最近は「産地偽装」の記事が新聞に載らない日はないほど、食に関する不祥事が多くなっている。 そんななかでこの12月に注目したいのは、鶏肉である。 かつて、普通の鶏肉を「比内鶏」として偽って卸してきた業者が、こんなことを言っていた。 「12月には鶏モモの需要が多くなり、比内鶏の供給が追いつかない。欠品にするわけにいかないので、産地を偽装して出荷した」 その背景には消費者のブランド信仰がある。自分の眼を、舌を信じて選ぶのではなく、皆がいいと言うから、あるいは、ラベルに書いてあるからという理由で選択しているのだ。 ▲クリスマス飾りの出現で片隅に追いやられた赤兎馬と関羽(中華街停車場にて) それと、もうひとつ問題がある。12月に鶏モモ肉の需要が高まるのは、クリスマスの関係だろう。会社帰りのお父さんたちが、ケンタッキーやハマケイなどで鶏モモ焼きや鶏かぶと焼きなどを買い求めている光景をよく見かける。 多くの日本人にとっては、クリスマス=12月24・25日=ケーキ・鶏モモ焼き・サンタのプレゼント=歳末の風物詩=業者の販売促進でしかないようであるが、クリスマスというのは「キリスト」の「ミサ」のことで、キリスト教徒がイエスの誕生を祝う行事である。 それがコマーシャリズムと結びついて、こんな日本的行事ができあがったのだろう。 ▲外車に乗ったカンフーパンダ。クリスマスグッズに囲まれて。(永楽製麺所にて) いずれにしても、キリスト教徒ではない多くの日本人が、鶏のモモ焼き・クリスマスケーキといった食料を買わされて、キリスト教に由来する国民的イベントに受動的に参加しているのだ。 キリスト教信仰ではなく、ブランド信仰というところに日本の悲しさがある。 ▲30食限定のクリスマス・ランチ。スモークターキーを食べてみたかった…(中華街にて) わが国のスーパーやコンビニなどでは、12月25日の夜遅い時間になると、鶏モモ焼き・クリスマスケーキの安売りが行われ、閉店と同時に今度は正月用品の販売に向けた展示に転換し、三方に載った鏡餅・ウラジロを使った輪飾り・しめ縄などが並べられる。 そして元旦。普段、滅多に足を踏み入れたことのない神社などに出かけ、賽銭を投げ入れて願い事を唱える。1週間前のキリスト教モードから一転して神道の世界に突入するわけである。 日本では、12月25日を過ぎると一斉にクリスマスツリーなどを片付け、玄関に門松を立てたり、輪飾りを吊るしたりする家も多いと思うが、ヨーロッパの国々では、降誕節というのは12月24・25日だけで終わるわけではなく、1月6日の「主の公現」までがイエス・キリストの誕生を祝う期間なのである。 羊飼いたちが、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見てから13日目。ヘロデ王に遣わされた三人の博士たちが、頭上に現れた星に導かれて、馬小屋を訪ねてきた。 それまでは羊飼いたちにしか知られていなかったイエス・キリストの誕生が、これによって公の存在になったのである。 だから降誕節はまだしばらく続く。日本の教会では1月6日と限定せず、1月2日から8日の間に現れる日曜日が「主の公現」の日とされているため、来年の1月4日までとなる。 冒頭に掲げた写真は横浜雙葉学園の前庭に飾られている馬小屋。もちろん、世間でいうところのクリスマスを過ぎても設置されたまま。たぶん1月5日以降に撤収されるのであろう。 ところで、横浜中華街には一年中クリスマスという店があるのをご存知だろうか。 それは、お粥と行列で有名な「謝甜記」。 この店の外壁をご覧いただきたい。 赤い壁にサンタクロース! このサンタさんは、厳しい暑さの続く真夏でも、この場所で道行く人々を見下ろしているのだ! ずいぶん前のことになるが、このサンタクロースについて、中華街発展会のメールマガジンにこんなことが書いてあった。 『これは謝甜記がサンタクロースのように全世界に知られ、みんなに喜ばれる存在になれるようにとの願いが込められているとか。