没落屋

吉田太郎です。没落にこだわっています。世界各地の持続可能な社会への転換の情報を提供しています。

原発事故で文明は転換する

2011年03月29日 22時49分46秒 | 脱原発

原発事故で文明はシフトする

 池田信夫氏はあくまでも経済として今回の原発事故を捉えていますが、氏のように経済の範疇ではなく、今回の原発事故は、文明のあり方を問いかける本源的な問題だという論調もでてきています。私が最も共感を覚えたのは、元鎌倉市長で、普通の市民が記者になって生活や仕事の現場からニュースを書くインターネット新聞『JanJan』を創刊した竹内謙氏が3月 25日に書かれた「統一地方選は『文明転換』の出発点に」です。

 竹内氏はこう述べます。

「この惨事は自然への畏怖、畏敬の念を軽んじた科学技術万能主義、消費至上主義に対する天の啓示と考えるべきであり、いずれの選挙も「自然とともに生きる」「足を知る」といった日本の伝統文化を取り戻す「文明の転換」を最大のテーマにしなければならない」

 朝日新聞が3月28日に掲載した宮崎駿監督の発言でも、氏は大震災への思いを次のように語っています。

「埋葬も出来ないまま瓦礫に埋もれている人々を抱えている国で、原子力発電所の事故で国土の一部を失いつつある国で、自分たちはアニメを作っているという自覚を持っている(略)。残念なことに、私たちの文明はこの試練に耐えられない。これからどんな文明を作っていくのか、模索を始めなければならない(略)。僕たちの島は繰り返し地震と台風と津波に襲われてきた。しかし、豊かな自然に恵まれている。多くの困難や苦しみがあっても、より美しい島にしていく努力をするかいがあると思っている。今、あまりりっぱなことを言いたくはないが、僕たちは絶望する必要はない」

レジリアンスは大切、けれどその概念を矮小化させてはいけない

 ということで、「文明論」にまで話が来てしまいました。なお、原発とは無関係ですが、文明の流れで自己宣伝をさせてもらいます。この一年、「文明と農業」の関係を私なりにずっと考えてきました。その結果をまとめたのが、4月7日に築地書館から販売される新刊「文明は農業で動く~歴史を変える古代農法の謎」(300P)です。ご関心のある方は、目を通していただけると幸いです。

 なお、本書では「レジリエンス」という概念について、若干、紹介しています。「なんじゃそりゃ、初耳だわい」と言われる方が多いと思いますが、知の女王、ベストセラー作家、勝間和代さんが、3月18日に「レジリアンスを高めよう」というブログを書いて、レジリアンスについて次のように述べています。

「このような時に、ぜひ、みんなで共有したいキーワードが「レジリエンス(resilience)」
です。日本語に訳すと「困難な状況にもかかわらず、うまく適応できる力」となります(略)。
レジリエンスが強い人は、次の3つの特徴をもっています。
1.肯定的な未来志向性
-未来に対して肯定的な期待を常にもっていること
2.感情の調整
-感情のコントロールを行えること
3.興味・関心の多様性
-さまざまな分野に興味・関心をもっていること

 違います!。いえ、正確に言えば、間違いではないのかもしれませんが、概念の矮小化しすぎです。このように言論界に絶大な影響力がある人が、レジリアンスを個人レベルのスキルに矮小化されてしまうと私としては非常に困るのです。「レジリアンス」の概念は非常に大切で、長期的に人類が生き延びるためにどうすればいいのかという国際的な研究も進められています。

 例えば、「地球システムの境界-人類が安全に活動できる領域を探る」では、科学者たちは、いま地球では9つの超えてはいけない限界があり、人類はすでに3つを超えてしまっていると警鐘を鳴らしています。農薬や放射能のような化学物質汚染も危険ですが、化学肥料、つまり、人工的な窒素固定による窒素循環サイクルの攪乱と生物多様性の破壊が最大のリスクとしています。この境界を越えると、もう後戻りができません。ですから、私は近刊「古代農法本」のあとがきでこう書きました。

「ちなみに、医療やケアでは「レジリアンス(回復力)」という概念が着目されているが、気候変動等グローバルな環境問題に対していかに社会がリスク対応するかでも「レジリアンス」が着目されている。スウェーデン王立科学アカデミー・ベイエ生態経済学国際研究所やストックホルム大学のストックホルム・レジリアンス・センターのカール・フォルケ教授が代表的な研究者のひとりだが、彼らが着目しているのも、リスク回避や回復力に富んだ伝統社会の生態系管理と社会規範の叡智なのだ」

 英語で「レジリアンス」を検索すれば、単なる工学的、心理的なレジリアンスが、保全生態学、社会マネジメント、経済のあり方、文明論とあらゆる分野にわたって広がってきていることがわかるはずです。国際研究グループ「レジリアン・アライアンス」やその創設者、偉大なカナダの生態学者バズ・ホリング博士がヒットするはずです。

 ホリング博士は、レジリアンスの概念から、「いまのような超密度高度情報社会は、事故が起こるのを待つ状態にある」とはるか以前から警鐘していました。

 ホリング博士のインタビュー内容を読み直すたびに、今回の原発事故をあらかじめ予言していたように思えてなりません。ですが、ホリング博士は、同時にそうした状態は、新たな芽、新しい再生のときだとも語っています。さして影響力が大きくない事故は、文明のトランジションのための契機だとも述べています。そして、ホリング博士によれば、そのシフトの時には、個人が大変に力を持つのです。例えば、「トランジション・タウン」創設の鍵となった概念もレジリアンスでした。

 NPOトランジション・ジャパンは、こうレジリアンスを紹介しています。

「トランジション・タウンが目ざすものを象徴する言葉に「レジリエンス」という言葉があります。レジリエンスとは、「外界の大きな変化に対し、パニックを起こすことなく、また対症療法的にとりあえずその場をしのぐのでもなく、しなやかに対応する力」を意味します。「地力」あるいは「底力」と言ってもいいかもしれません。私たち一人ひとり、そして私たちが住む地域がレジリエンスを高めることによってのみ、気候変動とピークオイルという「双子の危機」を初めて乗り越えることができるのです」

 いずれ、そうしたこともブログで紹介していきたいと思っています。本日も、駄文を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


メディアによってこれほどの違い

2011年03月29日 22時20分51秒 | 脱原発
個人でできる放射能とのつきあい方

 私はもともと活動家でもありません。人とのコミュニケーションも苦手ですし、部屋に閉じこもって一人孤独に小説とかを読んだり、こんな文章を書いているのが性にあっていると思っています。「孤独な散歩者の夢想」ではないですが、文明論のようなものが好きでして、それ以外はまったく苦手なのです。自然エネルギーのキットの作成スキルとかを持っていれば、世の中に役立てるのでしょうが、それもありません。

 とはいえ、世の中にはこうしたスキルや知恵を持つ人々がいます。まずは、放射能に汚染され続けていくであろうこの国土の中で生きていくスキルが掲載されたサイトを紹介しましょう。知人でもある「市民科学研究室」の上田昌文氏のグループが、「放射線リスクをどうとらえ、その中で、いかに健康に暮らしていくか。例えば、ヨウ素の半減期は8日間ですが1日程度の溜めおきでもかなり減衰するので、冷蔵庫や冷凍庫で冷やして飲もうと具体的な知恵を提言されているのです。
 是非、ご覧ください。ここです。

いつ問題は解決するのだろう

 で、今日のぼやきです。どうも、状況はチェルノブイリ原発事故以上に深刻化してきたようです。京都新聞は3月28日に「土壌汚染『チェルノブイリ強制移住』以上、京大助教試算」と報じています。




 東京電力福島第1原発の事故で、高濃度の放射性物質が土壌などから確認された福島県飯館村の汚染レベルが、チェルノブイリ原発事故による強制移住レベルを超えているとの試算を、京都大原子炉実験所の今中哲二助教がまとめた(略)。文部科学省の調査で20日に採取した土壌から放射性のヨウ素1キログラム当たり117万ベクレル、セシウム16万3000ベクレル、雑草からヨウ素254万ベクレル、セシウム265万ベクレルが確認された。土壌中のセシウムは通常の1600倍以上だった。今中助教は、土壌のセシウムで汚染の程度を評価した。汚染土を表面2センチの土と仮定すると1平方メートル当たり326万ベクレルで、チェルノブイリ原発事故で強制移住対象とした148万ベクレルの2倍超、90年にベラルーシが決めた移住対象レベルの55万5000ベクレルの約6倍だった。




