「菜の花の沖(全6巻)」司馬 遼太郎 著 ・・・ 読了!
箱館発展の恩人と称される淡路島出身の豪商・高田屋嘉兵衛の物語である。
灘の酒を運ぶ樽廻船の水夫、沖船頭として勤め、後に北前船へ参入し帆船・辰悦丸(1500石積、約230トン)を建造、船持船頭として独立。
幕府との結びつきで択捉航路の開設や新規漁場開拓をし、蝦夷地定雇船頭を務め、やがて函館を基盤として薩摩の浜崎太平次、越前の銭屋五兵衛とともに三大豪商と呼ばれる程の成功を為す。
日々の寝起き・寝食を、野生の動植物から得られる狩猟生活を生業とする山村地域。
じっくり留まり、天候に左右される食料を一年かけて育て生活の糧を得る農村地域。
板子一枚下は地獄と言われつつも天候しだいで、日々豊富な糧を得られる漁村地域。
大枠、その様な時間と空間軸を捉えつつ地域性の違いや、そこで育まれてきた言わば風土の違いさえも映像化し、可視化する様に語られている。
生活基盤である狩猟・漁業を自主運営的雰囲気で生業としていたアイヌ民族を、やがて強制労働制度へと移駆り立てる過酷な歴史をも語って進んでいく。
当時のアイヌ民族との関わりや、更に幕府やロシア政府との交渉、士農工商の身分制度における屈折と闘い。
日露間の国境紛争に巻き込まれ、ロシアに捕らわれたた後に、松前藩の捕虜となっていたゴロヴニン艦長の釈放に尽力、日露双方から感謝される民間外交にも貢献した人生。
国後・択捉の新航路を拓く為の日々は、正に冒険者であり、決断の人生でもあり、波乱万丈の船乗り・航海士・船長・商人としての言わば“冒険小説”でもあった。
その基礎となったのは、彼のパイオニア精神と情報収集能力、及び品質管理の徹底で有ったと言われる。
言わば、チャレンジ精神と情報収集力、更にその調整能力と企業経営とも言える管理能力が、ずば抜けて鋭く繊細であった点であろうか?
私にとって、この2ケ月程、東京との心痛める折衝の日々と新規事業展開への企画と折衝の眠れぬ日々の中で、寝る前の一時、布団の中で空想とロマンに浸れる至福の一時であった。
全6巻、5月末に読了! イヤァ~面白かったぁ~。