドバンス・洞爺湖サミットからポスト京都へ」で枝廣淳子さんは、キーワードとしての「レジリエンス」を「しなやかな強さ」と表現されています。

「レジリアンス度の高いビヘイビア(弾力性のある立ち振る舞い)」という学術的な表現も「しなやかな身のこなし」と表現を置き換えれば、すぅっと私たちの脳に浸透していきます。

 ちなみに、私は枝廣さんとも竹村真一さんともご縁があってお会いしたことがあるのですが、「レジリアンス」という言葉を知ったのは、恥ずかしながら、「文明は農業で動く」を書くための勉強をし始めた2010年のことでした。網羅的でまとめ的な論文であるため、引用文献としては使いませんでしたが、具体的に言えば、「Coping with Climate Change: How are Indigenous Peoples and Rural Communities Using Agrobiodiversity」という論文を読んでいて、その中で次のような文章に遭遇した時でした。

「社会生態システムは、複雑適応系として機能し、そこでは、人間は、様々なマネジメント戦略を通じて、脆弱性を減らし、レジリアンスを高めるためのシステムに欠かせない要素となっている(Walker et al., 2004)。こうしたシステムの脆弱性は、摂動や外部ストレスにどれほどさらされ、どれほど鋭敏に反応し、どれほど適合力があるかと関連している(Adger, 2006)。こうしたシステムにおいて、レジリアンスとは、その機能、構造、アイデンティティ、フィードバックを失わずに変化しながらも、撹乱を吸収し、再組織化する能力として記述できる(Walker et al., 2004)。システムのレジリアンスに影響する人間の能力は、適応能、あるいは適応性と呼ばれる」

 あれ、このレジリアンスってなんだろう。ものすごく重要な概念じゃあないだろうか。そう直感して、「レジリアンス」と「Walker」で検索を書けてみると、、「ホリング」とか「レジリアンス・アライアンス」とか「パナーキー」とか、このブログで紹介してきた概念がイモ蔓式にぞろぞろと出てきて、遅まきながらやっとその概念の存在に気づいたというわけです。この少なくとも2年の時間の遅れは、私のようにアカデミックと縁がなく、独学をしている人間の限界とも言えましょう。

レジリアンスは防災力

 ちなみに、英語なのでカタカナでの発音表現が若干違うのですが「レジリエンス協議会」という団体もあるそうで、そこには、こんな衝撃的な文章も書かれています。

「防災の世界では、日本語で『防災力』にあたる言葉がありませんでした。これを“Vulnerability Reduction”と捉えてきました。そのため道具が”Mitigation”であり、“Preparedness”でした。2005年に神戸で開催された世界防災会議では、世界から災害を減らすために兵庫行動枠組みが採択されました。それ以来”Resilience”という言葉が「防災力」という意味で市民権を得て、あちこちで積極的に使われるようになりました」

 ひぇー、「レジリアンス=防災力」だったのか。ということで、今回の震災と原発事故ともレジリアンスは関係しそうです。

 ネットを見ると、5月14日に、トランジション・タウン・ネットワーク、NPO法人トランジション・ジャパンの主催、NPO法人懐かしい未来の協力で、レジリアンスについて、枝廣淳子さんが講演をされるようです。

 私も是非、聞きにいきたいと思っていますが、まだ、三週間ほど先なので、それまでに、私なりに知ったレジリアンスのことを次回で少し解説をしてみたいと思っています。
 


キューバ型避難方式と古代に学ぶ

2011年04月21日 07時34分52秒 | インポート

 新学期が始まり、色々と雑務に追われているため、ブログの更新が遅れていてもうしわけありません。さて、私が尊敬する枝廣淳子さんが、4月14日に「キューバから学べるたくさんのこと」と題して、私がキューバの防災について書いた駄文を紹介していただいています。枝廣さん本当にありがとうございます。

 3月25日に私は「キューバでは、まず国民に、ハリケーンという危機が迫りつつあること、第一段階の警戒が出されます。もちろん、この措置は接近まで時間のかかるハリケーンだからできることであって地震では使えません」と書きました。

 しかし、この文章は間違っており、訂正する必要があるのかもしれません。4月20日に私が加入しているりメーリング・リストからの情報ですが、気象庁のサイトをみると、「3.11」の2日前の3月9日から、素人目にも状況が完全におかしいことが、わかるデータが得られているからです。以下は左から3月8日、9日、11日のデータです。

  

 つまり、二日前、48時間前には、異常が察知されていたわけで、このデータを無視せず、事前に警報を発し、避難をしていれば、原発はともかく、津波によって失われた多くの命は救えた可能性があります。

 また、4月20日の毎日新聞にも「東日本大震災:先人は知っていた『歴史街道』浸水せず」という素晴らしい記事が掲載されています。

 江戸時代史を調べる東北大学の平川新教授の研究によれば、仙台平野は400~500年おきに大津波に見舞われていたことがわかるといいます。そして、平野部を縦断する奥州街道と浜街道の道筋の大部分や宿場町は今回の浸水域の先端から見事なまでに外れているのです。つまり、先人たちは、津波を想定して道を敷いた可能性が高いのです。

 平川教授は「残念ながら明治以降の開発において、津波の経験は失われた。復興のまちづくりは災害の歴史を重視して取り組んでほしい」と話しています。

 

 この二つの事実から、もし、48時間前から地震の予想が可能であれば、キューバ方式の48時間前からの大避難アクションは可能ですし、これからのまちづくり、復興にあたっても、江戸時代を初めとする「古代」の智恵が有効なことがわかります。

 では、こうした知見は、来るべき東海大地震や浜岡原発に活かす必要はあるのでしょうか。いいえ、おそらく使う必要はないと思います。100億円を投じ、自然エネルギー推進のための財団を作ることを決意した孫正義さんは、ネット上でのデマ情報を政府が統制する動きについて、アフリカのどこかの国で起きたことを自ら招くような行動であり、先進国では信じられないような動き、世界の行動とは逆行している、と批判していますが、私のような小心ものには、そんな発言は怖くてとてもできません。

 私は日本国という「國体」を構成するちいさな一国民でしかありません。ですから、日本国を代表する最も明晰な頭脳集団である官僚の見解には逆らいません。これからはデマ見解は流しません。
 
 ですから、100%の自信をもって、こう言えるのです。いかにBBCやアルジャジーラが警告しようとも、世界に冠たる保安院の見解によれば、原発は絶対に事故が起こるはずがなく、たとえ、想定外の事故が起きたとしても直ちには問題がないからなのです。ですから、浜岡原発は100%止める必要はありません。私たちは、キューバ方式を参考とする絶対に必要とすることはなく、過去の歴史に学ぶ必要もなく、日々安心して眠ることができるのです。


革命への確信~飯田哲也氏が日本記者クラブで講演

2011年04月05日 23時52分12秒 | 脱原発

 ようやく希望が持てるシナリオが。飯田哲也氏が「福島原発「石棺型の出口戦略が必要」と日本記者クラブで提言したとの記事が日経新聞に出ています。

 とはいえ、氏の講演内容はその程度にとどまりません。以下、動画。そして、以下、PDF


 先行きが見えない原発がどうなるのか。さらに放射能が拡散する懸念はないのか。汚染がこれからどんどん進むのか。注水作業での被曝者の犠牲の上に私たちの日々の安心が保たれていていいのか。これからの日本は原発に頼らずにエネルギー問題を解決できるのか。今後、二度とこのような事故を起こさないためには、どのような社会システムと組織を構築したらいいのか。そして、被災した東北はどうすれば経済再生できるのか。新たな雇用が産み出せるのか。
 
 そのすべてを飯田氏は明確に語っています。全国民必見のビジョンだと思います。とはいえ、動画を見ても、あまりにもアクセス数が少ない。拡散を強く希望します。


革命の予感

2011年04月04日 00時55分35秒 | 脱原発


 このところ、陰鬱な記事ばかり書いてきた。が、今日久しぶりに心わくかすかな希望を抱いた。昨夜、夜21時からの「孫正義氏と後藤政志氏、田中三彦氏の福島原発震災を語る」を見たからだ。

 もちろん、テレビ放送ではない。Ustreamで12万人ほどがみただけだ。だが、その3時間の対談の中で、孫正義社長は驚くべきことをいってのけた(田原総一郎はどうでもいい)。

 まず、ガイガーカウンターを持ちながら、被災地に自らボランティアで足を運んだ孫氏は、目にも見えず臭いもしない放射能の恐ろしさを体感した。そのうえで、危険のリスクがあるのに「安全と語るのもデマだ」と批判した。
 
 そして、東日本大震災の被災者への義援・支援金として、個人で100億円を寄付し、ソフトバンク代表としての役員報酬(約1億円)も、引退するまでの分全額を寄付するとした。

