気まぐれ徒然かすみ草ex

京都に生きて短歌と遊ぶ  近藤かすみの短歌日記
あけぼのの鮭缶ひとつある家に帰らむ鮭の顔ひだり向く 

短歌人11月号 同人のうた

2015-11-07 11:22:42 | 短歌人
ふりかへる藍色の鹿うるおひて古染の鉢のかたすみにあり
(青輝翼)

映りたる静けき空に釣り糸を垂らして待てり少年ふたり
(岩下静香)

今生の最後の枇杷を食べしのち母は眠りぬはつかともりて
(杉山春代)

放課後を遊びに行かぬようになり子の本棚の重松清
(鶴田伊津)

萎れればどのあさがおも同じ色 赤紫が指に張りつく
(猪幸絵)

病室の窓いつぱいに東京湾華火降りけり終(つひ)の繚乱
(有沢螢)

「地方こそ主役」のポスター色褪せてやや疲れたる宰相の顔
(谷口龍人)

しろじろと睡蓮の花咲きにけり小さな池を宇宙となして
(小林登美子)

ソフトクリイムねじれたとたん溶けはじめ氷見シネマまへ夏がはみだす
(花鳥佰)

大津過ぎ空席おほき湖西線みづうみ見ゆる右側の窓
(大森浄子)

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短歌人11月号、同人1欄より。