鉄地の鍔です。
表側
縦 72㎜、横 66㎜、厚 4㎜、重 110g。
裏側
鉄地に金、銀象嵌の鍔です。模様ははっきりとしませんが、蓮ではないでしょうか。
これは、まぎれもなく武具(の一部)ですね(^^;)
武具、宗教物はご法度なのにどうしてこの品が?
実は、故玩館を改修するとき、長持の隅にポツンと残っていたのです。
物騒なモノには縁がないはずだし?
記憶をたどって見ると、その昔、祖母が幼児の私によく話していました。
「家には、いい刀がいくつかあったのに、進駐軍に出してしまった」
今から考えると、戦時中の供出を免れた何振りかを、戦後の刀狩りに出してしまったことを悔やんでいたのでしょう。
まあ、いずれにしても、アブナイ物は近くにない方がいいです。その点、鍔なら手の上で転がしても安全です(^.^)
それにしても、ボロボロにサビてみすぼらしい。
ここで、パッとひらめきました。
昔、骨董屋のオヤジに教えてもらった方法。
「鉄の錆には、バターを塗れ」
さっそく、冷蔵庫からバターを取り出し、さあ塗ろうとしたところ・・・・コロナのこのご時世に、そんな事に貴重な食べ物を使うのはもってのほか、とのお言葉・・・・まことにごもっとも(^^;)
で、代わりはないかとさがしたところ、手荒れ用のワセリンがありました。暖冬の今年、さして消費せず、たっぷり残っています。
それをすり込んだところ・・・・・
写真でははっきりしませんが、みすぼらしさは薄れ、深みが増しています。ただ、あまり塗りすぎると、厭味なテリが出るので、ここまでにしました(^.^)
年月を経た渋い地肌に、金象嵌、銀象嵌が映えています。
以前、ブログで紹介した銅蟲は、象嵌まがいの金工細工でしたが、これはさすがに本物の象嵌で、鉄地を彫り、金、銀を埋め込んであります。
金象嵌は、デザイン上の装飾?(ワンちゃんの顔に見えなくもないですが(^^;)
銀象嵌は、蓮の花を表しているのでしょうか。
金の点象嵌は、1㎜ほどの大きさです。写真では難しいですが、よく見ると、その1/10くらいの小さな金象嵌も点々と散りばめられています。少し錆を磨いてやれば、もっと多くの極小金象嵌が顔をあらわすでしょう。
こんな小さな象嵌を、どうやって作るのでしょうか。
江戸時代の刀装工の腕には、驚かされます(^_^)