初代が当時向かいにあったバーのクリスマスの飾りとして置かれたサンタクロースの看板をもらってきたことから始まったそう』 当時、向かい側にあったバーというのは「ノーブル」。中華街には外人バーが多かったので、クリスマスシーズンともなれば街中にサンタさんが飾られていたんだろうね。 一方、こちらは関帝廟通りにある和菓子の「田中家」。 昭和2年の創業というから、もう80年以上続く中華街の老舗だ。 クリスマスがどうのこうと、能書きを垂れてきた中華街探偵であるが、やはり正月が近づくと、餅を買いに走ってしまう。 この日購入したのは、のし餅と上海餅。のし餅はもちろん、正月の雑煮用で、上海餅は青菜炒めなどに投入する普段使い用。 後方のSPAMは頂きもの。ゴーヤーチャンプルーに最適だが、上海餅と一緒に炒めてみっか。 ←素晴らしき横浜中華街にクリックしてね 「ハマる横浜中華街」情報はコチラ⇒ |
上海餅は私も今年買いました。
これ1本と野菜などを炒めると、十分お腹いっぱいに
なる品ができますね。
http://ossanhiker.seesaa.net/article/77414462.html
それにしても、公現日も含め降誕に関してここまで詳しく記述している日記は他にありませぬなぁ。。。とても、参考になりまする。
そうそう、私のアパートでも毎年1月6日まで飾りをしたままでするなぁ。。。
降誕説の記述!
本当に勉強になりました~。
物事の本質を見極めてる感じ、そしてわかりやすい説明が素晴らしい~感動しました~
>その背景には消費者のブランド信仰がある。自分の眼を、舌を信じて選ぶのではなく、皆がいいと言うから、あるいは、ラベルに書いてあるからという理由で選択しているのだ。
ちょっと決め付け過ぎてるように思います。「食べ比べてうまいから
比内鷄を買っている」というひともいるのではないかな?
業者がニセモノを混入させてきたからといって、見抜けずに購入し
てしまう消費者行動を小バカにするようなものの言い方というのは、
私は支持できないなあ。
>それがコマーシャリズムと結びついて、こんな日本的行事ができあがったのだろう。
あたかも日本だけがバカ騒ぎしているみたいな書き方ですが、香港
でもクリスマス時期は、キリスト教とは関係なしにドンチャン騒ぎ
します。単なるボーナスを消費させるシーズンのイベントでしかな
いのは、日本と同じ。
ちょっと違うのは、街の飾りつけ。クリスマスが過ぎたらすぐに撤去
するのではなくて、クリスマス用と新年用の両方を兼ねているところ
かな。それも、新暦の正月ではなく、農暦の正月まで使い続けます。
「生誕快楽」(メリークリスマス)
「新年快楽」(新年おめでとう-西暦用)
「恭喜發財」(お金持ちになりますように-農暦用)
こんな文字が街中に混在するんですよ。シーズンのイベント3つ分の
予算お一度で使うので、とんでもなく華やかです。
SPAMで猪八戒おにぎりかぁ。
いいですねぇ。
上海餅のほうは鍋にも入れられますね。
そうですねえ、あの日の記事、覚えていまする。
なかなか綺麗な写真でした。
乙さんところでも1月6日まで飾っているんですね。
私が勉強させてもらっています。
これからもご指導よろしくお願いします。
お久しぶりです。
いろいろご指摘、情報提供、ありがとうございます。
>ちょっと決め付け過ぎてるように思います
確かに、比内鶏に関わらず、私の場合は、その傾向が強いかもね。仰るとおりです。
>単なるボーナスを消費させるシーズンのイベントでしかないのは、日本と同じ
私は諸外国のクリスマスシーズンを知らなすぎるかもね。行ったことないし。
でも、よく分かりました。
>シーズンのイベント3つ分の予算を一度で使うので、とんでもなく華やかです
へえ~、すごいんですね。行ってみたいな。
ところで、訂正あり。
誤:「生誕快楽」(メリークリスマス)
正:「聖誕快楽」(メリークリスマス)
「生誕快楽」だと、「お誕生日おめでとう」です。
ということで、よいお年をお迎えください。
明けましておめでとうございます。
快楽と書いて「おめでとう」なんですね。
ということは、入学したら入学快楽ですかね。
今年もよろしくお願いします。