命のカウントダウン2(健康余命916日)

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ワークライフバランス

2024-02-19 05:33:33 | 在宅医療
今、2024年2月19日午前4時30分です。
30分ほど前に在宅看取りを終えて帰って来ました。
膵癌末期の80代女性でした。
2023年10月、肝機能の悪化に対して当院で腹部超音波検査(エコー検査)施行。それで胆管が閉塞しかけていることが判明、病院で精査の結果膵頭部癌と判明、詰まりかけている胆管にステントチューブと呼ばれる管を挿入してもらいました。最初のプラスチックステントは短期間で脱落してしまったのですが、その後入れ替えてもらったステンレスステントは最期までもって、患者さんは黄疸になる事も無く最期を迎える事が出来ました。最後の一週間には呼吸不全、循環不全、意識低下が出現しました。避けがたいがん死だったと思っています。

昨年11月の時点で出ていたがん性疼痛、最初はモルヒネ系の飲み薬を飲み薬を使ったのですが上手くコントロール出来ませんでした。そこで登場してもらったのがクーデックエイミーPCAポンプです。
携帯電話でもコントロール可能な新時代の精密持続注入ポンプであり、奈良県では全国に先駆けて志都美薬局とさなえ薬局という二つの薬局で積極的に導入してくれています。
癌性疼痛に対し、これまでは経口薬や張り薬で対応してきました。しばらく前からPCAポンプと呼ばれる患者さんが自分で麻薬の量を追加できるタイプの持続注射装置を使って体の中に少量の麻薬を送り込み続ける方法だと疼痛コントロールが上手く行きやすいことが分かって来ました。この方法を使うと、患者さんが痛みを感じた時、自分自身の判断で追加スイッチを押すと、一定量の麻薬が直ちに追加投与され、速やかに疼痛悪化に対応できるのです。それで厚生労働省も積極的な使用を押し進めています。
PCAポンプの中でも革新的に新しく優秀な機械がクーデック・エイミーPCAポンプなのです。この患者さんの場合、最初の経口薬での疼痛コントロールが困難でしたので、直ちにエイミーに切り替えました。すると、それまでの険しい顔・疼痛が魔法の様に消え、穏やかな笑顔が戻ったのでした。

この患者さんの場合、アナモレリン(商品名:エドルミズ®錠) とステロイドの早期からの投与も功を奏し、2月に入るまで食欲低下がほぼ見られず、がん末期特有の悪液質と呼ばれる栄養低下状態を避ける事が出来ました。

患者家族、訪問薬剤師、訪問看護師、訪問医師、がチームになって上手く患者さんを支え、今日を迎える事が出来たのだと思っています。患者さん自身もご家族も、良い顔をされていると感じた今朝でした。
在宅でご家族を最期まで診る事。簡単ではありませんが不可能でもありません。それには1チームになる事が重要です。私も多くのの患者さんに関わりたいとも思うのですが、遊びにも行きたいし、体力の限界もあります。

そうそう、今回のテーマをワークライフバランスとしたのは・・・・明日から私3泊4日で夫婦で蔵王にスキー旅行に行くからなのです。信頼できる在宅医師仲間に、昨夜、留守の間の事をお願いしたばかりでした。気心知れた仲間なので、後顧の憂いなく出発することは出来るとはいえ、やはり患者さん、ご家族を残して遊びに行くのは、相当に図太い私にとっても気が引けるものです。
今回も患者さんが、そのあたり気を利かせてくれたのかな?とすら思えたりしました。そんなことがこれまでにも何度かありました。留守番の先生に看取ってもらったことも何度もありますが・・・

古希を迎える私ですが、今暫し在宅医療に関わり続けていく所存です。ワークライフバランスの危うい道をふらつきながら進みたいと思うのです。やはり、在宅医療が好きなのだと思います。頼れるのは、周囲全体の理解だと感じています。




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