Fireside Chats

ファイアーサイド・チャット=焚き火を囲んだとりとめない会話のかたちで、広報やPRの問題を考えて見たいと思います。

フジサンケイグループの失ったもの

2005年03月12日 08時23分41秒 | ニュースコメント
>インターネット関連会社ライブドアが、ニッポン放送株を新たに取得できる権利(新株予約権)をフジテレビジョンに与えることの差し止めを求めた仮処分申請について、東京地裁は11日、差し止めを命じる仮処分決定をした。(読売新聞)

良識的な司法判断で良かったと思う。
当然こうなるだろうとは思いつつも、裁判所はITへの理解が薄く、時々素っ頓狂な判断をするので、実は心配していた。

フジサンケイグループ以外のマスコミも同じ危惧を抱いていたのだろう、あるいは同じマスコミ仲間の日枝会長を批判することを控えたのだろうか、ほとんどが成注報道に留まっていた。
(成注報道:「成り行きが注目されます」とのコメントにとどめ、主張の表明や独自の論評を回避すること。時としてジャーナリズムの自殺行為ともなる。)
ブログには明快な主張が溢れているのに、マスコミが揃って及び腰なのは、やはり今のマスコミの限界を示しているといえるだろう。

そこに司法の判断が下った。
水に落ちた犬を叩きまくるのは、マスコミの悪しき習性である。
日枝批判にお墨付きが与えられた今、司法判断を大義名分としたアンチ日枝報道が増加すると思われる。

思うに、フジテレビとニッポン放送は新株予約権付与の決定に際し、仮処分申請で差し止めとなる可能性も充分に織り込みつつ、「もし、差し止めとなっても、失うものは何もない。」と考えこの暴挙に走ったのではないだろうか。
確かに、ダメでもともとだし、この奇襲あればこそ、日枝優勢の状況認識がTOBへ応じる流れに拍車をかけたのかもしれない。混迷に持ち込んでの時間稼ぎは、資金力に余裕を持たないホリエモンにダメージを与えたかもしれない。

反面、この強引な手法をやりすぎと評価するアンチ日枝の世論も生み出した。
×新株発行予約権、○時間外取引の司法判断は、この世論を定着させるだろう。
公共性を錦の御旗として掲げる報道機関として、正しい選択だったのだろうか。
失うものがないとして選択した手法は、フジサンケイグループの信頼を揺るがせる結果を招いたと思う。