ホスピス、緩和ケア看護覚書*カナダ編

ホスピス看護をカナダから。2013年大学院を卒業しました。カナダ人の夫とは14年たっても熱愛中。

たちが悪い

2011年05月20日 | 日記
知識がないのは困りものだ。自分が何を知らないのか、知らないことが一番恐ろしい。だからオープンに人の助言を聞くということはとても大切だと思う。看護師になって21年。ずいぶん長い間やっているものだ。だからといって何もかも知っているというわけではない。一般的な看護。ホスピス緩和看護なら任せて!と言えるが専門的な母性看護を聞かれたら、うーんあてにならない。だから自分の知らないエリアでは謙虚でいたいものだ。

療養施設にいる、ノーマンのペインコントロールを頼まれた。非がん患者だし、本来なら緩和医師が行くのだが彼女はスーパー忙しくて行けないから代わりに行ってちょうだい、と言われ関わりだした。4年前の術後から虚血性のダメージで下半身麻痺。今はとても深いジョク創か尿路感染からの敗血症を何度も繰り返したノーマン。ジョク創の痛みが一番でどんどんエスカレートしてきている。その上主治医が一日量の麻薬の22%にもあたるレスキューを処方して、レスキューをあげるたびに意識不明になったり呼吸抑制が起こっている、と厄介な状態。妻はスタッフに対する不満が頂点にたっしている、と厄介な状況に追い討ちをかける。

一日目は念入りに観察をしてノーマンと妻の訴えをコンコンと聞いた。「ようやくわかってくれる人に出会えた」と二人は喜んでいた。タイトレーションをするために投薬のルートを変え、痛みの原因だったドレッシングをWCCと相談して変えた。痛みの原因を取り除くしルートの変更もしているので、増減のない100%の変換をした。来週様子を看に来るから、とスタッフにもノーマンにも伝えてあったけれど、なんだか今日いやな予感がして病棟に電話を入れると、ドレッシングを変えた後も痛みは増すばかりでとても痛がっている。15回もレスキューを使ったと言う(実際は11回だった)。それならどうして連絡をしてくれなかったのか?!とぶつぶつ思いながら、それでも他にどうしても看ないといけない患者の訪問を済ませてから病棟へ向かった。病棟に着くとチャージナースが医師と電話で話している。彼女が持っていたカルテはノーマン。メモには私が今日来て薬の調整をすると書かれている。電話で指示をもらいるようで、「昔はこの薬でコントロールできていたのに、戻すべきだ」と言っている。「あー急速にタイトレーションをしたい時は徐放性製剤を使わない方が良いのに、、」と思い。彼女の前に自分の名札をみせて、そのことなら私に話させてとジェスチャーを送るのに、ハエを追っ払うようにあっちへ行けとばかりに追い払う。ひつこくひつこく同じことを繰り返し医師に伝える彼女。3度ぐらい彼女の注意を得ようとしたが、「え?誰かが私の邪魔をしているから良く聞こえません!」とまで言われた。医師の指示を書き込む彼女。みてみると、昔の指示に逆戻り。「だー」と思いながらも。走り去る彼女を引き止めて、事情を説明しようとすると「忙しいから後にして」とまったくの無視。

仕方がないノーマンのところへ行ってまずは診察からなんて思って行くと、妻に頭ごなしに怒鳴られた。「あなたのせいで夫はこの2日間痛みに苦しんでいるのよ!訴えてやる!」とそんな中にチャージナースが入ってきて、新しい指示をもらって何もかも、元通りにしたらか、この内服さえ飲めば大丈夫、と去る彼女。本当かよと内心思いながら何も言わない私。言うだけ言って叫び尽きたらカンカンに怒っていた妻は次第に納まって、落ち着いて話ができるほどに。カルテをみると、鎮痛補助剤がすべて医師によって私が去った後に削除されていた。あらら、これなしだったらそりゃあ痛みも増すだろうに、と。担当医師はお休みだったので他の医師にすべての薬を必要なものに再度切り替えてもらった。

ことが納まったころにチャージナースに電話の邪魔をして悪かったと詫びた。そして改めて自己紹介をした。動じない彼女、まるで私が悪者のような顔。彼女に彼女がとった指示について質問してみた。どんな目的があったのか、と。彼女は「私が指示をだしたんじゃないわ。医師が出したのよ(って私そばであなたの言葉を聞いていたんですけど、、、)それもその指示は一度も患者を診たことのない医師。主治医に連絡が取れないのでディレクターからとった貴重な指示だ」と。貴重な指示ってそれじゃあ患者の痛みは改善しないのだけれど、、、。結局彼女は知らぬ存ぜぬで通す。受け持ちの看護師と最新の指示について話すと「私、緩和ケアの講習に行ったから、チャージの言うことはおかしいなと思ったんだけど、チャージには逆らえないし、、、」と。いえいえ誰でも納得のいかないことはしなくて良いのです。たてついているのではありません。患者のためにベストなケアのために意見を交わすのです。そのためには広い心で人の意見に耳を傾け、自分の知識と経験を増やしていくことが大切なのです。
チャージの彼女に緩和ケアの講習に行くように伝えたかったけれど、焼け石に水のように思えたので、今回は言わなかった。いつかわかってもらえるかな~

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