これまで、強い怨み、怒りをもった女の能画や能面、特に般若について、ブログで紹介してきました。
じゃあ、男はどうなんだ、ということになりますが、どうもピッタリと対応する物がないのです。
鬼女はあるけれど、鬼男はない(^^;
鬼は男が当たり前だから、あえて鬼男とは言わないと一般にはいわれています。ところが、鬼は善鬼から悪鬼まで幅広く、怨念の塊の鬼女に対して鬼男とはいかないのです。
鬼女に対する鬼男・・・しいて言えば、鬼神でしょうか。鬼神は、荒くれた神を表すのですが、時には人間を諫めます。怨念に凝り固まった男の鬼はなかなかいないのです(^^;
それではお話にならないので、能の場合に限定します。
般若系の鬼女に対応する男面は、顰(しかみ)、べしみ、獅子口などです。
今回の品は、古い顰面です。顰(しかみ)は、激しい怒りの男面で、名の由来は、”顔をしかめる”から来ています。
幅15.7㎝ x 長19.1㎝ x 高7.2㎝。重 206g。江戸時代。
江戸時代の初期ー中期と思われる古い面です。
木地の上に胡粉を塗り、さらに黒、赤の彩色がなされています。塗りの剥離が酷いです。
裏面もしっかりと彫られています(顔面によくフィットし、違和感を少なくするため)。また、裏面も黒塗りになっています(汗が木地に浸みこむのを防ぐため)。能面として使われた品だったかもしれません。
奉納面は、顎下が水平になっている場合がありますが、この品はリアルな造りです。
能面、顰(しかみ)の特徴は、
つり上がった眼と、
カッと開けた口、です。
怒りにあふれています。
ただ、塗りが剥がれて、小々滑稽で恨めしそうにも見えます(^^;