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つれづれな日々のつぶやき♪

ドラマや映画、展覧会や写真展の感想をぽつぽつと
日々の暮らしの中でふと感じたことなども

いのうえシェイクスピア『鉈切り丸』~W・シェイクスピア<リチャード三世>より

2013-12-01 | 舞台/DVD

いのうえシェイクスピア『鉈切り丸』~W・シェイクスピア<リチャード三世>より を東急シアターオーブにて、11月29日(金)開演13:00を観てきました。

【脚本】青木豪
【演出】いのうえひでのり
【音楽】岩代太郎
【照明】原田保
【美術】二村周作
【衣装】小峰リリー
【音響】井上哲司
【振付】川崎悦子
【映像】上田大樹
【キャスト】
森田剛:源範頼
成海璃子:巴御前
秋山菜津子:イト
渡辺いっけい:梶原景時
千葉哲也:武蔵坊弁慶
山内圭哉:大江広元
木村了:和田義盛
須賀健太:源義経
宮地雅子:比企尼/女郎屋の女将
麻実れい:建礼門院
若村麻由美:北条政子
生瀬勝久:源頼朝
【ストーリー】
源氏と平氏が天下を二分する戦乱の世、鎌倉期。
「鉈切り丸」こと源範頼は天下を取らんがため、悪事の限りを尽くして駆け上がる。
しかし、一瞬にして転がり落ちることに‥

「逃げろ、逃げろ。どこまでも逃げろ。この先どこへ逃げようが、この国は鉈切りの支配下になる!」
美しく産まれた者にとっちゃ、地獄の有様も、醜く産まれた者にとっちゃ、極楽の蓮池―――

【上演時間】
1幕 85分
休憩 20分
2幕 95分
合計 3時間20分

公式サイトはこちら → 『鉈切り丸』 


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※ネタばれがありますので、ご注意くださいませ。

客入れは壮大な雰囲気の音楽。

美術は、上手・下手側に天井高までの建築物。上部に生演奏の演奏者の方々。下部は開口していて入退場に使用。
中央から奥に向かってニ段の段差。
丈の高い竹林が幾つかあり、人力での可動式。先日観劇した『ムサシ』と同じ感じのもの。
これが一列に並ぶときに、後ろでは転換が行われ鎌倉の海岸、遊女屋、頼朝の屋敷、寺などに場面が変わります。

プロジェクションマッピングも使用され、背景に空を飛ぶ鳶や平家の亡霊、建礼門院の生霊などが映し出されて。
照明が繊細で美しい。血しぶきの赤、心象を表すような青。ピンスポットが客席にも向けられ、複雑に交差して幻想的。
下手に鉈切り丸が立つとき、壁にせむしのシルエットが映し出されるのがおどろおどろしく。

衣装も豪華。
効果も殺陣の音、飛び散る血飛沫、天から舞い落ちてくる鳶の羽、ラストの雨や水溜りと盛りだくさん。
遊女、雅楽、巫女などの舞が華を添えて。

華やかな時代絵巻の体で、重いテーマがあるストーリー。
残虐非道の限りを尽くす鉈切り丸ですが、何故か不快感はあまりなく、あっけない最後には哀れみすら覚えました。
鉈切り丸に関わる言葉では、鳶がモチーフ or キーワード。空を飛翔する姿と鳴き声、舞い落ちる羽、鉈切り丸の呼びかけなど。
醜く生まれついたが故に、見下され虐げられた者が見る夢。【 鳶=空・飛翔=上昇志向】という図式なのかと。
もうひとつは、大地。こちらは建礼門院の生霊が語る言葉。
一族を滅ぼされ、我が子すらも亡くした母親の怒りと悲しみ。【大地に還る(帰る)ために生まれてくる=生きる】ということなのかと。

ラスト、鉈切り丸が霧雨が降る中をずぶ濡れになりながら刃に倒れるシーンに、蜷川版『祈りと怪物』のトビーアスが重なりました。
どちらも森田剛さんが演じており、片足が不自由な青年ですし。

