つれづれな日々のつぶやき♪

ドラマや映画、展覧会や写真展の感想をぽつぽつと
日々の暮らしの中でふと感じたことなども

『阿修羅のごとく』

2013-01-30 | 舞台/DVD

ル テアトル銀座で、『阿修羅のごとく』 東京千秋楽 1月29日(火) 開演13:30を観てきました。

※若干のネタバレがありますので、ご注意くださいませ。

公式サイトはこちら → 『阿修羅のごとく』

【原作】向田邦子
【上演台本】瀬戸山美咲
【演出】松本祐子
【美術】松井るみ
【キャスト】
浅野温子:長女 綱子
荻野目慶子:次女 巻子
高岡早紀:三女 滝子
奥菜恵:四女 咲子
林隆三:父 恒太郎
加賀まりこ:母 ふじ
大高洋夫:次女の夫 鷹男
中山祐一朗(阿佐ヶ谷スパイダース):興信所の社員 勝又
広瀬友祐:四女の同棲相手 陣内
彩夏涼:鷹男の秘書
山本享:長女の不倫相手
伊佐山ひろ子:その妻

【ストーリー】
昭和54年冬、久しぶりに竹沢家の四姉妹が実家に集まった。そこで70歳の父に愛人がいることがわかる。うろたえながらも、決して母の耳にだけは入れないようにしようと約束する姉妹。
この事件をきっかけに一見平穏に見えた四姉妹が、それぞれに抱える日常のさまざまな事件が露呈してくる。
そんな中、夫の愛人問題も耳に入っていないかのように見えた母だが、実は‥‥


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原作、再放送のドラマ、映画も観たことがあり、向田作品が好きということと、この豪華なキャスティングに惹かれて観劇に。

客入れの音楽等はなし。
舞台美術は、大きな古めかしい電柱が4本、電線が張られて立っております。その電線の下に、上手手前に四女のアパート、その奥が一段高くなり、父の愛人のアパートへと続く坂道に。中央手前に実家の居間、そのときどきで外の設定にも。下手手前に長女の家、その奥が一段高くなり次女の家。
懐かしい向田ドラマのような美術です。

脚本と演出も原作にかなり忠実でした。そして観ているとなんだか、映画版のシーンを舞台で観ているような錯覚?デジャブ?のような感覚に。
登場人物とストーリーを追わずにすんだので、席が2列目ということもあり、キャストさんたちの細かな表情やニュアンスを十分に堪能できました。
父たち男の業、母や四姉妹の女の業、それぞれいいとか悪いとかでなく、どうしようもない感情と欲望を抑えようとしつつも翻弄されていくさまが、滑稽でもあり哀しくもあり。。 人はどうしてこうなんだろうと思いつつ、なんて愛おしいのかと感じます。
家族であるがゆえの遠慮のなさ、我慢ならないこと、許せないこと、放ってはおけないこと。血のつながり、一緒に家族としてひとつ屋根の下で暮らしたつながり、記憶、思い出の数々。そんなものが一緒くたになって起こった事件。「家族」って、「つながり」って、「絆」ってなんだろうと改めて考えせられたり。。
作品の設定自体が昭和54年なので、台詞の中には古い感じのものもなくはありませんが、普遍である人の「業」を描いているので古めかしいということはないと思いました。