 そのうえで、後藤氏と田中氏との対談の中で、原発の安定が小康状態にすぎないこと、リスクがいつ高まるかわからないことを視聴者にわかりやすく説明してみせた。

 そして、3割の節電ならば耐えられる。直ちに危険な原発は停止し、節電しながら、稼働する原発の電気には課税し、ソーラー等の自然エネルギーには補助金等の巨額の投資を行い、将来は自然エネルギーを世界に輸出することで日本を再生すべきだと提言した。

 また、根拠なき安全という情報が世界に発信されているなかで、こうした意見も海外に発信されるべきだとして、今回の対談を英語と中国語で世界に発信すると述べた。

 ツイッターには、孫氏が首相・田中氏が保安院長・後藤氏が東電社長なら…という意見もあったという。同感だ。私が追加すれば、田中優氏が通商産業大臣、飯田哲也氏が資源エネルギー庁長官、鎌中ひとみ氏が環境大臣でもいいかもしれない。

 複雑系とレジリアンスの理論からすれば、小さな波紋は驚くべき変貌を引き起こす。いま、私たちは信じられない革命の渦中にいるのかもしれない。


チェルノブイリの経験に学ぼう

2011年04月03日 18時39分18秒 | 脱原発


チェルノブイリと生態濃縮

 チェルノブイリでは「直ちには影響はない」場所で、直ちにのずっと後に影響がでました。土壌にわずかにあった放射性物質が牧草、牛、ミルクと濃縮し、影響を与えていたのです。この実情を一番わかりやすく伝えるのが、NHKスペシャルが1996年4月26日に放映された「終わりなき人体汚染~チェルノブイリ原発事故から10年~」です。
 以下のユーチューブで見られます。チェルノブイリ原発事故・終わりなき人体汚染

 また、2006年4月16日(日)にNHKが放映したドキュメンタリー、「汚された大地で~チェルノブイリ 20年後の真実~」も、以下のユーチューブで見られます。

 では、福島にある東電の原発の話に戻ります。

 3月18日に、静岡新聞や神戸新聞(共同通信)が「チェルノブイリの教訓生かされず」と紹介しています。

【キエフ共同】チェルノブイリ原発事故の被害者団体「チェルノブイリ同盟ウクライナ」(キエフ)代表で、元同原発技師のユーリー・アンドレエフ氏(61)は17日、共同通信に対し、東日本大震災により福島第1原発が放射能漏れを起こしたことについて「チェルノブイリの教訓が生かされていない」とし、東京電力の情報公開が不十分だと批判した。

 1986年4月のチェルノブイリ事故では、4号機の爆発の影響で漏れた冷却水が隣の2号機に入り込み、福島第1原発と同様に冷却装置や電源のバックアップシステムが故障したものの、辛うじて連鎖事故を回避した。

 アンドレエフ氏は「福島第1原発は電源装置がチェルノブイリ同様、原子炉の直下にあり、津波などの水が入り込めば電気供給やバックアップシステムが壊れる」と話し、チェルノブイリ事故後も、電源供給体制を見直さなかったことを残念がった。

 また、チェルノブイリ事故後、世界的な原発の安全の統一基準が必要とされたが、結局作られず、基準作りを怠ったとして国際原子力機関を批判した。

 原発敷地内で作業を続ける東電の社員に敬意を表する一方「ソ連時代ですら事故から5日で現場写真を公開した」と、日本で写真の公開が遅れたことに苦言を呈し、大事故の際にこんなに大切な情報を隠すのは「国民に対する犯罪」とまで言い切った。

 また、4月1日「福島に必要なのは石棺ではない」として、チェルノブイリ原発事故後5年間、汚染除去作業の責任者を務めたユーリ・アンドレエフ氏が、産経新聞の電話インタビューで「必要なのはチェルノブイリ原発を覆った石棺ではなく、東京電力から独立した技術者の特別チームだ」と指摘した記事を載せています。

以下、要旨です。

・国際原子力事象評価尺度でチェルノブイリは最悪の7だったが、福島の事故は最初から6であることは明らかで、今は6と7の間

・東電の情報は不正確で不足している。企業は社益を優先して行動するため作業から外す必要がある。幅広い知識を持つ経験豊富な技術者を日本中から集めて特別チームを編成し、作業に当たらせるべき

・ソ連当局も事故の原因と規模を隠し、状況を悪化させた。日本では原子力政策と安全規制を同じ経産省が担当している。世界的にみても安全規制当局は原子力産業界に依存しており、独立した委員会を作る必要がある

・チェルノブイリで事故炉を石棺で覆ったのは放射線の放出を防ぐためではなく、残った原子炉の運転を続けるためだった。福島では石棺は必要ない

・放射能汚染の除去にチェルノブイリでは2年かかった。30キロ圏内の除去は実際上、不可能で行われなかった。福島の場合、放射線量が明らかでないが、1~2年かかる可能性がある

・フクシマ50は少なすぎる。5000人以上を投入すべきだ。特別な防護服を着用してもガンマ線を浴びたり、プルトニウムを吸引したりする危険性がある。確かに彼らはサムライだが、ロボットも導入すべきだ

 なお、ロボットについては、なぜ、使わないのだろうと素人ながら疑問に思っていました。しかし、小出先生によればロボットは放射能の線量を図る程度の作業しかできず、また、メーリング・リストできくちゆみさんから、「産経のインタビューに応えたヤブロコフ博士が「ロボットを導入すべきだ」と言っていますが、チェルノブイリではドイツからロボットを借りて導入したけれど、放射線が強すぎてロボットが止まってしまったそうです」
とクリス・バズビー博士のインタビューを教えてくださいました。ありがとうございます。

 放射能は、想像を絶する環境なようです。これでは、全身を義体化した草薙素子率いる「9課」ですら処理はできませんね。

 AERAの緊急増刊号「私たちはどう生きていけばいいのか」で、原発は全廃すべきという小出裕章京都大学助教の発言に対して、原発推進派の諸葛宗男東京大学大学院特任教授は、「技術は日々進歩している(略)。人間は前進する生き物。より幸福な社会を作るために歩みをは止めるべきではありません」(P31)と述べられていますが、やはり、人類は原発とは縁を切るべきなのではないでしょうか。

 さて、ユーリ・アンドレエフ氏の見解はとても大切だと思いますし、日本語では上記した2つしか今のところ情報がないので、ネット情報を二つ載せておきます。

3月16日のロイターの記事

 原子力に対する「国連の核監視機関」には原発産業や企業の欲望が影響しており、日本を原発事故で破滅させるかもしれない。チェルノブイリの浄化に携わった一人の男性は、3月15日にそう語る。

 福島原発への日本の対応を激しく非難し、ロシアの原発事故の専門家であるユーリー・アンドレエフ(Iouli Andreev)氏は、原発産業の拡大を守るため、意図的に25年前の世界最悪の原発事故からの教訓を無視していると、企業や国連の国際原子力機関(IAEA= International Atomic Energy Agency)を非難する。

「チェルノブイリの事故の後、原発産業のあらゆる力がこの事故を隠すことに向けられました。自分たちの評判がダメージを受けないようにです。チェルノブイリの経験は適切に研究されませんでした。誰が研究資金をもっているのでしょうか。原発産業だけです。そして、原発産業はそれを好まないのです」

 旧ソ連の「Spetsatom」クリーンアップ機関の元代表は、今、核の安全を教えアドバイスをしているのだが、ウィーンでのインタビューでこう語る。オーストリア環境省は、氏をアドバイザーとして活用している。

 アンドレエフ氏は、原子炉の近くに収納されている使用済み燃料棒から3月15日(火)に放射能を放出した火災が、安全性よりも利益を重要だと考える事例に似ていると言う。

「日本人はとても強欲で、あらゆる空間を使いました。ですが、使用済み核燃料を大量に水容器(basin)内に置いておけば、もし、水が取り除かれれば燃える公算が高いのです。国際原子力機関はこの基準への非難をわかちあうべきです」

 氏は燃料棒が建屋や稼働している原発にあまりに近すぎた、と主張する。

 また、「それは、労働力ではなく、シンクタンクだけ」ですと、ウィーンにある機関が設立した緊急時の事故チームを却下する。

「これはまがいものの組織にすぎません。なぜなら、原発産業に依存するあらゆる組織、そして、国際原子力機関も原発産業に依存していますから、適切に機能できないのです。それは、いつも真実を隠そうとするでしょう。国際原子力機関は、原発産業で起こりうる事故の可能性に興味を持っていません。あらゆる緊急時の組織にはまったく興味がないのです」

 国際原子力機関は、アンドレエフ氏の批判に対し、なんらすぐコメントをしていない。

 アンドレエフ氏は、福島で日本当局が直面していることがよくわかり、放射能の流出を含めて創造的な解決策が必要とされていると言う。

「それは、静かなパニックの状況です。そして、私はこの状況を知っています。原発産業では統制(Discipline)が中心となりますが、緊急時のサービスでは創造性が必要で、ある種の幻想や即興性さえ必要となるのです」

【出典】
Chernobyl clean-up expert slams `greedy' Japan, IAEA for Fukushima crisis,Reuters Mar 16, 2011.

