ホスピス、緩和ケア看護覚書*カナダ編

ホスピス看護をカナダから。2013年大学院を卒業しました。カナダ人の夫とは14年たっても熱愛中。

慕われる看護師

2012年07月22日 | 訪問看護
って何でしょうか?

訪問看護は緩和、在宅点滴、術創やじょくそうなどの包交の3本柱。緩和は自分の得意分野で経験も幅広く深くあり知識も深いので他の訪問看護師より抜きん出ていることは自負している。最近他の分野でも”あなたが毎日来てくれれば”と言われることが多くなった。

9つもじょくそうがあるテリー。事故による下半身麻痺で30年。包交にかかる時間は並大抵でない。その上透析に通っているので朝9時からきっちりはじめないと出かけるのが遅くなって大変なのだ。それなのに今日私は物品が見つからなくて10分ほど遅れて訪問。遅れてしまってごめんなさいと言うと、そんな風に謝ってくれるのはあなただけだ、と。

病院でもホスピスでもそうだった。私にしてみれば普通に接しているつもりだけど、ありがたいと思われる。患者は患者という特別な人間になってしまって健常人のように接してもらえない。弱者という図式でしょうか。ぞっとします。

次の家では”あなたが毎日来てくれたらきっと傷が早くなおります”と言われた。またまた言い過ぎですよ~と冗談めいて返すと、真剣な顔で”あなたほど丁寧にきちんと絆創膏を当ててくれる人はいませんよ”と。特別なことは何もしていない。看護師として期待される技術を使っているだけだ。
ってことは他の看護師は??家族は他の看護師はこんな風にと真似をする。あーそれはひどい、、、と。素人でもわかるような悪い技術を平気でするなんて、、、
にっこりして、じゃあチームメイトをしっかり教育しますわ~と去る。

日本よりずーっと社会的地位も高く、お給料も良いこちらの看護師さん。日本のように人のお世話がしたくてなどと献身的な理由で看護しになった人よりも、お給料が良いし、”看てあげてるんだから”と高飛車な方が多いこちら。特別にすごい看護師でなくても、普通にしているだけで慕われるなんて、なんて怖いところなんだ~と久々に現実をひしひしと感じた日でした。

にほんブログ村 病気ブログ 看護・ナースへ
にほんブログ村

嬉しいよやっぱり 2

2012年07月12日 | ホスピス
彼女の気持ちを汲みながら話を進める。在宅のことを全く知らなかった二人は、そういう援助を受けられるのなら、もう少し長く家に入れるかもと喜ぶがトーマス自身があまり健康でないので、トーマスの負担が心配と。ホスピスは子供達に近いところを選ぶのか、それとも二人の家に近いところにするか、二人は迷う。

アイリーンの息切れが気になった。どれぐらい続いているか聞くとそんなことはないと言う。具体的な質問をすると過去2週間ぐらい歩くと息切れがしていたと。会話が長く出来ないのは緊張する性格だし、不安からくるものかと思ったと。診察を始めると右肺の下葉に全く息が入っていない。打診も鈍い音。触診でも音の振動が伝わっていない。という事は胸水の貯留か、無気肺の可能性。呼吸数は早いし、心拍数も1分間に140と早い。全身の観察を終えて、どうするか迷った。

11時半、オフィスに戻ってもう一度データーに目を通す。最後の胸部レントゲンは2ヶ月前。左の肋骨の転移以外に異常所見はない。GPに電話を入れる。最近の検査結果がないかと。GPは私の所見を聞いて驚く。10日前にきた時はそんなことはなかったと。

自分の観察力と診断力に自信がない。NPになるまでにはあと一年ある。思い違いだったらどうしよう。ホスピスではなくて病院に連れて行って、取越苦労だったらどうしよう、と。

緩和医のゾイに電話をいれる。丁度会議が終わったと話ができた。TPCUか ER、それともホスピスなのか自分の意見を伝えるが自分の中でもどうしていいか決めれない。相談しているうちに考えがまとまってきた。結局GPが病院で患者を診ることができるので、TPCU (他病院になる)ではなくERへ行くことにした。

こうすることで肺炎による無気肺なら抗生剤の投与。胸水なら穿刺ができる。これぐらいならTPCUへ行かなくてもどんな病院でも治療が受けれる。顔見知りのGPに診てもらえることもできる。それにアイリーンはまだ真にホスピスへいく準備ができていないと私は感じた。。病院へしばらく入院することがトランジッションの期間になりスムースなホスピス入院が出切るだろうという見込みからだ。

二人にチームの意見を伝えると、二人もそうしたいと言う。私は救急車を手配し、ERに連絡を入れる。レントゲンの結果が出るまでとても不安だった。間違っていたら、、、、と。