実力派揃いの役者さんばかりで安心の布陣。
森田剛さん、ほぼ出ずっぱりのうえ、せむしで片足を引きずり、激しい殺陣、膨大な台詞と相当負荷がかかると思われる役を熱演され圧巻でした。
成海璃子さん、初舞台で体を張って熱演されておられたんですが、時折、台詞が聞き取りにくく、声が裏返るのが気になってしまいました。
秋山菜津子さん、愚かな女性を凄みのあるふてぶてしさで体現されて。
渡辺いっけいさん、千葉哲也さんは安定感たっぷり。
山内圭哉さん、おどおどした挙動不審気味がおかしくてかわいらしくもあり。
宮地雅子さん、女郎屋の女将がおかしくて重いストーリーの中で和みました。比企尼の鳥居や屏風はもはや被り物ではないような(笑
麻実れいさん、建礼門院の生霊となった姿が凄みがあって怖い。圧倒的な存在感と立ち姿。元宝塚トップの方は、みなさんどうしてこうもすごいのかと。
若村麻由美さん、男勝りな北条政子がぴったり。衣装もとてもお似合いでした。
生瀬勝久さん、生瀬さんらしさ全開。ちょこちょこと笑いを取りつつ、最後はしんみりと。

カーテンコールは3回。1回目、三方礼。2回目からはスタンディングオベーション。


★★・‥…―━━━―…‥・・‥…―━―…‥・・‥…―━━━―…‥・★★


フライヤーの表裏いろいろ。










パンフレット 2000円。カラー写真満載のずっしり重い410g。
登場人物相関図やキャストさん同士の対談など。




★★・‥…―━━━―…‥・・‥…―━―…‥・・‥…―━━━―…‥・★★ 


余談。
年末恒例のお祭り、る・ひまわりの舞台『歳末明治座 る・フェア ~年末だよ!みんな集合!!。~』と何気に、鎌倉期の源平合戦という設定がかぶっていますね~
お陰でしっかり予習ができました^^
『鉈切り丸』の宣伝も、る・ひまわりさんなのですね。おもしろい偶然(笑


 


Doris & Orega Collection Vol.7『ブラザーブラザー』

2013-11-02 | 舞台/DVD

シアター1010にて、Doris & Orega Collection Vol.7『ブラザーブラザー』11月1日(金)開演19:00を観てきました。

【作】川上徹也
【演出】中谷直哉
【美術】長田佳代子
【照明】佐野道洋
【音楽】大崎聖二
【衣装】三大寺志保美
【ヘアメイク】梅澤裕子
【キャスト】
とてもお気楽そうだけど、とても気が小さい家族思いの帰ってきた長男 阿久津外彦 ・・西村雅彦
専業主婦。長男に代わって、家族を取り仕切ってきたしっかり者の長女 勅使河原産子・・飯島直子
広告会社のエリートサラリーマンでバツイチな次兄 阿久津内一・・安田顕(TEAM NACS)
家でゴロゴロしているだけなのに、なぜか社長で羽振りがいい三男 阿久津小ニ ・・長谷川朝晴
如才ないけど、いつも心ここにあらずな感じの長女の夫 勅使河原泰三・・デビット伊東
日系ブラジル人三世で、天真爛漫だけど陰がありそうな長男の嫁 マリア・・上地春奈
なぜか法事にはいつも来て、家族に混じっている三男の友だち 松井俊矢・・本多力(ヨーロッパ企画)
【ストーリー】※公式サイトより
両親の四十九日の日。消息不明だった長兄が、ブラジルから突然、20年ぶりに帰ってきた!
しかも、日系ブラジル人三世で日本語を話せない嫁をつれて。彼を迎え撃つ兄弟たちは・・ 専業主婦でしっかり者の長女。エリートサラリーマンの次男。一応、IT会社社長だけどいつも家でゴロゴロしている三男。
なぜ今?何が目的? それぞれ疑心暗鬼になる兄弟たち。尻にしかれた長女の夫、なぜかいつもいる三男の男友だちなども巻き込み、上を下への大騒ぎ。
亡くなった両親をはじめ、兄弟たちの秘密も徐々に暴かれていき・・ 家族って何?を問い直す、ヒューマンハイパーコメディ。

公式サイトはこちら →  Doris & Orega Collection Vol.7『ブラザーブラザー』 


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※ネタばれがありますので、ご注意くださいませ。

今回の公演も全国ツアー。その初日を観劇。
前回の『地球の王様』、前々回の『ナンシー』に続く、3回目の西村雅彦さん率いるDoris & Orega。
そのときの記事はこちら♪ 『地球の王様』 『ナンシー』

