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N

2016-09-14 | 作家別諸々(な行)



西川美和
『永い言い訳』★★★★


新刊のとき最初だけ読んだままに。 
今回試写会が当たったので(当選したのは初!)
ゆるりゆるりと読みはじめたら止まらなくなった。

日曜の午後 in新宿
予定が終わるな否や続きが読みたくて帰ったぐらい(小田急とマルエツと福太郎には寄った)

新宿の雑踏の中を歩きながら母とTEL
不思議な感覚に襲われる わたしは独りだ。どこへでもゆける。



---



優しさの成分は、九十パーセントが、嘘である。



自分が認識しているより、ずっと早く、ずっと遠くへ、過去は飛び去って行く。手の届かない、遙か彼方に。



真実というものは、しばしば実がないものだ。



深く愛するものを失うことと、もう確かな愛を感じなくなったものを失うのとでは、悲しみの度合いは比較にならないが、後者の嵌る失意の沼の深さもまた計り知れない。



このひとは、私を抱いているのではない。誰のことも、抱いていない。奥さんのこともまた。



わからない事を恥じぬ態度こそが、成長の鍵である、と高校時代の教師が言った。



女たちのこの態度をぼくは知っている。どうぜ役立たずだと思ってるんだろ。あなたが余計な提案さえしなければ、物事はもっとシンプルで、まともだったのよ。何もかも、ややこしくするのはいつもあなたで、割を食うのはいつもあたし。口に出さないだけ優しいと思ってよ、と言いたいんだろ。



一度良い目を見たら同じような幸福が続くと期待する。続かなければ不満に感じる。幸福は不幸の種だ。








「ぼくの塾から御三家には五人くらいしか行けないんだよ」
「何、御三家って。野口五郎?」
「誰それ。開成、麻布、武蔵だよ。幸夫くん知らないの?」
「あーなるほど。そういうくくりね。よく知らないよ、悪いけど」



「見えないものを見る力のあるやつだけが、世界を進化させるんだもの」








「私があなたを愛したように、周りのみんなのことも愛してね」



「なるほど。クズだな」
ぼくみたいな男。
「おれも随分長いこと絞め殺しに行ってやるって思ってた」
どきどき。



私は、あなたの知らないところでよろしくやってるわ。



一体なんだろうか。この突発的に現れた庇護欲と使命感と、そして充足感は。父性を飛び越して、母性に走ったか。



朝未だき








<もう愛してない。ひとかけらも。>








「あるのもいいんですけど、無いのもいいかな~って」



「何これ。完全にやらせじゃんか」
「シッ! そんな言葉を不用意に使わないでください」






アスペルガー症候群



このひとのために、自分がちゃんと生きてなくちゃ駄目だ。



愛を得たのさ。



「ひどすぎる。あまりにもひどい。どうしてぼくらは、大事なものを傷つける?見えてるサインを見殺しにして、掴みかけた手も、離してしまう。チャンスを常に台無しにする。どうしてこんな風に何度も踏み外して、何もかも駄目にするの。嫌になるよ。本を読んでも、金を稼いでも、ちっとも賢くなりゃしない。いつまでこんな自分とつき合わなきゃならないの。もう嫌だ。もう嫌なんだ。ほんとはもう、生きてく気力なんて残ってないんだ」



――どんでもない一日ね。
そうだね。どんでもない一日だった。

――もういい加減、帰りなさいよ。家があるでしょあなたには。
そうだね。そろそろ、帰りますかね。



「あまり夢のある話を書けるほうじゃないんですがね」
「いや、夢は無くても。抜け道さえあれば」



一度ひらかれてしまえばふたたび裏には返せないのが「真実」だ。嘘つきと思われても、後で返す裏が残されているほうが、まだ未来があるのではないか。



「お作品、すばらしかったです」と言った。出た、「お作品」



時間には限りがあること、人は後悔する生き物だということを、頭の芯から理解してるはずなのに、最も身近な人間に、誠意を欠いてしまうのは、どういうわけなのだろう。



死は、残された者たちの人生に影をさしこませる。


つくづく思うよ。他者の無いところに人生なんて存在しないんだって。人生は、他者だ。



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明後日は試写会
モッくんに逢える♪


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