太った中年

日本男児たるもの

核の脅威

2009-04-06 | weblog

 

中国の「核」が世界を制す  伊藤 貫著 PHP研究所 2006年

1980年以降、中国経済は毎年平均9%の高率で成長した。しかも1989年から2006年まで、中国の軍事予算は、毎年13~16%の高スピードで増加している。中国政府はいったい何を目的として、このような大軍拡政策を実行しているのだろうか。

東アジア地域の地政学的な安定を維持するためには、日米同盟を維持することが不可欠である。しかし、「アメリカ政府は2020年以降、中国の軍事的脅威から日本を守ることはないだろう」と予測する点において、本書は、今後も日本が米国依存体制を続けられると期待している「新米保守」グループとは明確に立場を異にする。

また本書は、21世紀の日本が独立国としての地位を維持するためには自主的な核抑止力の構築が必要であることをはっきりと指摘しているので、反核感情の強い「反米リベラル」の人たちとも外交視点が異なる。日・米・中の政治指導者、知識人が日本国民に読ませたくない「禁断の書」。

(以上、ブックデータベースより解説)

日本の安全保障を考えた場合、中国の核と軍備拡大政策が最大の脅威だ。上記著書では自主的な核武装論を提言している。核武装論とは中国脅威論である。2006年10月、北朝鮮による核実験の際、中川(酒)と麻生さんは核武装論を唱えた。しかし、その後両氏は米国から政府高官との二者会談拒否の圧力に遭って封印された。従来通り米国依存の安全保障もあと10年とされているが、北朝鮮の核と世界不況でより早く深刻で複雑な事態となっている。だから北朝鮮のミサイル発射が本来の目的である核問題で議論されることが望ましい。

そもそも中国が核武装をしたのは朝鮮戦争でマッカーサーが中国を核攻撃することを提唱し、アイゼンハワーは停戦のため核使用で恫喝したことが契機だった。中国はソ連の衛星国に留まる限り米ソの狭間で蹂躙されるのでソ連の核の傘を嫌い、主権国家として独立するために核武装が必須だと考えた。建国後間もない極貧国家であっても「人民がズボンをはかないでも核爆弾を作ってみせる」と決意したほどだ。晩年、小平は「もし自前の核兵器を持たなかったなら、中国が今日の国際的地位を得ることはなかった」と述べている。

そんなワケで1964年、中国は核実験を行い、1972年ニクソンの訪中をもって米国と国交を樹立した。ソ連だけでなく米国の核恫喝に土下座して頭を下げることがなくなった。そしてこのとき、極貧の共産中国は大国として扱われ、米中政府間で、「日本に、独立した外交政策・軍事政策を実行する能力を与えない。日本人には、自主的な核抑止力を持たせない」という米中密約を結ぶことが可能になったのも中国が独立した核武装国家だったからである。さて問題は、核抑止力を持ち得ない日本が近い将来北朝鮮も加わって心理的な核恫喝に怯え続けることにある。日本は核武装の議論さえ罷り通らないのが現状なのだ。

核武装論 - Wikipedia