
恐竜ファンにはなかなか衝撃な論文が登場した。
Scannella, J. and Horner, J.R. (2010).
"Torosaurus Marsh, 1891, is Triceratops Marsh, 1889 (Ceratopsidae: Chasmosaurinae): synonymy through ontogeny ."
Journal of Vertebrate Paleontology, 30(4): 1157 - 1168
トロサウルス属(Torosaurus)がトリケラトプス属(Triceratops)のシノニムであり、成長段階によるヴァリエーションかもしれないよ、
もっと言えば、"完全に成長しきったトリケラトプス属の姿かもしれない"という話である。
こうした議論は過去にもされてきたようだが、今回はちゃんと成長段階に沿ってその変形を追っており、
トロサウルスが独立した属でなくなるのはほぼ確実と見て良いのかも知れない。
そもそも、両者ともヘル・クリーク(Hell Creek)を中心に
白亜紀末期マーストリヒト期(Maastrichian)の同じ層から発掘されており、
トリケラさんは明らかな各成長段階などヴァリエーションなど含んで50以上もの完全/不完全な頭蓋や各部の骨格が発見されているにも関わらず、
トロさんは5つほどの不完全な頭蓋などなど、しかもいずれもが完全に成長きったと見られる成体のみ…。
そして実際には「フリルの形状や後頭骨の開口部以外に大した差異はないぞ」ってことが以前から主張されていた。
なので、一般にはトロサウルスが史上最大の角竜(Ceratopsian)とされ、トリケラトプスがそれに次ぐ大きさだーと言われていたものの、
このトロサウルスが実はトリケラトプスの完全成長型なのでは?
というのは以前から言われていたらしい。
ところで、やはり気になるのはフリルに開いた"泉門"ですね。
この穴は後頭骨(parietal)と鱗状骨(squamosal)の間に開いていて、だいたい角竜は持っているものなのだが…
「トリケラトプスってーのは、フリルに開口がないことが特徴!」とは一般的に言われていたものだ。
さて?
で、こんどの論文では実際各成長段階のトリケラさんの後頭骨を仔細に観察。
「トリケラのフリルには開口がない」のは一般化されていたが、
実際には後頭骨の一部(トロさんの開口部と同位置)が成長段階に従って腹側から薄くなっていき、
やがて完全に開口して"トロサウルス"型になるらしい。
角竜のフリルはいわゆる化生骨(metaplastic bone)のようなものではないか?
とは以前にも言われていたようであって、
もしそうなら、後天的にかなりワシワシ変化しても不思議はない。
該当部の化石をポリエステルレジンに包埋して切片を切っているが…まぁこれに関してはよく解らないんだけど(汗)、
細胞も見えてるしちゃんと骨形成過程が証明されているのかな。
というわけで、"トロサウルス"はトリケラトプスの成長しきったver.としてシノニム扱いになる可能性は高そうだねぇ…。
ただし、今回は"同属"が明確に指摘されたものであって必ずしも"同種"とまでは言っていないのと、
1990年代には既にこれが「性別で違いが出るのかも」などなど主張があるなど、
両者の関係にはまだ少し議論が残っています。
ps 20100828
しかしマスメディアはこれに関し、また意味不明な報道をしてくださった。。
→notexactops: 『トロ=トリケラ』に関するあまりにも酷い報道

