なんか最近Nature、Scienceあたりに恐竜関係の論文が多い気がしますね。
毎週のように羽毛のメラノサイト調べたり、新種記載があったりしてるもんで、
そのたびにwebニュースや新聞なんかには
「恐竜の色判明!」だの「恐竜の起源を発見!」だの、センセーショナルな報道が巻き起こるわけだが、
そのたびに、申し訳ないが報道関係の皆様方には
「お前らいい加減にしろよ」
と言いたくなる。
センセーショナルでキャッチーなのもいいが、もっと正確で論理の通ったこと書いてよ。
論文読めとは言わないけれど、せめて事実を伝えてくれぃ。
ってなわけで、最近ちょこちょこ日本語版Wikipedia・自然史科学分野強化計画と題した活動の一環で、
Natureで報じられた記載論文などに速攻で目を通して、wikipedia内に新規記事をつくるのがちょっとしたブームである。
どこのどの時代の地層で発掘されたのか、分類はどうなるのか、解剖学的特徴はどんなか、
あと少々主観的になりかねないが、この発見の何が重要で、研究するとどんな面白さがあるかまで軽く触れるようにしている。
これ、何より自分の勉強になるのでなかなかいいよ。
さすがに英語版には後れをとるが・・・だいたい2番手、3番手ぐらいとれてるので、まぁまぁでしょう。
チェコ版、中国版、ドイツ版、イタリア版、フランス版、ポーランド版etc..がまた恐ろしく早いんだ。
ちなみに、この前はYahoo!ニュース(日本版)より約2時間早く記事を提示しました(笑)。
ところでごく最近また「恐竜絶滅の謎、判明!」みたいなのが出てきましたね。
そんなのもう聞き飽きたタイトルなんだけれど・・・と、某ニュースの記事や新聞などを読んでみると、
やっぱし大して内容のない、センセーショナルなだけのものでした。
そんなんで、一応元論文も眺めてみたんですが・・・
なるほど完全に地史学(?)寄りな話で、paleobiologyどころかpaleontologyでもないのね・・・これは私は容易には解読できませぬ(笑)。
Peter Schulte, et al. "The Chicxulub Asteroid Impact and Mass Extinction at the Cretaceous-Paleogene Boundary"
Science 5 March 2010: Vol. 327. no. 5970, pp. 1214 - 1218
でも一応要点だけ拾ってみると、
これ特に新しい発見があったとかではなくて、
ユカタン半島のチチュルブ・クレーター(チクシュルブ・クレーター)を形成した例の隕石が、
K-P境界{以前は白亜紀(Kreide;Cretaceousのドイツ語名) - 第三紀(Tertiary)から"K-T境界"と呼ばれていたが、
現在は第三紀が正式名称として認められておらず、古第三紀(Paleogene)が使われるため、K-P境界(K-P boundaly)と呼ばれる}
で各地に及ぼした影響を、レビューしたものです。
これまで個々の研究グループがそれぞれに研究を発表しあっていて、意外なことに実は統一見解がなかったため、
この辺で一回隕石衝突説を纏めましょう、ということ。
だから内容に関しては、よほどマニアックな方にとっては特に目新しいことはないでしょう。
もちろん、"恐竜絶滅の謎"もまだまだこれからです。
たしかに隕石衝突が生態系に凄まじい影響を与えたのは間違いないですが、まぁそれなら今までとも変わりない。
まだまだこれまで通り様々な説が出続けるでしょうね。
ところで私自身は、絶滅が(例えばビン首効果みたいなこともあって)進化にとって極めて重要なイベントであることはまさにその通りだと思うけれども、
K-Pの大量絶滅で、わざわざ"恐竜"だけを取り上げる意義はそこまでないと思っています。
恐竜(Dinosauria)とはあくまで、自然に発生した系統の、あるまとまった枝に対してヒトが勝手に名称を付与したものですから、
もちろん「白亜紀末で恐竜が絶滅した」という表現はかなり不正確だ。
それまでの2億年で散々絶滅しているし、その後の数100万年ぐらいでも絶滅していったでしょう。
そもそも獣脚類(Theropoda)はガンガン御存命ですし・・・
(系統進化から分岐分類的に考えると、「鳥が恐竜から分かれた」みたいな表現はオカシイ。
現在恐竜が分岐学的に定義されたものである以上、「鳥は超特殊化した獣脚類」ぐらいに考えておくのがいいかも。)
"恐竜"にフォーカスすると、K-P境界の絶滅もそれ以外の時期の絶滅も、量的に多少差がある程度でしかなくなってしまう。
むしろ、K-P境界の大量絶滅は"恐竜"という単系統ではなくて、複数の主要な系統に跨って生じていることが問題なのだ。
だからこそ隕石説や火山噴火のような、一見空想物語のような天変地異が現実味を帯びてくる。
TOPの画像はアレクトロサウルス( Alectrosaurus sp. )の下顎です。
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