DMVとは、デュアル・モード・ビークルの略称である (Dual Mode Vehicle, DMV) 。では、そのデュアル・モード・ビークルとはなんぞや?・・ということになるが、もっともわかりやすくカンタンに言えば軌道(普通は“線路”のこと)と道路の両方を走る車両(バス、軌陸車)である。
車両はマイクロバスを改造したもので車体の下から鉄の車輪を出し入れして、鉄道と線路を自由に行き来できるしくみになっている。道路から線路への乗り入れに要する時間は10~15秒。
さらにくわしいことはどこかで検索していただくとして、日本においては、利用の少ない路線のコストを削減するためにJR北海道が開発している。赤字に悩むローカル線を多く抱える・・というかほとんどがローカル線のようなJR北海道。もともと沿線の人口が少ないところが多いうえに、自家用車の利用が増え、さらに追い討ちをかけるように“お客さん”の「通学の高校生」が少子化にて減少していて困っているところである。
線路と道路を両方走れるDMVは、沿線人口が少ない地方でも(早いハナシが田舎でも)線路から離れたところにあり、一定数以上の乗客が見込める、例えば総合病院や高校、役所・役場などへも線路を外れ道路を走って寄って、お客さんを拾うことができるし、イベント開催時の人員輸送などにも便利だ。
仮に清水での利用方法を考えれば、日本平スタジアムへの輸送を静鉄にDMVを走らせて、静岡葵区方面から乗換えナシでスタジアムまで直行・・・ということも可能になる。
さて、このDMVに静岡県内で“本気で”導入を検討しているのが富士市。それについて詳しいサイトがこちら(“けんせつ静岡”内の特別企画ページ)なのだが、ここから少し引用させていただくと・・、
『富士市は富士山ろくのふもとに広がる24万人都市。同市は旧富士市と吉原市、鷹岡町の2市1町が合併してできた経緯もあり商店街や公共施設が分散しているうえ、近年人口集中地区が郊外に拡大し、中心核のない都市構造を持っている。また、製紙工場で三交代勤務に従事する人が多い地域性もあって、道路整備中心のまちづくりが進められてきた。
その結果、鉄道やバスなどの公共交通機関が衰退。マイカー依存度が更に高まる悪循環で、現在では市民の7割が通勤通学に自動車を利用し、公共交通の利用率は1割にも満たない。富士市で暮らすには自動車は一家に一台でなく、一人一台必要と言われ、一世帯当たりの自動車保有台数は2.29台ときわめて高い。
もう一つ富士市の抱える大きな課題は昭和63年に開業した新幹線の新富士駅がJRの在来線と繋がっていないこと。市街地へのアクセスが不便な陸の孤島状態で、路線バスが通ってはいるものの新富士駅の利用客は家族の送迎かタクシーに頼っている。
そもそも新富士駅には山梨県狭南地区までふくめた表富士の玄関口としての機能が期待されていたが、役割を果たすには程遠い実情だ。』
・・ということ。新幹線新富士駅は東海道新幹線の駅では唯一、どの鉄道とも接続されていないので大変不便であるが、そういうことの解消も含めて富士市では、2006年11月より、JR北海道より車両を借り入れ、岳南鉄道でテスト走行を行っている。先に24日から26日までの3日間の夜間に走行試験が行われた。続いて2007年1月14日と21日にデモンストレーション走行が行われ、岳南原田駅にモードインターチェンジが作られ、市場踏切との間で片道鉄道・片道道路の往復運転が行われた。これはもう「本気』としか言いようがない。
具体的な検討イメージとしては東から出ると、JR東田子の浦駅からバスで出て、岳南江尾駅から線路へ。ジャトコ前駅からバスになり吉原中央駅や市役所、中央病院やロゼシアターなどを経て直接新富士駅へ向かうものとJR富士駅を経由し、そこから線路へと(既設の工場の引き込み線を利用し、新富士駅までの残りの区間は専用道路を新設する案が出されている)入り、新幹線新富士駅へと辿り着く構想のようだ。
個人的には身延線にも乗り入れれば富士宮方面からの利用も見込めるのではないかと思う。富士駅から乗り入れても良いし、途中駅で出入りすれば富士宮からロゼシアター、吉原方面へも直接行けるようにできる。
そして、JR富士駅を新幹線新富士駅が“鉄道”で結ばれれば、由比・蒲原から東京方面へ出かける際の鉄道利用増も見込めるのではないかと。「こだま」と在来線とDMVの連絡・接続が良くなれば清水からも、静岡へ行ってまた戻って・・ということなく東京方面へと行けるのではないかと。静岡駅でこだまに乗るのよりもこの方が効率がいいということになれば・・なのだが。
ただし、それを実現させるためにはJR東海も出資してくれないとダメだろう。例えば由比駅から富士駅→DMV経由新富士駅→新幹線こだまで東京・・・となると、由比駅から東京駅まで通しで乗車券が買えること。DMV分は多少高くなるにしても、東海道線&DMV&新幹線で分割され、そのたびに初乗り料金から取られるとなると割高になり、もしも乗換えが便利になったとしても多くの利用は望めないのではないか?新富士駅のそばの駐車場までクルマで行ってそのまま新幹線へ・・というのとあまり変わらなくなると(東京まで往復となると駐車場代はそれなりにかかると思うが)、つまりメリットが少ないとダメだろうと思う。結婚式出席などお酒を飲む用事ならばまた違うだろうが、何度も切符を買ったりせず、乗り継ぎ割引なりJR線とみなして通しで乗車券を買うことができるようになるにはJR東海の出資は必要だと思う。(身延線との接続も含めて)
そして、JR東海と富士市の出資であれば多少経営が悪くても持ちこたえられるのではないかと思うのだが今後の富士市の動向を見守りたい。どうなるのかね?