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とりとめのないメモの山

vertebrata:01

2009-01-10 00:00:00 | biologie*

[脊椎動物] ブログ村キーワード

脊椎動物(Vertebrata; 英:Vertebrate, 独:Wirbeltiere)について。
生物の3大ドメインのうち真核生物(Eukaryota; Eukarya)の中の
オピストコンタ(Opisthoconta; 後方鞭毛生物)のうち後生動物(Metazoa)の中で約35ある動物門のうち
脊索動物門(Chordata)に属す、
その種数・多様性からは恐らく生物界全体のメジャー軍団にはまず成り得ない小グループではあるものの、
大型で、何よりヒト自身が脊椎動物なので、
一般に"動物"と言えば脊椎動物のことを真っ先に想像する方が多い。

後生動物のうち後口動物(Deuterostomia; 英:Deuterostome; 新口動物)の系統は、現在大まかに次のように考えられている。
    
 
後口動物のうち一方は水腔動物(Coelomopora; コエロモポラ)とも呼ばれるグループとして纏められ、
ここに半索動物門(Hemichordata)、棘皮動物門(Echinodermata)と、
最近には珍渦虫動物門(Xenoturbellida)が含まれるようになった。
もう一方は脊索動物門(Chordata)の系統である。

脊索動物門は、現生種を中心にすると大まかに
 
  
と系統樹が描ける。
脊索動物の共通祖先から脊椎動物へ至るまでの重要な変化をいくつか示した。

ナメクジウオなど頭索動物(Chephalochordata)、
ホヤなど尾索動物(Urochordata)の中についてはザックリ省略(そんなに詳しくないし;汗)。
脊椎動物は、現生種の圧倒的多数を占める顎口類(Gnathostomata; 英:Gnathostome)と、
ヤツメウナギ(lamprey)・ヌタウナギ(hugfish)のみが現生する円口類(Cyclostomata; 英:Cyclostome)とに分けた。
現生種のみを前提にする場合なら、円口類=無顎類(Agnatha)と捉えていいかも。つーか普通そう言う。
(化石種まで含めると、"無顎類"って言うのは脊椎動物に対す無脊椎動物みたいに側系統になるんじゃないかと……)
なお、ヌタウナギとヤツメウナギとの詳細な比較形態学から円口類が側系統群とされ、
ヌタウナギ綱(Myxini)と、頭甲綱(Cephalaspidomorphi; ヤツメウナギ, アナスピス†,ケファラスピス† etc.)とが分けられたこともあったが
近年の分子系統などによると、ヌタウナギ類(Myxini)とヤツメウナギ類(Hyperoartia)が単系統である結果が出され、
形態の面からも円口類(Cyclostomata)説が復権してきている。

脊椎動物のボディプランは、脊索動物のコンセンサス
 ・左右相称(もちろん左右相称動物共通の形質だが、一応)
 ・もと上皮性の背側神経索(dorsal neural tube)
 ・神経管の下に支持組織として脊索(notocord)を持つ
 ・鰓裂(pharyngeal slit)が並ぶ咽頭(pharynx)を持つ
 ・内柱(endostyle;
濾過摂餌のための粘液を分泌する咽頭の器官)を持つ

に脊椎動物で初めて獲得される形質
 ・脊椎骨(vertebra; 複:vertebrae)
 ・頭蓋骨(cranium)
 ・神経堤と神経堤細胞(neural crest cell)、その由来物
 ・プラコード(placode;
胚上皮の肥厚で、感覚器などの器官に発生する
)
 ・正中鰭(medial fin)
 ・感覚器等が前端に集中、神経管前端が膨らんで分節した脳をつくるなどの、頭化(cephalization)
 ・少なくとも1つの半規管(semicircular canal)
 ・少なくとも1つの鼻孔(nostril)
を加えたものと考えればよい。
脊椎動物で内柱は甲状腺(thyroid gland)として機能している(ただし、ヤツメウナギは幼生時は内柱、変態後に甲状腺と変化)。