で結果は胸水貯留。穿刺が行われて彼女の呼吸状態は改善された。嬉しかった。自分の観察と診断の正確さが認められたようで。連休明けの火曜日は彼女はホスピスへ入所した。丁寧なお礼の言葉をもらった。私の訪問で不安だったガンとのその後が明確になった。暗闇に灯りがついたような気持ちだった。それに胸水をみつけ適切に治療してもらえたことを心から感謝していると。嬉しい。NPになるために新しい技術を身につけてそれを使って適切な方向へガイドできるようになって。自分の観察力や診断力にもっと自信を持っていいのだと、嬉しい日だった。

にほんブログ村 病気ブログ 看護・ナースへ
にほんブログ村

嬉しいよやっぱり 1

2012年07月10日 | ホスピス
4日連休の前、ローカルのGPから電話が入る。ホスピスに入れたい患者がいるんだけどと。ホスピスに入るためには緩和ケアコンサルテーションチームによるアセスメントが必要。いつもならGPからの紹介は緩和医が行くのだが彼女は午前中ミーティングなので私が行くことになった。ターミナルとわかれば早めに訪問看護部へ紹介になり、在宅緩和ケアが始まり、そこから緩和チームに依頼されるケースが普通なので今回のケースはまれだ。

連休中は緩和チームもホスピス入院も活動しない。なにもかもがストップするのでホスピス入院が必要ならその日の3時までにすべての書類を済ませなければならない。

しなければならないことは

1)ホスピス入院に適切かどうかのアセスメント。身体的、精神的に準備ができているかどうか。予後が適切かどうか(予後が3-4ヶ月以下であること)。急性期の治療が必要でないこと、もしくはそういう治療を希望しないこと。点滴による化学療法をしていない。身体的に適切であっても、精神的に準備できていないケースもある。延命につながるような治療(点滴による補液や抗生剤投与、輸血などだ)をもうしないと決意するのはほとんどの人にとって大きなハードルだ。

2) ホスピスへ行くと決める前に、すべての情報は伝達されなければならない。最近の在宅看護の発達により在宅死は可能な時代だ。しかしその資源やサポートを知らない人は多い。それを踏まえた上でホスピスへ入院を希望しているのか確認しなければならない。

情報の提供、アセスメント、意思決定の介助。することはたくさんある。焦って決断を迫ったりしてはならない。人生の大きな曲がり角。患者のペースにあわせて進めなければ信頼関係を失い失敗する。連休前というプレッシャーはあるが、患者が決心することができなければ、それはそれで良いとする姿勢が大切なのだ。あくまでもプレイヤーは患者と家族で私たちはプレイヤーを支える裏方であることをわすれてはならない。

訪問前にすることはアクセス可能なデータのすべてに目を通す。HAのデータベースで血液検査やレントゲン、他科のコンサルテーションの結果など。これをすると疾病のどの辺りにいるのかだいたい検討がつく。しかしこればかりに頼るとこれまた失敗する。私達が扱っているのは人間でナンバーや写真ではない。

訪問するとアイリーンはベッドに横たわっている。夫のトーマスが玄関で迎えてくれた。昨夜アイリーンがトイレから立ち上がれなくなって怖くなってGPに朝一に電話をいれたとか。

アイリーンはあんなに頑張って治療をしたのにこんなに早く癌が進んで、毎日自分でできることが少なくなって、トーマスに頼ると事が多くなって情けないと泣きじゃくる。アイリーンの最後の化学療法は4月。骨転移した場所に痛み緩和のためにした放射線療法は5月。

続く

にほんブログ村 病気ブログ 看護・ナースへ
にほんブログ村


卒業おめでとう

2012年07月01日 | 子育て
先日AJが高校から卒業しました。ガウンとハットをかぶっての式典。



先日は父兄主催のパーティー。日本の成人式みたいなものでしょうか。ドレスにお金をかけます。彼女もドレスやを転々として決めた一点。白い肌に映えます。20年代30年代のファッションに興味があるので髪の毛もそんな感じでアレンジ。パーティーのエスコートはもちろん現在進行形のブライアン君。一歳歳下でも大丈夫。



朝から化粧や髪のセットをしてもらい、



豪邸を持つ友人宅に集合。カップルや友達同士で写真撮影。



リムジンに乗り込みダウンタウンバンクーバーへ。





スタンレーパークでまたもや撮影会の後、会場のハイアットホテルへ。夕食とダンスパーティーは真夜中過ぎまで。次の会場はスコシアバンクシアターを借り切ってのゲームやらエンターテイメントナイトは朝五時まで続きます。大型バスに乗って高校まで戻って解散。

アルコールやドラッグは一切禁止で、会場に入る時にボディーチェックがありがあります。誰一人怪我や病気をすることもなく戻ってきました。

北米で子供を育てている方、卒業間近になるとお金が沢山かかります。しっかり貯めておきましょう。

9月からはSFUへの進学が決まっている彼女。フランス語を頑張ったので、卒業は英語とフランス語のダブル卒業でした。よく頑張ったと思うし、飛びっきりの美人に育ったなあ、と嬉しく思いました。

にほんブログ村 病気ブログ 看護・ナースへ
にほんブログ村