「人間50億年 下天のうちに くらぶれば 夢幻のごとくなり」。人間が地質年代をはるかに超えて生きる世界で織田信長は、このように謡い、舞ったのでございましょうか。この世界にも青春があります。部活もございます。N高軟式庭球(ソフトテニス)部のOBの集まりは、このようになるのでございましょう。まずは、「再会を祝して、かんぱーい!」。
「アインシュタインがてこの原理を発見したのは、わしらが高1の時だったなあ」。「うん。それで3年の時にはエジソンが、車輪を発明して大騒ぎになっただ」。「テレビは毎日そればっかりだった」。「ほんに、よだきかった(うるさかった)わいや」。
「まあ、わしらも部活はようがんばったもんだ」。「ああ、高3の最後の県大会は決勝戦まで進んだけえなあ」。「決勝戦の最後の試合で、わしらが境港の高校にマッチポイントを先にとっただけど逆転された。相手は翼手竜のペアだったろうが。ロビング(山なりのボール)をはたかれて終わっただ。あいつらあ足が地についとらんけえ、そこをついて最初はよかっただけど、やっぱり空飛べるもんには勝てん」。「N高はみんな人間に進化しとったけど、あそこの高校は恐竜やらなんやらいろんなもんがおったなあ」。
「妖怪もおった」。「境港の学校だけなあ」。「塗り壁は手ごわかったで。打ったボールが全部はじき返される」。「目玉おやじがあの学校の監督だった」。「わしは、あの先生をボールと間違えて打って、それが相手にスマッシュされた。よう生きとるもんだと思ったで」。「♪お化けは死なない♪」。
「N高の先生も懐かしいなあ」。「そういやあ加齢君が仲人をしてもらったT先生はどないしとんさるな」。「T先生はなあ。定年と同時に鯨に姿を変えて、海にもどんさったわ」。「ほんかあ。まあ新生代の暮らしが肌にあわんって、わしらが高校生の頃からいっとんさったけえなあ」。「この集まりのことを話したら、T先生から手紙が届いた。もってきたけ、読むで」。
「加齢君。海に入ってからの私は、たびたび姿を変え、いまはミトコンドリアとして暮らしています。生命の原初の姿に戻った私には、もはや自分の心を偽って生きる必要などありません。実に清清しい気分です。同期の諸君にもよろしくお伝えください。どうかお元気で」。「うう、…」(むせび泣く者あり)。「ええ話だで」。「なんちゅうか、胸をうたれるなあ」。「たしかに。でも先生どうやって書きんさったろう。この手紙を」。
おあとがよろしいようで。
「アインシュタインがてこの原理を発見したのは、わしらが高1の時だったなあ」。「うん。それで3年の時にはエジソンが、車輪を発明して大騒ぎになっただ」。「テレビは毎日そればっかりだった」。「ほんに、よだきかった(うるさかった)わいや」。
「まあ、わしらも部活はようがんばったもんだ」。「ああ、高3の最後の県大会は決勝戦まで進んだけえなあ」。「決勝戦の最後の試合で、わしらが境港の高校にマッチポイントを先にとっただけど逆転された。相手は翼手竜のペアだったろうが。ロビング(山なりのボール)をはたかれて終わっただ。あいつらあ足が地についとらんけえ、そこをついて最初はよかっただけど、やっぱり空飛べるもんには勝てん」。「N高はみんな人間に進化しとったけど、あそこの高校は恐竜やらなんやらいろんなもんがおったなあ」。
「妖怪もおった」。「境港の学校だけなあ」。「塗り壁は手ごわかったで。打ったボールが全部はじき返される」。「目玉おやじがあの学校の監督だった」。「わしは、あの先生をボールと間違えて打って、それが相手にスマッシュされた。よう生きとるもんだと思ったで」。「♪お化けは死なない♪」。
「N高の先生も懐かしいなあ」。「そういやあ加齢君が仲人をしてもらったT先生はどないしとんさるな」。「T先生はなあ。定年と同時に鯨に姿を変えて、海にもどんさったわ」。「ほんかあ。まあ新生代の暮らしが肌にあわんって、わしらが高校生の頃からいっとんさったけえなあ」。「この集まりのことを話したら、T先生から手紙が届いた。もってきたけ、読むで」。
「加齢君。海に入ってからの私は、たびたび姿を変え、いまはミトコンドリアとして暮らしています。生命の原初の姿に戻った私には、もはや自分の心を偽って生きる必要などありません。実に清清しい気分です。同期の諸君にもよろしくお伝えください。どうかお元気で」。「うう、…」(むせび泣く者あり)。「ええ話だで」。「なんちゅうか、胸をうたれるなあ」。「たしかに。でも先生どうやって書きんさったろう。この手紙を」。
おあとがよろしいようで。
笙野頼子の金比羅の冒頭と似ています。彼女(?)は生まれ落ちる前、じつは、伊勢湾の海の中にいたのです。1956年のことでした。
笙野頼子の金比羅の冒頭と似ています。彼女(?)は生まれ落ちる前、じつは、伊勢湾の海の中にいたのです。1956年のことでした。
かつのりさま。おお、それは知りませんでした。海から生まれて海から帰る。私も1956年生まれですので、この主題には何か世代的なものがあるのでしょうか。ちなみに私は笙野さんのエッセイはよく読むのですが(とくに大塚某をたたいているやつは大好き)小説は未読です。金比羅ぜひよんでみたいです。
私のよく分からない神様の名前が出てきますが、その先生ならば親しみを感じることでしょう。島根も近いし・・・。