ただしヌタウナギは非常に例外的で、脊椎を(少なくとも見かけ上)全く持たないとか、甲状腺を持たずに内柱のままだとか、
「オマエ脊椎動物か?!」と言いたくなるような体制をしている。
リンネが迷った末「環形動物じゃね?」と言ったのも解らんでもない…(か?)
このため、ヌタウナギ類が無顎類から独立したグループだと考えられた際には、ヤツメウナギら頭甲綱と顎口類を併せて"脊椎動物"、
そこにヌタウナギ類を含めると"有頭動物(Craniata)"と呼ばれる、との分類体系が提唱された。
だが円口類単系統説が正しいとするなら、この分類はむしろ杞憂である。

さて今風でおなじみの脊椎動物、顎口類(Gnathostomata; 英:Gnathostome)のボディプランは、これに更に
 ・顎骨弓(mandibular arch)から成る顎の獲得(ただしコレ二次的に耳小骨になってみたりとか相当変化してます。)
 ・2対の対鰭(appendage)
 ・僧帽筋(trapezius)群
 ・後頭骨(ccipital bone)
 ・交感神経幹(sympathetic trunk)
 ・鼻プラコードが左右に分かれて1対となり、よって鼻孔(nostril)が2つになる。
(ただし化石種だと2つの鼻孔を持つ無顎類も多い)

を加えたものとなる。

脊椎動物の基本体制は次図のような雰囲気。
   
 anus;肛門 blood vessel;血管 brain;脳(前脳forebrain・中脳midbrain・後脳hindbrainに3分節する) coelomic cavity;体腔 cranial skeleton;頭部骨格
 eye;眼 gut;腸管 heart;心臓 hypophysis;下垂体 internal ear;内耳 myomere; 筋節 mid fin→median fin;正中鰭 nose;鼻 notochord;脊索
 pericardial cavity;囲心腔 pharynx;咽頭 spinal cord;脊髄 thyroid gland;甲状腺 vertebra;脊椎(椎骨)

自分なりに描いてみたがどうでしょう。


さて、脊椎動物は(ご存知の通り)その内部でもかなり多様性があり、系統関係もよく研究されてきた。
現在最もよく信じられているであろう脊椎動物の進化の系統樹を、
絶滅種などもある程度含めた上で簡単に書くと、次のようになる。
   
系統分類の常に従い、科,属,種より大きなグループは、リンネ式の階層的分類(門,綱,目,科,属,種)でなく全て"類"で統一。

ヌタウナギはひとまず系統不明の位置に置かせていただきました。
こうして見ると、一般に"魚"でまとめてしまっている連中が、如何に脊椎動物を代表しているかが実感できる。
陸生の脊椎動物、四足動物なんて実際は硬骨魚類の1グループに過ぎないんだから。

顎口類(Gnathostomata)以前の皆さんが総称的に無顎類(Agnatha)と呼ばれる。
長らく謎の化石とされていたコノドントも、真錘歯類(Euconodonta)として、系統はよく分からないながら所属。
ヤツメウナギと頭甲綱でまとめられがちなケファラスピスCephalaspisやヘミキクラスピスHemicyclaspis
骨甲類(Osteostraci)としてかなり顎口類に近いところに置かれているが、これもまだまだ議論がある。
しかし対鰭を持つという特徴があるから、ヤツメや翼甲類(Pteraspidmorphi; プテラスピス類)より内側なのは間違いないかと。