キャストさんたちについては。。映像で主役級の方々が勢揃いの豪華なキャスティングであり、これだけでもう、お腹いっぱいな感もありますよね。
配役が意外なところも見どころかと。普通、このキャストさんたちに、この役はふらないと思われますもの(笑
母 ふじ役の加賀まりこさんは、とてもいいです♪ 古いタイプの良妻賢母(その実、秘めた思いは深く)が自然体でしたし、夫の恒太郎を見るときのいろいろな感情が入り混じった視線や表情。心にぐっ。。と、きます。恒太郎の愛人が住んでいるアパートの前で倒れるとき、高さのある足場の悪そうなセット上でがくっ!と倒れこむところなど自然でした。和装でこの演技は難しいかと。
父 恒太郎の林隆三さんは、台詞自体は少ないのですが、言葉にならない、しない、不器用な娘たちへの愛情が溢れていて泣けます。
長女 綱子役の浅野温子さんは、艶っぽいのにいやらしくなく、おきゃんなかわいらしさがあって、この事件だらけの話を明るくする感じでよかったですね。救いがあるっていうのか、重苦しくならないっていうのか。浅野さんだからかと思われます。
次女 巻子役の荻野目慶子さんは、一番意外な配役だったかと。しっかりものの良妻賢母、でも、夫の浮気にじっとり‥と嫉妬するさまが少し怖いです。
三女 滝子役の高岡早紀さんも、意外な配役かと。でも、地味でおくてで、それでも欲望や願望はあって‥という、ちょっと面倒臭い独身女性を好演してました。
四女 咲子役の奥菜恵さんは、小劇場系にも多数出演されていて、いい女優さんだなぁ~と以前から思っていました。今回も末っ子の屈折や植物状態の夫に接するさまを熱演されていましたね。泣けます。
次女の夫 鷹男役の大高洋夫さんは、ごくごく普通のサラリーマンの男性が似合っておりました。時折、感情を爆発させたりしますが、実は妻に頭が上がらなかったり。おちゃめなところがぽろぽろっとあって、これも重苦しくならない要因だったかと。
興信所の社員 勝又役の中山祐一朗さんは、思いっきり女性にもいろいろなことも不器用でわたわたとした落ち着かない感じがよく出ていました。なんだか、いちいちおかしくてかわいいんですもの♪ やっぱり上手いなぁ。。
四女の同棲相手 陣内役の広瀬友祐さんは、初めて拝見しました。ボクサーの役に説得力のある体つきでしたね。もう少し、内面の屈折ぶりが出ていると咲子との関係性がもっとくっきりしたのになぁ。。と。少々、残念。
鷹男の秘書役の彩夏涼さんは、初めて拝見しました。気が強くて巻子に対して挑戦的なところがよく出ていました。原作でも結局、はっきりとしていないポジションですよね。本当に不倫相手だったのかどうか定かでないという。
長女の不倫相手役の山本享さんは、料亭の主人らしい粋な中年男性がはまっていました。いい意味でエロい感じで(笑
料亭の女将役の伊佐山ひろ子さんは、ねちっとして嫌味な怒り方がいい感じです。もともと大好きな女優さんだったんですが、最近は映像でもめっきりお姿を観る機会が減ったようで寂しいと思っておりましたので、間近で拝見できて嬉しかったです♪ 欲を言えば、もっと出番が多いとよいのになんて。

カーテンコールは2回。一部でスタンディングオベーション。キャストのみなさん、いい笑顔でした♪

余談。
休憩中に冒頭に出てくる「揚げ餅」を500円にて、お席まで販売にいらしてましたよ。駅弁スタイルで。私は購入しなかったんですが、結構、売れておりました。


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フライヤー。




蔵書の文春文庫刊 『阿修羅のごとく』。





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M&Oplaysプロデュース『アイドル、かくの如し』

2013-01-28 | 舞台/DVD

昨年、録画したまま、まだ観ていなかった舞台を観ました。作品は、M&Oplaysプロデュース『アイドル、かくの如し』です。これでようやく全部終了。

【収録】2011年12月21日 本多劇場
【放送】NHK BSプレミアムシアター  2012年10月8日(月)【7日(日)深夜】午前0時45分~午前5時19分
【作・演出】岩松了
【キャスト】
宮藤官九郎(大人計画)
夏川結衣
津田寛治
伊勢志摩(大人計画)
上間美緒
足立理
金子岳憲
宮下今日子
橋本一郎
岩松了
【ストーリー】
舞台は小さな芸能事務所。ここは、元女優で今は事務所の社長と、元マネージャーで夫の夫婦が経営している。救世主のようにあらわれたアイドルだが、スキャンダルを起こしてしまう。
小さな事務所で繰り広げられる夫婦関係、その周囲の人間関係を描いていく。