 また、フランスのル・モンド誌も3月28日に、次のように報じています。

 環境団体グリーンピースは独自の調査計測を行い、原発から北西40キロにある福島県飯舘村で毎時10マイクロシーベルトの放射線を検出したと発表し、現在20キロまでとされている避難区域を広げるよう政府に要請している。

 なお、同誌は「グリーンピースの計測数値について原子力安全・保安院は「信頼のおけるものではない」としている」との保安院の見解もあえて付記しています。

 この一文から、保安院が信頼できないというメッセージが私には読み取れるのですがどう思われますか。
また、3月29日の毎日新聞のネット記事「福島第1原発:汚染水対応 班目氏、「知識持ち合わせず」は、こう述べています。




 班目春樹・原子力安全委員長は28日夜の記者会見で、東京電力福島第1原発のトレンチでみつかった高放射線量の汚染水への対応について「どのような形ですみやかに実施できるかについて、安全委ではそれだけの知識を持ち合わせていない。まずは事業者(東京電力)が解決策を示すとともに、原子力安全・保安院にしっかりと指導をしていただきたい」と述べた。首相への勧告権限も持つ専門家集団トップの発言だけに、その役割について議論を呼びそうだ(略)。班目委員長は23日に会見するまで、国民に対して見解や助言の内容などを説明することがほとんどなく批判を浴びていた。




言論を判断する絶好のチャンス

 うーんますます不安になってきます。とはいえ、これは単なる科学技術論ではなく、原発を巡る言論、メディア・リテラシーを磨く絶好のチャンスともいえます。例えば、3月29日のル・モンド誌は「佐藤栄佐久元福島県知事インタビュー」と題して、佐藤元知事の次のような発言を載せています。




 今回の大災害は、人間の不注意過信によって引き起こされたもの。経済産業省から独立した監視機関を設置することが数年前から叫ばれているが、現時点では監督官庁は原発建設を推進するための行政機関で、原発に対して監視の目を光らせることができない。日本は民主主義国家と言われているが、それはある程度までで、多くの決定が不明瞭な利益を算段として決定され、多くの分野が汚職によって生まれている。




 ところが、日本の新聞にはこうした記事はアップされない。また、ドイツ在住の梶川ゆうさんは、2011年3月28日に「福島原発危機に対するドイツの反応―福島は警告する」という警告を発しています。とても良いメッセージなので長く抜粋します。




 13日の日曜からはドイツでは、あらゆる原子力の専門家、グリーンピースの原子力専門家やチェルノブイリの事故を詳しく分析した学者などが、福島で今なにが起きているのか、最悪の場合なにが起こり得るのか、それを防ぐにはどういうことができるのか、という推測と分析を詳しく読むことができたし、友人に聞くと同様の番組がテレビでも多かったと聞いた(略)。

 地震・津波が起きて原発の事故に繋がってから2週間の間に、ドイツではありとあらゆる報道が行われた。新聞や雑誌でも、これだけのことがあって、こんなに落ち着いていられる日本人のメンタリティや社会構造をあらゆる角度から説明しようとする日本学者や日本人との関係が長い人物などの論評も出たし、最悪の事態としてなにが今想定できるのか、また東電や政府が出している数字や状況説明から、なにが起きているのかを分析する声、その政府や東電の対応の甘さを批判する意見など、ありとあらゆるものがあった(略)。

 これだけ「教育水準」が高いはずの日本で、どうしてこんなに放射能、原発に対する知識が低いのかも、とても不安である。どうして、放射能の測定値を、たった1度のレントゲンと比較する政府の説明に対して、「馬鹿にするな」とすぐ反応できないのか。放射能は風向きによってこれだけ影響の仕方が変わるのに、どうして花粉情報や気象情報のこれほど多い日本で、放射能の行方を天気予報で出さないのか、どうしてこれだけのことがあって、まだ「原発は必要だ」という原子力ロビーの撒いた嘘を信じ、自分たちの生命に対する危機感をもたずに「しょうがない」と今までどおり生活していけるのか、あるいはこれ以上いやな話は聞きたくないから、耳をふさごうとしているのか(略)。

 ドイツでもこれからは原子力発電に依存した社会からの脱出をめざそう、とはっきり意識を固めた人がこれだけいる。でも、日本は今、自分たちが直接、恐ろしい状況にさらされているのだ。健全な危機感を取り戻してほしい。どんなに遠く離れていても、日本は私のふるさとで、このような地獄図が現実になってしまったということは、身を切られるほどの痛みである




 これに対して、3月27日の「朝生」では、日本を代表する最高の知性、知の女王たる勝間和代さんはこんな発言(動画)をしています。

 どうも、世界から見るとかなりズレている感じがします。
ハイロアクション福島原発40年」が3月25日に出した緊急声明のメッセージの方が私には響くのですが、どうでしょうか。

 とはいえ、真っ当な知性もあるようです。ベストセラー作家、内田樹さんは3月24日にブログで「兵站と局所合理性について」と題してこう述べています。




 今回の震災の危機管理を見て、「これは日本陸軍だ」と思いました(略)。「戦力の逐次投入」というのも日本軍の宿痾だったはずという指摘があった。まったくご指摘の通りである。ノモンハンもガダルカナルもこれで歴史的な敗北を喫した。
 福島原発の処理を見て「戦力の逐次投入」という「必敗のパターン」を踏んで官邸と東電が動いているのを見て、不安になった人は多いはずである。「いまのところ問題はありません。事態は好転しています」という「大本営発表」的な楽観論を繰り返す原子力学者たちの顔つきにも私たちは気鬱な既視感を覚えたはずである。どうして日本は「こんな国」になってしまったのか

 そして、内田さんはこう分析します。

 エネルギーも食糧も水もほとんど外部に依拠しているといういびつな一極集中構造が「火山列島」で国家を営んでゆくというプログラムにおいて、どれほどリスキーなものかは小学生にもわかる。

 内田教授は、思いついたことをランダムに列挙するとして以下を提言されています。

(1)すべての原発の即時停止と廃炉と代替エネルギー開発のための国家的プロジェクトの始動
(2)「できるだけエネルギーを使わないライフスタイル」への国民的シフト
(3)首都機能の全国への分散
(4)首都圏に集中している人口の全国への分散




 私は賛同します。本当に正しいことならば、小学生にでもわかるように解説できるはずです。石油がなくなるから原発だという人がいますが、ウランも無限にはありません。そして、ウランも「ピーク・ウラン」がすぎたといわれています。来るべきアフター・ピーク・オイルの時代に向けて、窮乏生活のトレーニングをしておくにこしたことはありません。

 ところが、これに対して、やはり、勝間氏とともに「朝生」に出ていた著名ブロガーである池田信夫氏は3月27日に「エコ幻想の終わり」でこう批判するのです。




 今回の原発事故で、人命は1人も失われていない。今後も死者はゼロに近いだろう。損害は数兆円と見込まれるが、これは東電の1年分の売り上げにも満たない。もちろん損害賠償を行なったら東電の経営が破綻するおそれは強いが、その損害は「原発の好調な運転がもたらされる利益」の数年分程度だろう。

 つまりメディアの伝えるおどろおどろしい話とは違って、福島第一原発の事故の損害は、想定された最悪の事態よりはるかに小さいのだ(略)。「すべての原発の即時停止と廃炉」を実行したら、電力の27%が失われる。いま首都圏は、電力が1割ほど不足しただけで大混乱だが、それをはるかに上回る混乱が全国に発生するだろう。
 内田氏は原発を止める代わりに「できるだけエネルギーを使わないライフスタイルへの国民的シフト」や「首都機能の全国への分散」などを主張するが、それを誰がどうやって実行するのか。民主主義国家が、人々に今より貧しい生活を強制することはできない(略)。 

