遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

古面23.やけに無気味な「泥眼」

2022年05月13日 | 古面

先回、先々回のブログで、『葵上』の能画を紹介しました。この能は、光源氏との愛に破れ、葵上に激しい嫉妬と恨みをもった六条御息所の生霊が、病床の葵上に襲いかかるも、僧に調伏され、成仏するという物語です。

怨念を主題にした能ですから、面が重要なアイテムです。六条御息所の生霊がつける面は、前半では泥眼、後半では般若です。

故玩館には、正統派の能面はわずかです。そのかわり、能面もどきは多くあります(^^;

そこで、般若を中心に、ガラクタ面を紹介したいと思います。

なお、例によって雑多な面がまだ数多く控えているので、整理の都合上、タイトルに面番号をふる事にしました。以前紹介した面をざっと勘定すると22枚ほどになるので、今回を23番目としました。

幅 13.0㎝x長 21.6㎝、重317g。近年作(明治ー昭和)。

怨みをもった女の生霊の面、「泥眼」です。

般若になる前の段階の面です。大変不気味です。

この品は、能に使われる目的で作られた物ではないと思います。

まず、あまりに不気味すぎます。典型的な能では、前半にいわくありげな女や老人が登場し、後半では、怨霊、幽霊、神などに変身します。その落差が大きくないと劇になりません。ですから、前半に登場するシテの面は、怪しさを秘めながらも、品格をもった人間の様相でなければなりません。ところがこの面は、異形の相貌です。

また、裏側の彫りは、能面以外の一般的な面に共通した彫り方です。能役者は能面を付けて謡い、舞います。この時、演じ手には違和感なく、演じ手と一体になる面が良い能面です。そのために、能面作者は、裏側も大変力をいれて彫り上げます。結果、裏面も、独立した面のように仕上がっているのです。また、大きさは標準的ですが、能面としては重すぎます。

それはさておき、今回の品は、生霊の面としてはよくできています。

どこから見ても不気味です。

光の当たり具合によっても見え方が変わります。

おまけに、偶然か意図的かはわかりませんが、額には亀裂が走っています。

故玩館には100枚ほど、内外の面がありますが、たいていの面は、どこか愛嬌があるものです。

しかし、この面は不気味さに徹していて、怖い(^.^)

コメント (2)
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