ホスピス、緩和ケア看護覚書*カナダ編

ホスピス看護をカナダから。2013年大学院を卒業しました。カナダ人の夫とは14年たっても熱愛中。

依存症 最終回

2012年05月18日 | 家族


数ヶ月前にBrodyが家から出て行き母親と暮らすようになった。何故かというと家族全員がBrodyと住むことがとてもストレスになり、、、、私たちが追い出したのか、彼は自分から出て行った。

Brodyは小学校4年生の時にADDと診断され内服を始めた。彼の落ち着きのなさ、強い不安症は1年生のころから表れていたが遅生まれなので診断がなかなかつけられなかった。内服を始めてからクラスで集中することができるようになったし、不安症状がぐっと減った。

ティーンになって食べ盛りになったからだと最初は思っていたが、異常なまでの量を食べるようになった。特に自分が好きなものは見境がなく目の前からなくなるまで食べ続ける。サバンナでようやく獲物にありつけたライオンみたいな食べっぷりで見ているだけでこちらの気分が悪くなるほどだ。仕事が忙しい私は食事の作りおきをすることもある。明日の夕食だから食べないようにと伝えて、メモまで入れ物に張っていても食べてしまう。仕事から戻ってきて夕食がなくなっていることに腹を立てる私にまったく悪びれる風もない。買い入れの量を増やしても彼の好きなものはあっという間になくなる。

テレビゲームが好きな彼。昔は一日のリミットも決まっていた。それが母親が買い与えたテレビを部屋に置くようになり、ゲームもすべて部屋の中でするようになった。私も旦那も忙しさのあまりか規則もゆるくなって部屋に閉じこもってゲーム三昧の日々になった。XBOXをせがまれ最初はPS2があるから買わないと言っていたがあまりの懇願に誕生日とクリスマスプレゼントと自分のお小遣いを合わせて購入。正直XBOXが何であるか知らなかった私たち。WiFiをつなげて以来彼の生活、性格、習慣は急激に変わっていった。部屋に閉じこもって食事にも出てこない、成績はどんどん下がり学校もサボりだした。家族との外出も参加しなくなり、シャワーも浴びなければ下着も替えない。XBOXやWiFiにタイマーをパスワードつきで入れてもそれを変えられたり、強制的に電源を抜くとそれはそれは怒りまくるようになり。体も大きくなり知識もついたので小さいときのように親が大きく出ることで解決するような状態ではなくなった。食事に来ないのに急に部屋から出てきたかと思うと台所をあさり食べのをつかんではまた部屋へ引きこもり。部屋中にごみや食べかす、食べ残しのものが腐り、食器は割れ異臭を放つようになった。たまに納得させて食事に参加すると、家族の会話にはまったく参加せず食べ終わると食卓につっぷしていつになったら部屋へ戻っていいのかとそればかりだ。こんな状態なので顔を合わせると小言から大喧嘩になる状態で誰もがぴりぴりしていた。

カウンセリングにも連れて行った。セラピーが始まると行くのを拒否するようになった。子供のころからお世話になっている小児科の先生からも部屋からテレビやゲーム類をすべて除くように言われ、それを実行、もう一度家の規則をきっちりしていこうと、家族会議をした後、それがいやで出て行ったのだ。

出て行ってしまうと親としてもう少しがんばれたのではないかとか後悔すると同時に平和を心の底から喜ぶ自分たちがいた。
そう、Brodyは恋ちゃんなのだ。愛ちゃんの4倍も食べないと満足しない。そしてサイバー依存症でもあり、、、この上タバコやアルコールの味を覚えたらどうなるのだろう。考えただけでも恐ろしい。

カンファレンスのとき講義がすべてBrodyと重なった。しつけでどうにかなることだと、お手本を見せればどうにかなるかと、欲望に流されずに自分をコントロールできる子になってほしいと思っていた。それがすべて間違いだと気づかされた。化学物質の変化がああさせていると理解できると彼の行動がとても理解できる。テレビゲームを買い与えたのは最大の過ちだった。朝から晩まで時には眠ることもなく一日何十時間も戦争のゲームをしている。友達はオンラインでたくさんいるようだが実際付き合う友は一人しかいない彼。どれだけ彼のピッチャーは大きくなったのだろうか。もともと基礎があった上にゲームによって加速、悪化させてしまった。

今のところは母親が張り切って”母親”になっている。しかし長持ちはしない彼女。彼が母親と暮らすことは永遠ではないと旦那も私も感じている。もっと早くゲームの害を知っていれば、依存症のことを理解していれば、、、後悔は止まない。

