一杯の水

動物であれ、人間であれ、生命あるものなら誰もが求める「一杯の水」。
この「一杯の水」から物語(人生)は始まります。

「イーシャー・ウパニシャッド シャンカラ註」訳了!

2008年05月11日 16時48分19秒 | HP更新日記
短いながらも難解で知られる「イーシャー・ウパニシャッド」。
長らくメインサイト「Hinduism & Vedanta」に連載してきた「イーシャー・ウパニシャッド シャンカラ註」のサンスクリット原典訳が、このGWで無事終わりました。
訳了記念に、本ブログに「イーシャー・ウパニシャッド」本文の訳をアップしてみました。

なお、字義や「イーシャー・ウパニシャッド」の概念を詳しくお知りになりたい方は、上記メインサイトにアップしているインド最大の哲学者と称される「シャンカラ」の註釈もあわせてお読みください。
  
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(1)世界を動くものは、いかなるものでも、この一切は主によって満たされるべきである。
それ故に、捨てることによって享楽せよ。
何人のであれ富を、希求してはならない。

(2)まさにこの世において祭祀を執り行いながら、百年も生きようと願うべきである。
かくの如く、あなたにとってこれ以外の他の道は存在しない。
(そうすれば)人間にカルマ(業)が付着することはない。


(3)悪鬼共のこの諸世界は、実に盲目の暗闇に覆われている。
誰であれ、自己(アートマン)を殺す者共は、死後それらに行く。

(4)不動にして唯一なるものは、心(manas)よりも速い。
神々は、前を速やかに行く「それ」に到達することはできない。
「それ」は静止していながら、走り回る他のものどもを追い越す。
マータリシュヴァンは、「それ」の中に水を置く。

(5)「それ」は動き、「それ」は動かない。
「それ」は遠くにあり、「それ」はまた近くにある。
「それ」はこの一切の内にあり、「それ」はまた、この一切の外にある。

(6)しかるに、一切の存在物を、まさにアートマンの内に見出し、また、一切の存在物の中にアートマンを見るものは、それによって(それ故に)、厭離することがない。

(7)〔真理を〕認識した者にとって、一切の存在物がまさにアートマンそのものになったとき、一なること(ekatva)を見た人にとっては、そこにいかなる迷妄があろうか、いかなる悲しみがあろうか。

(8)彼は全てに及び、輝き、身体を持つことなく、傷がなく、腱がなく、清浄で、罪に傷つけられない。
〔彼は〕洞察力ある聖者で、思慮ある賢者であり、超越し、〔他を必要とせずに〕自ら存在し、彼は永遠の年によって、各々の義務を適切に割り当てた。

(9)無知(祭祀)を崇拝する者達は、盲目なる暗黒に陥る。
しかし、明知(神々に対する瞑想)に耽溺する者達は、言わば、より以上の暗黒に〔陥る〕。

(10)「明知(神々の念想)によって、実に異なる〔結果が得られる〕」と人々は言う。
また、「無知(祭祀)によって、他の〔結果が得られる〕」と人々は言う。
我々は賢者達からこのように聞いた。
彼らは我々にそれを説いてくれたのである。

(11)明知と無知と、これら2種を共に知る者は、無知によって死を渡り、明知によって不死に到達する。

(12)非生成を崇拝(念想)する者達は、盲目なる暗黒に陥る。
しかし、生成に耽溺する者達は、それにより、彼らは、いわば、より以上の暗黒に〔陥る〕。

(13)「生成によって、実に異なる〔結果が得られる〕」と人々は言う。
また、「非生成によって、他の〔結果が得られる〕」と人々は言う。
我々は賢者達からこのように聴いた。
彼等は、我々にそれを説いてくれたのである。

(14)生成と滅尽と、これら2種を知る者は、
滅尽によって死を渡り、非生成<注>によって不死に到達する。
 <注>一般的には「生成」と読むが、シャンカラはあえて「非生成」と読む。ここでは両者の読みが可能。

(15)黄金の鉢によって真理(実在)の顔は隠されている。
汝プーシャン(太陽)<注>よ、
それを開き給え、
真理を保つ者(私)が見られるように。
 <注>ヴェーダの神の名、家畜の群れを守り繁栄をもたらす神。太陽の機能の一面を代表してあらゆるものを監視し、旅行および、次の世界に至る道の指導者とされる。

(16)プーシャンよ。唯一の聖仙よ。ヤマ神よ。太陽神スーリヤよ。プラジャーパティの子孫よ。
光輝を広げよ。熱を集めよ。
汝の最も美しい姿である汝のそれを、私は見る。
彼方にいるプルシャ(人間)、彼は私である。

(17)〔我が〕生気は永遠なる風に〔帰入せよ〕、
今この肉体は灰に帰す。
オーム。
知よ、なされたことを記憶せよ。記憶せよ。
知よ、なされたことを記憶せよ。記憶せよ。

(18)アグニよ、我々を善き路によって富に導き給え。
神よ、〔あなたは〕この全ての秩序(知識)を知る者なのですから。
我々から惑わしの罪を取り除きたまえ。
我々はあなたに最上の(多くの)敬礼の言葉を捧げましょう。

――以上でウパニシャッドが終わる――
「オーム、それ(ブラフマン)は満ちている」平安あれ!



 
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