 よくも悪くも、日本はこれから原発を捨てざるをえないだろう。そこに待っているのは内田氏が夢見ている「エコな生活」ではなく、今の首都圏のようなエネルギー不足が恒常化し、産業競争力が失われ、マイナス成長の続く世界である。国民がそれを望むのであればやむをえないが、彼らはいったん得た豊かな生活を捨てないだろう。潤沢で安いエネルギーとそのリスクは、トレードオフになっているのだ。むしろ今回の事故ではっきりしたのは、内田氏のような経済性を無視したエコ幻想が破産したということである。




 いかがですか。私は、この池田信夫氏の論調には、とうてい賛同できません。氏は「民主主義国家が、人々に今より貧しい生活を強制することはできない」と述べていますが、私からすれば「原子力帝国主義国家が、民主主義の名の下に、人々に豊かな生活を強制している」のです。これは市場原理とは別です。市場が万能ならば、消費者には、原発で作られた電気と自然再生エネルギーで作られた電気を選ぶ権利があるはずですが、今はそれがありません。あるいは、マイナス成長を選択する権利もあるはずですが、それを実践する政治選択肢もありません。不公平です。

 一個という個人に立ち返れば、まず、安眠できる生活が大前提です。その上で、民主主義国家や独裁国家の選択があります。キューバは非民主主義国家ですが、少なくとも安眠はできましょう。モノは乏しいが、避難所に食料が届かず餓死するということはないでしょう(続)。


放射能についての科学的知識を広めよう

2011年03月29日 01時09分09秒 | 脱原発

いささか異常な不安の精神

 年度末のお役所は人事異動のシーズンだ。ここ数日、長野県外の友人・知人から「○○に異動することが決まった、元気?」といった電話をもらっている。

 それに対し、「そんなのんきなことを言っている場合か。日本が壊滅するかもしれないこの非常時に」と口走しり、頭が狂ったと思われてしまった。

 たしかに、原発事故以来、私の精神は病んでいる。このブログを日々、訪れてくださっている100名近い方々と、私のこの異常な感覚をわかちあいたいと思っている。

 くどいように繰り返すが、日々、安眠できずにいる。不安なだけに新聞やテレビの報道が信じられず、京都大学原子炉実験所の小出裕章さんのラジオを聞いたりしているのだが、状況はどうもますます深刻なようだ。

 とにかく、現場で頑張っている方には本当に頭が下がるのだが、それをバックアップする体制がどうも弱いと思えてならない。例えば、3月25日のル・フィガロ紙の「福島から1万キロにある仏原子力安全研究所が原発を見守る」という記事を読むとこうある。




「3月12日以来、フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)の約100人の専門家が日夜、福島の状況と波及結果を分析するために動員されている。 原発で何が起こっているのか。もし原子炉の損傷が悪化し、燃料のプールが冷却されなくなったら、住民はどのレベルの被曝を受けるのだろうか。IRSNの緊急対策室がこれらの疑問に答えようと努力している(略)。日本から来る情報は少なく、その上、この緊急対策室には日本語を話せる職員がいない。IRSNは数日前からフランス電力とアレヴァから派遣された2人の日本語通訳の手助けを受けられるようになった(略)。約100人のボランティアの科学者はコンピュータを備えた2つの大きな部屋で昼夜24時間態勢で働いている。通信などの設備はそのすぐ隣の大きなテーブルを中央に置いた2つの事務所に整えられている。すべての机には紙に書かれたグラフ、図解、地図、原子炉に関する書類が置かれている。

「これが我々の最新の分析です」と緊急対策室長マルシャル・ジョレルがテーブルに置かれた8ページの書類を見せながら言った。これが福島の現在の状態のまとめです。原子炉、貯蔵プール、放射能放出などに関するまとめ作成は1日に2回行います(略)」




 ということならば、なんとなく安心できるではないか。ところが、日本では相変わらず風向きへの注意もシュミレーションも出てこない。「日本というムラ社会には、全体をコントロールするだけの「ガバナンス力がないのではないか」と不安でしかたがなかったのだ。

 とはいえ、朗報もある。例えば、3月26日の日経の記事には、「東京電力、フランス電力や仏原子力庁などに支援要請」とある。

 また、米国も心配しだしたようだ。同じく、日経新聞は「米原子力規制委員会のヤツコ委員長が来日「深刻な状況」とあり、「これまでに例のない問題は深刻な状況が続いており、米国で最も優秀な専門家が全力で日本への支援を続けている」と述べたと報じている。

 東電や政府の対応の無能さを批判するのは簡単だが、ヒステリックにケチを付けるだけでは問題は解決しない。是非、日本の危機を救ってもらいたいものだ、と思っている。

地震は怖い、やっぱり原発は止めてほしい

 だが、今回の問題が解決しても、不安は去らない。全部の原発が止まらない限り、地震でまた壊れてしまうのではないか、という懸念が残るからだ。以下のリンクで、石橋克彦元神戸大学教授の警鐘が無料で読める。

①「迫り来る大地震活動期は未曾有の国難である」(2005年衆議院予算委員会公聴会での発言・テキスト)
②「原発震災」(PDF)

 ネットを見るとドイツでは日本の原発事故を受け、25万人が反対デモを行ったという。だが、日本の銀座でのデモはたった1200人だ。本当にこの国では原発は止められるのだろうか。

私にできること

 だが、不安におびえていてもしかたがない。自らの脳が不安と恐怖で発狂しそうで機能しないときには、最も頭脳明晰で冷静な人物の判断に思考回路をゆだねてしまうといい。

 で、枝廣淳子さんのブログを見ると、3月27日に「放射線に関する情報を(少しでも)自分で判断できる力をつけるために」とあった。また、3月17日には「ノーチラス研究所レポート「東日本大震災と津波による原子炉損傷の短中期的影響」の翻訳もされている。

 夏の冷房が計画停電云々というレベルではなく、長期的な日本のエネルギー政策まで海外が心配して提言してくれているのだ。そう、私たちは一人じゃない。

 で、枝廣さんにヒントをもらい、私にやれることを考えた。

 まず、一番身近なものは、私が勤務している農業大学校だろう。幸い私が担当しているのは「生物学」だ。この授業の関連で、放射線の持つ生物的な危険性を「補講」等でやることはできる。

 広瀬隆氏はアジテータ-としては立派だが、不安をあおりたてることはまずい。小出先生の本を買い、あくまでも科学の見地から放射能の危険性と脱原発、自然エネルギーの可能性を語るのだ。枝廣さんや田中優さんのようなカリスマ性はなくても、科学的な情報を市民や生徒にわかりやすく伝える能力は多少はあるだろう。

 地震とプレートについては、30年近くも前のことだが、一応、大学で地球科学を学んだ以上、普通の人以上には知識がある。石橋元教授の本も持っているし、内容はだいたいわかる。こちらは、かなり突っ込んだ講義ができるだろう。

 ということで、これから原子力のお勉強を始めます。出来る範囲で長野の市民にも無料で出前講座を開きたい。というよりも、今回の事故が少なくとも長期化することがわかった以上、すべての学校、小中学校レベルから、先生が放射能について教えるべき時代が来たと思うのだ。

 私が小学校の時には、光化学スモッグがあるたびに、サイレンがなった。それと同じように、気象予報があるたびに、屋外で体育も止めるといった時代になると思うのだ。

 ということで、今日の思い付きですが、何かまた良いアイデアがあったらお知らせください。また、やっていないようであれば、「なんだ、この口舌の輩が。男は不言実行だよ」とご批判ください。

 ここ数日、原発原発と騒いで、職場でもいささか奇人扱いされていましたが、ようやくマスコミも問題が長期化することをいいはじめ、放射能について若い生徒の健康のために補講を考えていると言う話を上司にしたところ、「それはいい。必要なことだ」と言ってもらいました。嬉しいことです。

 紹介したリンクの元ネタは、ほとんどが飯田哲也さんのツイッターからのモノですが、いちいち出典にお礼をいっているときではありません。わかちあってください。また、本日もつまらぬ文章をおよみいただきありがとうございました。


