ブルックリン横丁

ブルックリン在住17年の音楽ライター/歌詞対訳者=渡辺深雪の駄ブログ。 そろそろきちんと再開しますよ。

恥はかき捨て

2008-01-10 | ブルックリン横丁
ご存知ある方もない方もいらっしゃるかと思われますが我が家のサイドハッスル(またの名を早期退職計画)は大家業。3つの建物に10人を超えるテナントちゃん達が入居中なのだが、彼らの日々の生活を通じてNYという街の人間模様や様々なドラマを伺い知ることができるわけです。良い事も悪い事も含めて。

イケメンプレイボーイの部屋に抜き打ち訪問しにきて、まんまと裸の女とハチ合わせした血の気の荒いプエルトリカン女のおかげでNYPDを呼ぶ騒ぎになったこともあった。

ジプシージャズ・ギタリストが勝手に教室を始めて、ボヘミアンに憧れる(=しっとしりた長髪をなびかせるもっさいティーンネイジャー男子率高し)ギター小僧達がひっきりなしに出入りすることもあった。ティーンズ・スピリットがスメりまくりな。

ニュージャージーの、世間とは隔離されたゲーテッド・コミュニティ(敷地を柵で囲まれ、出入りする時はセキュリティのチェックを受けなければならない管理の整ったネイバーフッド)で育ったボンボン黒人男子が「世界を知るため」にブルックリンに武者修行を決意し引っ越ししてきたものの、心配で後をつけてきた父親と泣きながら喧嘩してたことも。結局父親は最後に「彼の部屋のドアだけ鍵を3つつけるように」と言い残ししぶしぶ退散して行った。

ちなみにそのボンボン、結局殆ど部屋から出ずに何かの執筆に専念しているとのことだったが(外に出るのが怖かったらしい)、半年も経たないうちに賃貸契約の解消を要求。家賃の小切手は毎月実家から送られてきていたし、別に無害っちゃあ無害だったのだが、どういう訳かそいつが住んでいる間じゅう、今までは何の問題もなかったトイレがよく詰まるように。なので我々としても「逝ってよし」状態。とっととお引き取り頂いたわけだが。

ルームメイトとしてアパートを共有する男気溢れるレズビアンなソーシャルワーカーと、駆け出しのメイクアップ・アーティストとして頑張っているらしいソフトな物腰のゲイ男子のコンビは、同居1年目にして早くも関係が崩壊。
何でもゴミ出しやら電球の取り替えやら、重い荷物の運び込みなど、全てをお任せ状態にされてしまった硬派レズボーが「こんなに手のかかるルームメイトは要らん!」とキレちゃった、ということで。

デートに忙しく子供の世話を怠り親権を取り上げられそうになっていたベイビー・ママからすんでのところで娘を取り戻したシングル・ファーザーもいた。エリカ・バドゥやデッド・プレズらと親交の深い彼は何かにつけて「これは政府の陰謀だ」だの何だの、最終的にはブラック・パワー論に持ち込むのが得意技なので、家賃を滞納しても涼しい顔をしてうちの旦那に「カモ~ンメ~ン!」と同胞カードを振り回して何とか取り繕うのに必死だった。個人的にはこのテのが一番苦手。でもホントに多いんだよな、こういうタイプ。

ハーヴァードに通うレズビアン女子のサブレッターが夏休み限定のNY生活の拠点に我が家を選んだこともあった。毎晩毎晩、盛りのついた猫のように出入りを許可すらしてない屋上にとっかえひっかえ違う女を連れ込み、夜景を見ながらしこたまワインを飲ませて発情プレイに明け暮れていたらしく。カミングアウト直後なんだか知らんが、あまりに「文句あっか!」的な不遜な態度と柄の悪さに業を煮やして、リファレンス先(賃貸人の後ろ盾として連絡先を公表する、保証人みたいな感じ)になっていたハーヴァードの某教授の名前を出し「テメーいい加減にしないと電話してチクるぞ!」と脅したことも。


産まれてこのかた賃貸人ライフを経験したことのない旦那としては、彼らが日々見せつけてくれる人間の醜態に慣れっこになりながらもやはりゲンナリさせられている訳だが、社会人時代渋谷で3年ほど賃貸一人暮らしライフを堪能したワタクシには分からないでもないこともあり。いや、間違ってるんだけどさ。「どうせ自分の家じゃないしぃ~」「もっと他にオイシイ物件があったらいつでも引っ越しちゃうしぃ~」みたいな宙ぶらりんの自由。

「旅の恥はかき捨て」ならぬ「賃貸の恥はかき捨て」状態。

でも、一歩家の外に出るとテメェの暗いプライベートな顔は一転して愛想の良い模範市民みたいな外面を装う、と。

あれはあれで楽しかったけど、もう戻りたくないなぁ。「水は低きに流れる」を地で行く、自堕落ライフ。

そのうちそんな自堕落にも飽きて、独りだろうと何だろうときちんとした生活を営むようになっていったのかしら…。

ま、今となっては知る由もない訳ですが。

ということで今日も我々は何度言ってもゴミ出しのルールを守らないろくでなしに喝を入れ、「寒い!」って言うから暖房の設定温度を上げたのに部屋に行ってみたら窓全開、みたいな理解不能な行動をする馬鹿に睨みをきかせているのです。

さあ、そろそろどっかにバケーションに出かけてうちらも恥のかき捨てを…

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