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「項羽と劉邦」に思う。

2015年11月06日 17時42分40秒 | ⑮読書&映画(所感)

映像「項羽と劉邦」の大巻を視聴完了。 ・・・ 思う事多々也!

 紀元前210年、秦の始皇帝が巡幸中に突然崩御し、宦官・趙高が詔書を偽造し長子の扶蘇を殺害、末子の胡亥に皇帝の位を継がせる。
二世皇帝・胡亥は皇族を殺し、始皇帝の治世を支えた重臣を粛清し朝廷を混乱に陥れる。
やがて圧政に耐えきれなくなった民衆が次々に蜂起。

 秦に滅ぼされた楚国の将軍の孫である24歳の項羽と、沛県の田舎町で亭長を務める46歳の劉邦も立ちあがる。
勇敢で戦に長けた項羽、困難や危険をものともせず自ら先頭に立ち闘い、自ら西楚の覇王と名乗った。
対する劉邦は、民情を理解し、人の長所を活かし、思い切って信頼し任せる戦いを展開。
やがて広く人々の支持を得て勢力を大きくしていった。
項羽と劉邦の二人は義兄弟の契りを結び協力し合い秦を倒すが、やがて天下を奪い合うライバルへと変わっていく。

※極端であるが、大雑把に二人を対比させ見て見る。 (一部他の方のブログ所感等も引用)
 立った一人でも敵陣へ先頭切って突っ込んでいく武勇がある項羽。
 自分の弱みも知って、他人の長所も知り、寧ろ敵さえも味方にする度量を持ち併せていた劉邦。

 全て自分の考えを優先し、独断専行型の項羽。
 廻りの意見を良く聞き、その智恵と知識を活かした劉邦。

 局地戦に強く、自信ある戦術で勝ちを収める項羽。
 諸将を活かし、局地戦では、大敗の連続で逃げまくるが、総力戦、戦略展開で戦を進める劉邦。

 時に、感傷的で、激情を抑えきれぬ、主観的指向性が強く、謂わば“情の人”項羽。
 激しく憎む事も、愛情を注ぐことも少なく客観的な視点が多く、謂わば“信の人”劉邦。

 生まれ育った環境からか・・・。
 憎しみと、恨みと、猜疑心が強く、身内以外を信じきれない・・・項羽。
 かなり大雑把な性格で、気前が良く、目の前の利害に拘らず、他の誠実を信じる・・・劉邦。

 採算性や資金や食料(現代の給与)の事を、当然有るものと考え事前の配慮が出来ない項羽。
 何時も、兵や家族の食事の事を含め、細部に亘り考える劉邦。

 周りとのコミュニケーションが上手く取れない、一方通行の項羽。
 常に、廻りの意見を求め、最終的な決断を下す劉邦。

 降伏した敵兵、20万人を穴埋めの虐殺をし、元の主君さえも抹殺した項羽。
 降伏した敵兵は、極力助け、味方にしていった劉邦。

 これ等の個人的性格の差や戦術論で勝ち急ぐ者と、戦略的視点で常に考える者とが、様々な“時”と“場所”とで遭遇し合い歴史が動いていく。
 人材論、戦術と戦略論、卒の将と将の将たる器と、考えさせられる事が多い歴史物語である。

※漢の陣営から楚の歌がひびき(“四面楚歌”),
  死を覚悟した項羽は、訣別の宴を張り、虞美人と名馬・騅(すい)を側にして詠う。

【項羽の詩歌】 
 力抜山兮気蓋世 力は山を抜き 気は世を覆う。 
 時不利兮騅不逝 時に利無く 騅は進まず。  
 騅不逝兮可奈何 騅が進まぬのは、如何ともしようがない。 
 虞兮虞兮奈若何 虞よ虞よ、汝をどうすればよいのか、如何ともし難し。

【虞美人の返詩歌】
 漢兵己略地   漢の兵士は既に楚の国を攻略。
 四方楚歌声   四方からは楚国の歌が聞こえる。
 大王意気尽   大王(項羽)は意気消沈しているのに
 賤妾何聊生   身分低き私が、なんで生き伸びていけましょうか!