憂鬱なる日々

2011年03月27日 13時17分06秒 | 脱原発
 昨日は長野は季節はずれの雪が降り、一日ヒッキーをしていました。今日も粉雪が舞っています。普段は気づかずにいた自然の四季の変化に感謝しなければならないと感じています。先ほど、オーストラリアのヘレナ・ホッジさん宅にいる友人、鎌田陽司氏から「ヘレナさんから、故黒澤明監督の映画(1990年)を紹介された」とのメッセージがメーリング・リストに入ってきましたが、原発事故以来、私がまず見たのが、この『夢』の原発が爆発したシーンを描いた「赤冨士(動画)」と自然とともに生きる「水車のある村(動画)」でした。このシーンの撮影に使われたのは長野県安曇野市にある「大王わさび農場」なのだそうです。

 さて、昨日は、枝廣淳子さんの「緊急時迅速放射能影響予測(SPEEDI)ネットワークシステム」の記事を御紹介しましたが、24日の読売新聞の記事を読むと

「計器が故障していてデータがなく避難の役に役立たなかった。安全委は、放出量を特定しない計算も行っていたが、結果を公表せず、専門家の批判を受けていた」のだそうです。

 ああっ、なんということでしょうか。仕方がありませんので、原子力資料情報室にあるドイツ気象庁の「福島第一原発からの放射能放出の予測」のリンクを張っておきます。動画がご覧いただけます。うち、明日(28日・上)と明後日(29日・下)の画像をコピペした予想が下のとおりです。

 



 もちろん、これはシュミレーションです。日本国内での観測データに基づく、きちんとした「予報」がでると良いと思います。ですが、29日の原発の沖合いの太平洋上にある茶色をした「スポット」に着目してください。ちょうど距離でいうと長野あたりです。つまり、29日の風向きが内陸に吹くと仮定すれば、私のいる地域を放射能雲がおおうことになるわけです。

 さて、26日(土)に炉心から大量の放射能が漏れ出ていることがわかり、昨夜1時まで「マル激トーク・オン・ディマンド 第519回」を見てしまいました。

あえて最悪のシナリオとその対処法を考える(動画)」と題し、飯田哲也氏(NPO環境エネルギー政策研究所所長)、小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)、宮台真司(社会学者、首都大学東京教授)氏らが登場しました。

 マスコミで言われているのとは違い、状況はかなり深刻です。18日の小出さんのインタビューの内容は、ものはここにテキストがありますが、26日でも、小出先生はこう語られています。

・使用済み燃料プールは剥き出しになっているので原子炉本体よりは管理は比較的楽。問題は、原子炉本体を冷やしていけるかにある

・原子炉が壊れていると言われているが、原子炉には、炉心、圧力容器、そして、圧力容器を含めた全体を包んだ格納容器がある。炉心はすでに壊れてる。圧力容器は壊れていないが、格納容器は損傷しているところが多くあると思う。

・原子炉が最悪の状況に至る可能性もないとはいえない。私が恐れているのは炉心が溶けて落ち、メルトダウンが起きた時に、水蒸気爆発が起こる可能性。

・その時に、格納容器が壊れてしまえば、チェルノブイリ以上の惨事となる。

・3基ある原発のどれかひとつがそうなれば、発電所にとどまることができなくなり、必死でやっている作業ができなくなり、すべて壊れる。
・17日の段階で収まれば、周辺地域も戻れる可能性があると述べたが、残念ながら状況は悪化しており、40キロ圏まで「放射線管理区域」が広がっている。

・放射線管理区域とは、厳密に法律を適用するのであれば無人にすべきところ。飲むことも食べることも寝ることもできず、入れるのは原子力関係の専門家のみで、完璧な防護服に身を固めガイガーカウンターを手にしながら行動しないといけない場所。

 小出先生は、「放射能、見えない恐怖と知っておくべき「本当の話」(週刊朝日 2011年03月25日号配信掲載)で、「福島第一原発1号機の46万キロワットと3号機の78.4万キロワットを合わせるとチェルノブイリ以上の規模になる。チェルノブイリ原発事故では、日本であれば、法令で放射線管理区域にあたる1平方キロあたり1キュリー以上の汚染を受けた土地は原発から700キロ先まで広がりました。これは、東京をはじめ、名古屋、大阪まで入るほどの広さに匹敵します」と述べています。

 また、フランスのル・モンド紙の報道を日本語で紹介するサイトでは、原発がさらに別の危険性を抱えていることを指摘し、日本の権力構造も分析しています。こうした記事を読まれることをお勧めします。この原発事故問題は、政治やメディア・リテラシー、そして、放射能がもたらす生物としての人間の問題など、様々な課題を投げかけています。

 「安全だ、安全だ、直ちに問題がない」では、旧帝国陸軍の「必勝の信念」となんら変わりありません。


明日は安眠できる社会を作ろう

2011年03月25日 00時36分09秒 | 脱原発

■情報密閉が不安をあおる

 飯田哲也さんのツイッターに元新聞記者である鶴岡憲一氏の素晴らしい記事がでていました。

3月24日独立系メディア E-wave Tokyo

 勇気をいただける素晴らしい記事ですので是非お読みいただけると良いと思います。

 また、枝廣淳子さんの3月24日の記事「緊急時迅速放射能影響予測(SPEEDI)ネットワークシステムをめぐる展開から学べることは」も素晴らしい内容です。

 枝廣さんご自身が「メールニュースに掲載されている内容・情報はそれぞれのご判断の上、出所を添えて、引用・転載くださってけっこうです。ただ、どの情報も「その時点での情報」であって、のちに修正・追加等される可能性がある情報であることをご理解・ご明記いただければ幸いです」とありますので、以下少し抜粋します。

「今回の震災・東電原発事故を受けてのさまざまな状況の展開から、私たちはいろいろと大事なものを学びつつあります。ふだんの活動領域が温暖化対策であれ、何であれ、今回の状況とその展開の仕方から、学び、今後に活かしていかなくてはならないと思っています(略)。
「政府の国民不信(事実を伝えたらパニックを起こすのではないか」→「情報を出さない」→「国民の不安が高まる」→「政府の国民不信がますます高まる」→……
という悪循環の構造が、今回もあちこちで見られますね」

 共感します。まさにそのとおりですね。

「国民の側も、ある不信レベルを超えてしまうと、今度は政府が仮に事実に基づいて「大丈夫」と言ったとしても、「本当? また何か隠しているんじゃない?」と疑心暗鬼で、「大丈夫」をそのままは受け取れない、「大丈夫」といえばいうほど不安になる……という感じになってしまいます」

 ああ、そうなのです。だから、私も、我が民族の言葉で書かれた日本語のニュースよりも、地球の反対側の見ず知らずのオーストリア人の横文字を頼りにしてしまったのでした。

■ネットワークを大切にしよう

 枝廣さんの分析を続けます。

「この件に関する一連の流れを見ていて、今のところの私なりの「学び」は、

・ふだんからそのテーマに詳しい市民のネットワークがいちばん情報が早く、詳しく、専門的なので、そういうネットワークや情報につながっていることが大事(他の件でも、市民のネットワークで話題になった数日後にマスコミでも取り上げられる、ということがよくあります)

・市民が市民に呼びかけることも大事だが、市民の心配や不安、活動の広がりやうねりを、こういうことを理解し、わかってくれる政治家に伝えて、政治の場面で動かしてもらうことが大事

・こういうことを理解し、わかってくれ、動いてくれる政治家を大事にしなくてはならないし、増やしていかなくてはならない

・こういうことの重要性を理解し、調べ、問いただし、マスコミで取り上げてくれるジャーナリストを大事にしなくてはならないし、増やしていかなくてはならない

・市民や研究者の動きを、マスコミを通じて、政治家を含め社会に広く伝え、世論を喚起することも大事
などなど」

 本当にそのとおりです。地震と原発事故以来、加入しているメーリングリストの情報にどれだけ、励まされ、安心をいただいたかしれません(実は、今日、この文章の原案を書いている途中に、たまたまアパートのブレーカーが落ちただけなのですが、数十分ほど停電になり、メールも入らなくなり、ネットもつなげなくなり、『ああっとうとう長野にも計画停電がきおったか。もはや情報遮断だ』とあわてふためいていました。まったく、みっともなくてなさけなくなります)

