Fireside Chats

ファイアーサイド・チャット=焚き火を囲んだとりとめない会話のかたちで、広報やPRの問題を考えて見たいと思います。

政党PRにプロの知恵

2005年01月10日 23時51分10秒 | PR戦略
読売新聞朝刊の連載シリーズ「政治の現場」。1月7日の「50年目の自民党(2)」では、政党PRにプロの知恵と題し、民主党に続き、自民党もPRコンサルタントと契約したニュースを取り上げた。
記事は選挙・政治ニュース@自由党支持者に再録されている。

広告を扱う広告会社に対し、PR会社は「ニュースになりそうな情報を流し、記事として掲載してもらうことに比重を置く」と業態である。
簡単にいえば、新聞の下段の広告欄に広告を出すのが広告会社、上半分の記事欄に載せる情報を仕込むのがPR会社ということだ。
02年に話題を呼んだ「戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争」でとりあげられているのは、正しくは「広告会社」ではなく「PR会社」の仕事だ。

民主党の菅前代表は昔からPRに理解を持つ政治家で、99年には勢いあまって担当の女性広報パースンとのスキャンダルを週刊文春に攻撃されたことがある。この経緯は、戸野本優子著「瓦解」に詳しい。
この時伸子夫人から「脇が甘い」としかられた菅直人は、その反省からか、03年の衆院選対策として、オムニコムというメガエージェンシーグループ傘下のPR会社フライシュマンヒラードの日本法人と契約し、成功を収める。この年、民主党はコンサル料や調査費として約1億4760万円を支払ったと読売は報じている。
04年の岡田代表が指揮をとった参院選でも、この成功を受け同社がコンサルをしたようだ。

自民党は、この民主党の動きに刺激され、昨年6社の競合コンペを行い、プラップジャパンの起用を決定した。
プラップジャパンは日本資本のPR会社。業界では、ガリバーの電通パブリックリレーションズを別格とすれば、大手と呼べるPR会社が3社ほどあるが、その一角。特に早くから中国進出を試み、日本企業の中国のPR業務では多くの実績を持つ会社だ。

さて、ここで注目すべきは、果たしてプラップのコンサルが効果を挙げられるかどうかだ。
PR周辺の話題を取り上げるスーパー広報Blogも、日本もいよいよおもしろくなってきましたね。どちらがどう世論操作をするのか。一国民として外野席から2人のプレーヤーをじっくりと拝見しよう。としている。
確かにその観点はありうるだろう、しかし、私の見方はこれと異なっている。

自民党が世論操作をなしうる客観的環境にはないことをまず認識しなければならない。
自民党的なるものへのアゲインストの風は吹き募り、その風を知らぬげに、変人宰相は独自の道を歩み続ける。
しかも自民党の舵取りは、非力な武部幹事長だ。
PRコンサルティングが効果を挙げるためには、トップのリーダーシップが必須条件だが、自民党にリーダーシップを求められるだろうか。
今日のPRでは、情報の伝達に先立ち、伝えるべき事実の創造が重要だが、武部幹事長にその腕力が期待できるだろうか。
官邸では飯島勲秘書官が実質的にPR業務を取り仕切っていると思われるが、飯島秘書官とのバッティングも心配である。
結論として、今回のコンサルティングで世論操作を意図しても、その達成は困難である。
むしろ、コンサルの戦略目標をどう設定するかが重要であると思われる。

言うまでもないことだが広義の広報には、社会の声を組織体に取り入れる「広聴」のプロセスと、組織体からの情報を社会に発信する「狭義の広報」のプロセスとが含まれる。
今の自民党に必要なのは、まず、社会の声に虚心坦懐に耳を傾ける「広聴」の姿勢だろう。
それも、従来の自民党支持層にとどまることなく、都市型無党派層にもウィングを伸ばさなければならない。
この新たなターゲットとの間にどのように対話のチャネルを拓くか、新たなターゲットのニーズを政策に反映させる回路をいかに構築するかがキーポイントになるはずだ。
この認識のないまま、社会からの批判を小手先だけでかわす役割のみを担うとするなら、プラップのみならず、いかなるコンサルといえども成功はおぼつかないはずだ。