 虞美人は剣舞を舞いつつ歌い、遂に自分の首に剣を当てて自害するのである。

 後半の項羽と虞美人との愛と別れと、死を覚悟して最後まで戦いを挑み続ける項羽の姿に、何度も涙する一時。
お母ぁ~が、横から『なぁ~ん、昨日から、一人でグスグス鼻鳴らして泣きようと! ホラ、パンツ貸そうか?』・・・だって。

小説では何度も読んだけど、映像は今回が初めての経験。
約40日程、諸活動の合間を縫って、寝る前の一時に視聴する。
種々、改めて考えさせられる映画であり、最後は感動に涙する日々であった。

※劉邦の逸話(諸将を活かした、劉邦が述べた言葉とか)
 「謀事」は軍師の張良には及ばない。
 「政治」は宰相の蕭何には及ばない。
 「軍事」は将軍の韓信には及ばない。

此の映像は、謂わば人物論、戦略論、国家論であり、歴史観、生命観の観点からも考えさせられるながらも引き付けられる映像であった。
思う事、正しく多々也。 自戒すべし!

 “剛強の士は必ず死に、仁義の士は王となる。”

 “卒に将たるは易く、将に将たるは難し”

 “万卒は得易く、一将は得難し”

 “戦には大将軍を魂とす、大将軍臆しぬれば兵臆病なり”


歴史に学ぶ! 『中原の虹』浅田次郎・著 全4巻を読了。

2015年11月06日 06時12分19秒 | ⑮読書&映画(所感)

『中原の虹』浅田次郎・著 全4巻を読了。

●清朝の基礎を作った皇帝、愛新覚羅ヌルハチの次男ダイシャンを中心に、満州族が中原を超えるまでの姿。
●日露戦争後の光緒新政の時代、清朝末期の光緒33年(明治40年)から民国5年(大正5年)の中国。
●海外列強により蚕食されつつある状況での西太后と光緒帝、更に西太后腹心の宦官・李春児。
●東北地方(満州)をまとめ上げたカリスマ的な豪傑、馬賊・張作霖(白虎張)と仲間の李春雷。
●北京政府に短期間ではあるが君臨した袁世凱。 

   敵味方にわかれた李兄弟(春児&春雷)、謀略に満ちた覇権争いと其れを取り巻く様々な人物の軋轢と葛藤。
時代に翻弄されゆく民衆を背景に、落日を迎える清朝に代わり覇権を握らんと各権力者(清朝政府&軍閥&日本・関東軍含む各国の圧力)の凄まじい闘いが描かれていく。

中原とは漢族の発祥の地であり異文化同士が隔てられている境界である。
満州族が中原を超えるということは、漢族の王朝であった明を倒しに行くという意味である。

以下は、心に残るセリフである。

「汝、満州の覇者となれ」との予言を受けた貧しき青年・張作霖の叫びにも似た文言が胸を打つ。 
『鬼でも仏でもねえ。 俺様は、張作霖だ!  わが勲は民の平安。 長城を越えよ!』

「白虎張が笑えばお陽様が出るし、白虎張が悲しめば雨が降り、白虎張が怒れば嵐が吹き荒れます。
 だから、萬人喜。お天道様や青空や、雨や風や雪と同じです。
 白虎張の大嫌いな言葉、知ってますか。
 それはね、「没法子(メイファーヅ)=どうしょうもない・・・との意味。
『どうしようもねえことなんて、この世にあるものか。 どうしようもなけりゃ、どうにかすりゃいいんだ!』

【宋教仁の演説】
『学べ!学べ! そして暴力と専横を否定せよ。 私は決して暴力によって諸君の意志を封じない。
 専横によって政治を私しない。 わが勲(いさおし)はひとえに、民の平安である。
 そのほかの名誉は何もいらない。 私が勲とするところは、ひとえに民の平安である。
 敬愛する中華人民諸君!
 どうかこの歓呼の声を、私に対してではなく、祖国の未来に向けてほしい。
 この地球のまんなかに咲く、大きな華に。 けっして枯れることもしおれることもない、中華という大輪の華に。』

 

歴史を知れ! そして、歴史に学べ! 

権力に翻弄されゆく民衆でなく、民衆の意見・民意が大幅に反映されゆく時代社会を築かなければならない!
・・・との思いを強くした小説であった。