 では、なぜ、大手マスコミの情報からはこうした安心感が得られないのでしょうか。JANJANブログで3月24日に田中龍作さんは「東電情報隠しの裏で進行する放射能汚染」でこう書かれています。

「23日から副社長の記者会見で質問する記者は「社名」と「氏名」を名乗らなければならなくなった。東電側はどの社の何という記者がどういう質問をしたかを把握できる。記者クラブメディアにとっては脅威である。東電に不利になるような質問をすれば広告を減らされる恐れがあるからだ。23日の記者会見でうるさいほど追及したのはフリーランスと雑誌、専門誌などの記者だけだった」

 ああ、戦後、日本の安寧な日々の暮らしの中で無意識に蓄積されてきた膿(私もその存在を許してきた意味では犯罪人の一人ですが)が噴出しているようで暗澹たる気分になってきます。しかし、ここで東電を批判しても、記者クラブを批判しても何も産まれません。

 「フリーランスと専門誌の記者はうるさいほど追求してくれている」

 この一文に着目ください。そう。こういう人たちがまだいるのです。そのフリーランスの記者たちの勇気と矜持にまずエールを送りましょう。そして、田中優さんが提唱されているように、広告を減らされても大手新聞記者の人たちが困らない社会、原発がなくても電気が使える社会システムを作っていく必要があります(まあ、最終的には自給自足の没落社会と思っているのですが、、、、)。

■拡散希望~長期的な安心社会づくりのために

 さて、こうした状況のなかで、小さな一個にすぎない自分ができることはなんなのでしょうか。枝廣さんのブログに励まされ、日々、素人ながら、思いついたことをこのブログに書き込み、もし、できうることならば、皆さんからもアイデアをいただき、実行しようと思っています。

 そこで、今日、職場に向かう途中で、ふと思い浮かんだのが、

「原発ばかりにとらわれていたが、地震の被災者もいる。また、原発で避難している人々がいる。日本が四大プレート(①北米プレート、②ユーラシアプレート、③太平洋プレート、④フィリピン海プレート)に乗った地震・火山の弧状列島であり続ける限りは、今後も被災はあり続けるであろう。その際、キューバのハリケーン防災対策が参考になるのではないか。これをわかちあおう」

 という想念でした。そこで、さっそく、築地書館の土井社長に相談したところ

「この非常時ですからかまいません。弊社としても協力します」といってくれました。

 利益を無視して、私のつたないアイデアに賛同いただいた築地書館のみなさん、本当にありがとうございます。

 そこで、以下の拙著「「没落先進国」キューバを日本が手本にしたいわけ」(2009年10 月築地書館)のうち、今回の被災と関連ある第1節と第2節をPDFで、無料でお読みいただけようにしました。ご関心のある方は、拡散してください。

Ⅳ 国民参加で安全・安心社会を実現する

 1 ハリケーンで死傷者が出ない国①
 1 ハリケーンで死傷者が出ない国②
(②はキューバの現地の被災写真が載っています。メンタル的に見たくない方は①をご覧ください)
    ・災害の方程式‐キューバは国連防災のモデル国
     ・ペットも一緒に避難所に避難
     ・被災はあくまでも自己責任
 2 皆で築きあげる安全の文化
     ・顔が見えるハザード・マップづくり
     ・衛生管理と予防で被災者の健康を保障
     ・世界を視野に入れた防災医療センターの防災教育
     ・ボランティアが総がかりで取り組む災害復旧
     ・教育を通じて安全の文化を育む
     ・格差社会をなくすことが被害も減らす

 3 地元学を生かす安心社会

     ・地元学を生かす安心社会
     ・二度のハリケーンにも挫けずに学校を復旧
     ・地元学で地域の課題を解決する子どもたち
     ・反貧困の「正義」とは「希少資源の配分問題」
  
 なお、キューバから学べると思ったことをここで簡単にまとめておきます。

■国が誇る最高のプロの専門家が、わかりやすくリスクを説明

 キューバでは、ハリケーンが近づいてくると、国営テレビに登場するのは、気象学者です。貧乏国ですから日本と比べ大卒やインテリも少ないですし、一党独裁の共産主義国家ですから、NPOもろくにない。とはいえ、ベストの気象学者が登場し、どのようなリスクが迫っているのかを国民に解説します。米国とは違って美人キャスターが説明するわけではないといいます。日本では、さしずめ、元東芝の技術者後藤博士が、データを得たうえで解説するといった姿になるでしょうか。

 ここで、まず国民に、ハリケーンという危機が迫りつつあること、第一段階の警戒が出されます。もちろん、この措置は接近まで時間のかかるハリケーンだからできることであって地震では使えません。とはいえ、ここでひとつの学びがあります。

■不必要な憶測情報は出さない

 まだハリケーンがどこを直撃するかは予測できない段階で、不必要な情報開示を行うと混乱を招くだけになりますので「ハバナがやられるとか、ピナル・デル・リオが危ない」といった予測情報は一切流されないことです。情報統制をするのです。
 そして、いよいよハリケーンが近づいてきて、本土、例えば、ハバナを直撃することが確実になると、警戒態勢が取られます。

■便利さよりも命の安全を優先
 まず国家電力供給公社、日本だと東電になりますが、ここが強制停電を行います。ハリケーンで町が水浸しとなり、電線が見えないとおりの下を流れていると漏電で感電する恐れがあります。そこで、あらかじめ電気を切ってしまうのです。文句を言う人もいます。ですが、便利さよりも、リスクを避けること、人命を優先するのです。

■コミュニティの助け合い・秩序だった避難

 そして、ハリケーンに襲われる危険が近づけば、入り江の小さな村まで、国営バスが避難援助に向かいます。これも予防措置であることが大切です。ハリケーンが来て救いにいけなくなるまでに事前に広範囲の人々を逃がすのです。今回の避難距離をいきなり広げるといった後手後手とは正反対です。実に国民の半分すら避難させたことがあります。日本の例でいえば、東日本(東北・関東)が危ないとなれば、北海道、西日本、四国、九州に国民の半数が一時的に退避するわけです。これを可能としているのが「連帯の精神」です。

 連帯の精神で頑張りましょう。本日もつたない文章を書いているこのサイトに100人もの人が訪れてくださいました。感謝申し上げます。


お天気にご注意

2011年03月24日 23時41分43秒 | 脱原発

■なぜ私はいつまでも安眠できないのだろう

 朝、鳥のさえずりとともに目覚めると「ああ、今日も無事、生かしていただいた、神様、ありがとう」と感謝する日々がこのところ続いています。被災地とは比べものにならない平穏無事な日常が続いているのに、なぜか仕事も集中できません。私が臆病で精神が異常なだけかもしれません。とはいえ、この高ぶった精神状態を今日の記録として残しておくことは大切なのだと思って書いています。

 では、なぜ、原発事故以来、ずっと安眠できずにいるのでしょうか。多くの方々がボランティアで元気に活躍しているのに中で、ウジウジしているのでしょうか。

 それは、原発のためです。原発のゆくすえが気になって仕方がないのです。政府やニュースは進展の兆しがあると報道していますが、いま、どのようなリスクがあって、それがいつまで続くのかまったく見えないためなのです。

 今日、3月24日のネット上の読売新聞を見てもこんな記事があります。

「原子炉の被害について尋ねられた同委員長は「水素爆発した1号機の核燃料はかなり溶融している可能性がある。2、3号機に比べて、最も危険な状態が続いている」と指摘。原子炉内の温度、圧力の異常上昇が続き、危険な状況にさしかかっているとして、炉心が入っている圧力容器の蒸気を放出する弁開放を行い、炉の破壊を防ぐ検討をしている」ことを明らかにした。

 また、同じく読売のネット記事はこうも書いています。

 同原発1~3号機の原子炉の燃料棒は露出し、海水の注水作業が続けられている。231~3号機の原子炉の燃料棒は露出し、海水の注水作業が続けられている。23日、1号機の炉内の温度は一時、400度と設計温度(302度)を上回ったが、注水によって温度が下がっている。しかし、圧力の上昇が続き不安定な状態になっているため、班目委員長は24日にも、圧力容器内の蒸気を放出するかの判断をすると述べた」