3月16日のスペインの日刊紙エル・ムンドの記事

 1986~1991年にかけ、チェルノブイリの汚染除去作業の責任者だったユーリ・アンドレエフ氏は、福島原発での現状は、旧ソ連の事故の教訓が学ばれていないと考える。

 氏の見解では「過ちは学ばれなかった」。なぜなら、福島原発のような危機を一民間企業の技術者の手にゆだねることは無謀で、彼らは同様の規模の緊急事態に立ち向かう準備ができていないからだ。

 「核の技術者たちには、これほどの破局的緊急事態への準備がありません。スリーマイル島やチェルノブイリ等の他の惨劇を援助するための、こうした状況の国際専門組織を構築する必要があります」と氏は説明する。

 原発の緊急事故を抑えるための国際組織は、原子力産業や国際原子力委員会(OIEA= Organismo Internacional de la Energía Atómica)から独立した組織でなければならない。

国際原子力委員会は無能力

「奇妙に思えますが、原子力産業は、核のカタストロフィーから教訓を学ぶことに関心がありません。なぜなら、カタストロフィーについて言及することは、核エネルギーへの一般の人々のイメージを落としてしまうからです。このため、破局的なシナリオについてどんな発言も隠そうとするのです」氏はこう強調する。

 国際原子力委員会も氏の見解では、原子力産業の利益にとても近い。なぜなら、事実上すべての専門家たちが、この分野の企業出身か、何らかの形でつながっているからだ。このため、評価には企業の利益を勘定に入れざるを得ない。
また、氏は、現在のような状況に対処するには、「非常に弱い組織」だとも考える。なぜなら、政府要員や外交ゲームがもたらす情報に依存するからだ。

「何が起きているかを評価するために本当のデータを手に入れるため、圧力をかけなければならないときには」現実的にほとんど効力を持たないのだと氏は強調する。

「こうした状況では、外交に割く時間はなく、現実に行動しなければならないのです」

核事故に特化した国際組織を作らなければならないのだ。

チェルノブイリでの経験

 73才になるアンドレエフ氏は、1986年4月にウクライナのチェルノブイリの原発で起きたことが、同じ状況だ」と説明する。作業員たちには事態を解決する訓練がなされず、それができたのはソ連軍と公的機関と、核事故という事態に対処するために編成された科学者チームだった。こうした経験を踏まえ、緊急事態下で復旧の作業を行い、放射線量が極めて高い状況下で作業を行う人材を準備するために「Spetsatom」が誕生した。

 氏はこの緊急事態に対処する組織の責任者だったが、1991年のソ連崩壊で存在できなくなり、氏は、その年にオーストリアに移り住み、ウィーン大学の教授として働き、同時に環境省で核の安全課題の顧問としても働いた。

「チェルノブイリの事故後、私は国際原子力委員会のハンス・ブリックス(Hans Blix)委員長に、新たな組織を作る必要性を説きました。その組織は事故に対処するものでしたが、氏は心にもとめませんでした」

福島の状況についての評価

 氏は今後の福島について、最も将来起こりうるシナリオは、「とても強いわけではない」が、長期間にわたって続くタイプの放射能漏れである。事態が安定するまで何日も、何週間も続く。氏の見解では、溶融破壊や連鎖反応というシナリオにまでは至ることはないだろう。

「もしかなりの放射能漏れがあったとすれば、汚染除去の仕事はとても複雑となるしょう。なぜなら、人口がとても密集した地域だからです。原発に近いゾーンでは回復はさらに困難になります」と氏は付け加えた。

 氏の見解では、最も危険な状況は、プルトニウムとウラニウムが混合された「mox燃料」を使用している3号炉が直面している。それは他の原発の原子炉で使われている核燃料に比べて、はるかに危険度の高いものなのだ。

【出典】
El ‘descontaminador’ de Chernobil afirma que no se aprendio de los errores

気象学者よがんばれ

2011年04月03日 17時54分33秒 | 脱原発


状況はますます悪化

 以前は毎日100以下しか閲覧がなかったこのブログですが、「拡散」していただいたおかげで、ここ数日200とか400人の方が訪れてくださっています。本当にありがとうございます。

 本日、夜21時から「孫正義氏×後藤政志氏×田中三彦氏 福島原発震災を語る」がUstreamで放映されます。是非、ご覧ください。

 なお、「原発関連御用学者リスト」という面白いサイトも見つけましたので、ご参考にしてください。

 さて、状況はますます深刻化しています。いや、深刻化しているというよりも、すでに深刻だった状況がだんだんわかってきたということでしょうか。例えば、京都大学原子炉実験所の小出裕章助教の3月31日の見解はここ(音声)で聞けます。

 また、フリー・ジャーナリスト岩上安身氏よる4月1日のインタビューはこちら(音声・テキスト)です。

 以下、小出先生の見解の抜粋を紹介します。




・私はポンプの復旧はもうダメだと思う。ポンプ故障なら新しいポンプをもってくればいいが、どんな事をやってもだめだと思っている。圧力容器が既に破損しているからだ。
・原子炉内にポンプ車で水を大量に入れている。すると圧力容器の水位が上がるはずだが、全く増えない。1~3号機共、燃料棒が170cm、あるいは230cm、常に露出しているとデータが出ていて、圧力容器に穴が空いているから水が溜まらない状態になっている。
・原子炉に入れるのは1次系で、2次系が仮に回っても何の意味もない。
・何とか電源を回復し、ポンプを動かして、正常な冷却回路にすべきとずっと言ってきたが、それに気付いたのが昨日か一昨日。これはどうにもならないという事に気付いた。
・正常な冷却はできないから、外部から海水でもいいから原子炉に入れて冷やすとしかない。格納容器が破損し外に漏れ出ている。今後もそれをやり続けるしかない。
・何カ月という単位でやり続けるため、その間出続ける。原子炉の放射能全体から言うと、外に出ている揮発性のヨウ素やセシウムはまだ数%だが、長引くと数十%、最悪100%となる事もありえる。
・ただし、プルトニウム他の揮発性ではない放射性核種は水入れて冷やし続けていれば、大量には出ない。
・ペレットが溶けたとのは確実で、もっと溶けてしまうと水蒸気爆発を伴う破局的に至る。
・外から水をいれて原子炉を冷やしながら、入れた分の水は外に捨てることがずっと続けられれば、プルトニウムを含めた揮発性のない放射能の大部分を原子炉内に閉じ込める事ができる。
・チェルノブイリの原発事故が1986年に起きたとき、ソ連政府は、周辺30kmの13万人を強制的に避難させた。
・事故後に数カ月経てから、200km、あるいは300km離れた敷地で濃密な汚染がある事を見つけ、そこの住民たちを20数万人強制的に避難させた。
・その後、チェルノブイリから約700km先まで、日本の法律では、放射線管理区域しなければならない汚染が広がった。
・だがソ連は崩壊し、そういう場所の住民を避難させる力なく、未だに600万人近くがそういう場所で普通に生活している。面積では本州の6割を放射線管理区域だ。
・この状態がずっと続いて行けば、プルトニウム等の揮発性でない放射能の汚染は防げるかもしれないが、揮発性のヨウ素、セシウム等は、ダラダラと出続ける。
・日本ではSPEEDIという計算コードを持ち、事故当初からやっていたし、今でもやっていて、本当なら、公表し、どこに汚染が行くと言うのを時々刻々報告しなくてはいけないが、それをやるとパニックを煽るからという理由で出さない。




 要するに状況は、ますます深刻化しています。


日本は世界から相手にされなくなる

 私は原発事故から、気象情報にこだわっているのですが、「SPEEDI」が国家によって公表されないとなると、民間に頑張ってもらうしかありません。これから、ずっと放射能が漏れ続けるのですから、少しでも自分を被曝から防ぐしかなすすべがありません。それには、お天気が大切です。しかし、4月2日の朝日新聞は「放射性物質予測、公表自粛を 気象学会要請に戸惑う会員」として、「日本気象学会の新野宏理事長が、会員の研究者らに、大気中に拡散する放射性物質の影響を予測した研究成果の公表を自粛するよう求める通知を出していた(略)。社会的影響もあるので、政府が出すべきだ」のだ、そうです。以下が3月18日付の文章です。