軟骨魚類(Chondrichthyes)なんてサラリと書いてしまったが、ここに属すサメもかなり古く、デヴォン紀から数多の種を生み出してきた。
名前が"軟骨魚"なので、その名の通り全身の骨格は軟骨で構成されているが、
当然このグループだけがそうなのではなく、硬骨魚(Osteichtyes)以前に分岐した系統の内骨格はみんな"軟骨性"である。
だが、現生の軟骨魚類とそれ以前に分岐した系統とは明らかに軟骨の種類が異なり、
 (例えば、円口類はそれぞれ独自のタンパクで構成された軟骨を持つし、
  板皮類(Placodermi)は、化石の詳細な組織学的探査から、小球状の石灰質を含むglobular calcified cartilageを持ち、
  軟骨魚類は稜状石灰化軟骨(prismatic calcified cartilage)を持つなど、"軟骨"は各グループで異なる)
一口に軟骨性と総称しても、これが決して共有原始形質でないことは明らかである。
更に現生の軟骨魚類には、鰭の基底軟骨(basalia)、♂の交尾器(clusper)、
電気受容器であるロレンチニ瓶(ampullae of Lorenzini)の存在など
かなりの特殊化が進んでおり、軟骨魚と言う名前からイメージされるほど"原始的"な特徴をそっくり保存した動物ではない。
  って…それ言っちゃ円口類の面々もそうだし、
  全生物「"原始的"な特徴をそっくり保存してる」やつなんているわけないんだけど…


硬骨魚は大きく条鰭類(Actinopterygii)と肉鰭類(Sarcopterygii)に分岐。
条鰭類には、現生の"魚"の大半が含まれる。
 ・アクロディン(acrodine)から成る歯冠部 ・胸鰭(dorsal fin)と肩帯(cingulum scapulare)との関節面が広い
 ・頭部側線形の下顎側線管が歯骨(dentary)を貫通 etc... 
といった特徴を持つ。
最もbasalなグループのひとつ分岐鰭類(Cladistia)には、観賞魚としても人気のポリプテルス Polypterusなど、
軟質類(Chondrostei)にはサメと付けどサメではない、チョウザメ類(Acipenseriformes)が含まれる。
新鰭類(Neopterygii; 新鰭亜綱)のうち、
ハレコストミ区(Halecostomi; ハレコストム区)ともなると、かなり一般的な"魚"である。
 ・可動的な主上顎骨(maxilla) ・独立した間鰓蓋骨(interopercle) ・不対の神経棘(neural spine)
 ・方形頬骨(quadratojugal)が消失or方形骨(quadrate)に癒合 etc...
という特徴があるが、
ここで最もbasalなのはアミア・カルヴァ Amia calvaで有名なアミア類(Amiiformes)で、
これより派生的な系統を、真骨類(teleostei ;真骨亜綱でお馴染み)と呼ぶ。
 ・可動的な主上顎骨(maxilla) ・基鰓骨(basibranchial)が正中歯板(tooth plate)に被われる
 ・胸骨舌骨筋(Sternohyoid muscle)由来の尾舌骨(urohyal)が1つ
 ・尾鰭椎体(ural centrum)が1,2個で、第1,2下尾骨(hypural)が第1尾鰭椎体に対応 ・下尾骨は7以下 ・尾神経骨(uroneural)
 ・前部筋束(craniotemporal muscle)が分化し後側頭骨(post-temporal)に侵入 etc...

アロワナにカライワシにニシンにサケetc...お馴染みでしょ?
ただ真骨類の中の系統関係については、今なお議論が多くゴッチャゴチャである。

一方、肉鰭類(Sarcopterygii)の仲間は、少なくとも現生種に関しては数グループが水中に残るのみである。
 ・後担鰭軟骨(postpterygiophore)からのみ分化した対鰭(appendage) ・対鰭-肩帯は、担鰭骨第一節(上腕骨humerus/大腿骨femur)で関節
 ・眼に4枚以上の強膜輪(sclerotic ring) ・後大動脈、肺動脈、胚静脈 etc... 
といった共通の特徴を持つ。
シーラカンス類(Coelacanthiformes)は有名だ。
現生種は1属2種(ラティメリア属LatimeriaL. chalumnaeL. menadoensis)のみで、
これらがシーラカンスの一般的なイメージを牽引しているが、実際シーラカンス(Coelacanthus; コエラカントゥス)とは
このグループの動物の総称を指す。
化石種には「これホンマにシーラカンスかいな?!」と思われそうな、
小魚じみたものから顔の細長いものまで実に色々いるものである。
ハイギョ類(Dipnoi)は肺魚。デヴォン紀には既に現れていたと考えられ、化石では淡水・海を合わせて100種を超えているが、
現在は大人気観賞用古代魚のプロトプテルスProtopterusなど、数種しか生存していない。
巨大な細胞核を持つことでも知られ、ゲノムサイズは動物中最大級だ。

