fantasia*diapsida

とりとめのないメモの山

the dark knight:

2008-08-21 00:00:00 | film・bilder++
『ダークナイト"The Dark Knight"』(2008/米/監:クリストファー・ノーラン)

を観に行きました。
噂に違わず、グレイトな出来栄え!
バットマン映画化作品最高傑作とも言えましょう。


何より、ヒース・レジャーが演じたジョーカーがやば過ぎる。
あれぞ狂気の怪傑なのだが、
それでいながらまた狡猾で洒落が効いており、
圧倒的なオーラで観客を魅了するのである。
指で自ら塗りたくったフェイスペイントも(実際にヒース自身で塗っていたらしい)
凄みがあって夢に出てきそう(実際出てきた)。
セックス・ピストルズのジョニー・ロットンやシド・ヴィシャス、
『時計仕掛けのオレンジ』のアレックスを参考にキャラクターを造り、
フランシス・ベーコンからイカレた感じを考えたそうですが、
キース・リチャーズにインスパイアされた『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウにも何か似てますね。
そう、敢えて言えばスパロウ船長を超ダークにしたのがジョーカーの雰囲気かも。

独特の変に洒落た口調に、人を嘲うような(でも滑稽な)振る舞い。
大胆不敵で傲慢。
で、いながら幾重もの罠をしかけて他人の裏の裏の裏をかき、心理戦で巧みに相手の精神を捻じ曲げてしまう
超人的頭脳の持ち主。
そして何より常人のような物欲がなく、金も一切欲しがらず、
犯罪を犯すことを何とも思わず、時には自分の命まで賭けてゲーム感覚で破壊の限りを楽しむ様が、
極めて異常性を持って描かれる。
のだが、
何故か完全に悪役と割り切ってしまうことが出来ないのはどういうわけだ?
そればかりか、所々で不覚にも奴に共感すら覚えてしまう…(てか、なんか言動が自分に雰囲気似てる?)
という、不思議なキャラクターであり、
こういう所は、ハンニバル・レクターとかダース・ベイダーにも似てるかも。

何れにせよ、彼がこれ1回きりでもう二度と見られないのは非常に残念です。
ヒース・レジャー、心よりご冥福をお祈り申し上げます。


私は基本的にアメコミは好きではない。
なんか派手なカラーのタイツ穿いててダサいし(ファンの方々ゴメンナサイ)、
悪役も単純に「世界制服じゃーうりゃー」みたいな単純な奴が多くて、その辺がどうも性に合わないのだ。
だがバットマンはまだ別格で、
彼はスーパーマンみたいな典型的アメリカン(クリプトン星人だってのは重々承知)ヒーローとはちょっと違い、
警察と敵対する闇夜の都市の自警的英雄であって、謂わば無法者扱い。
厳格でたまに冷酷になる面もあるし、少なくとも作中ではヒーローではないわけだ。
ジャスティス・リーグで普通の人間なのもバットマンだけでしょ?たしか。
で、黒ずくめのマント男ってのがいいよ(映画版以外は大体黒いブリーフみたいなの穿いてるが)。


今回も前作『バットマン・ビギンズ"Batman Begins"』に引き続き、
アメコミを大人の鑑賞に堪えうる文化に高めたとされるハード・ボイルド銘作コミック(読んだことはないが)
『バットマン:ダークナイト・リターンズ"Batman:The Dark Knight Returns"』の空気を継承する作品だが、
そのリアリティはより一層増しており、
最近の多くの映画がCGで背景合成するなどしてダイナミックな構図を引くのに対して
撮影はクライム・サスペンス的にロケにこだわっており、これだからこそ所謂"神の視点"が排除され、
都市の空気感がそのまま緊迫感を伴って伝わるわけである。
ゴッサム・シティとして主にロケ地になったのはシカゴ。
石造りでゴシック調のどこか重々しい感じのある建築物が立ち並ぶ様は、さすがアル・カポネのいた街って風格だし、
確かシカゴは、夜間照明が高圧ナトリウム灯に統一されているため、だったか、
夜景が橙色の落ち着いた、火影にも似た色加減をしていて、それだから一層ナイトシーンに独特の陰影が加えられるわけである。
もう1箇所本作の舞台となったのが香港で、
こちらもまた流石は"東洋の真珠"、
古きものと新しきもの、洋の東西の混在した、煌びやかな魔都としての風格があり、
(マフィアが暗躍したノワールな空気感はシカゴとも共通だね)
暗く重いトーンを作品に加えるのに一役買っている。
もうちょいと香港香港した感じがあってもよかったと思うが…まぁパラレルワールドの話ですから、
あんまり現実世界のティピカルな部分を出してもそれはそれで不自然なのでしょう。
  (ちなみにこの映画、マフィアも沢山出てくるが、国籍は多彩なようで、イタリアン・マフィア?と思しき連中も登場する。
   フィルム・ノワールの本場が集合していて、私は個人的に萌え萌え。)