 つまり、政府の発表だけが正しいのであって、それ以上の情報は国内では得られそうにないのです。

 さて、4月1日のブログで「日本はいよいよ日本政府そのものが、利権にまみれ国際評価を無視し、暴走し始めた「無法者国家」だとの評価を受け始めたと感じる」と書いたのですが、ジャーナリスト、上杉隆氏が、ダイアモンド・オンライン「日本の大手メディアと欧米メディア、プルトニウム報道の“温度差”」で、3月31日に「欧米、とくにフランスを筆頭とした国々は、日本のことを悲惨な震災に見舞われた被災国というよりも、原子力エネルギーを管理できない核犯罪国家とみなし始めている。このままではG8の一員である先進国としてどころか、放射能汚染を放置する無政府状態の最貧国として扱われる日が近いのかもしれない」と書かれていました。

 うーん、予感的中か。いやですね。海外はどう見ているのでしょうか。

 以前に紹介した木下黄太氏が4月3日に米国の企業の立ち振る舞いを紹介しています。

・幹部のアメリカ人たちは近隣のアジア諸国に逃げていた
・騒ぎが一端静まったと言うことで、一度、東京には戻ってきた
・しかしながら、その会社は空調が止められていて、換気扇には目張りがされている状態
・アメリカの本社から東京の現場に今回の原発に関しての情報についていくつかの注意事項がおりてきた
・日本政府の発表は数値まではうそをついていないので、そこは確認しても良い
・しかし、日本政府の分析が大変に甘く、耳あたりの良いことしか言わないので、鵜呑みにするな
・日本のマスメディアの報道内容は楽観的過ぎて、参考にするな
 
 小出先生の説によれば、世界最高の核技術を持っているのは、フランスではなく米国のようです。つまり、米国のリッチ階層が逃げ出さない限りは、東京はまだ安全だと解釈してよいでしょう。


こんな状況です。やはり他の原発も止めた方がいいんでは?

2011年04月02日 16時16分19秒 | 脱原発


ロシアの専門家はチェルノブイリ以上に深刻と警告

 続けて、日本の原発の状況です。

 燃料プールについて、米原子力規制委員会(NRC)のヤツコ委員長が3月中旬に4号機で「水がすべて沸騰し干上がっている」と証言しましたが、4月2日10:43の読売新聞の記事では、米エネルギー省のスティーブン・チュー長官が、福島第一原発の使用済み核燃料プールの状態について、「1号機から4号機まですべてのプールに水があると考える」と述べ、安定している、すべてのプールで温度計測ができ、中に水があることを示している」と述べたと書いています。

 本当ならば、プールについては一安心です。

 とはいえ、11時49分の朝日新聞の記事では、米エネルギー省が1号機の核燃料が最大で7割損傷と述べています。

 また、フランスのル・フィガロ紙は4月1日にやはり「福島はチェルノブイリより深刻」と述べています。




 福島原発の惨事は1986年にウクライナのチェルノブイリで起こった惨事よりも深刻である。

「チェルノブイリは放射能汚染爆弾の爆発ようなものです。福島は新しい放射能汚染爆弾であり、人類にとっても経済面からもより高くつくことでしょう」

 1986年の大惨事後、自国で原子力反対派の中心人物のひとりとなったロシアの核エネルギー専門家、熱力学エンジニアのナタリア・ミロノヴァ(Natalia Mironova)さんは、本日ワシントンでこう警告した。
「日本の原発事故は深刻さのレベルでソ連の原発のレベルを超えるでしょう。チェルノブイリはレベル7でしたが、事故を起こした原子炉はひとつだけで、惨事は2週間続いただけでした。福島では、すでに3週間続いており、4つの原子炉が非常に危険な状態なのです」




 なお、The Wisdom of the Survivorというサイトにナタリアさんのキャリアが紹介されていますので、書いておきます。

 ナタリア・ミロノヴァさんは、核安全のための運動(Movement for Nuclear Safety)の創設者兼代表で、公共政策と法研究所(Institute for Public Policy and Law)の役員です。NGOとともに核政策についてロシアや米国と対話するプロジェクトに15年以上しています。また、ロシアの人権と反核環境保護運動のリーダーとして、核分裂物質の拡散防止や軍事・平和目的での原子力の使用を撤廃される先頭に立ってきました。「社会ダイナミック・自己組織化とマネジメントの変容(Social Dynamics: Self-Organization and Management Metamorphoses)」(2005) と「近代国家ガバナンスにおけるシビック・ソーシアム(Civil Socium in Modern State Governance)」(2007)の二冊の著作の他、環境と核の安全性、軍核競争での環境懸念に直面する地域での市民セクターのあり方について数多くの記事やリポートを書いています。

 ナタリアさんは、ポーランドに生まれ、ウクライナ、ドイツ、カザフスタン、ロシアで育ち、チェリャビンスク工科大学(Chelyabinsk Polytech University)で熱力学工学を学び、2006年にロシア・アカデミーで学位を取得しています。また、カリフォルニアのスタンフォード大学でのロシア研究センター(Center for Russian Studies)やエモリー大学(Emory University)でのジミー・カーターセンター(Jimmy Carter Center)での核安全に対するシステムのアプローチを学び、イギリスのシューマッハ・カレッジ(Schumacher College)でフリッチョフ・カプラ(Fritjof Capra)、アーサー・ザジョンク(Arthur Zajonc)、ルパート・シェルドレイク(Rupert Sheldrake)の指導で、カオス理論の社会適応も研究しています。

イギリスの専門家も警告

 ピープルズ・プランには、3月24日の放射線リスク欧州委員会(ECRR)の委員でもあるイギリスのクリス・バズビー教授のインタビュー内容が安原桂子さんの翻訳で掲載されています。内容はかなり深刻です。以下、内容の要旨です。

日本で起こっている原発事故はチェルノブイリに類似

・状況は、チェルノブイリ事故に非常に似ている(略)。事実に基づく情報が十分に提供されているとも思えない。

・膨大な量の放射能がすでに原発から放出されたと推定している。例えば、昨夜のIAEAのウェブ・サイト情報によれば、汚染は原発から58キロ範囲にまで広がっている。

・このレベルはチェルノブイリの立ち入り禁止区域のレベルの2倍になります。 チェルノブイリの立ち入り禁止区域は30キロだった。 既にこのレベルで大きな事故になっている。

日本のメディアが間違った情報を報道し、詳細な情報が出てこない理由

・原子炉内の放射線レベルが余りにも高く、近づけば死ぬだけであるため、原子炉で何がおこっているのか誰も知ることができない。制御室にある測定計器類もすべて破壊されている。

・手可能な事実に基づき、何が起こったかを推測することしかできないが、原発からかなりの距離の場所でも放射線レベルが非常に高い。また、原発から少なくとも50キロ以内の地点で地上の汚染レベルが非常に高い。

現時点でこれ以上、事態を悪化させない方法はない

・燃料は原子炉圧力容器内部で溶融したようだ。少なくとも3つないしそれ以上の圧力容器の底部に溶融燃料が溜まっていると思われる。

・溜まった溶解燃料に水を注いで冷やすことはできない。分離されている燃料棒は、水を循環させることで冷やすことができるが、熱い大きな金属塊を冷やすことはできない。

・もう一つの問題は、原子炉一、二、三の使用済み燃料が爆発し、周辺地域の空気中に放出されたと推測されることだ。おそらく海水も汚染されていると推測されるが、手の打ちようはない。

・誰もこのような事故を見たことがない。私には解決策はない。ただ祈るのみだ。

・放射線リスク欧州委員会では、第一と第三原子炉の爆発から出て海に行き、最後に東京に戻ってきた空気の流れをモデリングしている。

・我々が観察したのは、気流が一旦外に出て東京上空を大きな輪を描き、それから日本を北上すること。

・ウランやトリチウムやヨウ素はもちろん、その他の放射線物質は本州を汚染しており、今や原発から遠距離に住む住民の健康に重大な影響を与えるものと思われる。

20キロ以上の広域避難が必要

・我々は、100キロ以上にしたらよいというアドバイスを欧州委員会のウエブサイトなどでしてきた。

・今や彼らは東京の住民を避難させることを考えなければいけない。

・東京自体がヨウ素だけでなく種々の放射性成分のリスクにさらされている。その中には検出することが容易でないものもある。トリチウムは、あらゆる場所にまき散らされ、遺伝的欠陥、ガンや様々な病気を発生させる可能性がある。

日本政府による人が通常のX線で浴びる程度の放射線量という発言について

・犯罪と言って良いほど無責任だ。 チェルノブイリ事故の後、ガンや他の病気の発生率が増加されている。例えば、2004年にスウェーデンで行われた研究では、チェルノブイリ事故で汚染されたスウェーデン北部の地域では住民のガン発症率は11%増えた。将来のことを考慮しなくても、汚染地域でのガンの発生率がこの数字の2倍以上になる可能性さえありえる。

・安定ヨウ素の錠剤を服用し、子供たちに与えること。水は危機発生以前に詰めた瓶詰の水を飲むこと、あるいは南部から純粋な水を持ってくること。ミルクは決して飲まない事。新鮮野菜や生鮮魚介類は食べないこと。缶詰食品だけを食べること。この危機が続く限り、これらの行動が多くの生命を救う。

最悪のシナリオは?

