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とりとめのないメモの山

Mogera wogura:01

2011-05-05 00:00:00 | biologie*

コウベモグラの全身骨格標本。
Mogera wogura (Temminck, 1842) 

 脊索動物門 Chordata
  脊椎動物亜門 Vertebrata
   顎口類 Gnathostomata
    硬骨魚類 Osteichthyes
     肉鰭類 Sarcopterygii
      四足動物 Tetrapoda
       羊膜類 Amniota
        単弓類 Synapsida
         獣弓類 Therapsida
          哺乳類 Mammalia
           正獣類 Eutheria
            ローラシア獣上目 Laurasiatheria
             トガリネズミ目 Soricomorpha
              モグラ科 Talpidae
               モグラ属
Mogera
                コウベモグラM. wogura
  

ご存知、皆の人気者モグラ君である。
過去には"食虫類(insectivora)"の代表格として知られていたが、
現在では食虫類そのものが解体しているため、この名称はほぼ便宜的にしか用いられない。
 →その辺の経緯は、同じくモグラの仲間、ヒミズの記事へ。

 

歯式は、3/2.1/1.4/4.3/3 。
最初下顎を見たときには3.1.3.3に見えたのだが、鋭い犬歯(canine)の様な歯は前臼歯(premolar)のようだ。
大臼歯は
トリボスフェニック型(tribosphenic)をよく反映している。

  

ヒミズのとき同様、コチラのHPに詳しい→『BoneSkullTeeth頭骨、歯』 

椎骨数、頸椎:7, 胸椎:14, 腰椎:5, 仙椎:6, 尾椎:8以上。
椎骨の数には、コウベモグラと他のアズマモグラ、サドモグラらと(Yoshiyuki, 1986)、国内のモグラ君どうしでまぁさほどの違いがあるわけではないが、
一般に"common mole"として知られるヨーロッパモグラ(Talpa europaea)では胸椎11, 腰椎5と、違いがあるようだ。
ヨーロッパモグラの椎骨の形態はPlatonov(2002)に詳しい。

日本のモグラの学名、"Mogera wogura"は、シーボルトの名付けたものの中でも有名だが、
本来"Mogura mogura"と日本語に因んで命名されたものが、
誤植か何かで『地球防衛軍』に出てきそうな属名になってしまったらしい。
一時期ヨーロッパモグラと同じTalpa属に含まれていたとも聞いたが、結局Mogera属として独立したようだ。
ちなみに、日本国内のモグラ君の種類はコウベモグラとアズマモグラはじめ、
コモグラ、サドモグラなど色々な和名の集団が確認されているが、
どうも何れかが何れかの亜種になったり、種として独立したり、ちょっとリアルタイムで追うのが難しい…?
と、あまり突っ込んで調べていないですが、どなたか詳しい方教えてください(汗)。
でもさほど移動性の大きな動物ではないので、
局所的な生殖的隔離などは、他の哺乳類に比べて起こりやすそうなイメージがありますね。
  

モグラ君は、哺乳類の中でも特に独特な生活を送るためか、小説絵本漫画映画やTVで様々なイメージが作られてきたが、
間違ったイメージが定着していることも少なくない。
まず有名どころで「光に当たると死ぬ」とか…。
地中生活のため逆に光受容器官たる眼球は真皮に埋没しており
(解剖していると、ほとんど視神経にも気付かない。もちろん眼窩らしい眼窩もない)、ほとんど「うわ眩しい!」とも感じられないようになっている。
そもそもモグラ君、日中でも意外と地上には出てきているそうだが、
目の代わりに聴覚・嗅覚等の感覚が鋭敏でかつ臆病なため、人がガサガサ歩く音などすぐ察知して逃げてしまうとか…。
あと、よく見る「土をモコモコ盛り上げて自力で穴を掘り進む…」イメージがあるが、
モグラはほとんどの場合、複雑な巣穴を拡張・修復しながら代々受け継いで暮らしており、
一個体が新規に穴を掘るのは、土壌によるが決して一般的ではないようだ。
ちなみに泳ぎも上手いです。ケラと同じですね。収斂。

ついでに「処女膜(hymen)があるのはヒトとモグラだけ」。これも嘘です。最初の出処は三島由紀夫からだとも言われております。
そもそも膣の発生を考えると、普通にどの動物にもあってもなくてもおかしくないと。

  

意外と顔は怖い。毛皮を被っているとかわいいのにねー。

   次回は前肢のおはなしとか。 


-References-

・Platonov VV (2002) Peculiarities of the thoracic-lumbar vertebral morphology in common mole, Talpa europaea (Lipotyphla, Talpidae) in connection with its burrowing activity, Russian J. Theriol. 1 (2): 111-115 
・Yoshiyuki M (1986) "体骨格に基づいたサドモグラ Mogera tokudae KURODA, 1940 の系統的地位について
  The Phylogenetic Status of Mogera tokudae KURODA, 1940 on the Basis of Body Skeletons"
 国立科学博物館専報 19, 203-213 
『バイオディバーシティーシリーズ7 脊椎動物の多様性と系統』
 松井正文 :編集,  (裳華房, 2006)

 
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 ・specimens: その他の収蔵標本。
 ・
vertebrata:0102 脊椎動物。

 ・Gryllotalpa orientalis: ケラ
 ・
dinosaur expo 2009:01 - 05  『恐竜2009 砂漠の奇跡』
 ・Ailuropoda melanoleuca:  ジャイアントパンダ・レッサーパンダの分類、"パンダの親指"。
 ・capybara: カピバラさんの頭蓋。コイツの臼歯は触ると気持ちいい♡
 ・
Nihonotrypea harmandi: ハルマンスナモグリ。同じ節足動物の誼。




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