 そして、今日の原子力情報資料室の後藤博士のレクチャーを聞いても、とりわけ、1号機が極めて危険で予断を許さないことがわかるのです。

「ええっまた出すのか。ではいつ出すのだ。出すとなると何が吹き出でるのだ。出るとすれば、何がどこまで飛んでくるのか。また飛散して、土壌や河川が汚染されてしまうではないか」

 という不安がよぎるのです。そこで、事故以来、オーストリア気象地球力学中央研究所作成の拡散シミュレーションの英文記事を前日に読んでから寝るようにしています。

 原文はドイツ語ですが、数日後には英語のPDFがでて、それを読めるのです。いくつかご紹介してみましょう。

■オーストリアのサイトを見れば明日がわかる

3月18日の記事

危険領域の天候

 現在、危機領域の高層は西風です。地上の風速は比較的弱く、雨も降っていません。まもなくこの風は南西方向に変わりかなり強くなりましょう。3月20日(日)には前線が通過し大雨となります。その後は北風が予想され、東京周辺地域のリスクが高まります。

拡散モデル

 拡散モデル(Dispersion model)の結果から、放射能雲(plume)が海へと広まっていることが示されます。放射能雲は、18日(金)現在、東南へと広がっており、19日(土)には東北に向かいます。



図:18日、東南へと広がった放射能雲と19日の予測

 その後、3月20日(日)と21日(月)には、再び日本の領域が影響を受けるでしょう。


図:20日(日)の拡散予測

なお、シミュレーションの色は、原発周辺は赤色で実効線量の最高値が100ミリ・シーベルト/時です(ウィーンにあるIAEAが発表した情報に基づく)。紫色は推定される100ナノ・シーベルト/時の実効線量範囲を示し、これは1年間を浴びても自然の放射線量よりも少ない量です。

【専門用語】
実効線量(effective dose)
放射線が人体に与える影響の大きさを表す量で、単位がシーベルト

CTBTOの放射能データ

 群馬県高崎市にある「核実験全面禁止条約機関(CTBTO:本部ウィーン)の観測所(施設運用者:独立行政法人日本原子力研究開発機構)は、3月15日に、いくつか放射性核種を検出しました。ヨウ素131、バリウム140で、ヨウ素131の濃度は15Bq m-3です。また、日本からの放射能は、ロシアのペトロパブロフスクにある観測所にも達したように思えます。3月15日には見られなかったいくつかの放射性核種が検出されているのです。なお、ヨウ素131の濃度は高崎で検出されたものの4桁以下です。

3月22日の記事

危険地域の天候

 前線が危険地域を横切り福島と東京の雨はあがりました。風は弱くほとんどが北風から東よりです。このため、原発から内陸部に空気が吹いてくることが可能です。23日(水)と24日(木)は、西風で、ほとんどの空気は太平洋に向かって流れます。しかし、25日(金)には、新たな擾乱(じょうらん)がこの地域にあることが予想されます。再び、放射能が内陸部に運ばれるポテンシャルがあります。

【専門用語】
地球の大気圏では時間とともに刻々と変化する比較的小さな乱れが常に発生している。このように大気が乱れる現象を気象学では擾乱(disturbance)と称している。

拡散モデル

 拡散モデルの結果によれば、3月22日(火)に放射能が内陸にもたらされることを示しています。23日(水)には放射能雲は太平洋に流れます。24日(木)も雲のほとんどは太平洋に運ばれますが、原子炉の北部や南部の内陸部は再び影響を受けるかもしれません。

 色は五段階で「E」は、現在の推定線量が10 mSv/h(25×25km2)と同等の地域を示しています。汚染地区(領域A)の外縁の紫色は、自然の放射線量0.3マイクロSv/hに対応しています。

CTBTOの放射能データ

 3月19日現在、CTBTOによる放射能のデータによると、低レベルの放射線が、太平洋上のハワイ、ウェーク諸島(Wake Islands)、米国東海岸で観測されています。ハワイのヨウ素131のレベルはmBqm-3のオーダーで、米国バージニア州中央部に位置する都市、シャーロッツビル(Charlottesville)ではほぼ検出限界(μBqm-3)で、健康上のリスクはなんらありません。

■最初の排出量の評価

 さて、この日のオーストリアの報告には、以下のように量の報告が出ています。

 3月12日~13日にかけて、原発からの放出物のほとんどは太平洋に向かい、米国カリフォルニア州のサクラメントにあるCTBTOの観測所までたどりつきました。一方、3月14日~15日にかけては、放出物のほとんどが内陸部に流れ、群馬県高崎市にあるCTBTOの観測所に達しました。ミュレートした拡散係数と測定値に基づき、私たちは大まかにソースターム(source term)を評価することが初めてできました。

【専門用語】
 炉心損傷等の事故があると燃料が溶解し、核分裂生成物が炉心から放出され、一定の漏れ率で環境へ放される。環境への影響を評価するには、核分裂生成物の種類や化学形、放出量を明らかにする必要があり、これらを総称してソースタームと呼ぶ。

 ヨウ素については比較的均質で、サクラメントと高崎市の測定値は、1017 Bq/日というソースタームから説明できます。チェルノブイリの原発事故で生じたヨウ素131の総排出量の20%にあたる41017Bqが、福島原発から4日間で放出されました。

 一方、セシウム137の状況は少し異なります。最終的に米国に達した雲の中のヨウ素131とセシウム137の比率は約30で、これはチェルノブイリ事故と同様です。しかし、高崎市の比率は4でした。これは、事故後の2番目の2日間にずっと大量のセシウム137が放出されたことを示します。これをあわせると、ソースタームは、最初の2日間で約31015Bq、2番目の2日間では、31016 Bqでありましょう。二つをあわせれば、チェルノブイリの事故でのセシウム137のソースタームの約50%に及ぶかもしれません。

 なお、23日付けのロイターの記事は次のように報じています。

「オーストリア気象地球力学中央研究所は23日、福島第1原発の事故後3~4日間に放出されたヨウ素131とセシウム137の量が、旧ソ連チェルノブイリ原発の事故後10日間の放出量の約20~50%に相当するとの試算を明らかにした。日米の測定結果を基に算出した。
 同研究所によると、事故後3~4日間のヨウ素131の放出量は、チェルノブイリ原発の事故後10日間の放出量の約20%。セシウム137の放出量は、同約50%に達する可能性があるという。

 フランスの放射線防御原子力安全研究所(IRSN)は22日、福島原発の事故で漏えいした放射性物質の量はチェルノブイリ事故の約10%との見解を示している。 

 チェルノブイリの事故では原子炉が爆発したが、福島原発の事故では放射性物質が比較的ゆっくりと漏えいしている。一方で、放射性物質が陸上に拡散したチェルノブイリとは異なり、福島原発の事故では放射性物質の多くが太平洋上に飛散しており、両事故の比較は難しい。

 つまり、元ネタがこのような記事になっていることが原文をみればわかるのです。フランスの評価は低いのですが。。。。

■コンピューターで明日を読もう

 では、明日はどうなるのでしょうか。3月24日の最新版がドイツ語で出ています。以下は、ドイツ語→英語の機械翻訳で強引に訳したもので正確さは欠けますが、だいたいのニュアンスがわかるかと思います。なお、ヨウ素の動きが動画でご覧いただけます。

危機地域の天候

 現在、危険地域には前線があり雨が降っています。東京でも一時間ほど観測されました。降雪限界は約1000mです。風は弱くほとんどが北風から東風向きです。このため、原発からの風が内陸に吹きつけることができます。

 明日、25日(金)も、大きな天候の変化は予想されません。さらに降雨前線が危険地域をまたぐと予想されます。水曜日には前線はその地域を抜けるでしょう。北西風が卓越し、放射能は太平洋上に吹き消されるでしょう。

拡散モデル

 拡散モデルの結果によると、放射能は24日(木)、25日(金)、26日(土)は、内陸に運ばれ循環することを示しています。放射性の粒子が洗い落とされ、地面に落ちることができます。水曜日には、再び放射能雲は太平洋上に運ばれましょう。