・最悪のシナリオは爆発が起こること。他の科学者は必ずしも同意しないかもしれないが私は可能だと考えている。1957年ソ連クイシトゥイムのマヤーク原発が爆発した際には、使用済み燃料が爆発し、同じ状況が起きた。燃料タンクの水が沸騰してなくなり、燃料棒が融解して塊になり爆発し、1000平方マイルの土地が汚染された。

・最善のシナリオは、溶けて、地中に消散し、爆発なしというものだが、それは放射線物質で非常に汚染されることを意味する。その上に砂、スレート等を積み上げ、それを約100キロ程離れたどこかに移し、塀で囲まなければならない。

・日本の当局が放射線レベルが低いと言い、人々が30キロゾーン外に住めると言っていることは、犯罪と言っても良いほど無責任だ。

日本の原発派もようやく重い腰をあげる

 4月2日01:42の読売新聞の記事は「原発事故、国内の経験総動員を…専門家らが提言」とあります。

 福島第一原子力発電所の事故を受け、日本の原子力研究を担ってきた専門家が1日、「状況はかなり深刻で、広範な放射能汚染の可能性を排除できない。国内の知識・経験を総動員する必要がある」として、原子力災害対策特別措置法に基づいて、国と自治体、産業界、研究機関が一体となって緊急事態に対処することを求める提言を発表した(略)。

 同原発1~3号機について田中俊一元日本原子力学会長らは「燃料の一部が溶けて、原子炉圧力容器下部にたまっている。現在の応急的な冷却では、圧力容器の壁を熱で溶かし、突き破ってしまう」と警告。また、3基の原子炉内に残る燃料は、チェルノブイリ原発事故をはるかに上回る放射能があり、それをすべて封じ込める必要があると指摘した」

 この記事に対する木下氏のコメントは以下のとおりです。

 記事に出ている人々は、あくまで推進側の中心的な学者の、OBグループです。反対派側の人では全くありません。吉岡先生や小出先生が話していた中での最悪想定に近いことを推進側の中心的な彼らが喋りはじめている現実をどうして、政府やマスコミは、認識しないのか僕にはさっぱり理解できません。何度もお伝えしていますが、事態は一向に改善の様子がありません。水を入れ続ける方法論だけでは解決しない事まで、推進側から、あからさまに認めはじめているということです。

 小出先生ともいまさっき話しましたが『私が前から述べていることと同じ事を言いはじめているだけですね。もう汚染は広がっているのだから。さらに、僕の考えている最悪想定と同じようなことに言及しはじめているだけですね。わかりきった話なんだけれども』と。

 広範な放射能汚染というのは現在の数十キロゾーンの話ではありません。吹き上がる高度と風向きによっては、100キロから250キロゾーンも汚染される可能性があります。最悪想定は絶対にあり得ない話ではなく、あり得る話だと、彼らは伝えています。こんな明瞭な話をなぜ「思考停止」しつづけるのでしょうか。退避ゾーンも広げないと判断することが、多くの被害をもたらす可能性があるのに、なぜまともに判断しないのでしょうか。

 ちなみに、小出裕章氏とインタビューした結果について、木下氏は3月30日に「原子炉の状態から、今後のシナリオ想定をする」で小出先生が考える今後のシナリオを詳しく書いています。

 要旨は以下のとおりです。

ベスト

・炉心崩壊を何らかの方で食い止めることに成功すれば、格納容器も圧力容器も部分的に壊れた状況で、現在のような放射能の放出が続き、周辺領域も含めて、多大な放射能被害が一定程度継続される。これが、ミドルリスクレベル。

最悪

・最悪の想定は、どれかの炉心崩壊が食い止められず、水蒸気爆発が起こり、大量の放射能が空気中に放出される。周囲の線量も高すぎ、完全に作業停止となり、他の炉も時間差で次々と大崩壊する。福島第一原発の核燃料は最小でもチェルノブイリの4倍はある。被害がどの程度に留まるかは、風向きと風の高度しかなく、運を天に任せるしかない。

・また、現場作業員がぎりぎりの努力を続けていても、兵站が尽きる可能性も指摘されている。

 この木下氏の見解に対して、福島県在住の方から、「安全圏から危機感をあおるな」という厳しいコメントが出ています。こんな文章を書いている私にもいえることです。とても、大切な意見です。是非、お読みください。

 なお、フランスのル・モンド氏は3月30日に「危機は国家と専門家達を失墜させた」という記事でこう述べています。




 国による管理を強化するに当たり、いくつかの選択肢がある。「日本人はジレンマを抱えている。現実となった危険を前に、このまま盲目的に政治エリートに追従していくのか、それとも持続可能な開発の道を選ぶのか。いずれにせよ、これらは両立することは出来ない。」と立教大学のアンドリュー・デウィット(Andrew DeWit)教授は語る。

 大災害は日本を新しい時代へと招いた。これが国の歴史の転換期であり、今こそ自分達の意見を表明し、現在のエリート達に服従しないという意識変革なしでは、日本国民の未来はない。



 どうも私が考えている以上に、いま大変なことが起こっているようです。ぜひ、多くの方々とこの深刻な現状をわかちあいたいと思います。そして、これ以上、被害が悪化しないように、他の動いている原発は止めた方がいいと思えてならないのですが。。。。



海外の専門家の見解を注視せよ

2011年04月02日 10時25分23秒 | 脱原発

原発問題はまだリスクを抱え続けている

 みなさん、おはようございます。新聞の記事やネットでも原発の記事が減ってきました。最悪の事態は去り、安心できるかのようにも思えますが、私は悲観主義者なので、状況はいまだに深刻だと思っています。

 以下、原発を巡る情報が多く掲載されているサイト「クマのプーさん」とフリーランスのジャーナリスト、木下黄太氏の福島第一原発の分析です。

 木下氏からの情報発信は、真に迫る素晴らしいものです。是非、拡散してください。

ロシアの専門家は警告する

 さて、3月27日の「西日本新聞」の朝刊は「放射能被害を過小評価している」とのロシアの科学者の懸念を紹介しています。以下、引用です。




 1986年に起きたチェルノブイリ原発事故について、人や環境に及ぼす影響を調べているロシアの科学者アレクセイ・ヤブロコフ博士が25日、ワシントンで記者会見し、福島第1原発事故の状況に強い懸念を示した。博士の発言要旨は次の通り。

・チェルノブイリ事故の放射性降下物は計約5000万キュリーだが、福島第1原発は今のところ私の知る限り約200万キュリーで格段に少ない。チェルノブイリは爆発とともに何日も核燃料が燃え続けたが、福島ではそういう事態はなく状況は明らかに違う。

・だが、福島第1はチェルノブイリより人口密集地に位置し、200キロの距離に人口3000万人の巨大首都圏がある。さらに、福島第1の3号機はプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使ったプルサーマル発電だ。もしここからプルトニウムが大量に放出される事態となれば、極めて甚大な被害が生じる。除去は不可能で、人が住めない土地が生まれる。それを大変懸念している。

・チェルノブイリ事故の最終的な死者の推定について、国際原子力機関(IAEA)は「最大9000人」としているが、ばかげている。私の調査では100万人近くになり、放射能の影響は7世代に及ぶ。

・セシウムやプルトニウムなどは年に1~3cmずつ土壌に入り込み、食物の根がそれを吸い上げ、大気に再び放出する。例えば、チェルノブイリの影響を受けたスウェーデンのヘラジカから昨年、検出された放射性物質の量は20年前と同じレベルだった。そういう事実を知るべきだ。

・日本政府は、国民に対し放射能被害を過小評価している。「健康に直ちに影響はない」という言い方はおかしい。直ちにではないが、影響はあるということだからだ。




 とても重要な情報だと思うのですが、ネットで検索してみると、西日本新聞しかヒットしません。そこで、この情報について英語のサイトで見つけたものを二つほど掲載し、その内容を補完したいと思います。あくまでも、語学力の低い私があわてて訳したものですから、是非、原文にあたってみてください。

