遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

能画15.人頭燭台で『鉄輪(かなわ)』

2022年05月28日 | 能楽ー絵画

今回の品は、珍しい墨絵の能画です。

70.4㎝ x 95.3㎝。昭和。

作者の詳細は不明です。

タイトルには「夜の祈り」とありますが、能『鉄輪(かなわ)』の前半部の情景描写と思われます。

鬱蒼とした大木が茂る中、何かに憑かれたように女が夜道を急ぎます。

 

能『鉄輪』は、若い女に走り、自分を捨て去った夫に対する激しい怒りと恨みで、鬼となった都の女の物語です。前半は、貴船神社へ参詣をする女に、丑の刻参りによって鬼に変身させるとの神託が下ります。後半、鬼女となった女は、凄い形相で恨みを語り、夫と新妻の人形を激しく責め苛みますが、陰陽師、安倍清明の祈祷により、とりあえずその場を去って行きます。

鬼女が登場する能は多くありますが、最後まで怒りを失わない設定の能は『鉄輪』だけだと思います。鬼女は一時退散するだけなのです。

鬼女のつける面も、怨念がつのった面で、前半は泥眼、後半は橋姫です。

『鉄輪』では、後半部、五徳に燃え盛る蝋燭をつけた鬼女の立ち回りが有名です。しかし、前半部、女が怨念に燃え、鬼女に変身する様も見所です。

今回の絵画の女は、いかにもいわくありげな表情をしています。目に金泥は塗られていませんが、面としては、泥眼と考えてよいでしょう(墨一色の絵だとばかり思っていましたが、ほんのわずかに彩色がなされています)。

 

真夜中に貴船神社を参詣する女 ・・・・・そうだ、人頭燭台。

和ろうそくをセットして、夜を待ちます ・・・・

女が現れました。

蝋燭を燈します。

芯をきらないと、どんどん焔が大きくなります。

危ないので、息を吹きかけて、消しました。

やがて女も、煙のように消えて行くのでした(^.^)

 

コメント (10)
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