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依存症 3

2012年05月15日 | 家族


刺激因子と受容体をつなぐのがドーパミン。ドーパミンってとても大切な化学物質なのです。これについて話し出すととても難しくなってしまうので省略。

で、依存症を克服した!と喜んでもピッチャーサイズの受容体は求めているので、有害な刺激因子以外のもので受容体を埋めなければならない。

例は基礎に疾病があればその治療薬であったり、スポーツや仕事、趣味に打ち込んで、刺激因子、ドーパミン、受容体のバランスを保つ。いわゆる普段の生活の中で得られる満足感や達成感が健康な刺激因子。それで置き換えれば良いのだ。と、言うのは簡単。依存症になってしまった人は社会的に孤立してしまっている人が多く、職も失いなかなか健康な刺激因子を見付け出すことができない。入れ替わるものが見つけられない。これがチャレンジになるのだ。

余談だが、ロックスターが薬物依存症になりやすいのは。コンサートなど普通の人は味わえないような達成感、満足感が過剰な刺激因子となり受容体が増えてしまう。毎日激しいコンサートをするわけにもいかず、それに入れ替わるものが必要になるのだけれど、手っ取り早く薬物に、、、と手が伸びてしまう例だ。

祭りの後、放心状態になってしまうことってありませんか。無気力になって何も面白いと思えなくなって、、、、過剰な刺激の後、受容体が空っぽな感じ。きっと多くの方が経験されたことがあるでしょう。しかしほとんどの人が薬やアルコールに頼らず時間の経過と共に普通の生活に戻っていけたでしょう。依存症がある人は祭りの後の放心状態が強く長く続き有害な刺激因子に頼ってしまう人のことを言うのです。空っぽな放心状態だけならよいが、その上不安感がずっしりと覆いかぶさったり、集中力を欠いて仕事に戻れなかったり、イライラする気持ちばかりが先立ち空回りの焦燥感だけが走り、、、、

依存症がどういうことであるか分かっていただけたでしょうか?依存症を心の弱い人、親の育て方が悪かった、危険な生活をしているからだ、などと言うことはなくなるでしょう。

とシリーズは先日行ったカンファレンスで学んだことでした。喫煙が止められない人を理解するのにとても役に立つ講義でした。タバコの有害性が語られファッションで呑む時代から体に必要で飲む時代に変わってきました。このところを理解していないとタバコを止めようとする人への適切な治療ができない。そのことから発して依存症、精神科、心療内科系の疾患にわたってとても学びの多いセッションでした。

なぜこの話題を”家族”のカテゴリーで書いていたかと言うと、、、

続く。

依存症 2

2012年05月14日 | 家族


精神科、心療内科系の疾患は遺伝性が多く、その他には生活環境からきている。両者も受容体の(化学物質)の変化が認められる。この化学物質の変化を適切に治療されていないと、受容体が空で刺激因子を求めるようになる。正確に疾病が診断されていなかったり、薬の量が適切でない場合、知らず知らずのうちに刺激因子で不足分を補おうとする。不安感やイライラ感を抑える、集中力を高めるため、リラックスできるからと喫煙、アルコール、カフェイン、薬物、ギャンブルへ走る人は多い。これがないと社会の中でファンクションできないほどのレベルになると依存症となる。不安感などを取り除き社会生活をスムーズにしようとする身体の反応が刺激因子の摂取行為の慢性化、エスカレート化する理由だ。

不安障害がある人の中には、きちんとどう対処するべきか対策や技術を得ることで解消することが出来る人もいる。しかしそれができなかった人にこの依存症の傾向があるのだ。

疾患別に喫煙率を調べると、それぞれ45-88%と高い割合が占めている。

恋ちゃんがタバコをやめようとする時は愛ちゃんよりもっともっと沢山のニコチンパッチやニコチンガムが必要になる。血中濃度を保つため安定性のあるものを使った方が効果がある。

それともこれが機会で今までに診断されていなかった精神科心療内科系の病気が判明して、治療を開始することによってタバコに頼らなくてもいいようになるかもしれない。ADD/ADHD, うつ病の人に多い例だ。

生まれつきピッチャーの受容体を持ってる人、もしくはなんたかの理由でコップからピッチャーになってしまった人。両者ともピッチャーはコップに戻らない。依存症から脱出しても、他に入れ替わるものがなければ受容体は求め続ける。

続く。

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依存症

2012年05月12日 | 家族


愛ちゃんはアイスクリームを1つ食べて10/10満足できる。でも恋ちゃんは3/10しか満足度が得られない。なので10/10の満足度を得るために、恋ちゃんは4つアイスクリームを食べなければならない。