客入れの楽曲は超レトロな歌謡曲。多分、エノケンさん。
客出しの楽曲は多分、山下達郎さん。どちらも少々、自信ないです。

美術は、上手側に阿久津家の和室、下手側に洋室。
和室は奥に障子戸、両親の位牌のある祭壇、炬燵。洋室は奥に白いドアと西向きの窓、左にアールでドアなしの出入口(多分、キッチンに続く)、クラシカルなソファとローテーブル。和室と洋室の間にトイレ。
転換なしのワンシュチュエーション。

暗転中に、長男による四十九日法要の挨拶を流すところもあったり。こんなふうに場面を進めるのもありなのね~と。
全編ドタバタしつつ、ラスト近くの長男の見栄をきりながらの台詞が、タイトルに繋がりそれなりに収束してカタルシス。
ラスト、夕焼けが室内にも入り込む洋室で、全員が一列に並んで消えもののお寿司を食べるシーンにしみじみ。。
前回の『地球の王様』でも同じシーンがあり、そのときはカレーでした。これはシリーズ化するのでしょうか?(笑

長男役の西村雅彦さん、妙に芝居がかった台詞回しに?となりつつも、ラストまで観て納得。次男役の安田顕さんと取っ組み合いの兄弟喧嘩も迫力がありました。大千秋楽までお怪我などされませんよう。
長女役の飯島直子さん、「おにいちゃん!」を連呼して『ナンシー』を思い出したり。かわいらしいです♪
次男役の安田顕さん、雷を怖がる様子がかわいくておかしい!
三男役の長谷川朝晴さん、『ナンシー』のときのような屈折した役。こういう役がはまりますね。
長女の夫役のデビット伊東さん、お調子者でいい加減な感じに、あぁ~こういう人いるなぁ。。と。
マリア役の上地春奈さん、初めて観たのですが、かわいらしくておもしろい日系三世を熱演。
本田力さん、安定の本田さん。ぽやぽやした狂言回し役を好演。
全体的にvol.5『ナンシー』を彷彿とさせる役柄が多かったかと。

笑いの中にもチクチクと棘があり、それが【コメディ+α】な感じを与えていたかと。
家族という長い歴史の中で積もっていったもの。怒り、悲しみ、罪悪感などの葛藤が、「秘密ゲーム」(自分の秘密を話す)によって白日の元にさらされていくさまに心がざわざわと。
家族だから、親だから、でも、それは本当にその人のことをわかっていたのか?いや、わかろうとさえしていなかったのではないのか?と観る者に問いかけてきます。

そういえば、公演前のインタビューで西村雅彦さんが、「消費されるコメディではなく、お客さんの心に残るものを作りたい」とおっしゃっておられました。
観終わった後に温かいものがほこっ。。と残る作品です。客席も温かい感じでした。
老若男女、演劇初心者の方にもおすすめ♪

カーテンコールは3回。1回目に西村雅彦さんが三方礼を。


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パンフレット 1,200円。9×20cmで前回の『地球の王様』と同じ大きさ&仕様のジャバラ型。
役者さんたちご本人による、「百歳になった私」のイラストがシュール(笑




シアター1010のローカルカード。










 


 

 

 

 


 