プレステレビでのインタビュー

 3月28日 世界で最も有名な科学者によれば、日本の原発の死者は100万人以上になるかもしれない。Press TVは、ニューヨークで、原子核の専門家カール・グロースマン(Karl Grossman)とインタビューした。氏は、世界保健機関(WHO)と国際原子力機関(IAEA)との危険な闘争の可能性について語り、その企業を守るため、日本が国民を欺いていると主張する。

プレスTV 日本から伝わるリポートは深刻で、正確な死者の数もわかりませんし、放射線のこととなるとさらに情報があいまいです。日本の当局からはいまどんな情報が得られないのでしょうか。

 私は、彼らが率直でないと思っていますが、これはごく典型的な事例です。スリーマイル島の事故の後でも同じことが起きました。ウクライナでチェルノブイリの災害があった後も、原発技術に関与する人々は、人々に信実を伝える点でとても不十分でした。残念ながら、日本の役人たちも、非社交的です。

プレスTV あなたには「原子力について知りたくないこと(What you are not supposed to know about nuclear power)」という著作がありますが、本の内容を紹介してください。また、原発事故と関連する約200もの記録の改竄についても。

 人々が知っておくべき大切なことがいくつかあります。そのひとつはWHOと関連しています。インターネットにもあるのですが、1959年にWHOと国際原子力機関とで協定が結ばれました。結ばれたのは、原発を推進し、同時にそれを管理することが立ち上げられた数年前のことです。この協定によって、原発を推進する国際原子力機関の承認がなければ、WHOはなんら声明を出せないのです。

 企業でいえば、5年前にゼネラル・エレクトリニック社の原発部門が日立と協定し、ほぼ同時期に東芝はウェスチングハウス(注1)を買収しました。ゼネラル・エレクトリック社(注2)とウェスチングハウス社は、世界の原発のコカコーラとペプシで、日本には巨大な核技術があります。率直に言って、今起きていることがビジネスにとって良くなければ、こうした職員は真実を語るでしょうか…。

 原発技術のアキレス腱として大きく懸念されていて、原発が爆発した理由のひとつとなったものに、燃科棒の製造用にジルコニウムという危険な元素を用いていることがあります。イランでは、数年前にイスファハン(Isfahan)でジルコニウムの製造施設がオープンにされました。彼らは、ジルコニウムを使用することにし、燃科棒用のZircoloyと称される化合物を製造します。それが、燃科棒の間で中性子が動くことが可能となり、連鎖反応を支えるのです。このジルコニウムの問題は、2,000度で、ニトログリセリンの力で、爆発してしまうことです。爆発する前には、水素が放出され、それも爆発します。爆竹で橋を架けるようなもので、それで原発を建設するというのは気が狂ったことなのです。

 イランで建築されたものを含め、どの原発にも、大量のジルコニウムがあります。使用済み核燃料プールには、何トンものジルコニウムがあります。つまり、原発は気が狂っているのです。私の見解では、それは恐ろしいほど危険で、まったく不要なものです。イランを含め、すべての国々が原発にその財産を費やすのではなく、風力、ソーラー、地熱他の安全でクリーンなエネルギー技術を実行するようシフトすべきです。

プレスTV 原発の安全性の深刻な問題点を丁寧にリポートしていただきましたが、どのように圧力がかけられるのか、事実がどのようにして明らかにされないかの事例をあげていただけますか。

 史上最大の嘘っぱちをもうしあげましょう。それは、チェルノブイリと関係があります。原発を推進するために設立された国際原子力機関は、チェルノブイリの事故後に死んだのはおそらく4,000人だといまだにそのウェブサイトで主張しています。ですが、ヨーロッパの最高の科学者たちによって執筆され、最近、ニューヨーク科学アカデミー(New York Academy of Sciences)から出版された書物では、現在利用できる医学データから、こう結論付けています。チェルノブイリの結果、1986~2004年にかけ、98万5000人の人々が全世界では死んだ。そして、まだ人々が死んでいると。つまり、チェルノブイリでは約100万人が死んだと言えるのです。そのレポートの研究主幹、極めて優れた科学者、モスクワのアレクセイ・ヤブロコフ博士の記者会見が米国でありました。

 博士は、福島には多くの原子炉があり、使用済み核燃料プールもあり、人口ではチェルノブイリよりも集中しているため、博士は、日本の災害が100万人以上の命がかかっているかもしれないと予測します。

プレスTV みなそれを知っているのですか。

 いいえ。おそらく、私たちはまだ数100人が死んだだけだと言われています。全世界に嘘がつかれています。すべてを止めなければなりません。

 日本の当局と日本の原発産業の職員は、企業利益を守りために、それを覆い隠そうとしている。風力、ソーラー、地熱。安全でクリーンな再生可能エネルギー技術について、イギリスで出版されたニュー・サイエンティストのコピーを手に入れることをお勧めします。それは、世界が必要とするすべてのエネルギーを提供できるのです。サイエンティフィク・アメリカンも別の情報源です。

(注1)ウェスティングハウス・エレクトリック社(Westinghouse Electric)
1886年から1999年まで存在した米国の総合電機メーカー。1998年に商業用原子力部門を英国核燃料会社(BNFL)に売却し、同部門は2006年にBNFLから東芝に売却された。

(注2)福島第1の原子炉は米ゼネラル・エレクトリック社(GE)が開発した

【出典】
IAEA, Japan hiding truth from public, Interview with Karl Grossman, nuclear expert and investigative reporter from New York, Press TV, Mar 28,2011.

コモンドリームの警告

3月25日 アレクサイ・ヤブロコフ博士は、「チェルノブイリ:人民と環境にとっての破局の結果(Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment)」の共著者で、ロシア科学アカデミのメンバーだが、3月25日に、福島原発事故は、ウクライナで1986年4月26日に起きたチェルノブイリ原子炉の爆発の健康や環境への影響に匹敵するか、潜在的にはより大きいと警告する。

 ワシントンでの記者会見で、ヤブロコフ博士はこう語る。

「私どもは、いまだかってない事態を目にしています。複数の原発の事故、おまけに、そのひとつはプルトニウムを使用し、使用済み核燃料プールの事故もあります。そのすべてが3000万人もの大都会の200キロ圏内で起きています。その領域はチェルノブイリよりもはるかに人口密度が高いのですから、最終的な日本の犠牲者はさらに多いかもしれません」

 ヤブロコフ博士の著作は、他の「公式リポート」よりもはるかに多く、チェルノブイリの事故では最大100万人が死んだと計算している。

 博士は、WHOが調査結果についての議論を避けたように、この著作はほとんどの組織から無視されたと語る。ヤブロコフ博士は、「地球の友(Friends of the Earth)」のエリッヒ・ピカ(Erich Pica)代表と放射能と健康の専門家、「核を超えて(Beyond Nuclear)」のシンディ・フォルカース(Cindy Folkers)代表とともに記者会見を行った。

「私は福島の状況に楽観していません。プルトニウムの吸入は癌を発生させる可能性が高いのですから、プルトニウムが放出されるとしたら、とりわけ危険です。プルトニウムの放出は、その地域を汚染しつづけ、それを浄化することは不可能です。プルトニウムは、24万年にもわたって致死的なのです。福島第一原発3号炉は混合プルトニウム燃料、MOXを使用していおり、今日3人の労働者が通常の1万倍もの汚染を受けたため、その封じ込めに失敗したのではないかとの恐れがあります」

「日本の人々も国際社会も、よく考えた決定を下し、正しいアドバイスをするために必要なデータが全然得られていません。それが、地球の友等の組織が、米国と日本のスタッフから得ているモニタリング・データを発表するように、情報公開法(Freedom of Information Act)で米国の機関に要請している理由なのです」とピカ代表は言う。

 彼らは、今の低レベルの放射能でさえの吸入や食物摂取で長期的な影響があり、何10年も後に病気になると指摘する。

「福島を私どもが懸念しているのは、即座の被曝だけではなく、吸入したり摂取される放射性の粒子により長期的に起きる被曝です」とフォルカーズ代表は言う。

「こうした粒子は、土の上や水中に落ち、何年も食料に含まれることになります。私どもが懸念しているのは、職員たちが最も検出しやすい放射線、ガンマ線だけを測定していることです。人々の皮膚や衣服に放射線がないかどうかをテストすることは必要ですが、それでは、吸い込んだり、食べたかもしれない結果についてはほとんどわかりません。それが、内部被曝という長期なリスクをもたらすのです」

 ヤブロコフ博士は、福島原発からの放射線の放出量の深刻さを控え目に扱うことを警告する。

「『直ちには危険ではない』と言われる時、あなたは、できるだけ限り早く、できるかぎり遠くへ逃げるべきです」

 博士は、チェルノブイリ周辺領域が事故の25年後も同じほど汚染され続けていることを指摘する。

 土の上に降ったセシウム、アメリシウム、ストロンチウム、プルトニウムは、植物の根に達し、再び表面に放射能をもどす。

「2010年の汚染は20年前と同じなのです」

【出典】
Russian Chernobyl Expert Warns of Dire Consequences for Health Around Fukushima, CommonDreams.org, March 25, 2011.

