怪道をゆく(仮)

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怪想vol.18 ウルトラファイト研究序説 #1

2007年04月11日 19時20分46秒 | 怪想
かつて日本には「ウルトラファイト」という5分番組がありました。ウルトラセブン放映終了から約2年、1970~71年にかけて円谷プロとTBSが製作した、ウルトラマンとウルトラセブンにおける怪獣との戦闘シーンを編集したものに実況(山田二郎アナ)を加えたというもので、放映当初は本編の二番煎じとの批判を受けたようです。とはいえ編集や山田アナの絶妙な実況により本編とはちがう展開になっていたりとそれなりにユカイなものなんですよ。

本編のフィルムを使用しつくして再編集版が終了すると、今度は等身大の怪獣たちがウルトラセブンを中心に即興劇的なユルいバトルを繰り広げるという「新撮版」がはじまります。この新撮版こそが「ウルトラファイト」と認識されるまでに至り、現在においてもマニアなファンを魅了してやまない作品となりました。かくいうワタシも、そのトリコになった一人。

長らく幻の番組となっていましたが、2004年8月以降、我が敬愛する唐沢なをき先生により「ウルトラファイト番外地」が『特撮エース』紙上において発表されます(コミック化は2006年8月)。2006年6月には、ついに待望のDVDが発売され、またその数ヶ月後にはCS放送において放映、以降再放送がくり返されるに及び、再びこの番組には注目が集まりつつある、のではないかと思われます。

これよりささやかに連載させていただく「ウルトラファイト研究序説」は、そんなウルトラファイトの特に「新撮版」についてのチマチマとした覚書でございます(以下「ファイト」と略します)。ファイトについての「先行研究」は管見の限り前述のなをき先生による「番外地」しか・・・ワタシは知りませんので、特に明記しない場合はこれを参照していることをお断りしておきます。

さて。

新撮版と呼ばれるのは72話~196話(放映当初は195話までだったが、ウルトラセブン本編12話の「遊星より愛をこめて」が放送禁止となったためにファイトの45話「遊星の悪魔スペル星人」も欠番となり、再放送時に「怪獣死体置場」が追加されたのは有名すぎる話)の全124話。ファイトを見ていると多分誰もが一度はつけてみたくなるのが怪獣たちの勝敗表ですね。皆さんもつけたことあるでしょ、ワタシもつけました。年明け頃からつらつらと記録していると、どうもこの新撮版は3期にわけることができるようだ、と気づいたのです。すなわち、時期によって登場する怪獣の顔ぶれが変わるわけですね。

そういうわけで、分ける基準はひとえに、登場する怪獣によります。全編を通して登場する「レギュラー怪獣」と、時期ごとの「ゲスト怪獣」ともいうべき存在がいる。そして各期によってそのゲスト怪獣が変化する、という形というとわかりよいでしょうか。

まず、レギュラー怪獣はウー、イカルス、エレキングの3匹とウルトラセブン。そして各期と「ゲスト怪獣」は以下のとおり。
第Ⅰ期:72話~111話。バルタン、ゴドラ、テレスドン、ガッツ、アギラ
第Ⅱ期:112話~150話。シーボーズ、ケロニヤ、〔ガッツ、アギラ〕
第Ⅲ期:151話~195話。キーラ、ゴーロン、〔バルタン〕
(〔〕内は各期において1度しか登場しない例外的怪獣)
・・・196話の扱いはちょっと未定。ゴモラとか出てくるし。

この基準によって分類した結果、各シーズンは新「ゲスト怪獣」の登場をもって開始されるという構成になっております(Ⅰ期の72話~78話はアギラをのぞく7匹と対セブン、Ⅱ期は112話:ケロニヤ×イカルス、113話:シーボーズ×ケロニヤ、Ⅲ期は151話:セブン×キーラ、152話:セブン×ゴーロン)。

出ている怪獣でのみ時期を分けるというのは乱暴かなとも思いましたが、これがわりと時期ごとの雰囲気をうまくまとめることができている、と思うのですよ。各期の特徴を簡単に申し上げますと、第Ⅰ期は「新撮版」の中でも後の内容に比べれば寸劇的要素が少なく、各怪獣は割合まじめに戦っております。風景も単調で、おもしろいことに天候は圧倒的に曇りが多く晴れの日は皆無、雨が降っている日さえあります。

対して第Ⅱ期はまず、見事に晴れ渡った青い空の元、いきなり新怪獣であるケロニヤが崖から転がり落ちてくるところから始まるわけですね。「ナニかが変わったぞ」と思わせるにたる、実に印象的シーンです。この第Ⅱ期は山田アナによる実況が実況というよりは怪獣たちのセリフである割合が高まり、寸劇的要素が強くなります。それまでになかった海岸での戦いや宇宙にまで進出するなど(130話「セブン救出作戦」、ただしこれは本編33話「侵略する死者たち」からの再編集)場所のバリエーションも増え、以降のファイトのスタイルを確立するにいたる試行錯誤の時期とも位置づけられると考えられます。

Ⅲ期に入ると各怪獣の確立したキャラ付けのもと寸劇的要素一色となり、退廃的とさえいえるほどのユルさもここにきわまれり(笑)。まじめに(?)戦う回はほぼ皆無。ファイトにおける怪獣たちみまつわるトリビア的小ネタの多くはほぼこの時期に噴出すると考えてよいでしょう。

ウルトラセブンとアギラのコミカルな親分子分関係は「番外地」などでも楽しく描かれているわけですが、意外にも第Ⅰ期においてのみ繰り広げられる光景だったりするのですね。ゴドラやテレスドン、ガッツなどにキャラにまつわるエピソード少なのも、単に登場回数が少ないというだけでなくその登場が新撮版草創期にあたる時期であることと関わるわけです。逆に第Ⅰ期にしか登場しないにも関わらず丸いツメで卑怯者、しかし棒を持って戦う(195話ですが)こともあるなどといった強烈な印象を与えているバルタンはさすがといわざるを得ません。

どうでもいいことなんですが、こうして時期によって登場する怪獣のメンツが変わるということは絶対に顔合わせすることのない怪獣の組み合わせができることになるわけで、発見以来なをき先生の「番外地」を見ていると、たとえばゴーロンとシーボーズが戦っていたり(「激闘ダイヤル37564」)、ゴーロンがガッツを販売していたり(「香具師ゴーロン」)、ケロニヤとキーラが一緒に絵を描いていたり(「怨念!小島の秋」)するとなんだか微妙にキモチ悪かったりしますね。イヤほんとにどうでもいいことですが。

ではでは次回以降、この新撮版第Ⅰ期より、見ていきたいと思います。

スッタカター タカタッタカター 
タタタタタン タンタンタンタンタン
チャリラッチャリラッ チャリラッチャリラッ

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お天気は気付かなかった。 (いつきのじじい)
2007-04-12 05:58:52
収録が一日~二日に集中したからでしょうか。予算ゼロとも言われる番組ですからね。怪獣死体置場が欠番穴埋めとは知りませんでした。
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るるる (主宰者)
2007-04-13 07:53:25
予算ゼロでしょね、山田さんも局アナですしw



あれを生み出した円谷プロもそれを受け入れたあの時代の社会も、スバラシイなぁと思うわけです(喜)。
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