『ムサシ』ロンドン・NYバージョン

2013-10-20 | 舞台/DVD

彩の国さいたま芸術劇場 大ホールで、『ムサシ』ロンドン・NYバージョン 10月18日(金)開演13:30を観てきました。

【脚本】井上ひさし(吉川英治「宮本武蔵」より)
【演出】蜷川幸雄
【音楽】宮川彬良
【美術】中越司
【照明】勝柴次朗
【衣装】小峰リリー
【殺陣】國井正廣・栗原直樹
【振付】広崎うらん・花柳寿楽
【能指導】本田芳樹
【狂言指導】野村萬斎
【キャスト】
藤原竜也:宮本武蔵
溝端淳平:佐々木小次郎
鈴木杏:筆屋乙女
六平直政:沢庵宗彭
吉田鋼太郎:柳生宗矩
白石加代子:木屋まい
大石継太:平心
塚本幸男:忠助
飯田邦博:浅川甚兵衛
堀文明:浅川官兵衛
井面猛志:只野有膳
【ストーリー】(フライヤーより)
慶長十七年(一六一二)陰暦四月十三日正午。豊前国小倉沖の舟島。
真昼の太陽が照り付けるなか、宮本武蔵と佐々木小次郎が、たがいにきびしく睨み合っている。小次郎は愛刀「物干し竿」を抜き放ち、武蔵は背に隠した木刀を深く構える。
武蔵が不意に声をあげる。「この勝負、おぬしの負けと決まった」。約束の刻限から半日近くも待たされた小次郎の苛立ちは、すでに頂点に達していた。小次郎が動き、勝負は一撃で決まった。勝ったのは武蔵。
検死役の藩医に「お手当を!」と叫び、疾風のごとく舟島を立ち去る武蔵。佐々木小次郎の「厳流」をとって、後に「厳流島の決闘」と呼ばれることになる世紀の大一番は、こうして一瞬のうちに終わり、そして……物語はここから始まる。

公式サイトはこちら → 『ムサシ』ロンドン・NYバージョン   


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※ネタばれがありますので、ご注意くださいませ。

客入れの音楽はなし。

美術はシンプル。第一幕は素舞台で背景に、ぼう。。と膨らむ大きな赤い月と波打ち際の絵。
その後、幻想的な照明の中を竹林と宝蓮寺のセットが黒子たちによって設置されます。竹林は時折、さわさわまたはざわざわと揺すられて。
この宝蓮寺のセットはプログラムに載っていた写真と酷似しており、イメージが再現されたものかと。
客席の上手と下手にある2本の通路も登退場に使用されます。

音楽もシンプルで少なめ。ラスト近くにパイプオルガンに般若心経が重なり、やがてパイプオルガンの音のみが大きくなっていきます。

作品中に一貫して流れるテーマは「恨みの連鎖を断ち切る」、「命の尊さ」について。
休憩込みで3時間超えの作品です。役者さんたちはほぼ出ずっぱりで、殺陣や能・狂言の所作と謡、早い掛け合い、長台詞と負荷が相当にかかるのではないかと思われます。
ですが、中だるみのないテンポのよい展開。終始笑いが絶えません。
小次郎が乙女たちに武術を伝授するとき、「右!左!」と声をかけながらすり足で移動するのですが、これがいつの間にかタンゴのダンスになっていたり。武蔵と小次郎の早口の言い合い中に、武蔵が小次郎の頭を扇子でバシバシ!叩くさまは、ハリセンで叩くお笑いのツッコミのようです。武蔵と小次郎が斬り合うのを防ぐための方策として、全員で足を繋ぐ5人6脚も笑えます。
そういえば、吉田鋼太郎さんは扇子が客席に飛び、最前列のお客さんが拾って差し出すというハプニングも。

とにかく役者陣が魅力的で実力者揃い! そして、みな声がよいのです。
余談ですが、唐十郎さんが「役者は1に声、2に声、3に声、4に姿」とおっしゃられておりましたっけ。確かに、声がよいと耳に心地よく、ストレスなく台詞を聞き続けることができますものね。
今回このカンパニーに加わった小次郎役の溝端淳平さんが初々しく、清潔感のある小次郎を好演されておりました。武蔵役の藤原竜也さんとの息もぴったりでした。
藤原竜也さんはこういったユーモア溢れるお芝居もいいですね。個人的には、色気を感じる苦悩する役が好きなんですが。
まい役の白石加代子さんからは目が離せなくなりますね、なにをやってもおもしろい。そういえば、この劇場で『身毒丸』のときにも藤原竜也さんと共演されていましたね。

練られた脚本に芸達者で化物級(褒め言葉です)の役者さんたちが奏でるお芝居を堪能しました。
観終わった後素直に、「おもしろかったなぁ~」と思える作品でした。

終演暗転の後、役者さんたちが挨拶に出てこられるとき、舞台上方に亡くなられた井上ひさしさんのにこやかな笑顔のお写真が掲げられておりました。哀悼の意なのでしょうね。
カーテンコールは2回。2回目はスタンディングオベーション。


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プログラム 変形判 1,600円。
井上ひさしさんと堀威夫さんの対談や役者さんのコメントなど、読み応えたっぷり♪ 公演劇評集も付属。





