遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

ガラス30 糸ガラス枕屏風

2021年03月05日 | ガラス

ガラスの紹介も、いつのまにか30回目になりました。

わざわざブログにのせるのも憚られるようなガラス器がほとんどでしたので、30回記念にあたり少しマシな品を出します(^.^)

 

糸ガラスの枕屏風です。

元々の品を切ってバラバラにして(その方が儲かる)売られていた物です。が、悲しいかな、財布の関係で、そのうちの2枚しか買えませんでした。自分で蝶番を取り付けて屏風にし、ボロボロの枠をカシューで黒に塗って何とか様になりました。

 

木枠の上側、下側には溝がきってあるので、これに上、下一段ずつ加わっていたと思われます。したがって、元々は三段の屏風だったのでしょう。

 

高 19.5㎝、幅(全開) 89.3㎝。明治時代。

ガラス部の大さ:縦 10.8㎝、横 40.8㎝。

 

内海の風景が描かれています。

 

 

 

拡大すると

 

 

縦方向、横方向に、糸のように細いガラスが張ってあることが分かります。

 

糸ガラスの直径は、約 0.7㎜。

内側に縦方向、外側に横方向に、細いガラス棒がぎっしりと木枠に差し込まれています。縦480本、横140本程です。

当然、そのうちの何本かは折れて歯抜けになっています(^^;

 

絵は、外側に描いてあります。

内側から見ると、微小なガラス格子を通し、おだやかな風景が浮かび上がります。

明治になって、ガラスが一般に使えるようになり、ガラス細加工技術も向上すると、いろいろな物に応用されるようになりました。今回の屏風では、極細のガラス棒を組み合わせてキャンバスとしています。そこへ絵を描くは、日本ならではのセンスではないでしょうか。

透明な板ガラスに絵を描く、いわゆるガラス絵は、ヨーロッパや中国では昔から、日本では幕末からあります。しかし、ガラスを通して観る絵は妙になまなましく、ガラス素材を生かした意味がほとんど感じられません。

一方、今回の品では、極細格子を通して、描かれた絵がぼんやりと浮かび上がり、幽玄の世界が広がります。

 

 

故玩館の窓際、テーブルの置いてみました。ふと気が付くと、窓の下には瀬戸内の海が広がっているような錯覚を覚えます(岐阜は海なし県です^.^)

 


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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
遅生さんへ (Dr.K)
2021-03-05 10:37:40
糸ガラスなるものを初めて見ました(^-^*)
幽玄ですね(^_^)

このようなものは、日本にしかないのでしょうか、、、?
外側に絵を描いて、内側から眺めるものなんですね。
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遅生さまへ (くりまんじゅう)
2021-03-05 11:53:28
細いガラス棒を布のように編み込みキャンパスとして
それに絵を描くとは 熟練工でも時間のかかる仕上がりになったでしょうね。
枕屏風という言葉も初めて知りました。

遅生さまが屏風に仕立てたのですね。絵だけのものより
こうして屏風になると とても立派で風格があります。
確かに言われるように 瀬戸内海が広がっています。
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Dr.Kさんへ (遅生)
2021-03-05 12:03:29
和ガラスの図録にも載っていないので、それほど多くは作られていなのでしょう。
こんなに手の込んだ品を考え付くのは日本人だけですね。
どちらが外か内かわからないのですが、せっかくのガラスですから、ガラスを通して見るのが順当と考え、内外を決めました(^.^)
一般的なガラス絵もそうなっています。ただ、透明ガラスの場合は、あまり味わいはありません。
但し、絵を描く場合、油絵や水彩など通常の絵とは色の置き方が逆になります。ガラス越しですから、最初に描いた部分が見え、塗り重ねて上になったところは見えなくなります。順序を逆にして描かねばなりません(^.^)
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Unknown (tkgmzt2902)
2021-03-05 12:07:21
グラスウール、グラスファイバーはよく聞きますが、糸ガラスは初めて聞きました。こんなものがあったのだと感動しました。
拡大された写真では縦横のガラスが見えますが、この上に絵を描くのは特殊な顔料でしょうか?
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くりまんじゅうさんへ (遅生)
2021-03-05 13:13:59
かなり手間のかかった品だと思います。
枕屏風は、文字通り、枕元に置く小さな屏風です。今は全く無用の長物ですが、何となくなまめかしい感じがしますね。
岐阜は海無し県ですから、海の風景、特に瀬戸内海には憧れます。
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tkgmzt2902さんへ (遅生)
2021-03-05 14:49:00
当時は、このような細いガラスが作れるようになって、何かに応用しようと考えたんでしょうね。
ガラスも、グラスウール位の細さ(100分の1mm)になると柔らかくて折れませんが、糸ガラスのように中途半端な細さですとベキベキ折れてしまいます。それを組み合わせて、なおかつ絵具を塗るという発想には脱帽です。
使われている塗料は多分、安物の顔料を膠で溶いたものだと思います。
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Unknown (クリン)
2021-03-05 16:21:01
ちせいさま!!まあなんと風光明びなのでしょう✨✨✨✨キラキラした春の海を見ているようです⤴✨ 朝起きたしゅんかんに、このような絵を見ることができれば一日のんびりと幸せなキモチでしょうね🎵
おひるねの後に夕日に照らされているのを見るのもステキです✨どっちにしろ、海はすばらしいですね🎵
でも、バラバラにされる前の状たいで見たかったです!!
それに、このように手のかかるめずらしい品に着色するのに安物の「顔料」が使われているなんて、そんなことがあって良いのでしょうか!ゆるしがたいことです🐻⚠
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素晴らしいですね♪ (越後美人)
2021-03-05 16:21:09
糸ガラスとは、なんと繊細な造りなのでしょう~
よくこんなに細く出来るものだと、その技術の高さに驚かされます。
また、それをご自分で屏風に仕立て塗までされるのにも驚きました。
光を通して、内海の穏やかな風景がみられて素晴らしいですね。
こんな光景が目覚めと共に見れるのなら、朝起きるのが楽しみになりますね(^_-)-☆
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クリンさんへ (遅生)
2021-03-05 17:55:06
朝の目覚め時、それとも、午後のまどろみの中、どちらが良いでしょうか。
長閑な景色はどこかで見たような気がします。私の場合は、尾道の小さな寺からの眺め(^.^)

絵師の使う顔料は非常に高価でしたから、江戸後期以降、絵の需要が増えるにしたがい、安価な泥絵具が一般的に使われました。今回は明治の品ですから、もう少しマシでしょうが、その系統の絵具だと思います。
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越後美人さんへ (遅生)
2021-03-05 18:04:36
骨董の基本は黒です。明るい色は疵か汚れ。特に木の品の場合は、黒で何とかなります(ごまかせます(^^;)
昔はエネルギーがあったので、大きな六曲一双の屏風などもコツコツと数か月かけて疵を直しました(ごまかしました)(^.^)

こういう風景は、何とも日本的ですね。
光をうまく取り入れることができるのは、ガラスの特製ですが、それを屏風に応用したアイデアには感心します。
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