理事長退任にあたって ~感謝とお願い~
坪井 節子
2020年6月23日をもって、カリヨン子どもセンター理事長を相川 裕 理事に引き継ぎ、念願の世代交代が実現しました。
2004年6月24日、NPO法人カリヨン子どもセンターが、日本で初めての子どもシェルターを開設してから、16年の月日が流れました。たくさんの人々が、今晩泊まるところのない子どもたちを、ひとりぼっちにしたくない、家族と共に暮らせないティーンエイジャーに、この厳しい現実の中でも生き抜いてほしい、という願いをもって、駆け抜けてきた16年でした。
先の見通しの立たないことばかりでしたが、コタンやカリタン弁護士、職員やボランティア、理事監事、評議員の仲間たちと共に、この子どもたちが目の前にいる限り、諦めるわけにはいかない、走りながら考えるしかない、“やるっきゃない”の檄を飛ばしあいながら、ここまで来ることができたのだと思います。子どもシェルター、自立援助ホーム、カリヨンハウス(デイケア)、子ども支援金事業と、子どもたちのニーズが切実になる都度、それに応えるための事業をたちあげ、社会福祉法人に衣替えもするという、当初予想もしなかった展開でした。振り返ると、感無量です。
そこには、常に、多くの皆様からの、奇跡とも思えるほど豊かなご支援、励ましがありました。関係機関、協力団体との、子どもを真ん中にした、熱い連携もたくさん生まれました。本当に、ありがとうございました。
子どもシェルターが児童福祉法上の事業として認可を受けられるようになり、子どもシェルター全国ネットワーク会議には、全国21団体が参加し、17箇所の子どもシェルターが活動中です。シェルターを必要とする子どもが減らないという悲しい現実がある限り、ひとりでも多くの子どもが、生きる気力を失う前に、どこかの子どもシェルターにたどり着いてほしいと、願うばかりです。
精神を病んだり、障害を抱えたりする子どもの行き場所のなさ。児童福祉法上の支援が受けられなくなった若者の孤立と困難。制度の狭間で苦しむ子ども、若者のニーズが、また露わになっています。
カリヨン子どもセンターは、相川新理事長のもと、これまでの活動をさらに充実発展させていくと共に、新たなニーズにも取り組んでいかなければなりません。
私も、年齢相応の体力、気力の衰えは隠せないものの、理事のひとりとして、またコタンのひとりとして、現場で、これからも、子どもたちと共に歩んでいきたいと願っています。どうか今後とも、変らぬご支援、ご協力のほど、よろしくお願い申しあげます。
理事長就任にあたって
相 川 裕
みなさま、このたび坪井前理事長の後任として理事長に選任された相川 裕です。どうぞよろしくお願いいたします。
カリヨン子どもセンターの原点は、子どもたちの権利擁護に取り組む弁護士が直面した、虐待等の事情で行き場のないハイティーンの子どもたちからの相談に応えられない、という現実でした。ともかく子どもの安全を確保したい、そして子どもの話を丁寧に聴き、関係者と話し合ったり、時には法的手続きをとったりして、なんとかその子をサポートしたいと思いますが、そのためには、子どもが当面の間安心して避難し、生活できる場所を確保しなければなりません。そういう場所があったら…、その願いをお芝居に込めて上演したところ、予想をはるかに超える共感とご支援をいただき、お芝居から子どもシェルターが生まれました。
このようにして、カリヨン子どもセンターがNPO法人としてスタートしてから 16年、社会福祉法人となってから12年が経ちました。この間に、多くの子どもたちがシェルターで心と身体を休め、あるいは自立援助ホームで働いたり学んだりしながら成長し、巣立っていきました。その数は子どもシェルターで約430名、自立援助ホームで140名余りに上ります。退居後もカリヨンを実家のように思ってくれるOB・OGも少なくありません。新型コロナウイルスで緊急事態宣言が出されている間も、子どもシェルターも自立援助ホームも、子どもたちを受け入れ、ともに暮らしています。
「カリヨン(carillon)」とは、大小様々な鐘を組み合わせてメロディを奏でる装置のことです。カリヨン子どもセンターという名前には、子どもたちそれぞれの個性を尊重したいという意味が込められています。そして、今では、子どもたちを真ん中に、多くの大人たち、関係機関の方々も、それぞれの持ち味・個性を響き合わせて、関わって下さっています。
私はこれまでに何度も子どもたちの大変な現実に打ちのめされながら、しかし、子どもたちの持っている力、そしてカリヨンに集う大人たちの熱い思いに励まされてきました。
次の方にバトンを託すまでの間、カリヨンの鐘の音が、楽しく暖かく味わい深く響き合い続けるように、しっかりと役目を果たしたいと決意しています。
最後になりましたが、カリヨンが歩みを続けていくためには、みなさまのご支援が必要不可欠です。カリヨン子どもセンターへの一層のご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。