Fireside Chats

ファイアーサイド・チャット=焚き火を囲んだとりとめない会話のかたちで、広報やPRの問題を考えて見たいと思います。

ライブドアの視点で野球協約を読むと

2004年09月19日 09時18分58秒 | クライシス
大西宏さんが、プロ野球経営者は、選手批判でなく、ファンが納得し共感する解決策を示すべきだと指摘するように、いまや対立の構図は、経営者対選手会から、経営者対ファン及び一般社会に移行した感がある。
今後、経営者は一般社会に対するアカウンタビリティ(説明責任)を問われ続けるだろう。
現在の焦点は次の2点だと思う。
1)パ5チームで来期ちゃんと運営できるのか。
2)新規参入の審査になんでそんなに時間がかかるのだ。

最初の疑問は、選手会の疑問でもあり、だからこそ来期のシミュレーションを要求したわけだが、経営者側は近鉄とオリックスの財務状況の開示でお茶を濁してしまい、説明責任を果たしえていない。
ファンは古田会長の「セ6チーム、パ5チームという状況はいびつだ」発言に共感している。

2番目の新規参入の審査については、ライブドアの立場で野球協約を眺めて見よう。

第31条 (新たな参加資格の取得、または譲渡、球団保有者の変更)
 新たにこの組織の参加資格を取得しようとする球団は、その球団が参加しようとする年度連盟選手権試合の行なわれる年の前年の11月30日までに実行委員会およびオーナー会議の承認を得なければならない。
 すでにこの組織に参加している球団が左記の各号のいずれかに該当するときも同様とする。
 ただし特別の事情がある場合は、実行委員会はこの期限を延長することができる。


第35条 (審査の手続き)
 実行委員会およびオーナー会議は、球団から第31条による承認の申請のあった事項にかんし、申請を受理した日から30日以内に申請事項にたいする決定を球団に通達しなければならない


素直に野球協約を読めば、9月末に申請すれば10月末までに実行委員会およびオーナー会議で結論を出さなければならないということだ。
もし、NOの結論が出た場合どうなるだろう。

第36条の3 (資格喪失の異議)
 実行委員会から参加資格喪失の決定を通告された球団は、この決定を送達された日から15日以内にコミッショナーへこの決定にたいする異議の申し立てを行なうことができる。


この異議申し立て条項は、「参加資格喪失球団」に関する条項で、「新参加球団」については該当条項がない。これが適用できるかどうかは微妙なところだが、門前払いを食ったなら、10月末日までに、即日異議申し立てと再申請を行い、拒否されたら仮処分申請を申し立てることで、世論の後押しを期待すべきだろう。
このあたりになってくると、世論の風向きを読んで政治家が介入してくることが考えられる。
サプライズ純ちゃんも何か発言しそうだし、浅野宮城県知事も黙ってはいまい。
人気取りの陣笠先生も動き出しそうだ。


ライブドアの申請上の瑕疵は球場問題。

第29条 (専用球場)
 この組織に参加する球団は、年度連盟選手権試合、日本選手権シリーズ試合、およびオールスター試合を行なうための専用球場を保有しなければならない。

第30条 (球場使用)
 所属連盟会長は前条による球場使用につき満足が得られない場合、実行委員会へ、その球団の参加資格の喪失の決定を要求することができる。


県営宮城球場は収容人員、28,600人。他球団と比較すると圧倒的に少なく、現状では日本シリーズやオールスター戦開催の要件を満たしているとは思えない。これを理由に拒否される可能性がある。


今回の問題の解決のためのボールは経営者サイドにあるといっていいだろう。
経営者サイドは、いままで述べてきたような状況を読み込みつつ、社会に対しアカウンタビリティを発揮することが求められているということだ。当面、以下の諸点に対する見解を明確に示さなければならない。

・本当に5チームで満足のいくカードが組めるのか。
・協約で30日と定められているのに、なぜそんな時間がかかるのか。
・新参加球団の審査基準は何か。

問題は、12球団でのリーダーシップ。
オーナー会議の権力者であるナベツネ氏は前面から退き、
傀儡とはいえ、形式的権威を備えた根来コミッショナーも責任を投げ出してしまうようだ。
権威も権力も空白になり、コンセンサス形成のリーダーを失った状況だ。

第7条 (職務の代行)
 コミッショナーが、病気その他の事故により、職務を行ない得ないとき、あるいは死亡または退任し、その後任者が決定されないときは、実行委員会が代行機関を設置する。


第13条 (構成)
 実行委員会はこの組織に属する連盟会長各1名と、それぞれの連盟を構成する球団を代表する球団役員各1名を委員として構成する。
[実行委員会の構成に関する実行委議決事項] 実行委員会に球団を代表して出席する者は、球団役員に限り、委員を含め1球団2名以内とする。委員以外の出席者は、意見を述べることはできるが、議決権を有しないこととする。


野球協約の定めに従い、セパ両リーグ会長と球団代表による実行委員会でコミッショナー代行を定めることは必要だが、これが決まったとしても、リーダーシップを発揮できるとは思えない。
ちなみに、コミッショナー代行候補は、建設事務次官や住宅・都市整備公団総裁を歴任した豊蔵一セリーグ会長と、毎日新聞の社長会長を務めた小池唯夫パリーグ会長。

おそらく、オーナーの誰かが汗をかかないと、解決に向けてボールを投げ返すことはできそうもない。
では、誰が「時の氏神」になりうるのか。
財界的格付けから言えば、堤オーナー、宮内オーナーにリーダーシップをとって欲しいところだが、堤オーナーについては、その節税戦略や長野オリンピックでの行動から判断する限り、自分の利益が最優先の判断基準であり、火中の栗を拾いたがらない性格だと思われる。
それに、その権力志向はナベツネといい勝負のような気がする。
「たかが選手」どころか、「たかがファン」といいかねない。
宮内オーナーについては、オリックスは規制緩和の旗手のはず・・・ のエントリーで触れたが、既得権益の保持に懸命であり、構造改革を断行する気概はうかがえない。
残念ながら、ナベツネ氏の傀儡で、「読売グループ内の人事異動」で就任した巨人の滝鼻オーナーに期待するしかないのではないか。
となると、読売の社論の動向が、問題解決のスピードや方向を判断する指標になるはずである。

昨日今日の読売の社説を読んだ。
あれは、読者に向って書いているのではなく、ナベツネ氏に読んでもらいたくて論説委員が書いたのだろう。
社会の公器たる新聞紙面を個人的な猟官運動に使った醜悪なるナベツネあてラブレターだ。
読売の社説が読者に向けて書かれ始めたら、解決に向けて動き出すサインになるかもしれない。
ひところネットの中で繰り広げられていた読売不買運動が読売の論調を変える可能性がある。
しばらくは読売の紙面に注目だ。