ホスピス、緩和ケア看護覚書*カナダ編

ホスピス看護をカナダから。2013年大学院を卒業しました。カナダ人の夫とは14年たっても熱愛中。

威厳

2011年05月26日 | 日記
CRNの仕事をしていて思うのだが、自分の立場をとても前に出して人を威嚇する人。大嫌いだ。病院で言えば医師は看護師より偉いんだぞ!とばかり、同じチームの一員として認めない、卑下するなんてとんでもないことだと思う。教育年数の差だとか資格の違いとかそういうことが大切なのではない。重要なのはそれぞれの職種の視点から患者のニーズを見極め、その情報をチームでシェアをしてより良いケア計画を立てていくことだ。看護師だからと引けをとらない。堂々と自分の立場から意見がプロとして言える、そういうプロフェッショナルを心がけている。でも前回のブログの時の電話のシーンを振り返ると、うーん私も自分の方が偉い!っと思っていたのかな~と考えてしまった。

CRNはRNの上になる。責任も重くなれば仕事内容も複雑化し、もちろん給料もあがる。だから普通はRNでもLPNでもCRNには一目置く。なのにあのチャージナースは私をまったく無視した。だから呆れたし、むっとしたのだろうかと。しかし自分としては知らないことを認めようとせず、患者のケアゴールからかけ離れた指示をもらって満足している。そういう彼女にむっとしたと思いたい。

しかし、同じ日に違う患者、違う医師でこんなやり取りがあった。患者の状態は急速に悪化しているし痛みも増強している。痛みの観察から腫瘍の圧迫による神経系の痛みでオピオイドの増量と鎮痛補助剤(ガバペンチンとデキサメサゾン)を始めたら有効だと私は思った。主治医に連絡すると、そんなことをする必要はないからオピオイドを2倍にしたいと言う。レスキューを計算に入れた一日量の2倍だ。その上、オピオイドをローテーションするので、100%の変換をするのも私は懸念するのに。200%の増量なんて、と不安になる。患者は高齢で腎機能は正常値内だが上昇して来ている(だからローテーションの必要があった)そんなに急に上げなくてもレスキューでカバーすればよいのではないかと言うと、この患者はあまり文句を言わないからこうした方が良いと言う。OIN(過剰投与による中毒症状)になるのではないかと心配する私。しかし彼女は納得しない。挙句の果ては「あなた自分が指示を出しているの?」と言ってきた。そうですCRNとして意見は言えても指示は出せないのだ。医師である彼女だけが指示を出すことができる。私は緩和のスペシャリティーとして意見を加えるだけだ。「いいえ私は看護師だから看護師としての意見を述べているだけです。あなたは医師ですから。指示が出せるのはあなただけです」と言うと「そうよね。だから私の言うことを聞きなさい」とまで言ってきた。とても悔しいと思った。思いが届かない。鎮痛補助剤を過小評価してオピオイドだけに頼る。良くある間違いだ。いつもなら緩和医師のゾイにバックアップを頼むのだが彼女は超忙しくて彼女が来てくれる望みはない。

症状が不安定と。行きたがっていたホスピスへの転送を保留にしなければならなかった。ホスピスへ行く前に亡くなるのではないかと、眠れなかった。翌日訪れると案の上、患者はOINの症状を表していた。しかし、患者は薄れ行く意識の中で、痛みに比べればこれぐらい、、と言う。ビックビックと手足や肩が時折動く(OINの症状のひとつ)それを止めるためもうひとつ薬を追加して彼はホスピスへ行った。この医師は私がチャージナースにむっと来たのと同じ思いだったのだろうか。

にほんブログ村 病気ブログ 看護・ナースへ
にほんブログ村