【付記】
 アレクサイ・ヤブロコフ博士の動画インタビュー(英語)がココで見れます。「直ちには問題がない」に対し、大変怒られています。



世界のために北朝鮮と化した日本を経済封鎖しよう

2011年04月02日 02時08分12秒 | 脱原発
なぜ、日本の原発は止まらない

 今日は、嘘をついてもいいエイプリル・フールです。実は、もう書いているうちに2時をまわってしまったのですが、このブログを訪れてくださる方々の反発を承知で、あえて過激な意見を書きます。

 今度の原発問題が福島でよかった。そして、簡単に解決せず、こじれにこじれ、ずるずると長引いて本当に良かったと。これぞ、天佑だと。

 気でも狂ったのかと思われるかもしれません。ですが、これが福島ではなく、浜岡であったらどうだったでしょうか。そして、たとえ、福島であっても太平洋ではなく南風が吹く時、あるいは、台風の最中に地震が起こっていたらどうなったでしょうか。さらに、福島の第一だけでなく、第二、そして、女川まで同時にはじけていたらどうなっていたでしょうか。おそらく、日本の壊滅です。そして、その可能性はあったのです。にもかかわらず、現実にこれだけの事故が起こりながら、最も危険とされている浜岡原発はどうでしょうか。停止しているのでしょうか。日本の原発は一向に止まる気配が見えません。

 3月30日の山口新聞を見ると、「上関原発海岸工事、妨害なら1人70万円支払い」
とあります。

「山口地裁は、中国電力が上関町長島で進める上関原発埋め立て準備工事をめぐり、予定地海岸で工事を阻止している祝島島民の会と島民ら12人に対し、工事を妨害した場合、1日当たり1人、1団体それぞれ70万円の支払いを命じる決定をしたことが21日明らかになった」

 これは、欧米の感覚からするとどうみても異常です。

なんと素晴らしい管政権

 各国のサイトを見ても、チェルノブイリを上回る事故が起こっているという認識のようです。国内だけで自己完結する事件ならば、その国民が自滅すればいいのですから簡単です。ですが、幸いなことに放射能は世界を巡ります。もし、6基並んだ原発が、使用済み燃料とともに水蒸気爆発したら危険極まりないことです。

 グローバル・トマホークが動き、米国の秘密核兵器部隊が動き出したのも、西海岸まで微量ながら汚染され始めたからです。本土まで届けば、汚染も防がなければならない。いささか極端なたとえですが、今の日本は、こと原発に関しては、6カ国協議されていた「北朝鮮」とまったく同じ状態に陥っている、と私は感じています。

 しかし、日本という異常国家の真実は、いままで闇に包まれてきました。もし、冷却装置が無事働き紙一重で今回のような事故にならなければ、新潟県中越沖地震での柏崎刈羽原発の事故がさして話題にならずに葬りさられてしまったように、「100年に一度の地震と津波にも耐えた日本の高度原発技術」として、アジアに輸出され続けていたことでしょう。

 しかし、管民主党政権や保安院が素晴らしいパフォーマンスを演じ続け、マスコミや御用学者が精一杯努力し、国民もデモも起こさず、国際的な勧告とずれた評価をし続け、いまだに避難もさせないという大戦果をあげてくれたおかげで、この国が北朝鮮とまったく同じ異常国家であることが全世界に白日のもとに曝されてしまったのです。

既に予言されていた原発震災

 すでに、このブログでも書きましたし、多くの方が指摘されていますが、今回の事件は、今から6年も前の2005年2月23日の衆議院予算委員会公聴会で、神戸大学都市安全研究センターの石橋克彦博士によって、予言されていました。

 以下、要点を抜粋します。

地震の活動期に入った日本

 日本列島の大地震の起こり方には、活動期と静穏期がある。これは地学的、物理的に根拠がある。敗戦後のめざましい復興と高度経済成長、都市は、たまたま日本列島の地震活動の静穏期に合致していたためである。現代日本は、大地震に洗礼されることなくできあがった。人類がまだ見たこともない体験したこともない震災が生ずる可能性が非常にある。

起こりうる原発震災

 地震は自然現象だが、震災は、社会や文明に生じる社会現象だ。将来、具体的に起こりうるのは、広域複合大震災、長周期震災、超高層ビル震災、オイルタンク震災、原発震災であろう。

いつ起きるか分からない大地震

 1854年には、12月23日に安政東海地震という非常に巨大な地震があり、翌日24日、わずか30時間後に南海巨大地震が起きた。1707年には両者が同時に起きた。そういうことも今世紀半ばにあるかもしれない。そして、東海、南海地震が起きたその年か翌年、2、3年後に首都圏直下で大地震が起こることもあり得る。

 ここ数十年、内陸でも地震がいくつか起きている。神戸の地震や新潟県中越地震はこういう仲間であったと考えらる。

都市型災害、山地災害、大津波……

 1854年と同じ様に広大な断層面が破壊する強大地震が起こると、阪神大震災や中越震災があちこちで随所で同時多発する。つまり、沼津、三島あたりから、尾鷲ぐらいまでの各都市で都市型の震災が起こる。

 それと同時に、山地でも山地災害が起こる。内陸、甲府盆地、諏訪湖周辺、場合によっては北陸も非常に激しく揺れ、激しい災害が生ずる。

 さらにこの場合には大津波が生じる。房総半島から尾鷲あたりまでが大津波で、相模湾から尾鷲あたりまでは非常な大津波で海岸の地形や何かによってはインド洋の大津波に匹敵することが起こる場所もあるかもしれない。

最悪の災害としての原発震災

 原発震災は私が1997年に作った言葉だが、東海地震の予想震源域の真上に中部電力の浜岡原子力発電所がある。日本の場合、53基の原子炉が今あるが、地震には絶対安全だということになっている。中部電力も浜岡原発は東海地震には絶対耐えられる言われるが、地震学的には疑問点がある。

 アメリカでは地震が原発に一番恐ろしい外的要因と考えられている。普通、原発の事故は単一要因故障で、どこか一つが壊れ、多重防護システム、バックアップシステム、安全装置が働いて、大丈夫なようになると作られているが、地震の場合は複数の要因の故障でいろんなところが振動でやられ、それらが複合して、多重防護システムが働かなくなり、安全装置が働かなくなり、最悪の場合には「シビアアクシデント」、炉心溶融や核暴走につながりかねない。

 万一、東海地震で浜岡原発が大事故を起こし、大量の核分裂生成物、炉心に溜まっている核分裂生成物が外部に放出されると、例えば浜岡の3号基は110万キロワットの発電能力を持っているが、そういう原子炉を1年間運転すると広島型原爆の700発から1000発分のいわゆる死の灰が溜まると言われている。その何%か何十%かが放出されば、チェルノブイリの原発事故のようなことが起こる。

 近くに住んでいる住民は急性放射能障害によってすぐ死ぬが、御前崎の場合は南西の風が吹いていることが多いため、放射能雲、死の灰の雲が、清水、静岡、沼津、三島を通って箱根の山を越えて神奈川県、首都圏にも流れてくる。気象条件によるが、12時間くらいすると首都圏にもやってくる。

 地震ではない時に、平常時に仮に万一、浜岡で大事故が起こった時に、近隣住民が放射能で1000人死ぬとする。だが、死者は決してそれだけではない。

 放射能から避難しようと思っても、地震被害で、津波や液状化で道路、橋はずたずたで、建物がたくさん倒れ道路がふさいでいる。逃げようにも逃げられない。原発事故にも対処しようと思っても対処できない。

 普段であれば、神戸のように、自衛隊やボランティアが駆けつけて救出できるが、非常に強い放射能が襲ってくるわけで、おそらくそれは非常にやりにくい。決死隊が行くのか何か分かりないが。さらには、通常の震災による生き埋めの人、救出できる人が見殺しになるのではないか。そうすると死者が数万人にも十万人にも及ぶわけで、こういうことが東海地方で起こりかねない。

 さらに東京では、長周期の振動で超高層ビルが被害を受け、大勢の人がブルーテントで地面に避難しているところへ放射能雲がやってくる。気象条件によっては東京でも放射能レベルがかなり高いものがやってくる。