NHK BSプレミアムシアターのサイトはこちら → プレミアムシアター


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作・演出の岩松了さんは、作品の中に恋愛を絡めることが多いというのを聞いたことがあります。今回の作品も恋愛、愛情が根底にありました。
タイトルにある「アイドル」は、ただ単に事務所のアイドルを指すのではなく、事務所の経営者夫婦の夫から見た妻のことでもあるわけです。彼は長距離トラックの運転手をしているとき、ドライブインでたまたま観たテレビに映っていた女優に、自分の「アイドル」=自分の「理想・こうであって欲しい女性像」を投影したのですね。そして、彼女のマネージャーになり、やがて結婚、彼女は女優を引退して二人で芸能事務所をひらくわけです。本当は妻に女優を止めて欲しくなかったんですよね。自分の「アイドル」なんだから。。
全編を通して流れている、「愛情」という名のエゴと脆さと危うさに、切ないような物悲しいような気持ちになりました。
この作品は、夫婦善哉の体をしていながら、その実、人はなんのために生きているのか? 生きていくことは死ぬまでの時間潰しなのか? 「愛情」とはなんなのか? ということを描いているように感じました。

キャストさんでは、女にだらしないダメな夫役の宮藤官九郎さんがいいですね。ダメな男なんだけど、どこか憎めない。時折、ちらっと垣間見せる繊細なところ、不器用な優しさに心惹かれます。
今回が初舞台だという妻役の夏川結衣さんは、初舞台とは思えない自然で力みのない演技でした。時折、ドラマを観ているような錯覚さえ覚えましたし(いい意味で)。
事務所の社員役の津田寛治さんは、生真面目でテンパりやすく、感情が高ぶると狂気が混じってくるさまがはまっておりました。ドラマの「警視庁捜査一課9係」をふと思い出したり。
事務所の古参事務員役の伊勢志摩さんは、最初はどこにでもいそうな地味な女性事務員が、最後は怖い女の業を露わにするさまを観せてくれました。どんどん、別な人間のようになっていくさまを演じわけられていてすごいなぁ。。と。
事務所の新人社員役の足立理さんは、今時のちゃらい男性が似合っていたんですけど、後半になっていくにつれて変化していく人間性が演じきれていなくて、なんでそんな言動に繋がるのかがわかりにくかったですね。惜しい。
作・演出でもある岩松了さんは、今回もまたもや胡散臭い中年男性を好演?しておりました。この手の役が似合いますよね~ にこにこしながら、目の奥が笑っていないっていう胡散臭く怖い感じが(笑

観終わった後に、小さな棘が刺さっているような感じ。決して大きくもないし、深くもないんだけど、なんだか刺さっているという。
嫌な感じでもないし、ふわふわした感じでもない、岩松了さんの作品を観るといつもそんな気分になります。



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いやぁ~激しく同意♪

2013-01-27 | つぶやき

なにげに、ぴあのサイトでこんな記事を発見。読んで笑ったわ~激しく同意♪ 全面ではないけれども、ほぼね。
こちら → 業界のトキメキ女子たちの本音トーク 「舞台で光る“演劇的”イケメンを語る」

最近やたらに多い、若手イケメン枠の演劇には、ねぇ。。なんというのか、ねぇ。。(苦笑 出せばいいというものでもなかろうかと思うわけで。
お見送りハイタッチ&生写真物販とか、ファンミーティングですか?みたいなね、お稽古して芝居する必要あるのだろうか?とね。技術的にもねぇ。。
まぁ、こう言ってはなんなんですけど、“お姿拝見隊”のみなさまはそれでよろしいのだろうけどねぇ。。
決してすべてを否定しているわけではなくて、個人的になんだかなぁ~と以前から思っていたので、この記事を見て、「あ、やっぱりね。私だけではなかったのね♪」とね。

あ、こんな記事もあったとさ。omoshii  演劇&エンタメ系WEBマガジン、「omoshii COLUMN 」から。
こちら → 第2回ゲスト『喜安浩平のオレ哲学』第3週
結構、辛口でエッジが効いています(笑

