遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

古面24.早成?の「般若」

2022年05月15日 | 古面

時代の痛みが酷い面です。

16.5㎝ x 23.3㎝、重 267g。江戸時代。

般若系統の面です。

しかし、正統派の般若面からは大きくはずれています。

この品でまず目につくのは、通常の木彫面の作り方とは異なる点です。この面の場合、木彫部に直接胡粉を塗って彩色するのではなく、まず和紙を貼って、その上に胡粉を塗り、彩色してあります。それが剥がれて、木部が露わになっています。特に下方部は酷い状態です。

良くできた面です。しかしこの品は、やはり能に使う面ではないと思います。

能面にしては、裏側の造りが甘い。

さらに、

右側には紐穴がありますが、

左側には何もありません。これでは面を着けれません。

この品は、人が被る面ではなく、奉納面の類でしょう。

 

般若系の面としてこの品を見てみると、

金泥が塗られた眼、大きく裂けた口と牙など、般若面の特徴を備えています。

しかし、

頭には角が生えた形跡がまったくありません。

角のない般若?

正面から見ると、チョッとおまぬけの般若さんという感じです(^^;

怨み辛みの塊の顔ではなく、「恨めしいなあ」と半ば諦めの表情ですね(^.^)

下から見れば・・・

おまぬけさんそのもの。

唯一グッと睨むのは、少しうつむいた角度の時だけ。

泥眼 ⇛ 生成、橋姫 ⇛ 般若(中成) ⇛ 蛇(本成)

という由緒正しい般若形成ルートをたどらずに、

泥眼 ⇛ 般若(中成) へと、一足飛びに般若になってしまった面と考えたらいかがでしょうか。

怒りと怨念を増幅に、増幅を重ねて般若に到るのではなく、猛スピードで般若になってしまった。いわば、早成の般若面ですね。そのため、角が生える時間がなかった。結果、怒り、恨みよりも諦めの表情の般若になってしまったのでしょう。

もし、傍の誰かさんが変身したとしても、こんな早成の般若なら安心ですね(^.^)

でも、うつむき加減で睨まれたら怖い(^^;

 

 

 

コメント (9)
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