<>
・the dawn of the dinosaurs:01 地球最古の恐竜展 @六本木ヒルズ 2010年
・dinosaur expo 2009:01 恐竜2009 砂漠の支配者 2009年
・palaeo-skeletalis: 『大恐竜展 知られざる南半球の支配者』 @ 大阪市立自然史博物館 2010年
・chicxulub impact: 白亜紀末の大量絶滅隕石衝突レヴュー。
・Futabasaurus suzukii: フタバサウルス・スズキイ=フタバスズキリュウ
・eodromaeus: エオドロマエウスと、エオラプトル。系統と形質の評価に関して。
・specimens: うちの収蔵標本。
・vertebrata:01 脊椎動物
Scannella, J. and Horner, J.R. (2010).
"Torosaurus Marsh, 1891, is Triceratops Marsh, 1889 (Ceratopsidae: Chasmosaurinae): synonymy through ontogeny ."
Journal of Vertebrate Paleontology, 30(4): 1157 - 1168
トロサウルス属(Torosaurus)がトリケラトプス属(Triceratops)のシノニムであり、成長段階によるヴァリエーションかもしれないよ、
もっと言えば、"完全に成長しきったトリケラトプス属の姿かもしれない"という話である。
こうした議論は過去にもされてきたようだが、今回はちゃんと成長段階に沿ってその変形を追っており、
トロサウルスが独立した属でなくなるのはほぼ確実と見て良いのかも知れない。
そもそも、両者ともヘル・クリーク(Hell Creek)を中心に
白亜紀末期マーストリヒト期(Maastrichian)の同じ層から発掘されており、
トリケラさんは明らかな各成長段階などヴァリエーションなど含んで50以上もの完全/不完全な頭蓋や各部の骨格が発見されているにも関わらず、
トロさんは5つほどの不完全な頭蓋などなど、しかもいずれもが完全に成長きったと見られる成体のみ…。
そして実際には「フリルの形状や後頭骨の開口部以外に大した差異はないぞ」ってことが以前から主張されていた。
なので、一般にはトロサウルスが史上最大の角竜(Ceratopsian)とされ、トリケラトプスがそれに次ぐ大きさだーと言われていたものの、
このトロサウルスが実はトリケラトプスの完全成長型なのでは?
というのは以前から言われていたらしい。

ところで、やはり気になるのはフリルに開いた"泉門"ですね。
この穴は後頭骨(parietal)と鱗状骨(squamosal)の間に開いていて、だいたい角竜は持っているものなのだが…
「トリケラトプスってーのは、フリルに開口がないことが特徴!」とは一般的に言われていたものだ。
さて?
で、こんどの論文では実際各成長段階のトリケラさんの後頭骨を仔細に観察。
「トリケラのフリルには開口がない」のは一般化されていたが、
実際には後頭骨の一部(トロさんの開口部と同位置)が成長段階に従って腹側から薄くなっていき、
やがて完全に開口して"トロサウルス"型になるらしい。
角竜のフリルはいわゆる化生骨(metaplastic bone)のようなものではないか?
とは以前にも言われていたようであって、
もしそうなら、後天的にかなりワシワシ変化しても不思議はない。
該当部の化石をポリエステルレジンに包埋して切片を切っているが…まぁこれに関してはよく解らないんだけど(汗)、
細胞も見えてるしちゃんと骨形成過程が証明されているのかな。
というわけで、"トロサウルス"はトリケラトプスの成長しきったver.としてシノニム扱いになる可能性は高そうだねぇ…。
ただし、今回は"同属"が明確に指摘されたものであって必ずしも"同種"とまでは言っていないのと、
1990年代には既にこれが「性別で違いが出るのかも」などなど主張があるなど、
両者の関係にはまだ少し議論が残っています。
ps 20100828
しかしマスメディアはこれに関し、また意味不明な報道をしてくださった。。
→notexactops: 『トロ=トリケラ』に関するあまりにも酷い報道


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・the dawn of the dinosaurs:01 地球最古の恐竜展 @六本木ヒルズ 2010年
・dinosaur expo 2009:01 恐竜2009 砂漠の支配者 2009年
・palaeo-skeletalis: 『大恐竜展 知られざる南半球の支配者』 @ 大阪市立自然史博物館 2010年
・chicxulub impact: 白亜紀末の大量絶滅隕石衝突レヴュー。
・Futabasaurus suzukii: フタバサウルス・スズキイ=フタバスズキリュウ
・eodromaeus: エオドロマエウスと、エオラプトル。系統と形質の評価に関して。
・specimens: うちの収蔵標本。
・vertebrata:01 脊椎動物
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