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野鳥のこと、道路にて。。

2013-01-25 | つぶやき

今日の午前中のこと、いつも利用するスーパー前で信号待ちをしておりました。信号が変わって横断歩道を渡っていたとき、視界の端に入ってきたのは。。
無残な姿となった野鳥でした。どういう状況だったのかわからないけど、車に轢かれちゃったんだね。。 おそらく羽の色からして、この辺りでよく見かける白と黒い羽色のオナガではないかと。
誰も気に留める様子もなく、人も車もその上を何事もなかったかのように通過していきます。心が痛む。。
私は思わず心の中で手を合わせていました。今度生まれ変わったら、寿命をまっとうできるとよいね。。

鳥さんのこと、なんだか遭遇すること多いなぁ。。呼ばれているんだろうか? まさかね~
ちなみに鳥さん過去記事は、「記憶の小箱」のカテゴリーにあります。

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モダンスイマーズ 『ロマンサー~夜明峠編』

2013-01-24 | 舞台/DVD

昨年、録画したまま、まだ観ていなかった舞台を観ました。作品は、モダンスイマーズ 『ロマンサー~夜明峠編』です。
「観よう!」と思い立ったときに観ないと、そのまま再生リストの底に埋もれてしまうんですよね(苦笑 まだ、あと数本あったはず。。がんばって観ようっと。

【収録】2012年2月29日 世田谷パブリックシアター
【放送】NHKプレミアムシアター 2012年9月3日(月)【2日(日)深夜】午前0時~午前4時30分
【作】蓬莱竜太
【演出】蓬莱竜太
【キャスト】
古山憲太郎
小椋毅
西條義将
佐藤めぐみ
千葉哲也 
松永玲子(ナイロン100℃)
粟野史浩
斎藤ナツ子
宮崎敏行
石田えり
【ストーリー】
舞台は少し昔の日本。ある日、峠に暮らす親子のもとに「人食い熊が出た」と里の村人とマタギたちが現れる。
共同生活を過ごす中、やがて親子と熊狩りの人々との関係は変化し、思いがけない結末を迎える。
泥臭く、命を前傾姿勢でおし進める人間たちの姿が激しく描かれる。

NHK BS プレミアムシアターのサイトはこちら → プレミアムシアター


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いつものことながら、実際の舞台を観劇したときとは違い、DVDや放送で映像として観るときには、演劇作品としての客観的な見方が多くなりますね。今回もそんな感じで観ておりました。

人喰い熊に襲われた里の村人、彼らに雇われたマタギ、峠の親子。それぞれ三様の正義と理屈が存在し、ぶつかり合い、反目し、やがてなんとなく協調していく。
人間の感情の醜さ、不思議さ、泥々としたやりきれなさが描かれ、苦しくなりながらも観てしまいます。蓬莱竜太さんの作品はいつもそんな感じです。
目を背けたいのに観てしまうのは、結局、人が好きなのだからかもしれません。。 たとえそれが醜いものだったとしても。

キャストさんでは、石田えりさんがどっしりと、それでいていろいろなものを抱合した女性を演じていてよかったですね。ふっ。。と薄笑いをしながら里の村人たちやマタギに話す言葉の重みの前には、正論などなんの役にも立たない気がしました。ふと、高村智恵子を演じた、柄本明さんとの二人芝居のことを思い出しました。
松永玲子さんはこの手の役をやるとはまりますね。変顔、開脚、どんと来い!な感じで。AGAPE STORE のときの、皿袋&サラも、ものすごかったですし。
ほかの方たちも役にぴったりな感じで、安定感があり違和感がありませんでした。

おそらく、この作品は2011年に起こった震災に影響されて作られたのではないかと思われます。
こんな件がありました。
「人はなぜ危険とわかっていても生まれ育った土地を離れないのか?」そこが生業、生計を立てる場所だからと。故郷とかそんな甘い感傷的なことではないと。
「人はなぜあんなにむごいことがあったのに忘れてしまうのか?」
私にはこの問に答えることができません。。 人は不可解で複雑な生き物なのですよね。。





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