遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

金工1 農耕図皿

2020年04月09日 | 金工

金工細工の小皿です。

時代は、明治。

            径 12.5㎝

 

農村風景を表しています。

 

非常に細かい細工がなされています。

 

 

    裏面です。

三個の小さな足がついています。

用途は、置き(ペン?)皿でしょう。

表側ほど詳細ではないですが、田舎風景が表されています。

どうやら、表と裏、2枚の金皿を合わせて作られているようです。

 

徳川の時代が終わり、明治維新となって、刀、鎧、兜など武具の需要がなくなり、鋳物師、彫り師などは、職を失ってしまいました。

そこで彼らは、身に着けた技能を生かし、外国向けの金工細工をつくるようになりました。この産業の起こりは、廃刀令の翌年、明治10(1877)年といわれています。ほとんどの品は輸出されました。本品も、その一つでしょう。

近年、明治時代の工芸品、特にその超絶技法に関心が高まっています。しかし、この手の品は、それほど上等な物ではありません。いわば、B級品。図録にも載っていません。

材質は、アンチモニー合金だと思います。ということは、鋳型です。

      馬の尻毛部(拡大)

しかし、馬の細かな毛並み、手綱の交差具合、立体感など、打ち出しや彫金によって作られているように見えてしまうほど、高度な鋳型を用いています。

名もない職人たちが、もてる技能のすべてを注ぎ込んだかのような金工細工。明治という新しい時代の息吹が感じられます。

 

 

コメント (4)
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