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とりとめのないメモの山

district 9:

2009-12-16 00:00:00 | film・bilder++


『District 9』 (邦題:『第9地区』)
[2009年/ 南アフリカ・ニュージーランド / 製作:ピーター・ジャクソン / 監督:ニール・ブロムカンプ]


日本公開が2010年4月に決定したと先ほど聞いたので書く。

これは物凄い映画だった!

大まかなストーリーはごくシンプル。
ウルトラマン第2話で、もし地球がバルタン星人の難民を受け入れていたら…という話(笑)。
1982年、南アメリカはヨハネスバーグ上空に地球外からの宇宙船が飛来。
そこには180万人もの異星人が搭乗していたのだが、
彼らが地球に来たのは侵略のためでも友好のためでもない。
単に不幸な"難民"だったのである。
国連と南アメリカ政府は人道的政策として彼らを受け入れ、
居住区としてDistrict 9(第9地区)を設けることになる。

本編の舞台はそれから約20年の歳月の後。
見るからに醜悪で野蛮そうな異星人は隔離政策を取られ、激しい弾圧と虐待にさらされながらやっとの生活をしている。
第9地区はギャングの介入もあって凶悪犯罪のまかり通る不衛生なスラムと化し、
ために政府は、居住者を第10地区に強制移動する措置を始める…
ところが…

という話。
ネタばれするのでこれ以上書きません。


『ブレアウィッチプロジェクト』や『クローヴァー・フィールド』を思わせるような、
ドキュメンタリー風のタッチで始まるこの作品、
異星人にUFOにロボットまで出てくるから「なんだSFかぁ」という心構えでいては面食らう。
あまりに現実的で生々しいのだ。

監督も俳優もほとんど無名であり、
台詞の多くがアドリブで構成されているのだが、それが逆にリアリティを与えているというのが1つ。
しかし最大の点が、
監督自身が南アフリカ出身であり、実体験をベースにしているところがあるということ。
つまり、ここにはアパルトヘイトやケープタウンに実在したDistrict 6への強力な生身の怒りが感じられるのだ。
痛烈な皮肉の連チャンである。
ピーター・ジャクソンお得意の、過剰なまでにグロくて残酷なクリーチャーが当初は
地球人にとっての敵であるかのように映るが、
やがてストーリーが進むにつれ露わになる、
人間側(やっぱり主に白人社会)のエゴ、偽善、冷酷さ、非情さ、云々がそれを遥かに上回って行き…
最終的には観客はあれほどグロがっていた異星人側がよほど知的で純粋であるのを知り、
同情し、愛着さえ持つようになる。
この展開が実に巧妙で、何より理詰めだけでない感情的な何かがある。

戦闘シーンはもうそれこそ血飛沫が舞い、肉片が飛び、誰にとっても悲惨さだけが残る、
血の出ない綺麗で嘘っぽくて愉快で楽しいアクション映画とは一線を画した仕上がりになっている。
それでも現実の戦争はもっと悲惨なんだろう。


万人向けではない、
でも皆に勧めたい作品である。ぜひ観ていただきたい。


'District 9' Trailer 2 HD



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