恒例のフライヤーの束から。同じ演目が来年の3月にBunkamuraシアターコクーンで公演されるそうです。
個人的には、シアターコクーンより彩の国さいたま芸術劇場のほうが、1階席後方でも観やすいように思います。

 


 


劇団鹿殺し 充電前公演『無休電車』

2013-10-15 | 舞台/DVD

青山円形劇場にて、劇団鹿殺し 充電前公演『無休電車』東京千秋楽 10月14日(月)開演14:00を観てきました。

【作】丸尾丸一郎
【演出】菜月チョビ
【音楽】入交星士/オレノグラフィティ
【舞台美術】秋山光洋
【照明】吉川ひろ子
【音響】鏑木知宏
【衣装】赤穂美咲
【ヘアメイク】宮内宏明
【振付】山口加菜/山岸門人
【キャスト】
丸尾丸一郎:栗田寛(轟フルシアンテ)
福田転球(客演):鹿野武(秋桜ジュラ)
岡田達也(客演 キャラメルボックス):城戸秋生(ムツゴロウ城戸)
オレノグラフィティ:ロンリー酒盛
山岸門人:荻原大(男前田ドクロ)
菜月チョビ:古澤(ハミング鉄子)
美津乃あわ(客演):星空舞海/水沢先生
橘輝:野田和馬
坂本けこ美:鹿野麻佑子
円山チカ:山浦彰子
博田うに:栗田瑛子(シブガキ瑛子)
山口加菜:楽隊
鷺沼恵美子:楽隊
浅野康之:楽隊
近藤茶:楽隊
峰ゆとり:楽隊
有田杏子:楽隊
越田岬:楽隊
【ストーリー】
鹿野工務店のその後。座長の鹿野武史は苦悶していた。仕事終わりにみなで集まってやっていた劇団は開店休業状態、工務店も3千万の借金を抱え、自身も30代後半になり焦るばかり。。
そんなとき、酒を飲みホームに転落して亡くなってしまう。鹿野の葬儀の席でまた劇団で芝居をしようとする劇団員。
そこから彼らの奮闘が始まる。

公式サイトはこちら → 劇団鹿殺し『無休電車』


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※ネタばれがありますので、ご注意くださいませ。

劇団鹿殺しは初見です。実は、『BORN SONGS』を観劇予定だったんですが、諸事情で叶わず。。 USTREAMで、『電車は血で走る』だけは観ておりました。
今回、満を持しての劇団鹿殺しです。

客入れ、客出しの音楽は、バラード系の男性&女性ボーカル曲。大阪にまつわる楽曲多め。BORO、もんたよしのり、河島英五、欧陽菲菲、上田正樹など(敬称略)。

美術は、円形舞台の後方中央に2階建ての手摺が壊れた建物。その左右にシンメトリーに、階段、木材の束、脚立。上手に、「(有)鹿野工務店」の立て看板。
転換はなし。
客席にも数か所通路があり、役者さんたちが使用。
美術の使い方がよいです。特に、ラストの円形劇場の特徴を活かした壁面一杯の満天の星空は圧巻。美しい夜空でした。

笑いと歌、劇中劇と多彩。
劇中劇では、ほぼ劇団☆新感線の歌舞伎メイクに衣装と鏡獅子のウイッグ。劇団四季の『ライオンキング』、宝塚も。アウト寸前です(笑 いちいち台詞の端々に、「ROCK!」「FUCK!」と言うのが笑えます。
劇中歌の、♪宝塚奇人歌劇団~イヨッ!ハッ!大当たり! が頭に残りぐるぐる回ります。
楽隊の電車が特に好きです♪ 
茶色にマルーンがかったような衣装、ヘルメットには鹿の角のような銀色に光るパンタグラフ。中腰でゆるゆる~と演奏しながら、楽隊の電車は走るのです。無機質な電車を有機質≒生物に見立てた擬人化の発想に驚き、そのなんともいえない愛らしさにきゅんとします。

鹿野武が言う台詞。「しんどい。。けど、楽をしよう思うたら(夢を諦める)心が死んでしもうたわ」 この言葉のもつ深い意味が胸に刺さります。。
懐かしく、切なく、哀しいのに、見終わった後には温かいものが残ります。泥くさいけど、胸につーんとくる素敵な作品。

