私が集めている古面は木彫です。張りぼてや陶磁器などの面はパスしています。しかし、例外的に、どうしても手元に置きたかった面がありました。それが、今回の品です。
幅 13.3㎝x長 21.7㎝x高 9.8㎝。重 1.12㎏。明治ー大正。
漆喰で出来ています。
幕末から明治、大正にかけて、左官職人が土蔵の壁などに漆喰で極彩色のレリーフをつくりました。鏝絵と呼ばれているこれらの作品は各地に残されています。有名な物は、伊豆で活躍したと言われる入江長八が残した長八細工です。
今回の品は、壁の一部をなす鏝絵ではなく、独立した面です。見た所は木彫面ですが、手に持つとずっしりと来ます。
二本の角、金泥の目、大きく裂けた口 ・・・・・ 般若です。
良く出来ています。
しかし、冷静に見てみると・・・
角が短い。
怒りだけがつのった表情で、般若のもつ哀しさが感じられません。
人から大きく外れ、獣のような雰囲気です。
これは、般若というよりも、般若になる前の生成(なまなり)といった方が良いように思います。
しかし、左官職人が、マニアックな生成を知っていて、それを作ろうとしたとは考え難いです。実際のところは、長い角にしたら折れやすいので短くして、その分、怒りの表情を最大限に出したのではないでしょうか。結果として、生成になった(^.^)
時代が経って、表面には、ひび割れが多くあります。
さらに額の際には、植毛の跡がみられます。毛が伸びた状態の生成(般若)は、すごい迫力だったでしょう。
左官職人はこの品を、依頼を受けて作ったのか、それとも手すさびで自分用に残したのでしょうか。謎の一品です。