 3月10日(8UTC)の事故の始まりから、原発から希ガスキセノン133のシミュレーションでは、東ロシア、西海岸米国、アラスカ、カナダに達しています。降雨によって大気中から粒子は取り除かれますが、ガスは残るのです。

放射能データ

 CTBTO(3月18日から24日)の放射能データは、低レベルの放射がロシアやカリフォルニアだけでなく、アラスカと西カナダでも観測されていることを示しています。アラスカのサンド・ポイント(Sand Point)観測所のヨウ素131はmBqm-3、カナダのバンクーバーでの1桁よりも低く、いかなるどんな健康上のリスクもありません。

 以上です。


安眠するために原発を止めよう

2011年03月22日 23時58分00秒 | 脱原発

■偉大なリーダーと冷静な情報発信者

 農産物の放射能汚染情報も全国を駆けめぐり、福島原発の問題も一向に解決しない中、日々不安な面持ちで情報を集めている小心者です。

 しかし、こうした時ほど、逆に人間の真価が問われる時です。先ほどまで、長野市内の友人宅で原発事故をめぐる動きについて情報交換をしてきましたが、今回の大事件の中、最も感銘を受けたのは、いち早く国民に励ましのメッセージを流された天皇陛下と放水した東京消防庁隊員に対して涙を流し「まさに命がけの国運を左右する戦い。生命を賭して頑張っていただいたおかげで、大惨事になる可能性が軽減された」と語った石原都知事の姿だったという点で一致しました。

 3月21日付の産経新聞ニュースは、『活動報告会に参加した隊員の一人は「あの強気の知事が涙を流して礼を言ってくれた。上から物を言うだけの官邸と違って、われわれのことを理解してくれている。だから現場に行けるんだ」と話した』と報じています。
 
 フィデル・カストロ前国家評議会議長も、前ブッシュ米国大統領との対立が深刻化した折、戦争となった時には、まず私が死ぬとデモ行進の先頭に立ちました。その姿を目にしたごく普通のキューバ庶民も「あれは、パフォーマンスじゃあない。フィデルは、ピックス湾事変の時にも自ら戦車に乗って真っ先に現場に駆けつけたんだから」と語っていました。

 これがリーダーだと思います。佐々淳行元内閣安全保障室長も「東京消防庁は毒ガスや放射線にも対応できる高圧放水車や化学防護車を持っていて、陸上自衛隊や警視庁よりも優れた性能を備えている。なぜ、政府は真っ先に東京消防庁に要請しなかったのか。危機管理能力がゼロとしか言えない。またカナダには高性能な化学消防艇があるので、世界各国に協力を呼び掛けて日本へ集結させるべきだ。これは危機管理の問題でなく、政府に統治能力が欠如している『管理危機』の問題だ」と語っています。

 文筆業に携わる者も同じです。作家、村上龍氏はニューヨーク・タイムズに英文で素晴らしいエッセイを寄せられました。その和訳も以下のサイトで見られます

 村上龍氏はこう語りかけます。

「全てを失った日本が得たものは、希望だ。大地震と津波は、私たちの仲間と資源を根こそぎ奪っていった。だが、富に心を奪われていた我々のなかに希望の種を植え付けた。だから私は信じていく」

 私はこれまで著作やブログで他人事のように、ピーク・オイルや食料危機について語ってきました。しかし、多くの犠牲者を出し、世界を震撼させたこの国は、また世界に多くの希望の種もまきました。ドイツをはじめ多くの国が脱原発に向けシフトするチャンスを産み出したのです。

 いま、私の加入しているメーリング・リストや常時訪れるサイトには、地震や原発を巡る膨大な震災情報が寄せられています。とても読み切れないほどです。

 その中で、素晴らしいものを紹介し、ご覧になっていなければ是非皆さまとわかちあいたいと思います。まず、枝廣淳子さんが3月18日に書かれた『この状況で私たちにできる・すべき(長期的に)いちばん大事なこと』です。

 枝廣さんはこう語りかけます。

「「素人考え」で大いにけっこう! この状況の中で、私たち一人一人が何を思い、何を心に描き、何を願うかが、国を動かし、次の時代の日本の姿を作っていくのだと信じています」

 なんというクールさ。枝廣さんのメッセージを読み、いささかパニック状態で恐怖に日々震えていた私のマインドは、映画アポロ13号で愛妻が作ってくれた白いカーディガンを身に付け、パニック状態に陥った管制室の中で、こう呼びかけた飛行主任、地上管制官のジーン・クランツの姿とダブりました。クランツ主任はスタッフにこう呼びかけます。

「Let's everybody keep cool. Let's solve the problem(さあ、まず、みんな落ち着いて。それから、皆で問題を解決しようじゃないか)」

 そして、こう続けます。

「but let's not make it any worse by guessing(けれども、いい加減な憶測で事態を悪化させることだけは避けよう)」

■放射能は世界を巡る

 ということで、枝廣さんの提言に甘え、私なりの素人考えをここで皆さんとわかちあいたいと思います。

「いま、直ちに国内で稼働中の原発を一時停止すること。そして、可及的速やかに火力、そして、究極は自然エネルギーと省エネ社会へシフトすること」

 これが、今最も必要だと感じていることです。このことを理解していただくため、以下のサイトをまだご覧になっていない方は、是非クリックしてみてください。いずれも、メール・リングリストやウェブ・サイト等で教えてもらったものです。

○ドイツの報道機関・シュピーゲルがHPで公表したシミュレーションデータ

○フランスの放射線防護原子力安全研究所が、独自に行った福島原発からの放出放射能の大気中拡散シミュレーションの結果(3月12日~20日の1時間ごとセシウム137をトレーサー)

○オーストリアの国立中央気象地球力学研究所が行った福島原発からの放射能雲のシミュレーション(3月19日~21日)

 はい、どうもありがとうございました。

 放射性物質の濃度は別として、こうしたビジュアルな画像を見れば、問題が、30キロとか80キロ圏とかのオーダーの問題ではないことがおわかりいただけるかと思います。

 こうした情報を元に、21~22日には関東を放射能雲が覆う可能性ありとして、スウェーデンの原子力安全・保安院は、在日スウェーデン人に、福島第一原発から半径250km圏内の40歳以下の人に、ヨード剤の服用を勧告しました。

 在日仏大使館は関東地方に住むフランス人に対し退去を推奨し、西日本に逃げるための交通手段を大使館が用意し、仏に帰るための臨時便も次々と本国からやってきました。また、関東地方に残る人には家屋にとどまり、窓や戸に目張りをするよう呼びかけ、 17日にはフランス人に対して大使館がヨード剤の配布をしたとあります。

以下、出典はこちら


 恐怖を無理にあおっているわけではありませんが、これがすでに起こってしまった現実なのです。 

■政治や経済とは違う長期オーダーで動く地質現象

 さて、次に私のつたない理性はこう考えます。西風が吹いていてくれて良かった。だが、これが、東風や南風、あるいは、長野に雪が積もる秋から冬の時期に起きていたらどうなるのだろうか。あるいは、西風が吹き続けるとしても、これから、また起こるかもしれない地震のトラブル等の事故によって、西南日本や九州等、他地域の原発がはじけたらどうなるのだろうか。

 私は原発は素人ですが、学生時代に地質を学んだことから、プレートが動くことで日本が地震国であることは理解しています。例えば、地球科学者、石橋克彦元神戸大学教授の『大地動乱の時代―地震学者は警告する』岩波新書(1994)は是非読んでいただくとよいと思います。

 そして、今日の原子力資料情報室による元原子炉格納容器設計者、後藤政志博士の発言によれば、たとえ、今後状況がベストな方向に推移したとしても(となることを心から願っていますが)、福島原発が冷却して、「石棺」で固められるまでには2~数年のオーダーの時間がかかるのだそうです。しかも、地震活動は人間の政治活動や経済活動とは違い、数年、数十年のオーダーで起こるものなのです。

 どんなに日本のそれ以外の原発が技術的に安全で完璧なものであるとしても、今回のような予想を超えた自然事象が起こった時にそれに対応するだけの、ガバナンス力があるようには思えません。例えば、浜岡原発を14mの津波が遅い、なんとか切り抜けられたとしましょう。しかし、その数日後に再び10mの津波が襲うということがないとはいえません。その時にはコンクリート壁は耐えられるのでしょうか。