役者さんは、菜月チョビさんがとにかくかわいい♪ 中性的な容姿、小柄で内股気味に小走りするその姿がかわいらしく、高くも低くもない独特の歌声に惹きつけられます。圧倒的な存在感。 
オレノグラフィティさんもいい♪ 激しい動きが多いので、細身で長身の体躯が舞台で映えます。 
客演陣も、客演とは思えないほど馴染んでいて違和感がありませんでした。
福田転球さん、とても味があります。哀愁とおかしさが体から滲み出てくるようです。
岡田達也さん、鹿殺しの皆さんに食らいついてましたね。伸び伸びと楽しそうでした。カーテンコールで観せた満面の笑顔にやりきった感が。
美津乃あわさん、独特の存在感。

カーテンコールは1回。
菜月チョビさんが客演の紹介。大阪公演の案内とお誘い(東京と大阪は意外と近いそう)。「物販もよろしく!よろしかったら、サインもします!」とのこと。


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フライヤーの裏。




当日パンフレット。




こどもの城:青山劇場&青山円形劇場の外観。
この立派な建物、文化施設が何故閉鎖されなければならないのか激しく疑問に思います。行政の都合により、演劇が割りを食うことに憤りを感じます。




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舞台についての思いというか、思い入れみたいなことをつらつらと。

消えものであり泡沫のものである舞台。観劇を趣味にしているのは、ある意味酔狂なことかもしれません。恐れ多いですが、同様なことをかの野田秀樹さんがおっしゃられていましたっけ。。
公演を見逃さないようにアンテナを張って情報を収集し、実際には都合がどうなるかわからない何ヶ月も先のチケットを購入し(映画に比べれば決してお安くはないし)、劇場まで足を運び(天候や体調もあるし)、時として恐ろしく座り心地のよくない椅子で数時間を過ごす。我ながら酔狂だなぁ~と思いますね(苦笑
それでも足しげく劇場に通うのは、「好き♪」だから。観てよかったぁ。。と、しみじみ思える舞台に出会えると本当に嬉しいし、大げさだけど生きていくパワーを貰えるんですよね。
以前に、劇団青い鳥『シンデレラ ファイナル』をどうしても観たいがために、日帰りで新潟の“りゅうーとぴあ”まで遠征したこともあります(笑 ファイナル公演だったこと、情報をキャッチするのが遅くて、気づいたらすでに東京公演が終了していたことで遠征した次第です。新潟でもそれなりに遠いですが、南方面に行くよりはまだ近かったのですよ。

いい舞台を観たときのカーテンコールでは、キャストの皆さんが「本日はありがとうございました!」とご挨拶されますが、むしろ私のほうが「素敵な舞台をありがとうございます! また、明日からがんばれます!」とお礼を言いたいくらいなんですよね。
また、そんな気持ちを味わいたくて、これからも事情の許す限り劇場にせっせと通うのだろうな^^