もし愛ちゃんと恋ちゃんが姉妹だったら、親はどうするのだろう。アイスクリーム屋に2人を連れて行き、アイスクリームをひとつずつ買うと、愛ちゃんは満足しても恋ちゃんは満足しない。恋ちゃんに4つもアイスクリームを買えば愛ちゃんはどう思うだろう。かといって愛ちゃんほど喜ばない恋ちゃんを親はどう思うだろう。

依存症を理解するためには、ここを押さえておかなければならない。

依存症を持つほとんどの人が恋ちゃんなのだ。刺激因子に比べ、それを受ける受容体が沢山あるのだ。水を入れるコップとピッチャーを想像してもらえば容易だろう。愛ちゃんの受容体はコップで恋ちゃんのはピッチャー。両方の器を満たす水の量に絶対的な差があるのだ。水が刺激因子とすると、器を満たすには恋ちゃんには愛ちゃんよりもたくさんの水が必要なのだ。刺激因子はいろいろなものがあるが依存症に関係するものはアルコール、薬物、ニコチン、カフェイン、ギャンブルによる快感などだ。受容体は常に刺激因子を待っている。刺激因子が来ないと、それを求める、それが症状として出てくるのだ。

どうして愛ちゃんと恋ちゃんにコップとピッチャーの違いが生まれたのだろう?依存症の原因は遺伝、生活環境、精神科・心療科系疾病、原因不明などからおこる。

生まれつきたくさんの受容体をもって生まれる。遺伝子の形態はまったく同じではないが似たような性格(受容体の)が依存症を持つ人、ADD/ADHD、行動異常、喫煙者に認められている。
生活環境とは何を意味するのだろう。過剰に刺激因子に接触することで受容体が増えていく。サイバー依存症といわれているのが典型的な例だ。テレビゲームは視覚、聴覚をかなり刺激する。最近のオンラインゲームはとてもリアルだし体の動きも加わって普段の生活では接することもないほどの刺激が脳に伝わる。過剰な刺激により増えた受容体。普段の生活ではその受容体が満たされず、学校や仕事へ行くことができなくなり、普通の人間関係を続けることができなくなることだ。

続く。

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近所のおじいさん

2012年05月08日 | 暮らし
お向えに住んでいるおじいさん、ジョージ
は82歳だけどもっと年上に見える方。一人暮らしでレスリングが好き。家の周りのこともちゃんとする。木に登って枝を剪定したり屋根に上って樋の掃除をしたり、しゃきしゃきに見えるがここ数年、年に何度か救急車のお世話になる。いつも数日で帰ってくるけど。地域のケアマネさんのおかげで介護の方が定期的にくるし、食事も運ばれてくる。この方の子供たちも代わる代わる家を訪れている。

この人大きなピックアップトラックを持っているのだ。背中が丸まって背も低いので運転席に座る姿は”本当に前が見えているのかね~”と不思議なくらい。旦那はジョージの車を見たら安全なところに避難するように私たちに言っていた。

で、ウイスラーから戻って来た時、お隣さんのゲートが壊れているのに気づいた。なんとジョージがバックで出てきてそのまま我が家のお隣さんに突っ込んだとか。ゲートをなぎ倒しその上で車輪が空回りしていた。ジョージは意識を失っていたわけではないけれど、どうしていいかわからずあわてふためいて、ギアはまだ後進のままアクセルを踏んでいたとか。近所数人で、本人を説得させ、運転を変わり車はジョージ宅まで連れて行かれた。もちろん警察も呼んだそうだ。

で、ジョージは運転免許の更新もしていないし、車の保険も2年前に切れたまま。子供たちからはきつくもう運転しないようにと言われていたとか。え!最近でも町を運転している姿は見たよ。ってことは無免許、無保険で運転していたわけ?!怖い、怖すぎる。ゲートが壊れるぐらいでよかったけど、家に突っ込まれていたら?子供がひかれたら?

と近所の人が車を家まで持って行ったあと、バッテリーを引き抜いたとか。これでもう運転はできないぞ、と。

車社会の北米。車を運転することは生きている証拠と言っても過言ではないほど、運転することにこだわる人は多い。仕事上そういう高齢者や病気のために運伝できなくなった人に出会った。プライマリーケアプラクティショナーは医療面から運転の安全性を考慮して免許書センターへ忠告することができる。そしてそれを受けて免許センターが免許書の取り上げもできる。それをされて激怒する人、、、ありましたよ過去に。なので穏便な方法として家族が鍵を隠したりするケースも。

お隣さんには悪いけどゲートが壊れて、すべてが判明してよかったよ、と思う。車は動く凶器。誰も怪我をする前に事が済んでよかったと思う。


最近以前とまったく同じように復元されたゲート。よかった、よかった。

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