ガラパゴス通信リターンズ

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1年E組キリン先生(11月2日投稿分)

2005-11-14 16:21:26 | Weblog
骨子の中学の担任は身長1メートル83センチ。長身のキリン先生。しかも女性である。40代半ばで男の子3人の子育て中。さばさばとしたベテランの先生である。陰湿ないじめのたえないクラスにあって「ここは平和よ」。前任校では、警察に生徒を引き取りに行くのは日常茶飯事だったとか。「きもい・うざい・死ね。これみんな相槌みたいなものです。大した意味はありません」。なるほど。荒んでいるというより、たんに語彙が乏しいのだろう。

 先生はいう。勉強・部活・塾・クラスの人間関係…。いまの中学生のストレスは凄まじい。でもそれをみんな抱え込んでいて誰にもいえない。家族に話せばよさそうなものだが、「親に迷惑をかけたくない」。いまはお母さんも多くは働いていて家にいない。自分ひとりで晩御飯を作って食べている子も珍しくない。まだ子どもである。それが寂しい。「じゃあ、私がお母さんに言ってあげるよ」と先生がいうと、「ダメ。お母さんに心配かけちゃうから」。

 親子なのに何故遠慮をするのか分からないが、そう聞けば健気だと思う。しかし狡猾な面もいまの中学生にはあるようだ。手に負えないほど騒ぐ子がいる。当然先生は厳しく叱る。すると「先生、こんなことじゃ指導力を問われるよ」などという子がいる。「あたしはねえ。小学校の担任を鬱病にして休職に追い込んだんだよ」などという子も。「子どもの前で教師の批判をしないでください。不満があれば直接私にいってください」と先生はいう。

 子どもは親の背中をみて育つ。親が教師を軽蔑することばを口にしているのに、子どもが先生のいうことなど聞くはずもない。しかし教師を馬鹿にしているのは、親たちばかりではない。教育行政は、「日の丸・君が代」の強制等で教師たちを縛り上げている。「指導力不足」の烙印を武器に教師たちを脅しつけている。国が率先して教師の権威を貶めているのである。教師を鬱病に追いやった事を誇る子どもが現れたとしても何の不思議もないだろう。


2 コメント

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迷惑を掛けたくない (足踏堂)
2006-10-18 15:06:00
「親に迷惑を掛けたくない」という心情の裏には、「親が面倒くさがるから」というのがあると思います。

真面目に相談しても、迷惑そうに対処される。

信頼している人間からそのような仕打ちを受けることに耐えられる人間はそういません。



しかし、教師を鬱病に追いやったことを誇る子どもというのは、それこそ「悪の陳腐さ」の原型のように思います。
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信頼関係の希薄さ (加齢御飯)
2006-10-19 08:11:17
 たしかに「親孝行」なのではなく、親と子の信頼関係が存在しないからこうなるのだと思います。人間関係に信頼が置けないということは、周囲をジャングルのように感じているということですから、自分が弱者にならないように強い人間と一緒になって、誰かをいじめて身の安全をはかるというように、親子の信頼関係の希薄さと、いじめの問題とは通底しているのだと思います。誰が強いか弱いか、そこに非常に敏感だから、「指導力云々」・「鬱病においやった」等々のことばも出てくるのではないでしょうか。
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