 日本人は村レベルでの問題解決は世界でも最も優れていると私は思います。石原都知事のような立派なリーダーとそれに忠誠を尽くす優れた消防隊員がいれば、その現場、現場では問題はきっと解決できると信じます。しかし、仮に静岡の浜岡原発や新潟の柏崎刈羽原子力発電所で同じような事故が起こり、地震で道路が寸断されていたら、消防車は現地にいけるのでしょうか。港が破損していたら船でも接岸できるのでしょうか。

 こうした村レベルを超えた国家スケールでのガバナンスにはどうも長けている民族のようには思えません。

■神話からの脱却~原発を止めても電気は足りる

 さて、こうしたことから、稼働中の原発は速やかにストップし、明日から安心して安眠したいと願っているわけですが、そうはいっても、いきなり停電生活はできないというのが非被災地の生活実感ではないでしょうか。

 今日も、長野市内で何人かの方と中に原発の話を織り込んだ雑談をしましたが「江戸時代の蝋燭生活には戻れない。電気が足りない以上、やむを得ない」という意見が圧倒的でした。

 そこで、堀内良樹氏が書かれている以下の情報をわかちあいたいと思います。

日本の火力発電所は、震災と関係なく現在半分以上休止しています。それは、原発を推進するという政策のためにです。実際には、それらをフル稼働させれば、真夏のピーク時でさえ停電は起きません。

約8年前、原発がほとんど点検で止まった時、ピーク時にその電力供給量を需要は越えませんでした。さらに電力価格体系(企業が使えば使うほど単価が安くなるシステム)を見直し、少し省エネすれば、さらに余裕ができます。

今回は、災害の地域の火力発電所も被害を受けたので電力が不足しました。ただ、その他の地域は、原発を止めることは、供給量としては、全く問題ありません。

そもそもそれを想定して、原発と同時時に火力発電所を建設してきたのですから、常に、施設は、火力発電所:原発=3:1 に保たれています。

これだけの原発災害が起き、日本の原発総てを、いったん停止し、総点検(防災の総見直し)をするのは、とても普通の考えで、逆にそれをしないのはなぜかと、他の先進国では疑問に思う事でしょう。

もっと日本は、普通の感覚を持った、まともな国にならなければなりません。原発絶対推進という前提から始まっているので、企業も政治家もはっきり言って思考停止しています。そこで、被災後の発言もごまかしごまかしの連続になってしまうのです。

各原発が、地震・津波対策を完了し、OKのところからまた再開すればよいことです。これだけの事が起きてもそれができないようでは、そもそも原発を持つ資格がない国です。

そして、原発周辺の住民30キロ圏内に、本当のことを教える、原発防災マニュアルを配布すべきです。これは先進国では常識です。それらが整うことを、再開の条件にすべきです。


 また、私が加入しているメーリング・リストでは以下のような意見がありました。

「私も長らく市民活動をやってきていますが、そういうネットワークは原発の危険性をこれまでも主張していますし、原発系の署名も昔からやってきました。いわば、すでに問題を知っていた人たちのネットワークの中で情報が流通します。すでに知っている人やわかっている人に重ねて情報を流して署名の数を増やすより、これまであまり原発に関心のなかった人たちに新しい気づきを与えるきっかけになる活動の方がいいと思います。

 小さなムーブメントでもいいので、自分の周りで新しい風を吹かせられたら素敵だと思います。一人ひとりがハチドリになって飛び回っちゃいましょう。小さな羽のはばたきでも、みんなが羽ばたけば台風みたいな風を起こせるかも」

 これは、とても大切な指摘です。私が少し前まで調べていたネットワーク理論の考えとも合致します。私個人の考え方にすべて賛同する必要はありません。すべての情報はあなた自身の頭で判断してください。しかし、役立つ情報を是非、他の方々とわかちあってください。世界は、スモール・ワールドで、6人のつながりで、すべてつながることができるのです。

  でも、本当に電力は足りているの?と思う方は、是非、田中優さんと鎌仲ひとみさんの「持続可能な社会づくり~ 2010.5.16」をご覧ください。続とあわせてもたった20分です。つまらないニュースを見るよりも、田中さんから未来の元気をもらってください。

 本日も、つたない文章を最後までお読みいただき、ありがとうございました。



福島原発の情報サイト

2011年03月22日 12時07分39秒 | 脱原発
■原発から約200キロ離れていてもいまだに安心できずにいる自分という存在
平成23年3月16日、天皇陛下は、東北地方太平洋沖地震に関するおことばを発せられました。

「被災した人々が決して希望を捨てることなく、身体を大切に明日からの日々を生き抜いてくれるよう、また、国民一人びとりが、被災した各地域の上にこれからも長く心を寄せ、被災者と共にそれぞれの地域の復興の道のりを見守り続けていくことを心より願っています」と述べられました。

 私の思いも陛下と同じであり、被害に遭われた方々に心よりお見舞い申しあげるとともに、震災の復興に努力される人々にお礼をもうしあげたいと思います。

 私は居住する長野市でも何度か大きな地震によるゆれがありましたが、とりあえずは無事であり、長野市安茂里にある県の環境保全研究所による「空間放射線等の測定結果」は、過去の平均値、0.038μSv/h(マイクロシーベルト/時→約330μSv/年)が、3月16日(水)から本日も0.050μSv/hと約1.3倍となった状態が続いています。

 とはいえ、地震による被災者はもちろん、福島原発の問題はまったく解決されておらず、さらに大気中に悲惨した放射能による環境汚染(海洋、土壌、河川水、生物、農産物)が懸念されます。

 原発事故を巡っては数多くの情報が発信されていますが、情報ソースによって内容が異なり、私一個としても、日本国中央政府、経済産業省の機関である原子力安全・保安院、東京電力から発信される情報、NHKをはじめとするメディアで、原発の専門家と言われる学識経験者の発言をまったく心に曇りなく安心感をもって信じることができないのが、現状です。

■日本と異なる海外メディアの評価
 例えば、本日の共同通信の記事によると、仏国の原子力安全局のラコスト局長は21日の記者会見で「福島第1原発の事故で放出された放射性物質による汚染は、今後数十年続く可能性があると表明した。また汚染が避難指示区域である原発から20キロ範囲を超えて広がる恐れも指摘。放射性物質の放出は既に深刻であり、なお続いている。日本にとり汚染との闘いは何十年も続くことになるだろう。特に土壌への残留放射性物質の問題が深刻で、日本政府はまだ放射性物質の汚染地域の地図を示していないが、原発から20キロの範囲を超えて広がることもあり得ないことではない」と述べています。

 また別の担当者は「気象条件を考慮に入れると、汚染地域が原発から100キロ圏に広がることもあり得る」と述べています。
つきましては、この数日私が参考にし、チェックしているリンクを以下のとおり作成しました。

■福島原発についての最新情報を入手
原子力資料情報室
飯田哲也氏のツイッター
ISEP 環境エネルギー政策研究所

■飛散した放射性物質についての情報を入手
京都三条ラジオカフェ
OurPlanet-TVオルタナティブメディア
武田邦彦中部大学教授のウェブサイト

■原発のあり方をめぐる市民の見解
枝廣淳子さんの環境メールニュース
JanJanBlog市民の市民による市民のためのみんなでつくるニュースブログ
ピープルズ・プラン

 さて、このウェブサイトでは、有機農業等についての個人的な情報を発信してきました。今回の未曾有の危機を私たちが乗り越えられることを心から願っていますが、同時に、このブログで情報を提供してきたように、農業、ピーク・オイル、脱原発を巡って劇的なパラダイムシフトが求められることも確かです。

 私個人がやれることは限りがありますが、この数日、まさに原発事故や地震というリスクに対しては、自分を含め誰しもが出も「デモクレスの剣」状態におかれていること。

 とりあえず、今日もこのブログを書き、生きている自分がいるのは、幸運にすぎないことをつくずく感じました。

 いったい、どのような社会を作れば誰もが安心して生きて行けるのか。私のできる範囲で情報を発信していきたいと思いますので、よろしくお願いします。