さて、水棲の肉鰭類はほとんど絶滅してしまったが、ある系統のものは上陸し、
四足動物(Tetrapoda; 四肢動物)となっている。
この上陸の過程はやっぱり人気があってよく研究されており、化石が見つかるたびに話題になる。
ユーステノプテロンEusthenopteron、パンデリクチスPanderichthys、ティクタアリクTiktaalik、アカントステガAcanthostega
イクチオステガIchthyostega、ヒネルペトンHynerpeton、チュレルペトンTulerpeton…と、
どうにも確固たる分類群に含め難い、
"中間型な"生物の枝が階層的に続いて、
やがて上陸するものが現れ、四足動物となる。

四足動物の系統は、やはり超おおざっぱだが下の図の如し。
   
両生類(Amphibia)なんて大雑把なグループをドーンと置いてしまったが、
ここ細かく書くとキリない(し、諸説ある)ので、思い切って今回は省く。
羊膜類(Amniota)の中の単弓類(Synapsida),真ペリコサウリア(Eupelycosauria)の中に獣弓類(Therapsida)があり、
その生き残りが哺乳類(Mammalia)として捉えられる。
また竜弓類(Sauropsida),双弓類(Diapsida),主竜形類(Archosauromorpha),主竜類(Archosauria)の中に
恐竜類(Dinosauria; あくまで総称?とされたこともあったが、現在ほぼ単系統性が示されたため、便宜上使われる)
があり、その中に獣脚類(Theropoda)がある。
この獣脚類の生き残りが鳥類(Avian)。
「鳥は恐竜から進化した」とよく聞いたものだが、
研究が進むにつれて敢えて鳥を恐竜類から独立させるほどの形質的な差異がない
(と言うより獣脚類が当初の想像より鳥的な)ことが解ってきたため、系統分類学的には"鳥類"は意味を失いつつある。
少なくとも、上記フレーズよりは「鳥は恐竜の生き残り」と表現した方が今風なのかも…

哺乳類と鳥類を除いた羊膜類が、爬虫類(Reptilia)と総称される。
側系統であって、これも系統的にはあまり意味を為すグループ名ではない。
現生は双弓類のみで、鱗竜類(Lepidosauria)のヘビ類・トカゲ類、主竜類のワニ類、加えてカメ類である。
カメは長らく無弓類(Anapsida)とされていたが、現在は分子・形態の両面から双弓類、中でも恐らくは主竜形類に入るとされている。


vertebrata:02に続きます→


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2 Comments

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Unknown (Rei)
2010-10-10 04:22:24
こんにちは。
自分は U of Aに一年生です。zoology を選考しているのですが、英語での授業で先日まですごい困っていました。日本語の説明が読めてすごい助けられました!!
ありがとうございます。 :)
返信する
My preasure :-) (LOKI:(fantasia*diapsida))
2010-10-11 01:22:01
どうもコメントありがとうございます。
U of Aですか~、
良い自然史博物館がいっぱいあるから、羨ましいなぁ。

zoologyを専攻とのこと、
最初から英語でやるのは大変かなとも思いますが、
日本でも最終的にはみんな、英語ができなきゃどうしようもならなくなります。
スタートラインを先取りしたと思って、是非是非頑張ってほしいです☆
質問などあったらまたどうぞ。
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