宮部みゆき
『泣き童子 三島屋変調百物語参之続』★★★
ブランクがあった三島屋シリーズ
最新刊をGETしたため、未読分を読んでゆきます。
・第一話 魂取の池
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「だから目先のことばっかりにおろおろしないで、自分に繋がっている縁を大事にしなさいって、おっ母さんに言ったそうです」
ついでに言うなら、どんなに胸が騒いでも、好いた人の気持ちを試すようなことしてはいけない、と。
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・第二話 くりから御殿
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たまたま。おちかは心の中で繰り返す。そう、偶々なのだ。たまたまが、人に酷い仕打ちをする。
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ふるさとは、血の流れのなかに眠っている。
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今夜こうして夕餉を囲む顔と顔が、明日も無事に、同じように集えますようにと願わずにはいられない。
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標題作
・第三話 泣き童子
標題作だけあって最後は唸る・・宮部みゆき読ませます。
・第四話 小雪舞う日の会談語り
真冬の百物語*ある意味心身共に凍る*
左見右見(とみこうみ)
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橋は現世の外に通じる。他所では触れられぬものに、そこで会うことがある。
~今夕聴いた話のあれこれが、言葉の端々が、聴きながら心に浮かんだ場面の数々が、小雪のように小さな欠片になって、おちかの心のなかを舞う。
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私的にはこの少し長めの短編が印象深かった。
・第五話 まぐる笛
化け物 人喰い怪獣「まぐる」
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まぐるにまぐる自身を喰わせる。
「あの指笛を吹けるのは、おなごだけです」
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臨場感があってドキドキしちゃった。
・第六話 節気顔
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たった今、見ず知らずの他人の死に手放しで泣いたのは。
―—発心というものでございますよ。
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発心(ほっしん)
節気日 二十四節気(にじゅうしせっき) | 日本の暦
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「あたしね」
返事を待たずに、おちかは続けた。
「あの〈商人〉だっていう男、悪いものだとばっかり思っていたの」
この世とあの世をつなぐ道筋にいて、双方に求められるものを仕入れ、売りつける。
「忌まわしくって、いけないものだとばっかり思っていたのよ」
それが、わからなくなってしまった。
「あの男を悪いものだと決めつけたら、人に心に願うことも、おしなべて悪いものだってことになってしまうなって」
もう一度、亡き人に会いたい、もう一度、この世に帰りたい。
探して会える男ではない。だが、この世とあの世のあわいに目を向けている者の前には、ふわりと姿を現るす。
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台風が来る前にお墓参りを済ませ、夜はみんなで食卓を囲む。
双方が帰って来ているのかと初めて意識
「何かしらの縁があって来ているんだからね」
この時期はそういう「縁」を強く感じるもので、愛しさを覚える。
帰省は叶っていないけど、弟夫婦がきちんとお墓を守ってくれている。
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