 そういう場合、本来は、人々は密閉された建物内に避難すべきだが、怖くて避難できないし、避難しても水が無いから暮らせない。

 急性死亡はないが、そこにとどまっていると、対外被爆、体内被爆で長年のうちにはがんで死ぬ恐れがある。また、子孫に遺伝的な影響を与える。避難しなければならないが、膨大な首都圏の人間がどうやって避難するのか、それは大変なことだ。

 そういう首都圏を翌年、東京直下地震が襲うと、放射能のために修理もできないでいた、壊れた、損傷した超高層ビルが轟音を建てて崩れることが起こるかもしれない。東京は放棄せざるを得ない。首都を喪失するわけだ。
 静岡県や神奈川県という国土も長年人が住めない、土地が喪失、国土が喪失される。そもそも水源が汚染されるから、水が飲めない、人が暮らせないということになる。

 だいだい東海地震が起こった途端に世界のその国際市場、日本の国債が暴落するとか、で、世界経済は混乱するし、原発震災が起こればこれは物理的にも社会的にも日本の衰亡に至りかねない。

 現在の日本の国土とか社会情勢は、非常に地震に弱くなっていて、地方の小さな山村とか地方都市も、地震に襲われた時、本来はそこが自立して、完結して、震災後の対応をしなければいけないが、そういうことができない状況になっている。

 若狭湾に十三機の商業用原発があるが、ここも地震の危険性が高い。全国の原子力発電所の原発震災のリスクをきちんと評価し、危険度の高い物から順に段階的に縮小する、必然的に古い物から縮小されることになる。そういうことを考えない限り、大変なことが起こり、世界が一斉に救援に来て同情してくれるでしょうが、逆に世界中から厳しい非難を浴びることにもなりかねない。

イギリスが石橋博士に着目しはじめた

 驚くほどの予言性です。これこそ、真の学術研究者というべきものでしょう。そして、石橋神戸大名誉教授が最後に語ったように、いま、日本は世界から同情される状態から、世界中に放射能をまき散らすことで非難を浴びる状態になりつつあるように思えるのです。
 例えば、3月12日には英国のガーディアン紙が「原発への警告無視」(Japan ministers ignored safety warnings over nuclear reactors)と題して、石橋克彦博士の警鐘をとりあげています。

 ですから、是非とも、衆議院のこの論文や今の日本の原発の現状を英語にして、欧米のジャーナリストやNGOにジャンジャン送る、あるいは、取材してもらうのです。欧米のNGOは佐久間智子さんが指摘しているように、世界のグランドデザインを描かんとする欧米の「国家の動き」に対応しています。欧米の巨大NGOは、国際機関を動かすほどの政治力を持っています。ですから、3月29日のブログに書いたように「環境団体グリーンピースが独自の調査計測を行い、避難区域を広げるよう政府に要請したことに対して、原子力安全・保安院が『信頼のおけるものではない』と評価したということは、いよいよ日本政府そのものが、利権にまみれ国際評価を無視し、暴走し始めた「無法者国家」だとの評価を受け始めたな、と私は感じるわけです。彼らのこの感覚を刺激し、日本の原発を止めるための最も有効な手段として、最強の武器、グローバリゼーションという「外圧」を使うのです。

架空の対話

 例えば、私が米人、英人、仏人や独人であるとすると、こんな対話がなされるのではないでしょうか。

「このガーディアンの記事は面白いな。日本の地球物理学者、イシバシは14年も前にフクシマ原発震災を予言してたそうだ。なかなか、日本にも骨のある学者がいるではないか」

「ですが、日本のNGOから送られてきたイシバシの国会での発言を見ると、フクシマよりもハマオカの方が危ないとしていますな」

「どれどれ。ふーむ、この内容を読むと、ハマオカというのは、フクシマ以上に危険だな。当然、ハマオカには手は打たれているのだろうな」

「とんでもない。日本の国会はイシバシの警鐘を無視してますし、ある原発技師は、数値改竄が厭で辞職しています」

「なんだと。このイシバシの歴史研究によれば、過去の日本では早ければ翌日、それ以外も半年後とかに地震が多発していると書いてあるではないか。こんな危険な状態で、第二のフクシマが起これば、東京も壊滅だ。もう我が国も援助しきれん。難民があふれ出てきたら、迷惑極まりない。早急にストップさせておかねばならん」

「ですが、驚くべきことに、日本のチュウデンはまったく原発を止める気がないそうです。しかも、活断層のうえに原発が乗っているのに、事故を想定していない。3月16日にこれから、高さ12mの防波壁を作るから大丈夫だと言っています」

「明日にも地震が起きるのかもしれんのだぞ。なんという危機感のなさだ。日本の中央政府の閣僚や官僚の頭脳停止状態になっていることはわかるが、チュウデンは一民間企業にすぎん。ローカル・オーソリティーの力を持ってストップできんのか」

「無理です。英国の大学で学び市民派とされるシズオカのガバナー、カワカツもいますぐ全部止めると発言していませんし、地方自治が皆無のこの官僚統制国家においては、民選の地方知事が多少反発したところで、中央秘密警察が罪をでっち上げ、逮捕されて終わりです。フクシマでもサトーがそれでやられました」

「まずいな。民意はどうだ。我が国のように市民運動やデモでも起これば、それは、多少は原発産業へのプレッシャーになるのではないか」

「いいえ、それも無理です。ヤマグチでは反対している住民を司法が罰しています」

「なに、司法もか」

「おまけに、国民の圧倒的多数が、放射能を安全なものと信じています。例えば、この国で最も知性が高きインテリとされ、ベストセラー作家でもあるカズヨ・カツマーという人物は出演したテレビで、チェルノブイリでは甲状腺癌増えただけ。同じ番組のコメンテーターは50人しか死んでないと語っています」

「50人?。世界保健機関(WHO)と対立し、原発を推進している国際原子力機関(IAEA)ですら、4000人と述べているし、ニューヨーク科学アカデミー(New York Academy of Sciences)が出した医学データの分析から1986~2004年にかけ98万5000人が死んでいることは常識だぞ。このカツマーとかいう人物は英語が読めんのか」

「いえ、一月に100冊の洋書を読みこなす超インテリだそうです。そして、テレビで『プルトニウムが安全だ』と述べたため、主婦たちも安心しきっています。国営放送NHKも官僚に牛耳られ真実を報道しませんし、テレビに出るのは、ゴヨウ学者といわれる人物ばかりで、マスコミも真実を書きません。ひたすら、安全と叫びまくっています。情報が統制されている中で、真摯なごく少数の研究者が警鐘をネットで発していますが、ごく少数の国民しか見ていません」

「なんという馬鹿だ。やはりマッカーサーが12歳の子どもといったのは本当だったな。子どもに核を持たせるなど、危なっかしくて見ておられん。さっさと玩具はとりあげてしまおう。このまま放置しておいては、いつ核がはじけるかわからん。北朝鮮と同じだ」

「では、具体的には」

「日本国内の原発を直ちに停止せよ。これ以上多国に放射能をまき散らすな。食料、石油その他の物資すべてを経済封鎖する。この警告に従わなければ、軍事力を持って進駐し、日本の原発業界と官僚組織を解体する」

「旧大日本帝国の解体と同じというわけですな」

「左様、東京裁判を持って、国際社会の警告を無視し、放射能汚染地域内で屋内退避を強要し、無実の市民を放射能や餓死等で殺戮した政治家、官僚、財閥の要人、御用学者、そして、エセ・ジャーナリストは、ことごとくデス・バイ・ハンギングだ」

地震と共存する文明を

 いささか暴走したフィクションとなりました。私は愛国主義者ですが、この非常事態に悠長なことは言っていられません。日本原子力ムラだけで通用するムラ社会の論理は、世界ではまったく通用しません。そして、こうした外圧ならば、通産省の生みの親、白州次郎もこのシナリオを草葉の陰で喜んでくれるに違いありません。

 最後に、石橋克彦博士の警鐘のまとめをまとめておきましょう。

「私たちの暮らし方の根本的な変革が必要である。これは、地震や自然災害に対して受け身、消極的にやむを得ずやるのではなく、これ以外のあらゆる問題に通じる。エネルギー、食糧、廃棄物、環境、そうした問題にすべて通じる。地方分権にも通じる。

 そもそも日本列島にいる限り、地震と共存する文化を確立しなければならない。従来は自然と対決する文明で、それに対して最新技術でバックアップしようという考え方だったが、自然の摂理に逆らわない文明を我々は作っていかなければならない。

 開発の論理、効率、集積、利便性の論理、東京一極集中、都市集中の論理を見直し、保全、小規模、多極分散、安全と落ち着き、地方自立、国土の自然力と農村漁村の回復をキーワードにした根本的な変革が必要である」