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Takydromus tachydromoides:01

2009-11-12 00:00:00 | biologie*

ニホンカナヘビ Takydromus tachydromoides (Schlegel, 1838) 
 の全身骨格標本。

今回はアリザニンレッドで硬骨を染色した透明骨格標本。
アルシアンブルーで軟骨も染めたはずなんだけどなぁ…うまくいっていないです。

脊索動物門 Chordata
 脊椎動物亜門 Vertebrata
  四足動物(四肢動物) Tetrapoda
   竜弓類 Sauropsida
    双弓類 Diapsida
  "Sauria"
     鱗竜形類 Lepidosauromorpha
   鱗竜類 Lepidosauria
       有鱗目 Squamata 
        トカゲ亜目 Sauria
         トカゲ下目 Scincomorpha
          カナヘビ科 Lacertidae
           カナヘビ属 Takydromus
            ニホンカナヘビ T.tachydromoides  

  

さすがに尾が容易く切れてしまうので、上のような状態になってしまっている(汗)。
所謂"一般的に見かけるトカゲ型"の典型で、
褐色の乾いた感じの体表にやたら長い尻尾が特徴的。
日本固有種で、全国の平地を中心に、
スキンク科(トカゲ科; Scincidae)のニホントカゲ{Plestiodon japonicus (Peters, 1864)}とほぼ同程度の頻度で見られる。
このため各地で地方名が定着しており、関東の一部などでは本州を"トカゲ"、ニホントカゲを"カナヘビ"と呼称する地域もあるという。
卵生。


・トカゲ類に至る系統進化とその大まかな形態学的特徴:

 
双弓類(Diapsida):基本形として、祖先的には、
 頭頂骨(parietal)・後眼窩骨(postorbital)・鱗状骨(squamosal)に囲まれた上側頭窓(supra temporal fenestra)、
 頬骨(jugal)・後眼窩骨(postorbital)・鱗状骨(squamosal)に囲まれた下側頭窓(infra temporal fenestra)が開口するグループ
 の中から、
細足形類(Araeoscelomorpha):石炭紀後期-二畳紀後期に生息した方形骨(quadrate)の背側突起の露出しない
 小さな(しかも祖先的な)グループ。細足目1目、その中も
 ペトロラコサウルス科(Petrolacosauridae)・アラエオスケリス科(Araeoscelidae)の2科のみ。
が分岐して、
次いで 鱗竜形類(Lepidosauromorpha)と主竜形類(Archosauromorpha)が分岐した。
後者はカワラバトの項で述べてあるのでそちらを参照。
カメ、ワニ、恐竜(鳥ふくむ)などのグループです。

鱗竜形類(Lepidosauromorpha)は更に、二畳紀後期-三畳紀前期に生息していた始鰐類(Eoschia)や
大グループである鱗竜類(Lepidosauria)を含む。

鱗竜類(Lepidosauria)は、涙骨(lacrimal)が縮小しているか全く欠いており、歯が側生(しばしば端生)で、
左右の胸骨板(sternal plate)が癒合し、成体では腰帯(pelvic girdle)や踵骨(calcaneus)-距骨(talus)が癒合。
この仲間で現生種は、ムカシトカゲ目と有鱗目(Squamata)のみ。

有鱗目(Squamata)は、トカゲ類・ヘビ類を含む非常に大きなグループ。
通常、翼状骨(pterygoid)と鋤骨(vomer)が接せず、鋤骨歯(vomerine teeth)がない。
外耳小柱(extracolumella)が細い、後肢の足根骨の各要素が退化傾向にあって、第5中足骨が鉤状。
腹肋(gastralia)を持たない。
オスの生殖器官は発達した半陰茎(hemipenis)。
指式の基本形は前後肢とも(2,3,4,5,3)。

最大の特徴が、下側頭窓(infra temporal fenestra)の腹側が完全に開いて窓としての特徴を失い、
方形骨(quadrate)が捻柱状になっていること。
このため方形骨が自由になって、鱗状骨(squamosal)と可動関節を形成している。
これにより、顎の開閉に際し、上顎-下顎の関節に加えて方形骨-鱗状骨が動く、一種の二重関節が形成されることになる。
詳しくは:02
ヘビ類ではこれが更に超絶技巧になって現れるわけだが…
それはまたヘビの標本について書く時にとしよう。

ちなみにトカゲ亜目(Sauria)は大きくAscalabota(ヤモリ下目・イグアナ下目)とAutarchoglossa(トカゲ下目・オオトカゲ下目)に分けられ、
ヘビ亜目(Serpentes)はオオトカゲ下目の、更にオオトカゲ上科から分岐したことになっている。
つまり、系統進化的観点からはヘビとトカゲは本当は並列に語られるものではなく、
各系統で独立にアシナシになったトカゲ類のうち
超特殊化・大繁栄したものをヘビ類と呼ぶのだ、と考えなくてはならない。


・ニホンカナヘビの骨格図

  
 Astragalus:距骨=talus  Atlas:環椎  Axis:軸椎  Calcaneum:踵骨  Femur:大腿骨  Fibula:腓骨  Humerus:上腕骨  Radius:橈骨 
 Sacral vertebrae:仙椎  Scapula:肩甲骨   Tibia:脛骨  Ulna:尺骨

 
  
 Angular:角骨  
Articular:関節骨  Cornu:  Coronary:冠骨  Dentary:歯骨  Epipterygoid:上翼状骨  Frontal:前頭骨 
 Jugal:頬骨  Lacriminal:涙骨  Maxilla:上顎骨  Mandible:下顎骨  Nasal:鼻骨  Parietal:頭頂骨 
 Parietal foramen:頭頂孔  Postorbital:後眼窩骨  Prefrontal:前前頭骨  Premaxilla:前上顎骨  
    Quadrate:方形骨  Squamosal:鱗状骨  Supraorbitalis:眼窩上骨

 
 
 Atlas:環椎  Axis:軸椎  Coracoid:烏口骨  Clavicle:鎖骨  hemal arches:血道弓  Illium:腸骨  Ischium:坐骨  Pubis:恥骨  Scapula:肩甲骨 
 Sternum:胸骨  Sternum ribs:胸肋骨


スケッチはtipicalなトカゲの骨格を2Dで極力、自分の中で理解しながら描くことにしてるので、
プロポーションや関節の付き方が若干実際と異なります。
今回対象が小さいのと、透明標本なのとで、頭蓋の構成などに誤りがあるかも…
一応近縁種の資料を集めて参考にはしていますが、トカゲの骨格図って比較的少ないよね。


―続きます。


References:

『Studies on the Structure & Development of Vertebrates』(Hardcover)
 Edwin S. Goodrich :著  (Macmillan and co., limited,  1930)
『The Vertebrate Body』(Hardcover)
 Alfred Sherwood Romer, Thomas S. Parsons :著  (W.B.Saunders, 1977)
『バイオディバーシティーシリーズ7 脊椎動物の多様性と系統』
 松井正文 :編集,  (裳華房, 2006)
『爬虫類の進化』
 疋田 努 :著, (東京大学出版会, 2002)

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