二兎社公演38『兄帰る』

2013-10-05 | 舞台/DVD

所沢市民文化センターミューズ マーキーホールにて、二兎社公演38『兄帰る』 大千秋楽10月4日(金)開演19:00を観てきました。

※ネタばれがありますので、ご注意くださいませ。 

公式サイトはこちら →   『兄帰る』


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【作・演出】永井 愛
【キャスト】
鶴見辰吾:中村幸介  
草刈民代:中村真弓
堀部圭亮:中村保  
伊東由美子:小沢百合子  
小豆畑雅一:小沢正春  
枝元萌:金井塚みさ子
藤夏子:前田登紀子   
二瓶鮫一:中村昭三
【美術】大田創
【音響】市来邦比古
【照明】中川隆一
【衣装】竹原典子
【ヘアメイク】清水美穂
【ストーリー】(※公式サイトより)
季節は夏、中村保、真弓夫婦の住む家の居間が舞台。
広告業界との付き合いが多く、常に時代の半歩先を行くようなライフスタイルを心がけている保と、フリーライターの真弓夫婦は、一人息子をオーストラリアのファームステイに送り出し、二人で充実した夏休みを過ごす計画を立てていた。
そんな矢先、多額の借金を抱えて雲隠れし、10年以上も行方不明だった兄の幸介が訪ねてくる。「今度こそやり直します、今度こそ、今度こそ……」と頼み込み、幸介は保の所に居座った。遊び人のうさん臭さプンプン、しかも初対面の男に、いきなり家族扱いされる真弓は大迷惑である。それに就職先などそう簡単に見つかるわけがない。
ついに親戚が登場した。しかしお互いの対立や責任の押し付け合いで、話は一向に進まない。損得勘定抜きに話の全体を見渡せるのは幸介だけだというおかしな状態になってくる。真弓もまた、このやりとりを白けた思いで聞いていた。この一族が、どんなにその場しのぎの生き方をしてきたかがよくわかったからである。また、親戚だという理由だけで、いがみ合いながらも共同体意識だけは崩さず、事の決定権を握りつつあるのが奇妙でならない。幸介は、自分と同じように傍観者になってしまった真弓に親近感を抱きだした。
こうして、敵対関係にありながらも、幸介と真弓の間に不思議な交流が生まれ始め―――


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客入れの音楽は、小鳥のさえずりが入っているヒーリング音楽。
美術は、舞台全体を使って吹き抜けのある戸建て住宅を設置。リビング、リビングの掃き出し窓越しに庭、下手側に階段。庭には手入れの行き届いた植物が多数。転換はなしのワンシチュエーション。
建物、家具、インテリアもスタイリッシュなモノトーンで統一。カウンターテーブルとハイスツール、黒のリクライニングチェア、白いソファ、黒のローテーブル、階段の壁にリトグラフの額が3枚。上手の壁にここだけインテリアにそぐわない、子供が描いたと思われる絵が掛かっている。

暗転は多めで、休憩が1回。

岸田國士戯曲賞受賞作を14年ぶりに再演とのこと。初演は未見です。
永井愛さんの練られた脚本、丁寧な演出、一体感のある上手い役者陣で安心して観ていられました。
出てくる人物は全員、どこかで見聞きしたような人たちばかり。「あ~いる、いるこんな人」と思わせてくれます。もちろん、どこかに自分の一部も見え隠れしていることに気づき、なんとも、もぞもぞした気分になったり。
クスクスと笑いながら、最後にどん!と闇がやってきます。本音と正論、家族と親族、厄介だけど避けられない現実の関係性。
「真弓さんが育てているミニバラが欲しい」と最後に願う幸介。彼にとって、真弓が育てた1鉢のミニバラは「正論」の象徴であり、変われるかもしれない自分の希望でもあったわけです。そして、ほのかに芽生え始めた許されない恋心でもあったのですね。。
「人は本当に変わることができるのか?」そう問いただされているような気がします。
人というものは多面体でできているもの。単純に「いい人」と「悪い人」に分けることができるものではなく、「いいときにはいいし」、「悪いときには悪い」ものなんですよね。
暗くもなく、笑いながら観ているのに、最後にはなんだか怖い。。そんな気持ちにさせられる作品でした。決して後味が悪くないのが不思議な感じです。

役者さんたちについては。。
鶴見辰吾さん、いいですね~♥ 大人の色気がこんなに出せるのに、少しもいやらしい感じがありません。ラスト近くで、ワイシャツ&スリムな黒のパンツに着替えてからは別人のようなオーラが出ていました♪
草苅民代さん、透明感のあるナチュラルなお芝居をされるんですね。ただ、何度も噛んでいたのが少々気になりましたが。
二瓶鮫一さん、間のとり方や表情、所作がいちいちおもしろい♪ さすがですね~ 映画版『12人の優しい日本人』で演じられた陪審員4の役が記憶に残っています。「ロンロンの焼きうどんは‥うまい!」この台詞を言うときの間、表情が秀逸でしたっけ。

カーテンコールは1回。
大千秋楽だからですかね、舞台上から鶴見辰吾さんが客席にいらしていた永井愛さんを呼ばれて。堀部圭亮さんと小豆畑雅一さんに引き上げられて登壇され、全キャストさんたちとハグをされておりました。とても嬉しそうにお見受けしました。


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フライヤーの裏。



人物相関図。




パンフレット B5判500円。
永井愛・小島慶子対談/出演者&永井愛の稽古場対談/稽古場の風景。