総じてこの作品は、先にも少し書いたと思うが、アクションと言うよりはクライム・サスペンスのイメージで、
ノワールが好きな人ならきっと気に入る作品だろうし、そうでなくとも非常に楽しめると思う。
だがそれだけに決して"ヒーロー物"ではないため、小さい子には不向きでしょうね。
ヌルイ怪獣映画が氾濫していた頃登場した平成ガメラシリーズみたいなもの(?)ですから(笑 ;私は一応ゴジラファンです)。

ただ、最後のあたりは個人的にはどうかなと思った。
途中神展開が頻出するだけに。
結局最後の最後でアガペーじゃん、人間愛がテーマとして出てくるじゃん。
今までメディアを利用したジョーカーの戦略に散々踊らされ、狂った民衆なんだから
もうありえないぐらいどん底に叩き落して、
「それ見たことか!人間などかくも醜い虫けらさぁ!ハーッハッハッハッハァ!」と悲劇的に終わっていく方が私は好きなんだが…

あ、やっぱり俺ってジョーカー…?

THE DARK KNIGHT NEW TRAILER HD MAY 2008 IN THEATERS JULY 18

日本版のトレーラーがジョーカー1人にスポットを当てていたのに対し、
アメリカ版のトレーラーはブルースの苦悩や正義に生きるハービー・デントも登場し、幾分他声的な印象ですね。
ラストにちゃんとコミカルなシーンが入るという(笑)。

 ところで、香港のシーンでエディソン・チャン(陳冠希, Edison Chen)、いませんでした?
 『インファナル・アフェア 無間序曲 "無間道Ⅱ Infernal Affairs II"』に出てきた彼とよく似た人物がチラッと見えたような…
 撮影はたぶん例の事件以前だから、ありえなくはないと思うんだが…


< βλογ πετ >



最新の画像もっと見る

2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
TBありがとうございました (にゃむばなな)
2008-09-24 22:14:04
そうですね、確かにハンニバル・レクターやダース・ベイダー同様に悪役なのに、しかも極悪人なのに、どこか悪役ではないような魅力がありましたよね。

悪役も突き抜けるとそんな不思議な魅力を放ち始めるんでしょうか?
とにかくそういうジョーカーを作り上げたヒース・レジャーに賞賛の声を上げずにはいられませんでしたよ。
返信する
こちらこそどうも (LOKI:(fantasia*diapsida))
2008-09-25 00:29:51
ありがとうございます。

突き抜けた悪役でありながら、
どこか病的で癖のある感じが必要以上に人間的で、
そういうところから魅力が発せられるんではないかなぁと
ふと思ったりもしましたね。

決め台詞を吐くときの芸人ぶった巻き舌、
口を裂かれたことから生じたのか、唾を溜めた喋り方、
嘲るような視線、
落ち着きのない指先、
興奮したときの息遣い…etcetc.
例えばこういった仕草の積み重ねで、
キャラクターが単なる作られた偶像に落ち着かず
多面的に、五感的になるではないのかな、と。
ダース・ベイダーも呼吸音「ホー…」っていう癖(?)がアイコンになっていますしね。

皆様も多くの仰せの通り、
私も"Jorker Returns"を見られないことが悲しくて仕方ないです…
返信する

post a comment