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the dawn of the dinosaurs:01

2010-08-10 00:00:00 | biologie*


『地球最古の恐竜展 -The Dawn of the Dinosaurs-』

         @森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ)  に行ってきました。


  アマルガサウルス・カザウィ(Amargasaurus cazaui)。
     
  白亜紀のゴンドワナに生息していた竜脚類。
  今回の展示会においてこの動物だけ数10,000,000年かけ離れているが、南米を代表する恐竜のひとつ。
  ギャラリー外、モール内吹き抜けにいるので注意。



展覧会の名が示す通り、今回はジュラ紀(Jurassic)-白亜紀(Cretaceous)のメジャーな恐竜軍団は一切登場せず、
それ以前、三畳紀(Triassic: BC 251-199 Mya.)の、
未だ恐竜類(Dinosauria)の主要2大グループ、竜盤類(Saurischia)-鳥盤類(Ornithischia)が分岐するや否やといった時代の動物をメインに据えてある。
この時代は更にペルム紀末の地球史上最大の大量絶滅の直後でもあり、
まだ哺乳類祖先群の単弓類(Synapsida)のディキノドン(Dicynodontia)やキノドン類(Cynodontia)が栄え、
更に主竜類(Archosauria)の中でも、後にワニ類へと続くクルロタルシ類(Crurotarsi)と恐竜類など鳥頸類(Ornithodira)が同時に収斂的に進化し、
互いにニッチを争っていた群雄割拠の時代という印象がある。

ご存じの通り、やがてジュラ紀になると陸上の覇者は恐竜類となる。
だがそれまでの時代でも特に恐竜だけがズバ抜けて優れた特徴を持っていたかと言えば、決してそうでもない。
むしろ三畳紀末に環境が変動したお陰でクルロタルシなどの多くの系統で絶滅が起こり、
空いたニッチに、半ば日和見的に恐竜が適応放散したという見方が一般的だ。

特に、この時代の研究が進んでいるのは南米、イスキグアラスト累層(Ischigualasto formation)であり、
今回はこの、単弓類-クルロタルシ-恐竜という陸生脊椎動物の繁栄を、イスキグアラストを中心に
謂わば三国演義のように(?)扱っているのが特徴だ。
 


イスキグアラスティア・イェンセニ(イスチグアラスティア・ジェンセニ; Ischigualastia jenseni)

 単弓類 Synapsida
  獣弓類 Therapsida
   ディキノドン類 Dicynodontia

  
三畳紀のイスキグアラスト最大級の植物食動物。
しかしディキノドン類が最も繁栄したのはペルム紀後期であり、
当時は謂わば陸上脊椎動物の中でも最も成功したグループだったが、ペルム紀末の大量絶滅に遭い、
三畳紀に入るころには既に衰退の一途を辿るようになった。

代わりに三畳紀前期-中期まで栄華を極めるのが、同じ単弓類でもキノドン類(Cynodon)のグループだ。


エクサエレトドン・フレングエリ(Exaeretodon frenguelli)
 単弓類 Synapsida
  獣弓類 Therapsida
   キノドン類 Dicynodontia

   
しかしキノドンも、主竜類(Archosauria)の登場する三畳紀中期になると種数を減らしてゆく。
エクサエレトドンはその最後の時期の動物だ。
歯式は現生の哺乳類同様、既に分化が見られる。
どうやらキノドン類もこの時点で乳歯→永久歯という二生歯性(diphyodont)を既に獲得していた様だ。
発達した外耳道や直立など今の哺乳類に特徴的な形質も既に確立していた。

三畳紀後期以降、キノドンの占めていたニッチは主竜類たちにとって代わられるようになる。
K-T境界での白亜紀末の大量絶滅で、一部の獣脚類を除く恐竜の多くの系統が途絶えるまでは…。




シロスクス・ロンギケルヴィクス(Sillosuchus longicervix)
 双弓類 Diapsida
  主竜類 Archosauria
   クルロタルシ類 Crurotarsi

  
主竜類(Archosauria)は"爬虫類"(←羊膜類のうち哺乳類と鳥を除いた全部?)と便宜的に呼ばれるグループのうち、
ワニや恐竜(鳥を含む)に代表されるグループだ(最近の研究ではカメも近い?)。
この時代ではワニを生んだクルロタルシと恐竜を生む鳥頸類の二大勢力があるが、
両者の姿は一見非常によく似ているように思える。
簡単には足根や股関節を見ると一撃で分かるんだが詳しくは次回。

シロスクスは二足歩行の、非常に活動的と思われるクルロタルシ。
一般には現生のワニからはとても想像し難い形態と思われるかもしれないが、
よく見るとやっぱり恐竜よりむしろワニっぽくて面白い。



サウロスクス・ガリレイ(Saurosuchus galilei) 
 双弓類 Diapsida
  主竜類 Archosauria
   クルロタルシ類 Crurotarsi
    ラウスキア類 Rauisuchia

  
全長約5m。最大で7mあったといい、ファソラスクスを除けば恐らく三畳紀末期最大級の捕食者だったと思われる。
同じ仲間に有名なポストスクス(Postosuchus)などもおり、
今では信じがたいことだが、頭部の形態などからティランノサウルス(Tyrannosaurus)などとの類縁関係まで指摘されたこともあるという。
頸は太く、顎は大きく、後頭部の張り出しにより眼窩は幾分前を向き、
まさに捕食者といった風格でとてもカッコいい。くぅ。

これまでに発掘された部位は多く、
この時代の中でも非常によく形態が復元された動物ともいえると思う。

ちなみに頭蓋の3Dモデルはこちらで公開されているDigiMorph 



そしてこの時代、恐竜が誕生した。


エオラプトル・ルネンシス(Eoraptor lunensis)
 双弓類 Diapsida
  主竜類 Archosauria
   恐竜類 Dinosauria
    竜盤類 Saurischia

 
"暁の掠奪者・月の谷の"という最高にクールな名前を持つエオラプトルは、
1991年リカルド・マルティネスによって発見され、ポール・セレノらの協力により1993年に記載された。
全長約1m。前眼窩窓(preorbital foramen)が大きく、頬骨(juggal)の後方関節が二股に分かれ、
前肢の外側2つの指が退縮する点などは派生的な獣脚類の特徴だが、
単純な顎関節は原始的な特徴だ。
更に顎の前半分には、木の葉型の植物食に適応した歯があり、後ろ半分は肉食的な湾曲した歯である。
こうしたハイブリッド的な特徴を持つので正確な系統的位置の推定は難しいが、
恐竜の中でも最も"原始的"なものであるのは確かであり…
なによりエオラプトルは、その名の通り、恐竜の曙の象徴なのである。

ps.エオドロマエウス→eodromaeus:も参照


 02:へつづく....  

 
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 ・dinosaur expo 2009:01 
 ・
disosaurs of gondwana 2009: 大恐竜展 知られざる南半球の支配者@国立科学博物館
 ・
palaeo-skeletalis: 大恐竜展 知られざる南半球の支配者 @ 大阪市立自然史博物館
 ・
dinosaur museum:1 福井県立恐竜博物館

 
specimens: うちの収蔵標本。

 ・
vertebrata:01 脊椎動物



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