命のカウントダウン2(健康余命811日)

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新形コロナ 重症化しやすい症状など

2024-02-19 21:51:27 | 新型コロナ
北海道大学医学研究院呼吸器内科学教室(今野 哲教授)の中久保 祥先生を中心とした研究グループがCOVID-19の症状と変異株(BA.2・BA.5)、宿主の免疫状態、臨床転帰との関連などについて検討し、高齢者が重症化しやすい症状などが明らかとなりました(図1)。その内容が『Lancet Infectious Diseases』誌に発表されました。
咽頭痛や咳、鼻汁などの症状は重症化し難く、38℃以上の発熱、倦怠感、食欲低下、呼吸苦などの症状は重症化しやすい。これは、二千五百数十人の新型コロナ陽性患者さんを診て来た私の印象と同じです。

次に年齢別の有病率です。
これを見て興味深いなと思ったのは、重症化しやすい高齢者ほど、症状が少ないのです。高齢者に関しては、発熱する元気が無かったり、色々な症状に対する感受性が下がっていることもあると思われます。
9歳以下も症状が少ないですね。幼少児は訴えられないからでしょうか。重症化する率は低いとはいえ、ちょっと薄気味悪いです。

65歳以上が重症化しやすい症状を重症化しやすい順に並べてみると
呼吸苦、38℃以上の発熱、食事量低下、倦怠感などが危ないのですねぇ。これは年齢にかかわりなく危ない症状の様ですね。訴えの少ない高齢者がこれらの症状を訴えたらとても危ないのだと認識しましょう。

年齢、基礎疾患の数、そのコントロール状況、ワクチン接種の回数、半年以内にワクチンを接種したかどうか、どんな症状があるのかなどで重症化しやすさを示した表です。
普段から健康で若くてワクチンも打っていて、症状も軽いモノであれば、重症化はし難いという常識的な結果にも見えますが、ワクチンに関して半年以内に打ったかどうかを判断材料にしています。ワクチンを何回打ったかは問題になっていません。打ったか打っていないか。半年以内に打ったか打ってないかその2つが判断材料にされています。今後、65歳以上(疾患を持っている方は60歳以上)に年一回の接種が基本(他は任意接種)となる様ですが・・・半年の間に打っていれば重症化はし難いですよ程度にしか効かないと言う事なのでしょうねぇ。

強引にまとめます。先ずは罹患しない様努力する事(危険な所には近付かない。危険性の高い所に行かざるを得ない時はマスク、眼鏡等で防護するようにしましょう。そして罹患しても重症化しない様、健康増進に配慮し、ワクチンも一回は打っておいたほうがいいとは思います。
外見はボトックス注などで胡麻化すことは出来ても、肉体年齢をウィルスに胡麻化すことは出来ません。80歳以上の方は年に一回はワクチン接種に励んだうえ、感染回避を心がけ、もしも掛かったかもと思った時は、早目に診断を受けた上で抗コロナ経口薬の服用をお勧めします。腎機能に問題が無ければパキロビッドパック、そうでなければラゲブリオを可及的速やかに内服開始しましょう。それでも、呼吸苦、38度以上の高熱、食欲不振、強い倦怠感などが出現したら、入院加療をお勧めします。まだ大丈夫だろうと考える事は、重症化の可能性が高い超高齢者には危険です。 
まぁ、それも、考え方次第でして・・・そろそろ、お迎えが来ても良いかなと思われている方は、それなりに行動していただいて全く問題ないと私は考えます。すべてはその方の哲学次第だと思っています。参考にしていただければ幸いです。



ワークライフバランス

2024-02-19 05:33:33 | 在宅医療
今、2024年2月19日午前4時30分です。
30分ほど前に在宅看取りを終えて帰って来ました。
膵癌末期の80代女性でした。
2023年10月、肝機能の悪化に対して当院で腹部超音波検査(エコー検査)施行。それで胆管が閉塞しかけていることが判明、病院で精査の結果膵頭部癌と判明、詰まりかけている胆管にステントチューブと呼ばれる管を挿入してもらいました。最初のプラスチックステントは短期間で脱落してしまったのですが、その後入れ替えてもらったステンレスステントは最期までもって、患者さんは黄疸になる事も無く最期を迎える事が出来ました。最後の一週間には呼吸不全、循環不全、意識低下が出現しました。避けがたいがん死だったと思っています。

昨年11月の時点で出ていたがん性疼痛、最初はモルヒネ系の飲み薬を飲み薬を使ったのですが上手くコントロール出来ませんでした。そこで登場してもらったのがクーデックエイミーPCAポンプです。
携帯電話でもコントロール可能な新時代の精密持続注入ポンプであり、奈良県では全国に先駆けて志都美薬局とさなえ薬局という二つの薬局で積極的に導入してくれています。
癌性疼痛に対し、これまでは経口薬や張り薬で対応してきました。しばらく前からPCAポンプと呼ばれる患者さんが自分で麻薬の量を追加できるタイプの持続注射装置を使って体の中に少量の麻薬を送り込み続ける方法だと疼痛コントロールが上手く行きやすいことが分かって来ました。この方法を使うと、患者さんが痛みを感じた時、自分自身の判断で追加スイッチを押すと、一定量の麻薬が直ちに追加投与され、速やかに疼痛悪化に対応できるのです。それで厚生労働省も積極的な使用を押し進めています。
PCAポンプの中でも革新的に新しく優秀な機械がクーデック・エイミーPCAポンプなのです。この患者さんの場合、最初の経口薬での疼痛コントロールが困難でしたので、直ちにエイミーに切り替えました。すると、それまでの険しい顔・疼痛が魔法の様に消え、穏やかな笑顔が戻ったのでした。

この患者さんの場合、アナモレリン(商品名:エドルミズ®錠) とステロイドの早期からの投与も功を奏し、2月に入るまで食欲低下がほぼ見られず、がん末期特有の悪液質と呼ばれる栄養低下状態を避ける事が出来ました。

患者家族、訪問薬剤師、訪問看護師、訪問医師、がチームになって上手く患者さんを支え、今日を迎える事が出来たのだと思っています。患者さん自身もご家族も、良い顔をされていると感じた今朝でした。
在宅でご家族を最期まで診る事。簡単ではありませんが不可能でもありません。それには1チームになる事が重要です。私も多くのの患者さんに関わりたいとも思うのですが、遊びにも行きたいし、体力の限界もあります。

そうそう、今回のテーマをワークライフバランスとしたのは・・・・明日から私3泊4日で夫婦で蔵王にスキー旅行に行くからなのです。信頼できる在宅医師仲間に、昨夜、留守の間の事をお願いしたばかりでした。気心知れた仲間なので、後顧の憂いなく出発することは出来るとはいえ、やはり患者さん、ご家族を残して遊びに行くのは、相当に図太い私にとっても気が引けるものです。
今回も患者さんが、そのあたり気を利かせてくれたのかな?とすら思えたりしました。そんなことがこれまでにも何度かありました。留守番の先生に看取ってもらったことも何度もありますが・・・

古希を迎える私ですが、今暫し在宅医療に関わり続けていく所存です。ワークライフバランスの危うい道をふらつきながら進みたいと思うのです。やはり、在宅医療が好きなのだと思います。頼れるのは、周囲全体の理解だと感じています。